秋の風は、初秋のさわやかな風から、晩秋のひっそりした、ものさびしい風までその意味するところは広い。ネットで「美しい秋の風を表す日本語」を検索すると、50近い日本語が出てくる。


 中でも、

 色なき風     さわやか、あるいは身にしみる秋の風

 涼風     かすかに秋の気配を感じる風

 金風     秋に吹く風。秋のことを昔から「金」と表現する

 盆の風    お盆のころに吹く風。風の盆といえば富山での盆の行事

 野分     台風、嵐。明日、近畿は台風17号がやってくる




 「秋の風」を多くの俳人が俳句に詠んでいる。


 物言えば唇寒し秋の風           松尾芭蕉

 淋しさに飯をくふなり秋の風        小林一茶

 うしろから秋風来たり草の中       渡辺水巴

 秋風の吹きくる方に帰るなり      前田善羅

 なきがらや秋風かよふ鼻の穴     飯田蛇笏

 秋風や模様のちがふ皿二つ       原石鼎

 あきかぜのふきぬけゆくや人の中      久保田万太郎 

 ひとり膝を抱けば秋風また秋風     山口誓子

 秋風や薄情にしてホ句つくる      川端茅舎

 秋風や生まれながらに能役者       松本たかし 



 中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」を真似て、

 秋風や昭和は遠くなりにけり


 『名句鑑賞読本』の250句を鑑賞しての私の読後感である。