はじめに

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※イラスト 城雅さん

目次

真相考察サイド

EP1
EP2
EP3
EP4
EP5
EP6
EP7
EP8
補足考察
偽書作家テスト
漫画版の解釈
【感想】うみねこのなく頃にを終えて
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古戸ヱリカのガチ推理サイド

忘却の深遠の古戸ヱリカ
忘却の深遠でのガチ推理開始
古戸ヱリカの動機特定の章
古戸ヱリカの雑多推理の章
古戸ヱリカのEP1推理の章
古戸ヱリカのEP2推理の章
古戸ヱリカのEP3推理の章
古戸ヱリカのEP4推理の章
古戸ヱリカのEP5推理の章
古戸ヱリカのEP6推理の章
古戸ヱリカのEP7推理の章
古戸ヱリカのEP8推理の章
ヱリカとたけぽんの共同推理雑談場所
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Magic of the golden witchサイド

Magic of the golden witch 1
Magic of the golden witch 2
Magic of the golden witch 3
Magic of the golden witch 4
Magic of the golden witch 5
Magic of the golden witch 6
Magic of the golden witch 7
Magic of the golden witch 8
Magic of the golden witch 9
Magic of the golden witch 10
Magic of the golden witch 11
Magic of the golden witch 12
Magic of the golden witch 13
Magic of the golden witch 14
Magic of the golden witch 15
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おまけ
古戸ヱリカとダンガンロンパV3の章

はじめに
うみねこのなく頃に 真相考察ブログにようこそ。
このブログはうみねこのなく頃にをミステリー解釈で考察した真相考察ブログです。

・2種類の考察
この考察ブログは大きく分けて2種類の考察があります。1ページ目のEP1~感想記事までの真相考察と、2ページ目の古戸ヱリカのガチ推理シリーズです。これは考察の内容的には同一の内容でして全部読む必要はありません。お好きな方を読んでもらえればと思います。真相考察の方は普通の結論提示型考察で、分かりやすさと補足情報による補完を目的にしています。ヱリカの方の考察は「探偵の脳内思考を覗こう」がテーマでして、こちらはヱリカが悩みながら推理を構築していく過程でうみねこの真相が分かってくる、という形式の考察です。結論だけ普通に知りたい方は真相考察を、ヱリカと一緒に悩みながら推理そのものを楽しみたい方は古戸ヱリカのガチ推理シリーズの方をお読みください。もちろん両方読んでもらえると僕が凄く喜びます。

・メインの考察記事について
僕の考察記事の核は動機の考察です。もちろん、事件のトリック、犯人、物語解釈、そういった部分も考察していますが、僕が一番この考察ブログで伝えたいのは動機の考察です。そのため、動機がキッチリと分かるようにするため、一部出題編の事件では説明する訳にはいかない要素というのがあります。そういった一部動機に絡む物、そして、推測の要素が強く根拠が若干薄いもの、うみねこ本編からは明確に確定不能だと思われる「考察不能領域」に属するもの、そういった部分はすべて補足考察記事にまとめています。

【考察内容について】
うみねこは答えが明かされていないので、そもそも考察をしたとしてそれが正解なのか不正解なのか判別不能なんじゃないの?という根本的な問題があります。うみねこは世界観として様々な説が同時に成立するというものを採用しているため、明確に答えが絞れるのか、という問題があります。これらの根本的な問題を無視して考察する訳にはいかないと僕は考えます。僕の考察の目的はただ一つ、「作者の用意している公式解答を特定する事」です。そのため、僕は自由に考察をしていません。いくつか考察方法の柱としてる要素があるので紹介します。

1.ミステリー解釈
うみねこは前述したように、答えが明かされていませんので、ファンタジーで解釈しようと思えばファンタジーで考察できてしまうのです。そのため、考察を突き詰めれば自動的にミステリーかファンタジーか絞り込めるものではありません。うみねこは本編情報や作者のインタビューなどから、ミステリーとして考えて欲しいのだと僕は受け止めました。EP5の戦人も「ミステリーかファンタジーかも保証されない物語を、それでもミステリーだと信じて、解ける物語なのだと信じて、もう一度挑んでみよう……」と語っています。僕もこれを信じ、うみねこをミステリーなのだと信じて、ミステリー解釈で考察をします。そしてファンタジーを否定する根拠をできるだけ構築し、根拠の上に成り立つミステリー解釈をしようと思います。

2.ノックス第8条とヴァンダイン第1則
うみねこをミステリー解釈で考察するにあたって、そもそも、どういう方法論で考察すれば公式解答を特定できるのかという問題があります。ネットでうみねこは様々な考察が存在するように、普通に考察をしてしまうと無限の考察が生まれてしまいます。これをどうやって絞り込むのか、という問題に対する対策を僕は、「ノックス第8条 提示されない手掛かりでの解決を禁ず」「ヴァンダイン第1則 手掛り全ての揃わぬ事件を禁ず」この2つの赤字を信じる事で解決しようと考えました。うみねこはインタビューによって、解ける物語であり解けるように作られてると語られてます。作中に提示されている手掛かり以外で構築している考察は全てアウトという考え方をする事で、僕は真相が特定可能なのだと思いました。なので、考察ではできるだけ本編からの手掛かりによって構築可能な考察を作りあげて行きたいと思います。

3.連鎖考察法
ミステリー解釈とノックス、ヴァンダインを信じる事である程度の絞り込みは可能になるのだと思います。しかし、僕はそれでもまだ「公式解答を特定する」という目的は達成不可能なんじゃないのかと思いました。そもそも、何をもって「特定した」と判断するのかという問題もあります。色々と考えた結果、僕は考察の連鎖という考え方を採用しました。うみねこでは犯人、トリック、動機、物語解釈といった様々な考察要素が存在します。連鎖考察法とは、これらの考察対象が連鎖的に繋がりをもって説明付けされていく事を目的にした考察法です。ただ単に一つの考察対象に説明付けができればいいのではなく、他の考察対象に対しても説明付けがされていく事によって「偶然連鎖的に説明付けされた可能性」よりも「公式解答だから必然として連鎖的に説明付けが可能になった」と考えます。ありとあらゆる部分に連鎖的説明付けがされるような考察が仮に組み上がったのなら、それは偶然なのではなく、作者の用意した公式解答だからなのではないか?と考えました。これは結局当てたのか当てなかったのかの判断はつきませんが、少なくとも当てた確率は上がったはずだと信じます。

以上の3つの基本的考察方法にそって本編は考察をしています。こういう考察方法で考察しているのがEP1~8の本編考察記事であり、基本的に推測のような物は書いていないつもりです。そして、公式解答を特定するつもりで考察していますので、基本的にどんな考察も答えを一つに絞り込みます。それは僕が絞り込みをかけた結果、「おそらくこれが答えだろう」とテストの解答用紙に書き込んだ答案です。人によって僕と違う答えを書きこんだ人もいるでしょう。僕の考察はその他人の考察を否定するものではありません。僕が思う解答です。補足考察記事の方は考察の基準を若干甘くした、推測を混ぜて書いている考察記事です。この辺は本編に根拠があまりない部分であり、人によって考え方が割れるだろうと思ってる部分なので、あくまでも補足として、一つの考え方として見てください。最終的に作者の公式解答を当てたのかどうかは読んでくださった方の判断に委ねます。僕は当てたのだと信じてます。

・Magic of the golden witch
この創作は、原作考察と漫画版の考察を全て終わった後に書いたもので、物語は考察で終わるのではなく、物語は物語によって終わりたいという、僕の思いを形にしたものです。僕はうみねこをミステリーで考えてますが、この物語はファンタジーです。なぜミステリーで考えた僕が最後にファンタジーを書いたのかという理由は、それはこの創作が僕にとっての手品(考察)ではなく、魔法だからです。

・創作小説 とある推理研究部とうみねこのなく頃に(ブログ一番下のPDFファイル)
これは、高校の推理研究部の5人のメンバーが、うみねこの真相解明に挑む話なんですけど、何でこれを書いたのかと言いますと、僕は考察記事で考察の結論だけ書いてるのでKEIYAさんのファーストプレイメモのような物はないんですね。それで、何か書けないかなと思っていたんですが、うみねこは考察をした人と、しなかった人の差がかなり大きい作品です。もちろん考察を読む事で知識を共有できますけど、考察の楽しさが伝わるのかというと、それはまた別問題なんですよね。なので、僕は、自分が考察していたときの思考や、楽しさ、苦しさ、そういった部分を全てこの推理研究部のメンバーの物語として書いてみました。これを読んでもらえれば、考察記事本編の結果だけ伝わるようなものとは別の、考察そのものの楽しさが伝わるんじゃないかと思いました。この創作で描かれてるエピソードや思考や、考察の壁などの部分は実際僕が思っていた事そのままです。

・うみねこ考察の支えと仲間
考察するにあたって色んな方にお世話になりました。とてつもない考察を組み上げたKEIYAさんの考察をはじめ、 ツイッターで一緒に考察をした仲間、2ちゃんねるの超展開スレで一緒に考察を深めた住人のみんな、そしてEP1の頃から真面目に考察を積み上げてきた先人の方々。うみねこ考察は一人でできるものではありません。一人での考察は限界が必ずあります。勘違いが頻繁に発生します。多くの考察者の方の推理をひたすら読みました。僕の考察も誰かの役に立てばいいなぁと思います。僕は公式解答を特定するという目標設定をしてるために、自分の考察に曖昧さを許しません。明確に「これが公式解答だ」と断定をします。それはもちろん僕の仮説であり、僕が断言したからといって、それが正しいのかは判別不能です。そういう考察スタイルのため、考察の議論の中、もしかすると「自分の考察を否定された」と感じる方もいたかもしれません。うみねこは答えが明かされない以上、答え合わせはできないんです。だからせめて、自分が心から納得できる考察を組み上げたいと思いました。客観的に見て答えが判別不能ではあっても、僕自身は心から自分の考察を信じたいのです。それは他人の考察の否定が目的ではなく、自分自身の心の整理を最重視した結果なのです。答えが明かされないミステリーは、一体どうすれば決着がつくのか。僕なりの答えがそれです。

・竜騎士07先生への返答
うみねこはEP8で答えが明かされずに終わった事で、プレイヤーからの批判が増大しました。考察をやっていた僕にとって当時の空気感はとても辛いものだったのを思い出します。竜騎士先生は推理した方の名誉を守ると言っていました。インタビューなどを読んで、先生は読者を信じたからこそこういう終わらせ方をしたとも言っていました。作家としての評価を下げてまで竜騎士先生がああいう選択をした事の重みを僕はずっと考えていました。僕自身はただの一プレイヤーでしかありません。しかし、先生のこの決断の重みを読者も背負ってるのではないかと思いました。KEIYAさんは僕から見て、その重みに最終考察本という形で返信をした方だと思ってます。僕も竜騎士先生が読者を信じて背負ってくれた重みに、返答をするべきだろうと思いました。僕の考察はその重みを背負った先生への返信です。 

・当選
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ガンガンジョーカーで応募していた縁寿の色紙が当選しました!僕が一番好きなキャラというのは縁寿なんです。一番感情移入したキャラだからEP8のような考察が出来上がるんですね(笑)大切にします。ありがとうございました。

・古戸ヱリカのガチ推理
これは元々ツイッターを使った創作で、いわゆる「なりきり」をやっている訳ではありません。キッカケは漫画版のEP8で忘却の深遠から戻ってきたヱリカが戦人と論戦をやっている場面です。あそこを見て僕は「ヱリカは具体的にどういう思考をしていたんだろう」と思ったんですね。17人と18人の人間という2種類の赤字、あれは結構致命的なヒントなので、あそこを明かしてしまうと、ヱリカなら真相まで論理的に辿りついてしまうんじゃないか。そんな事を考えていると、ヱリカが推理している部分を具体的に創作にしてみたくなってですね、ツイッターでヱリカアカウントを作りやってみました。ブログの方はそれを見やすくまとめたものです。

・07thパーティ(2015年10月4日) 
色々と目的があった事もあって、はるばる東京まで行ってきました。まずはこれをご覧ください。
2015-10-05-211357

左がdaiさんのサイン、右が竜騎士先生のサインです。ゲットしました!!
サインは欲しくてしょうがなかったんですけど、サインもらいに行ったわけではありません。もちろん。 
ブログの一番下に貼ってある考察のPDFデータを本にして、先生に渡しに行きました。先生に直接会い、話をして、思いを伝えてきました。 長かった僕のうみねこ考察もこれで一区切りついた気がします。行ってよかったです。

EP1

EP1 Legend of the golden witch

事件の流れ

第一の晩に留弗夫、霧江、蔵臼、郷田、楼座、紗音の6人死亡。園芸倉庫にて魔方陣の落書き。

第二の晩に絵羽と秀吉がチェーンロックの密室内で死亡。源次と嘉音が絵羽達の部屋の異変に気付き、チェーンロック切断のために嘉音と熊沢の2人で行動する。なおチェーン切断時に発見時はなかった魔方陣が出現

続いて、ボイラー室での異臭騒ぎに嘉音と熊沢がボイラー室に行く。先行した嘉音が何者かに負傷を負わされる。南條の手当てのために使用人室に運ばれるが手当てのかいなく死亡

立てこもった金蔵の書斎で手紙が出現。源次、熊沢、南條、真里亞の中に犯人がいると疑われ夏妃にこの4人は部屋から追放される。のちに1階の客間で南條、源次、熊沢の死体が発見される。真里亞は犯人を目撃していた。ベアトリーチェがやったという。ベアトに命じられ壁に向かって歌を歌う

ベアトの肖像画の前に呼び出された夏妃は、戦人達発見時に額を打ち抜かれて死亡していた。銃声は1発で硝煙の臭いのする銃を自分で持っていた。

最後魔女を戦人達が目撃し、高笑いの中EP1終了

EP1のポイント

・魔女の手紙について
真里亞がベアトによって託されたという魔女の手紙の内容で非常におかしな部分がある事に気付いただろうか。特別条項の部分で、「利子の回収はこれから行いますが、誰かがこれを解いた場合、既に回収した分も含め全てお返しします」この部分だ。EP1で利子の回収とは右代宮家の人命まで含まれてるんじゃないかという話があった。この一文の全てお返ししますの部分だが、殺してしまった人間を碑文を解く事によって生き返らせるという意味になる。これはつまり、事件を狂言で行うという意味に受け取れる。EP1自体は狂言ではないが、ここの部分はEP7で語られるヤスの動機部分に非常に深く関係してるので覚えてて欲しい。

・真里亞の態度
事件の犯人が誰なのかという考察の時に、EP1は紗音が犯人という結論に基本的にはたどり着くと思うのだが、源次、南條、熊沢殺害時の真里亞の態度を考えてほしい。彼女はベアトが来たと言っているし、真里亞が意図的に嘘をつくような性格ではないと何度も言われている。なので、ここに紗音が来たと考えてしまうと、真里亞がなぜ紗音が来たと言わずにベアトが来たと言ったのか疑問が残る。それにTIPSでも紗音は園芸倉庫で死体で発見と書かれているので、人格として紗音は倉庫でヤスの中で殺されていて、実際に生き残っていたのはベアト人格だったのかもしれない

・お茶会での失言
EP1のお茶会の会話の中で譲治が「紗音の死に方は悲惨だったね」と言うと、紗音が「痛かった訳じゃありませんし」と言っている。

・サソリのお守り
夏妃が事件前日に朱志香にサソリのお守りを貰い、就寝前に内側のドアノブにかけている場面がある。ここは竜騎士07氏のインタビューによって解説がされている部分で、犯人は実際には夏妃の部屋に入ったのだが、このサソリのお守りを見て自身のルールに抵触してしまい殺せなくなってしまったと解説されている。ヤスの魔女人格に悪食島伝説の悪霊の設定を入れているため、ヤスは自分のルールを厳格に守るが故に殺せなくなってしまったのだろう。つまりここに「本来第一の晩で殺すはずの6名の内1名イレギュラーで殺せない人物が出てしまった」という事で、第一の晩の殺人で紗音が殺されたとしている部分に深く関連してくる。そして、このサソリのお守りの存在を知ってるのは砂浜にいた従兄弟組だけという部分にも注目だ。

では事件部分の考察に行こう

【第一の晩 園芸倉庫での6人殺し】

「第1のゲーム、第一の晩。園芸倉庫に、6人の死体。」
「幻は幻に。……土には帰れぬ骸が、幻に帰る。」

この最初の部分だが、紗音の死亡は戦人が目撃していない。目撃したのは秀吉で譲治にも死体を見せていない。なのでこの6人の死体で紗音の死体が実際にあったのかは明確ではない。なので実際には紗音の死体はなく、秀吉と絵羽が犯人の共犯で嘘をついていたという事になる。

【第二の晩 絵羽秀吉夫婦の殺害とチェーン密室】

この部分はEP4で出た赤字も一緒に併記しておこう。

「二人は他殺である!」
「密室構築後に片方を殺害の後に自殺したのではない!」
「また、殺人は執行者、犠牲者が共に同室して行われた!」
「執行者が室外から殺害する手段は存在しない!」

「第1のゲーム、第二の晩。寄り添いし二人の骸は鎖で守られし密室に。」
「幻は幻に。……幻の鎖は、幻しか閉じ込めない。」

まず最初に、源次と嘉音が絵羽達の部屋の異変に気付き、その後チェーンロック切断時に嘉音と熊沢の2人で魔方陣を目撃したという一連の流れは嘘である。共犯である絵羽達と真犯人が今後の打ち合わせとでも言って中に入れてもらったあと、二人を銃で殺害。チェーンを切断した後、マスターキーで施錠。その後魔方陣を書く。戦人達が来た時にはすでにチェーンが切断されていたのを思い出してほしい。「チェーンがかかっていた」「魔方陣が突然出現した」これらは源次嘉音熊沢が口裏をあわせた嘘である

【第五の晩 ボイラー室での嘉音死亡】

「全ての生存者にアリバイがある!」
「さらに死者も含めようぞ!!」
「つまり、島の如何なる人間にも死者にも、嘉音は殺せなかった!」
「嘉音は自殺ではない」
「嘉音は事故死ではない!」

「第1のゲーム、第五の晩。杭に胸を捧げし少年の最後。」
「幻は幻に。……幻想の魔女と杭は、幻想しか貫けない。」

これらの赤字を見て判断できるのは「嘉音は死んでない」という事だ。赤字が誰にも殺せず自殺も事故死もしてない事を保障している。残された可能性は南條が共犯で嘘の検視をして嘉音が生きてるのに死んだと嘘を言ったという事だ。

【第六・七・八の晩 客間での南條・源次・熊沢殺害】

「同室していた真里亞は殺していないぞ!」
「そしてもちろん三人は他殺だ!」
「身元不明死体について、その身元を全て保証する。即ち、替え玉トリックは存在しない!」
「源次、熊沢、南條は殺人者ではない」

「第1のゲーム、第六、第七、第八の晩。歌う少女の密室に横たわる3人の骸。」
「幻は幻に。……盲目なる少女が歌うは幻。密室幻想。」

最初の園芸倉庫で実際は死んでいない紗音、そして死んだふりで生き残っている嘉音、ヤスはこの時点で人目につかないように生き残っていて、客間にベアト人格で行って、共犯のこの3人のスキをついて銃で殺害した。真里亞がベアトリーチェが来たと言っている以上、紗音や嘉音でここに来たとは思えない。彼女は素直に真実を言ってしまうためだ。もしかすると、紗音と嘉音の人格自体をこの時点で抹消してしまってるのかもしれない。ベアトは普通にマスターキーを使って入ってきただけだが、真里亞はそれを目撃してなかったのだろう。真里亞が「どうやって入ってきたのベアト?」と聞いた時に「妾は魔法で入ったのだ!」とでも言ったに違いない。それが「盲目なる少女」であり、ベアトを盲信する真里亞の事を指している。

【第九の晩 玄関ホールでの夏妃殺害】

「夏妃は他殺である!」
「身元不明死体は一切なく、生存者も全員がアリバイがある!」
「夏妃の額に埋まりし銃弾は、夏妃の銃から放たれたものではない!」
「夏妃を射殺したのはトラップじゃなく、ちゃんと銃を構えて引き金を引いてしっかり射殺したのよ!」

生き残ったヤスによって夏妃は殺された。銃でお互い同時に発砲、夏妃は殺された訳だが、ここで論争の種になっている「身元不明死体は一切なく、生存者も全員がアリバイがある!」この赤字の考え方だ。夏妃殺害に関する一連の赤字は、EP4のベアトと戦人の論戦時に出てくる。この時、戦人の使う青き真実と、ベアトの反論である赤き真実のやりとりの流れで「生存者」と「死者」の言葉の定義が、本来の言葉の意味とは違う意味合いを含んで使われているため、誤解の元になっている。まず戦人は事件の犯人を最初の園芸倉庫の6人の中の誰かだと疑って次のような青を使う。

「犯人には、アリバイのない人間を想定する。それは死者だ! 最初の6人の死体の中には、顔面粉砕による身元不明死体が含まれる。これが実は偽装死体で、犠牲者のふりをして姿をくらました犯人Xが二人を殺したとの仮説は可能だ! そして犯人は密室殺人構築後、ベッドの下に隠れ、俺たち全員をやり過ごしたんだ!!」

このように、戦人は「死者を犯人」だと考えている。これを受けてベアトは嘉音殺害時に、

「全ての生存者にアリバイがある! さらに死者も含めようぞ!! つまり、島の如何なる人間にも死者にも、嘉音は殺せなかった!」

という赤字を使うのだ。つまり、戦人が犯人を死者だと想定して青字を使ったため、ベアトは死者という言葉に「トリックで生き残ってる犯人」という意味を含めて赤字を語っている。このため「生存者=表向き生き残ってる人物」「死者=表向きは死んだとされているが、何らかのトリックで生き残ってる犯人」というふうに、言葉の定義が本来の言葉の意味と変わってしまっている。この状態で夏妃の論争に入るため、一見、夏妃の部分の赤字だけを見ると「生存者」という言葉に、犯人も含まれてるように見えてしまうが、犯人はここの場合では「死者」に定義されている。

EP1の事件の内容は大筋このような内容だ。
犯人:ヤス
共犯者:絵羽、秀吉、南條、源次、熊沢

・なぜ夏妃は殺されたのか
碑文に見立てて事件が起こっているが、第8の晩の殺人で本来は事件が終わり、生き残った者は黄金郷に招くというのが例の碑文の内容だ。ではなぜ、生き残った夏妃は殺されたのか。夏妃は犯人からの手紙を見て客間にかんぬきをし一人で出かけている。このシーンで真里亞は夏妃の一連の動きをちゃんと見ていて、手紙を拾って一人で出て行ったと言っている。あの手紙というのは別に夏妃に宛てられた訳ではなく、本来は生き残った5人に向けて宛てられたものだと考えられる。という事はあの手紙の本来の趣旨として、生き残った5人に肖像画の前に来るように促す内容だったのではないかと推測される。手紙で呼び出したベアトが生存者に何をするつもりだったのかは不明だが、時間的に考えて24時をもう迎える頃で、結果的に全員死亡するのは間違いない。こういう儀式が終わった後に殺人が起こる場合、まずはTIPSの魔女の棋譜を確認してほしい。EP1の場合源次、熊沢、南條の3人の時点で第8の晩が終わっており、その後に第9の晩に魔女復活と書かれている。EP2で碑文が解かれれば事件は終わると語られているが、それと対極にあるのがこの「第9の晩」である。この段階に入ると魔女により皆殺しが確定し、誰も生き残る事が許されない。そもそもなぜこんなルールがあるのかというと、このうみねこ最大の謎である犯人の動機に関わって来る。碑文が解かれれば殺人は終わるという部分と第9の晩が来る前までに碑文を解かないと皆殺しにする。この2つは犯人が自身の目的のために設定してる絶対順守のルールであり、これを破ってしまうと事件を起こす意味自体がなくなってしまう。夏妃が殺されたのは、事件が第9の晩に達し、犯人の願う奇跡的なルーレットの目が出なかったせいであり、その場合生きる目的を失ってしまった犯人が黄金郷で思い人と結ばれるため、全員道連れに皆殺しをするのである。詳しい犯人の動機についてはEP7で詳細に語る。

・エピソード内での事件の構成要素
EP1をざっと見ると事件の要素が「共犯」「嘘」「密室」で構成されているのが分かる。これは非常に重要なので覚えていてほしい。

・エピローグで語られた事件のその後
このEP1はワインボトルに詰められたノート片で語られた物語と最後に明かされる。つまり、うみねこという作品内に存在する作品という事で作中作ですよ、という事だ。そして18人全員死亡と宣言されている部分にも注目してほしい。EP8までやれば分かるのだが、実際は絵羽と戦人が島から生還しており、18人全員死亡ではないのだ。実際に起こった事件の結果と、ワインボトルに詰められたノート片の物語の違いは、実際の島ではEP1のように最後まで何も解けず終わり、という結末とは違う展開があったのではないかと推測できる。

・エピローグの真里亞の一文
これを読んだあなた、どうか真相を暴いてください。それだけが私の望みです。このような真里亞の言葉が最後描かれるが実際は真里亞の名前で物語を描いたヤスの言葉だ。事件の謎を解いてほしいと願いながら事件を起こしている、という部分を覚えていてほしい。この部分がうみねこの最大の犯人の目的だと言える。

・エピローグの気になる一文
「これをあなたが読んだなら、その時私は死んでいるでしょう。死体があるか無いかの違いはあるでしょうが」この一文から読み取れる「死体のある死」と「死体の無い死」これはヤスの動機と計画に関係してると思われる。これは肉体的死と人格的な死を意味しており、ヤスが86年に起こす事件では「肉体的死亡」か「人格的死亡」のどちらかが必ず発生するのだとヤスは考えている。詳しくはEP7で語る。

・プルガトリオ
お茶会に入ると「プルガトリオ」という表記が出る。プルガトリオとは13世紀から14世紀のイタリアの詩人ダンテが書いた「神曲」という作品に出てくる煉獄編の事だ。地獄と天国の狭間にあるこの煉獄山は、「自分の犯した罪に後悔している者」が罪を贖うためにある。ダンテは煉獄山を登る過程で罪を浄化され、山頂で永遠の淑女ベアトリーチェに導かれ天国へ昇っていく。そのような場所が煉獄だ。なぜお茶会にこの煉獄編プルガトリオの表記が出てきたのかを覚えてて欲しい。

・真犯人について
考察を書くにあたって基本的に犯人の事を紗音だとか嘉音だとか個別の名前は挙げずに、基本的に「ヤス」となるべく書きたい。それは真犯人の正体を考える時に「人格」が非常に大事で、多くの人が犯人を紗音だと思い込んでいる誤解を避けるためで、EP1から順番にEP7まで読んでもらえれば分かる。この真犯人の名前をここで書くのは簡単なのだが、きちんとした説明をしてから明かさないと確実に誤解を受けるのであえてこうしたい。真犯人が誰なのかという明確な答えはEP7の考察の最後に明記してるが、大事なのは「何でそんな答えになるのか」という部分なので、便宜上そこに至るまでは、なるべく「ヤス」と表記したい。

EP2

EP2 Turn of the golden witch

事件の流れ

初日の夕食で霧江と楼座がベアトリーチェに会ったと証言。本格的な議論になりそうなので戦人達子供はゲストハウスに行くように言われ退出

第一の晩
礼拝堂で留弗夫、霧江、蔵臼、夏妃、絵羽、秀吉が腹を縦に引き裂かれ殺害される。お腹の中にお菓子が詰め込まれ、魔女の手紙が残されていた

第二の晩
両親の死を目撃して怒り狂った朱志香が貴賓室にいるとされるベアトリーチェの元に行く。郷田と嘉音が追う。ベアトを見つけられなかった朱志香は自室に戻る。嘉音も追随。戦人や楼座達が戻りが遅いので部屋に行くと朱志香は背中を杭で刺され死亡。嘉音の死体はなかった。室内から朱志香の部屋の鍵、朱志香のポケットから嘉音のマスターキーが見つかる。

第二の晩からは楼座によって一同の動きはコントロールされ、使用人を疑った楼座は源次と熊沢と紗音と郷田と南條を別の部屋に追い出す。楼座と戦人と譲治と真里亞で立てこもる事に

使用人室にて傷だらけの嘉音がやってきて、様子が徐々に豹変し、熊沢と南條を殺害。生き残った源次と紗音と郷田は楼座に報告し、全員で確認にいく。しかし熊沢と南條の死体はなく、部屋は施錠されたままの密室だった

楼座が使用人全員のマスターキーを没収。楼座、戦人、真里亞の三人組と源次、譲治、郷田、紗音の四人組に別れる

譲治たちはオカルトの手段で対抗するため、礼拝堂の夏妃の死体から夏妃の部屋の鍵を取り、夏妃の部屋の霊鏡を取りに行く。源次は殺された南條と熊沢の死体を発見、楼座に報告する。譲治達が戻ってこないので楼座達のいた客間に鍵をかけ、夏妃の部屋に行く。夏妃の部屋は密室で中で郷田、譲治、紗音は殺されていた

源次と別れ、楼座、戦人、真里亞は客間に戻る。部屋から魔女の手紙が出てきて、戦人と楼座はお互い疑心暗鬼になりお互い犯人呼ばわりを始める。戦人が親族を疑わないといけない状況に心が折れ、魔女を認め屈服宣言

食堂にいた戦人の元に源次が現れ、真相を話すと言う。金蔵の部屋でベアトと金蔵を主観で目撃。

楼座が島から逃げ出そうと真里亞と2人で海岸へ走っていく部分でEP2終了

EP2のポイント

・事件前の恋愛描写について
EP2は事件が起こる前までにかなりの文章量を割いて譲治と紗音の恋愛描写、嘉音と朱志香の恋愛描写が描かれる。この部分はうみねこの中では比喩的な表現でうみねこの本質部分を描いた非常に重要な部分で、紗音と嘉音は度々「自分たちは家具で人間ではない」「恋愛なんてできるわけがない」「解放の時は絶対に来るのに人間の真似をするなんて」といった発言をしている。これは要するに紗音と嘉音は1人の人間の中にいる別人格同士で、1人の人間の別の人格がそれぞれ別の人間を好きになってるという真相の比喩である。紗音も嘉音も1個体の人間ではなく、ヤスという人物の中にいる人格でしかない。つまり、恋愛をしようとしたところで人格が消されたらそれでおしまい、あるいは、別の人格が別の人間を好きになった場合、最終的に結ばれる事が難しい事を言っているのだ。解放の日というのは要するに、死んであの世の黄金郷で1人格ではなく、1人の人間として生まれ変わりたいという意味だ。

・真里亞が語ったベアトの目的
戦人と真里亞がベアトの事について話してる場面で真里亞は、碑文を解けばそれで事件は終わる、その約束をベアトは守ると言っている。メタ世界でもベアトが「妾は約束を守る」と言っており、ベアトの目的がどこにあるのか分からない描写がされる。ここで大事なのは真里亞が語っている魔法のリスクの話である。どんな魔法にも弱点やリスクがありそのリスクに打ち勝ってこそ奇跡的な確率のルーレットの目を出す事が出来る。事件において大事なのは「碑文が解かれる事」「事件の真相に至り魔女伝説が打ち破られ、人間犯人説で全て説明が付けられてしまう事」この2つがベアトのゲーム盤で起きる確率は正に奇跡に近いという事だ。ベアトの目的はこの2つのルーレットの目が奇跡的確率で出る事を祈って、難解な碑文殺人にそって事件を起こし、「リスク」を高めているという事だ。金蔵の魔法大系の思想と同じで、奇跡的なルーレットの目を出したいときは、あえて危険な行為をし、「リスク」をどんどん高め、それでもなお「奇跡」としてのルーレットの目を出そうとする思想だ。いわゆる数学的低確率を根本とする考え方である。なぜこの2つの奇跡的な目をベアトが望んでいるのか、それこそがうみねこ最大の謎であり、真犯人の事件の動機とも言える。詳しくはEP7にて語る。

・ベアトリーチェの儀式と魔法大系の思想
ベアトリーチェは5日の24時に爆弾で全員を皆殺しにするという「時間制限」を設定している。これはベアトリーチェの中ではどういう意味があるのかというと、前述した「リスクの概念」が非常に重要になる。EP2の金蔵のセリフを抜粋する。

「私は今日、ある儀式を執り行う。儀式というよりは、博打に近い。なぜなら、リスクを負わぬ魔法に奇跡は宿らぬからだ」

そしてEP2後半の真里亞が魔法のリスクについて説明してる部分を抜粋する。

「魔法には、リスクが必要なの。(中略)どんな大きな魔法にも、絶対に弱点やリスクがあるの。うぅん、ないといけないの」
「人間は死を賭すから奇跡が起こせる。不死の人間がいたとして、その人物に何の奇跡も起こせる道理は無い。……私達も、人生も、魔女も儀式も。私達はリスクを負わなければ、何も成し遂げられないの」

そしてEP5で戦人が真相に至った時の戦人のセリフを抜粋する。

ふざけるなよ、……そんなに難解な自慢の謎なら、制限時間なんて設けるんじゃねぇよ……。
「……いいや、……わかるぜ……。それほどのわずかな奇跡の中に、……お前は祈ったんだよな……。……お前も、……祖父さまと同じだったんだ」

これらの部分から分かるように、ベアトリーチェの根底にある魔法大系の思想には「リスク」という概念があり、魔法の奇跡を手に入れるためには、そのリスクに打ち勝って奇跡が出なければいけない。事件の5日の24時に爆弾が爆発するというリスク設定が正にそれであり、そこまでのリスクを設定するからこそ、ベアトのゲーム盤の儀式に魔法の奇跡が宿るのだ。この魔法大系の思想はEP7で語られるヤスという人物の動機と計画内容の根底にある思想でもある。 

・戦人の魔女への屈服描写
EP2の後半、楼座と言い争いになった戦人は、心が折れてしまい魔女に負けを認め、魔女の存在を認める完全敗北宣言を盤上でしている。この部分は非常に大事で、最後に金蔵の部屋で戦人がベアトと金蔵を目撃してる部分の解釈に非常に深く関わって来る。うみねこの世界で探偵は主観で嘘を言う事が許されていない。どんなに嘘の描写を延々描こうが、探偵の主観視点だけは真実の描写という保証があるのだ。しかし、戦人は主観で金蔵とベアトを目撃している。EP5でベアトの全ゲーム盤でゲーム開始前に既に金蔵は死亡している、という赤字が出ており、金蔵を目撃する事は不可能なのだ。つまり、最初に述べた戦人の完全敗北宣言によって、戦人は探偵ではなくなったので、その後の描写で金蔵とベアトを主観で目撃するという事が可能になったのだ。あの時戦人は探偵の資格を失っていた。これが幻想描写がなされた理由である。

・幻想描写
実質的にEP2から非常に顕著になっている幻想描写。魔法描写やベアトリーチェの登場など、本編中ミステリーとして物語を読めない描写が多々あるが、うみねこの大原則として「探偵が主観で確認してない描写は嘘が混じる」がある。真実を描写しないといけないのは探偵の主観だけなのだ。あらゆる不可解な魔法描写は全て嘘と言っていい。

・夏妃の部屋でのベアトリーチェの態度の豹変
紗音と郷田と譲治が殺される夏妃の部屋の密室。この部分の魔法世界描写でベアトリーチェの態度がおかしかったのを覚えてるだろうか。紗音が愛を語りながら、魔法障壁で攻撃を防いでる時、ベアトは明らかに紗音に激怒していた。なぜ紗音が語る愛にベアトはここまで激怒したのか。それは、ベアトの目的も愛だからである。うみねこの犯人動機に深く関わるのでEP7で詳細に語るが、既に愛を手にした紗音に対して、愛を手にしておらず、それ自体を目的にして事件を起こしているベアト。自分が手にしていない物を得意げに語る紗音にベアトが激怒した、そういう意味合いの場面だ。

・楼座と真里亞、霧江が目撃したベアトリーチェ
幻想描写としてベアトなんてそもそも目撃していないと解釈するのは簡単だが、盤上でベアトを目撃する事は可能なのか不可能なのかというと、可能である。そもそもベアトとはヤスの有する1人格であり、EP1~4のTIPSに人間キャラクターとして、一貫してベアトが載っている。それに大人だけではなく真里亞が目撃してる部分も考えると、ベアト人格で楼座と真里亞に会い、貴賓室に行く途中霧江に目撃されたと考える方が自然だ。そもそもEP3の連鎖密室でヤスがベアト人格で生き残るという事例があり、盤上にベアトは登場しないという考えは成立しないのだ。霧江を共犯目的で嘘の目撃証言をさせたとすると、第一の晩で早々に殺された事にも疑問が残る。ベアトが登場したとすると、楼座と真里亞に会った時に、真里亞のカボチャ型のお菓子をどうやって修復したのかという問題が出てくるが、嘉音人格の時に真里亞に貰ったお菓子を真里亞が目をつぶってる隙にすり替えたという考え方で筋が通る。

では事件部分のトリックの考察に行こう。ここでは関連する赤字も併記する。

【第一の晩 礼拝堂での密室殺人】

「生死は捨て置く。6人は確かに扉から入った」
「6人は確かに“この正面扉”から入った」
「礼拝堂の鍵は一本しか存在しない」
「礼拝堂の施錠は礼拝堂の鍵以外では開錠不可能」
「礼拝堂の扉は、施錠時には如何なる方法での出入りも拒む」
「楼座は今朝、確かに真里亞の手提げの中から封筒を取り出し、そこから正真正銘の礼拝堂の鍵を手に入れたぞ」
「妾が真里亞に預けた封筒の中身は、確かに礼拝堂の鍵だった」
「妾が真里亞に渡した封筒と、楼座が開封した封筒は同一のものであるぞ」 
「真里亞の鍵は、真里亞受領後から翌日の楼座開封の瞬間まで、誰の手にも渡っていない!!」
「金蔵の書斎以外にオートロックの扉は存在しない!」
「6人は発見時にすでに全員死亡していた!」
「全員が他殺だ!」
「6人は全員が純粋な犠牲者であり、相互の殺人には関与しない!」
「あの礼拝堂には誰も隠れていなかった。 よって、引き篭もり密室は通用しない!」
「礼拝堂での6人の殺害時、犯人は礼拝堂内にいたわ!」

「続けましょう。第2のゲーム、第一の晩。腹を割かれし6人は密室礼拝堂に。」
「幻は幻に。……黄金の真実が、幻の錠を閉ざす。」

礼拝堂には鍵はかかっていなかった。それが真相である。礼拝堂で楼座が扉を開けようとし、鍵が掛かっていて開かなかったという部分、この時に現場にいたのは楼座、紗音、嘉音、郷田、源次である。この時、戦人達いとこ組はまだゲストハウスで寝ており楼座が鍵を取りにゲストハウスにやってきた時に、戦人が気づいて起きている。戦人達が礼拝堂に行ったときには既に鍵は開いており本当に鍵がかかっていたのか分からない。楼座、紗音、嘉音、郷田、源次この5人が口裏を合わせ鍵がかかっていたと嘘を言っただけの話で、当然この5人は共犯である。

【第二の晩 朱志香と嘉音の密室殺人+嘉音の死体行方不明】

「隠し扉の類は一切ない」
「出入りはこの扉からだけだ」
「この部屋に隠し扉はない。扉と窓以外に出入りする方法はない」
「扉の施錠は、朱志香の鍵が一本と使用人達が一本ずつ持つマスターキーのみ」
「窓は内側から施錠されている」
「嘉音はこの部屋で殺された」
「施錠時には如何なる方法をもってしても出入りは出来ぬ」
「部屋の外から鍵を使わずに施錠するようなカラクリも通用せぬぞ」 
「朱志香の死体発見時、朱志香の部屋にいたのは、戦人、譲治、真里亞、楼座、源次、郷田、紗音、熊沢、南條のみだった」
死体の朱志香ももちろん含む」
「そなたが認識していた以外の人間は存在しない」
「誰も隠れていない」

「第2のゲーム、第二の晩。寄り添いし二人は、死体さえも寄り添えない。」
「幻は幻に。……役目を終えたる幻は、骸さえも残せない。」

この部分だが、同時刻金蔵の部屋で筆耕をしていたという紗音と源次は実際にはそんな事はしておらず屋敷の中で完全にフリーだった。実際は紗音(ヤス)が屋敷で朱志香に会い部屋で介抱してる隙に背中を銃で撃ち抜く。背中の傷口に杭を刺し込んだ後、嘉音のマスターキーを朱志香のポケットに入れ、嘉音人格を自分の中から抹消。自分のマスターキーで施錠後、戦人達に合流という流れだ。

【第七・八の晩 南條・熊沢の殺害と密室での死体消失事件】

それ(使用人室の鍵)なら使用人室の奥のキーボックスに収められているぞ。使用人室の鍵は数本あるが、その全てがキーボックスに収められている」
「出入りは唯一の扉と唯一の窓から以外は不可能」
「そしてそれらはいずれも施錠されていた」
「扉は鍵を使用せずに外から施錠する方法は存在しない」
「窓については外から如何なる方法でも施錠する方法は存在しない」
「扉も窓も、施錠時には如何なる出入りも許さない」
「扉の開錠は使用人室の鍵とマスターキー以外は不可能」
「この部屋には、お前たち以外は存在しない。 お前たちの定義とは、戦人、譲治、真里亞、楼座、源次、郷田、紗音のことを指す。」
「朱志香の部屋の件、そしてこの使用人室の件の両方について、そなたが認識していた以外の人間は存在しない」
「誰も隠れていない」
「彼らは異なる人物を嘉音と誤認することは絶対にない!」
「嘉音の名を名乗ることが出来るのは本人のみ!異なる人物が名乗ることは出来ない!」

「第2のゲーム、第七、第八の晩。赤き目の幻想に斬り殺されし二人。」
「土は土に。幻は幻に。……幻に生み出せる骸はなし。」

嘉音が現れたという部分自体が嘘で、実際は誰も現れていない。この時点で南條と熊沢は生きており、屋敷に潜伏していただけ。使用人室に血や争った跡を付け、南條と熊沢を違う部屋に隠した後部屋を施錠、楼座に報告という流れだ。この2人の殺害は第7、8の晩とされてるので、この後、紗音達が夏妃の部屋に行ってる間に源次がナイフで二人を殺害したものと思われる。この2人だけ刃物で殺されており、銃で殺しているヤスとは別の実行犯と考えるのが自然だろう。源次がナイフで蝶を刺す描写が唐突に出てきたりして実に怪しい。

【第四・五・六の晩 夏妃の部屋での譲治・紗音・郷田殺害+客間の密室、手紙事件】

「夏妃の部屋もまったく同じだぞ、いつもの通り」
「扉も窓も内側から施錠されていた」
「如何なるイカサマも細工もなく、そして隠された通行手段もなければ隠れる場所もないッ」
「夏妃自身の鍵は譲治のポケットに入って、室内に閉じ込められていた」
「あとは5本のマスターキーしかないが、それは全て"楼座"が持っているッ」
「ついでに言おう、その客間も同じよ」
「本来の客間の鍵は使用人室に封印されている」
「だからマスターキー以外では開錠不可能!部屋の密室定義もいつもに同じよ!」
「楼座がマスターキーを管理して以降、それら全ては一度たりとも彼女の手を離れていない! 夏妃の部屋を開錠した時に戦人に貸し出した際を除いてね。」

「第2のゲーム、第四、第五、第六の晩。夏妃の密室にて生き残りし者はなし。」
「土は土に。……棺桶が密室であることに、疑問を挟む者はいない。」

ここで大事なのは、紗音だけ杭が刺さっていない部分である。ここは竜騎士07氏へのインタビューでトリックが明かされており、紗音(ヤス)が郷田と譲治を殺したあとに杭で刺し、最後に自殺。銃の処分は、銃とオモリを糸でつなげ、オモリを夏妃の化粧台の裏に放り込む。この状態で自殺し、オモリに引っ張られ銃は化粧台の裏に引っ張られるという仕組みだ。最後に自殺した紗音(ヤス)には杭を刺す手段がなかった。紗音に譲治が殺せるのか?という疑問は竜騎士07氏により「紗音の格好をしていても、別人だったかもしれない」「譲治にこのときある事を聞いたはずで、譲治はそれに満足いく答えをだせなかった」と言われている。これは前者は紗音の格好をしたベアト人格で殺害した、後者は性的に障害を持った紗音が子供を産めない体である事を告白したのかもしれない。子沢山の未来を語る譲治は子供なんかいなくていいと答える事は出来たのだろうが、瞬時に即答はできなかったのだろう。この2通りの解釈の仕方があるようで、結論としては紗音に譲治は殺害可能という事である。客間については楼座が手紙を置いた。それだけ。

・黄金郷の描写
結果的にこのゲームではベアトが圧勝した。ベアトの目的は本編中では「戦人に魔女を認めさせること」と言っている。そもそも戦人に魔女を認めさせる事というのはどういう意味なのかというと、事件を魔女の犯行で説明し、人間犯人説を放棄するという事だ。という事は、最終的に碑文の第9の晩の「魔女は蘇り、誰も生き残れはしない」の部分、要するに、島に仕掛けられた爆薬によって全員皆殺しにする、という部分が実行されてしまう。魔女を認めると結果として皆殺しが確定するのだ。という事は黄金郷の思想である、死後の世界で思い人と結ばれるというのがベアトの目的だという事になる。でもそれは本当だろうか?これがEP2である事から分かるように、ベアトのゲーム盤はEP4まで続く。EP2の圧倒的勝利でもベアトの目的は達成されていないという事になる。EP2でベアトの目的が達成されたのなら以降のゲーム盤を開催する意味がないからだ。つまり、ベアトの本当の目的は戦人に魔女を認めさせる事ではないと言える。

・楼座と真里亞の島脱出描写
ラストのこの描写は楼座の「この島に生き残れる場所はない!」というセリフからも分かるように、爆薬で24時に島が爆発する事を知ってしまったという事だろう。戦人と言い争いをしてる時はまったく慌てた様子はないので、戦人同様23時30分以降に直前になって爆薬の事を知らされたという事だろう。あの時点で生き残ってるのは戦人、源次、真里亞、楼座だけなので、源次に真相を聞いたものと思われる。

今回のゲーム
犯人:ヤス
共犯:楼座、源次、郷田、熊沢、南條

・ゲームの構成要素
EP2もEP1同様事件が「嘘」「共犯」「密室」で構成されている。この時点でなぜ事件がこの3要素で構成されるんだろうかという疑問を持ってほしい。事件はベアトリーチェが主催のゲーム盤で相手は戦人である。つまり戦人に「嘘」「共犯」「密室」このメッセージを送っているという事になる。考えてみれば、今回のゲームでも密室が多く出てきたが多くの密室が嘘で構成されている。なぜベアトは執拗に嘘というメッセージを発するのか。それが上記で述べた黄金郷の描写の項目と深く関連する。ベアトの真の目的がここに見え隠れする。正直EP2までの情報でベアトの真の目的を当てるのは不可能だが、そこに至るためのパーツがこの部分という事は覚えておきたい。

・魔女幻想の目的
ベアトは魔女を認めさせるために、本編であらゆる手を使って戦人を追い詰めていく。しかし、実際に考えて欲しいのはこのゲーム盤は人間犯人説で説明できるように作られているという事だ。人間で説明可能だが、戦人がそこまで推理できてないだけの話なのだ。ではベアトはなぜこのような人間犯人説で説明可能な事件を使って戦人に魔女を認めさせようとするのか。EP2の本編中で描かれた戦人と楼座と使用人をめぐる疑い合いの描写にそのヒントがある。あのお互い疑心暗鬼になっている描写は人間に犯人がいるからこそ発生するものだ。もし犯人が魔女で魔法で殺人をやってる事になると、人間同士が疑い合う必要がなくなる。という事はベアトが魔女を認めさせようとしてる行為は、人間同士がお互いを疑わないようにしてるとも言える。なぜそんな事をベアトがする必要があるのか?それは実際の六軒島で起きた事件の真相が人間同士の殺し合いだったのではないか?という推測に結び付く。ベアトは戦人をその辛い現実から守るために魔女幻想を押しつけようとしてる可能性がある。

EP3

EP3 Banquet of the golden witch
 
事件の流れ

5日の朝、1階の客間で紗音の死体と紗音のマスターキー、2F客室の鍵が発見された。この部屋は密室。2F客室にいくと熊沢の死体。密室で内部より熊沢のマスターキーと3F控室の鍵が発見。3F控室で郷田の死体を発見。内部は密室で郷田のマスターキーと2F貴賓室の鍵を発見。2F貴賓室で源次の死体を発見。内部は密室で源次のマスターキーと地下ボイラー室の鍵を発見。地下ボイラー室で金蔵の焼死体を発見。密室で内部より礼拝堂の鍵を発見。礼拝堂にて嘉音の死体を発見。密室で内部より嘉音のマスターキーと1F客間の鍵を発見。6つの部屋の鍵が全て密室内部にあり、巨大な連鎖密室を作っていた

一同はゲストハウスに行く。碑文の謎の話題になり、一同の目を盗んで絵羽が碑文を解き黄金を発見。続いて楼座も遅れて黄金を発見した。以降絵羽はゲストハウスで寝込む事に。秀吉も付き添い。

薔薇庭園にて楼座と真里亞の死体が発見。楼座は柵に突き刺さっており、真里亞は絞殺された模様

食料を取りにいくために秀吉、霧江、留弗夫が屋敷に行く。絵羽と蔵臼と夏妃はゲストハウスで待機。屋敷で留弗夫と霧江と秀吉の死体が発見。杭のようなもので刺された?らしい

ゲストハウス2Fに子供達と南條、1Fに絵羽と蔵臼と夏妃がいる。絵羽は部屋で寝込んでた模様。蔵臼と夏妃の死体が東屋で発見。細い何かで絞殺。同時刻譲治がゲストハウスより失踪。屋敷に紗音を見に行った模様

屋敷に行った絵羽、朱志香、戦人、南條により、紗音の死体に寄り添うように死んでいる譲治を発見。言い争いになり絵羽の銃が暴発、朱志香が目に負傷。南條と朱志香が使用人室へ。

使用人室にて何者かに南條が殺される。朱志香は目が見えない状況で、何者かに客間に誘導されカーテンに隠れる

戦人が絵羽に射殺されEP3終わり

EP3のポイント

・ロノウェ初登場時の気になるセリフ
ロノウェが登場し、自己紹介をするときのセリフに実に気になる部分がある。「今は卑しい人間の分際で、悪魔も裸足で逃げだすような大魔女であられるベアトリーチェ様の家具頭として仕える身ですよ」というセリフだ。ベアトの事を「人間」だと言ってるのだ。しかし、その後に大魔女とも言っており、人間の身分で魔女であると解釈できる。つまりベアトとは完全にファンタジーな存在ではないと推測できる部分だ。彼女はあくまでも人間なのだ。

・冒頭の絵羽と秀吉の描写
EP3大筋が絵羽の犯行として描かれるが、絵羽とは本来どういう人物なのかという部分で気になる点が、この冒頭の絵羽の描写だ。六軒島に向かう船の中で絵羽と秀吉が会話しているが、本来絵羽は凄く優しい性格で本編中描かれてる高圧的な絵羽という人物像は秀吉に言わせれば、六軒島に戻ると出てくる別人格のようなイメージで、本来は凄く優しい女なんだと秀吉が語っている。この人物像の「本来は絵羽は優しい性格」という部分は、98年の縁寿の世界での「縁寿に敵意を持っている絵羽」という人物像をひも解く、鍵のひとつなのではないか?という解釈のためにあるのではないかと思う。つまり、描かれる絵羽のイメージがそのまま正解という訳ではないとすると、「六軒島の真相を決して縁寿に教えようとしない」というお茶会の描写には裏の意味があるのではないかとも読み取れるのだ。

・砂浜での子供達の会話
砂浜で久々に再会したイトコ組と紗音の様子が描かれるが、紗音が覚えている戦人の思い出で「白馬にまたがって迎えに来るぜ、シーユーアゲイン」と言ってる部分があり、戦人がそれを全く覚えていないという態度を取っている。紗音が覚えていて戦人が覚えていない思い出、この部分は実は六軒島の惨劇の元凶であり、犯人の動機部分に深く関わる部分だ。

・ベアトの回想
ベアトの回想部分でかつて六軒島の九羽鳥庵にいたベアトについてのエピソードがある。この部分でメタ世界のベアトは、この九羽鳥庵にいたベアトの事を「自分」と言っている。ベアトが語るには、金蔵の思いを拒み逃げようとしたが、ホムンクルスの赤子の中に魂を封じ込められ、そのまま育てられたと言うのだ。この部分はベアトの語るミスリードではあるが、メタ世界のベアトは、ヤスの別人格であるベアト人格そのもの、という訳ではなく、最初のイタリアから来たベアト、その娘のベアト、ヤスの人格であるベアト、六軒島の悪霊、これらをミックスして出来た存在とも考えられる。

・事件前夜金蔵の部屋での魔法バトル
この事件前夜の金蔵の部屋での魔法描写で、また紗音の語る愛に対してベアトが激怒する場面が出てくる。紗音が「その未練があなたの正体なの」というと、ベアトは「未練じゃねええええええええ!!!」と激怒するのだ。なぜベアトはここまで紗音の語る愛に激怒するのか。EP2でも同様な場面があり、その部分でも語ったが、今回は紗音の語る「その未練があなたの正体なの?」から分かるように、恋愛に対して何らかの思いがあるように見える。それは紗音人格とベアト人格の恋の差なのだ。紗音は譲治からプロポーズを受けている。しかし、ベアトは恋が成立していない。この差が爆発的な怒りを誘発したものと思われる。EP2で語った部分と同じだ。

・ワルギリアとの魔法バトル時のベアトの気になるセリフ
薔薇庭園でのワルギリアとの魔法バトル時にベアトが魔法について「こんなの気付くだけの力じゃねえか!」と言ってる部分がある。上記で語ったロノウェのセリフ「人間の分際で大魔女」という部分とも関わるが、ベアトの魔法というのは、純粋な意味でのファンタジー的な魔法ではなく、猫箱の中身が確認され確定する前までしか存在できない「主張」でしかないのではないだろうか?それがこの部分の「気づくだけの力」という意味ではないかと推測できる。例えば誰もいない所で空を飛んだと主張するとする。それは観測者がいないのでどのような主張も可能だ。自分が空を飛んだのだと気づく、悪く言えば思い込む事で成立する心の魔法だといえる。しかし、これは観測者に虚偽であると確認されると成立しない。あくまでも人間界のルールを順守した上でしか成立しない魔法なのだ。

では事件部分に行こう

【第一の晩 6連鎖密室】

「ベアトに復唱要求。今回のマスターキーの本数は?」
「各使用人が一本ずつで5本だ」
「ちなみに、6つの部屋の扉や窓はいずれも普通。オートロックのような、鍵を使用せず施錠できるような仕掛けは存在しない。」
「金蔵、源次、紗音、嘉音、郷田、熊沢の6人は死亡している!」
「6つの部屋には誰も隠れていない!」
「6人は即死であった!」
※ベアト「まぁ、完全な意味での死亡には数秒、もしくは数分をかけたかもしれん。だがいずれにせよ、自らの意思で何かの行動を取る事は完全に不可能であった。その意味において、即死と断言できる!」
「室内には犠牲者しかおらず、それ以外の人物は室内には存在しておりません。」
「6人はトラップで殺されてはいない」
「6人は誰も自殺していない!」
「マスターキー5本は全て、5人の使用人の懐よりそれぞれ発見された!個別の鍵は死体の傍らの封筒の中に!」
「つまり、連鎖密室にかかわる全ての鍵が、連鎖密室内に閉じ込められていたわけだ!!」
「ドアの隙間だの窓の隙間だの通気口だのッ、そんなところを使って密室外から鍵を戻すことなど出来ぬぞ!!」
「彼ら全員には致命傷となった銃創と思わしき傷痕があったぞ!」
「室外からの殺害は不可能だぞ!!」
「更に赤を重ねようぞ!金蔵を除く5人の殺人の際、殺人者は必ず同室していた!」
「自殺者がいないことは当時に赤で宣言済みだ!!」

「第3のゲーム、第一の晩。連鎖密室が繋ぎし、6人の骸。」
「幻は幻に。……輪になる密室、終わりと始まりが、重なる。」

まずこの連鎖密室での大事な部分として、「6人は誰も自殺していない!」この赤字が出てきた経緯を思い出してほしい。最初戦人は「6人は全員他殺である!」を復唱要求した。しかしベアトはこれを復唱拒否し、戦人が復唱拒否を理由にリザインを迫ったところ「6人は自殺していない!」という改ざんされた赤字が出てきたのだ。という事は、6人の死体の中で他殺でもなく、自殺でもない人物がいるという奇妙な推測が成り立つ。上記のように6名の名前を挙げて死亡宣言が赤字でされており名前を挙げられた人物が死んでるのは間違いない。という事は他殺か自殺以外(事故死や病死)で死んだか、もしくは密室内でこの6名以外に生き残った人物がいるという事になる。これはつまり、紗音と嘉音、この2人の真相に至らないと解けない密室なのだ。ヤスという真犯人には紗音と嘉音という人格がある。しかしもう一人いたとしたら?それがベアト人格である。つまり紗音と嘉音をベアト人格で抹消する事によって赤字を抜けられるのだ。そして、「彼ら全員には致命傷となった銃創と思わしき傷痕があったぞ!」この赤字はEP4で後から出てきた赤字で、EP3の時点では出ていない。つまり、最終的にヤスが銃で殺されれば体に銃創は残り、赤字に違反しない事になる。

流れとして2F客室、貴賓室、3F控室、地下ボイラー室それぞれ4か所で熊沢、源次、郷田、金蔵(死体を燃やす)を殺し(燃やし)、室内にそれぞれのマスターキーと個別の鍵を残し、紗音のマスターキーで施錠、礼拝堂の扉はあらかじめ開けた状態にしておき、紗音は嘉音のマスターキーを自分のいる1F客間に隠し、紗音用のマスターキーと2F客室の鍵を部屋内に残し死んだふりをする。翌朝、共犯の南條の嘘の検視によって死んだふりをした紗音は、一同が2F客室に向かった後、嘉音のマスターキーを回収して礼拝堂に向かう。礼拝堂を内側からロックし、嘉音に変装して嘉音のマスターキーと1F客室の鍵を残す。嘉音も南條の嘘の検視によって逃れ、一同が礼拝堂からゲストハウスに向かうと、ヤスは紗音と嘉音の人格をベアト人格で殺し、その後をベアト人格で生き残る事になる。

このEP3は最終的に絵羽が島から生還する。という事は六軒島の爆発から逃れたという事で、九羽鳥庵に逃れる方法や後半8ケタの文字を書いた人物の正体など、ヤスが生存してないと成立しない話なのだ。この最初の連鎖密室でヤスは死んでしまった、と誤解しないようにしよう。

【第二の晩 薔薇庭園での楼座・真里亞殺害】

「楼座と真里亞は死亡した」
「死因は南條の見立て通りだ」
※楼座は柵の槍状部分に延髄を貫かれて死亡。真里亞は素手による絞殺。
「楼座と真里亞の二人は他殺です」
「わしはずっと部屋におったで」
「事件の前後の時間帯は全てや」

「第3のゲーム、第二の晩。薔薇庭園にて親子は骸を重ねる。」
「土は土に。……語られし最期に、何の偽りもなし。」

絵羽が碑文を解いた後、楼座と黄金の発見について意見の食い違いが発生する場面が描かれる。お互い疑心暗鬼になってる様子が本編中からもよくわかり、絵羽は楼座の事を素直に信じてはいなかっただろう。秀吉を部屋に残し、絵羽は薔薇庭園に向かう。その後の描写からも分かるように、楼座は銃を全く発砲していない。仮に生き残ったヤスが近づいてきたとしたら、その不信感から発砲したに違いない。本編中でも語られた通り、顔見知りの犯行の可能性が高いのだ。殺害方法が銃ではない事から、恐らく最初は絵羽と楼座は言い争ってただけに違いない。しかし、何かの拍子に楼座が柵に突き刺さって死んでしまい、事態の発覚を恐れた絵羽は真里亞を絞殺し、部屋に戻って秀吉に訳を話したものと思われる。碑文が解かれ、すでに黄金が見つかってるのでヤスは殺人を中止し、犯行には一切関わっていないものと思われる。

【第四・五・六の晩 屋敷での留弗夫・霧江・秀吉殺害】

「霧江は食料はいらないと考えてた」
「ゲストハウスを出ないべきだと主張していた」
にもかかわらず彼女は自ら、食料を取りにゲストハウスを出ようと提案する」
「その心変わりの理由は、誰にも語られておらず、また記されてもいない」
「霧江は何も書き残してはいない」 
「霧江はね、死ぬ最後の瞬間まで “食料を取りに行かない=屋敷に行かない” という行動式を維持していたわ」

「第3のゲーム、第四、第五、第六の晩。屋敷にて倒れし3人の骸。」
「土は土に。……語られし最期に、何の偽りもなし。」

この屋敷に行く事になった理由は本編で語られた「霧江は秀吉がたばこを吸ってた事を知り、絵羽が部屋を抜け出してたのではないかと、秀吉に確認しようとした」という理由で間違いないだろう。玄関先で蔵臼と夏妃が帰りを待っているので、絵羽はおそらく、窓から抜け出し屋敷へ3人を追いかけたに違いない。絵羽は銃で留弗夫を殺害、続いて霧江を殺害するが、この部分TIPSで霧江の項目に「腹と言うのは、何とも致死性に欠ける。」秀吉の項目に「油断した。まだ生きていたなんて……。」とあるので、腹に銃弾を受けたが致命傷ではなかった霧江に撃ち返され秀吉が殺されてしまったと考えられる。

【第七・八の晩 蔵臼・夏妃殺害+譲治のゲストハウス失踪】

「譲治はゲストハウスの階段を降りてはおらぬ。」
「外部へ通ずる窓も扉も全て内側より施錠されていたぞ。しかもそれらの施錠は全て、外側からは不可能!」

「第3のゲーム、第七、第八の晩。夫婦二人は東屋にて骸を晒す。」
「土は土に。……明白なる犯人は、無常の刃を振るいたり。」

夏妃と蔵臼の殺人については南條の部分で赤字の死亡宣告が出された以外に特になく、戦人達が屋敷に向かう途中で死体を発見している。この2人の殺害は子供と南條が2F、絵羽と夏妃と蔵臼が1Fにいた時に絵羽がコーヒーを勧めてる描写があり、恐らくこの時に睡眠薬で2人は眠らされたのだろう。死因に細い何かで絞殺とあるので、銃を使えるような場所じゃなかったと思われる。ゲストハウス1Fで2人を絞殺したあと東屋に死体を放棄、再びゲストハウスを施錠したという流れだ。

譲治がこの時間帯前後ゲストハウスから失踪する。紗音の死体をもう一度見たかった譲治は、恐らく2Fから飛び降り屋敷に行ったに違いない。この時南條も一緒にいて、窓を内側から施錠したものと思われる。

【譲治の殺害と扉の8ケタの文字】

譲治の殺害について、いくつかの説明をしたい。EP2でも出たように第8の晩までに碑文が解かれると魔女は殺人をやめると言っており約束を守るとベアトも赤字で宣言している。しかし、この時の状況はすでに絵羽が主犯になり第8の晩まで終えてしまった状況なのだ。TIPSの魔女の棋譜を確認すると、

魔女 ベアトリーチェ
第九の晩に、復活。
今こそ、彼女は真の黄金の魔女として覚醒します。

右代宮 譲治
第九の晩に、死亡。
新しき魔女は、誰も生き残らせはしません。

このように書いてある。つまり、譲治が殺害されたのは第九の晩なのだ。「第九の晩に魔女は蘇り、誰も生き残れはしない」にあるように魔女が皆殺しをする段階に入っており、碑文が解かれれば事件は終わるという部分と皆殺しが両立してしまってる時期なのだ。事件における「碑文が解かれると事件が終わる」というのは、これはヤスの本当の目的と直結しているのだが、これは碑文が解かれた時に「譲治と紗音が両名とも生存」していないと意味が無い。EP3で絵羽が碑文を解いているが、それ以前の第一の晩に紗音は人格が殺されてしまっているため、その後に碑文が解かれてもヤスのルーレットの目としては全く意味がないのだ。ベアトが譲治を殺しているのはこのためであり、碑文が解かれはしたが、紗音が既に死んでいるためルーレットの目が成立しなかったのだ。そのため自身のルールで殺人が可能な「第九の晩」から殺人を再開したのだと推測される。連鎖密室の時の事を考えると、1F客間にいた紗音は礼拝堂に移動し、嘉音として死体を演じており、1Fの客間には紗音の死体が存在しない状況なのが推測される。この状況で譲治が屋敷に紗音の死体を見に抜け出した結果、紗音の死体が無く譲治が屋敷を探し回ったか、あるいはベアトリーチェと鉢合わせしたとも考えられる。第九の晩に達してしまったため、ベアトは屋敷に来た譲治を銃で殺害。碑文を解いた絵羽のためにせめてもの慰めとして八ケタのキャッシュ番号を扉に残したものと思われる。そして、同じように一同が屋敷に来る事を予測して、紗音として客間で死体を再度演じたものと思われる。EP4で明かされるが、キャッシュカードの現金は本来遺族に向けたせめてもの謝罪の気持ちとしてのお金なのだ。ちなみに扉に書いてあった八ケタの番号は戦人の誕生日とヤスが黄金を発見した日の組み合わせであり、ヤスにしか知り得ない情報である。

【第九の晩 南條殺害】

「朱志香負傷後。絵羽は常に戦人の監視下にあった。戦人は犯人でもなく共犯者でもない。よって、絵羽の完全なアリバイを証明できる」
「この島には19人以上の人間はいない」
「人間以外の生命は一切、このゲームに関係がない」
「金蔵は死亡している」
「蔵臼は死亡している」
「夏妃は死亡している」
「秀吉は死亡している」
「譲治は死亡している」
「留弗夫は死亡している」
「霧江は死亡している」
「楼座は死亡している」
「真里亞は死亡している」
「源次は死亡している」
「紗音は死亡している」
「嘉音は死亡している」
「郷田は死亡している」
「熊沢は死亡している」
「南條は死亡している」
「以上、15人は死亡」
「戦人は生存している」
「絵羽は生存している」
「朱志香は生存している」
「絵羽はあなたとずっと一緒にいたわ。だから犯行は不可能。もちろん戦人くんは犯人じゃないわ。アリバイ偽装なんてしないし、彼女が犯人の可能性も考慮していたから、その行動は用心深く見張ってた。彼女には、不審なことをできるあらゆる可能性が存在しなかった!つまり、犯行時の使用人室には、南條と朱志香しかいなかったのよ」
「右代宮朱志香は殺人を犯していない」
「南條殺しにかかわっていない」
「彼女の目は完全に塞がれている。その彼女に殺人を行うことは不可能よ」
「朱志香の目は完全に塞がれていて、彼女に殺人は不可能」
「絵羽と戦人も南條を殺していないし、かかわってもいない」
「朱志香の身体が起こした如何なる動作も、南條の殺人には関係・影響しない」
「この適用を戦人と絵羽にも広げるわ」
「南條を殺した犯人は、戦人でも絵羽でも朱志香でもない」
「朱志香と戦人と絵羽は、南條を殺した犯人ではない」
「南條は他殺よ」
「もちろん、トラップではなく、直接的な殺害方法よ」
「凶器を構え、それにて真正面の至近距離から殺した!犯人は、南條の目の前に堂々と現れ、そして互いに顔を見合せながら、殺害したのだ」
「人間以外の一切の要素は、このゲーム盤に関与しない」
「南條を殺したのは、確かに人間である」
「地に足のついた人間が、凶器をかざし、それにて殺した!眼前にて!」

既にこの部分を解くためのパーツを詳細に説明してしまったので、この部分の殺人者は生き残ってるベアト人格のヤスだと分かるだろう。なぜ南條はベアト人格に殺されたのかは、譲治と同様第九の晩での皆殺し要因でしかない。元々碑文が解かれる前までのヤスの共犯者でありその真相を隠すためとも言える。ここでベアト人格について考えたい。

・南條殺しの部分での実行犯ベアトという人物の考え方
南條殺しはベアト人格のヤスな訳だが、ベアトは盤上に登場し、なおかつ探偵に主観で目撃可能な人間である。EP4で戦人が主観でベアトを目撃しており、ベアトが盤上に登場するのは幻想描写の部分とそうではない部分が混在している。この南條殺しの部分では殺人の実行者であり、赤字の「人間以外の一切の要素は、このゲーム盤に関与しない」の赤字からも分かるように、人間なのだ。ではなぜ赤字の在島人数にカウントされないのだろうか?次の赤字を見てほしい。

「妾はこれまで、この島には19人以上の人間は存在しないと宣言してきた。それを、金蔵の分、一人減らす!!」
「この島には18人以上の人間は存在しない!!」
「以上とはつまり18人目を含めるぞ。つまり、18人目のXは存在しないッ!!これは全ゲームに共通することである!!!」

この赤字から分かるように全ゲーム(EP1~4)は17人しか人間がいない事になる。金蔵がマイナスされて17人になっている。という事は紗音と嘉音はそれぞれ1人としてカウントされてるという事だ。人格がカウントされ紗音と嘉音は肉体的には1人にも関わらず2人としてカウントされてるのに、人間として盤上で犯行を行ったベアト人格はなぜカウントされないのか?という疑問が残る。その解答が「人間は」という制限の部分なのである。ベアトは肉体的には人間だが、人格としてカウントする場合ベアトは「魔女人格」であって「人間人格」ではないのだ。つまり、人格を無視して肉体的にカウントする場合は在島人数は16人。人格をそれぞれ1人としてカウントする場合、魔女人格のベアトは「人間」ではないので紗音と嘉音の2カウントだけされ、赤字のカウントに含まれずに17人となるのである。

・論点のすり替えトリック
この魔女人格のベアトが登場するロジックは、PCとOSに例えると分かりやすいかもしれない。人間をPC、人格をOS、ベアト以外の人物をWindowsOS、ベアトをMacOSと仮定する。「人間以外の一切の要素は、このゲーム盤に関与しない」は言い換えるなら「PC以外の一切の要素は、このゲーム盤には関与しない」になる。そして在島人数の赤字は言い換えるなら、「この島には18人以上のWindowsOSは存在しない!!」となる。分かるだろうか。この両者の赤字は論点がすり替わっているのだ。ベアトはMacOSであるため、当然18人目として加わる事はできない。しかし、ゲーム盤に関与する際はもちろん本体となるPCをMacOSで動かす事によって関与するわけで、MacOSのみでゲーム盤に関与する訳ではない。EP6のヱリカの自己紹介の赤字でヱリカは自身を18人目の人間と言ってしまってるので、17人目の人間が存在する事は確定している。17人目としてカウント可能なのは人格を1人としてカウントした場合のみであり、EP4で出たこの「この島には18人以上の人間は存在しない!!」も当然人格によるカウントだ。この「論点のすり替え」に気付けないとベアト人格のロジックを解くのは難しいだろう。論点をすり替えずに、肉体でカウントした赤字を出してしまうと同一人物トリックが晒されてしまうため、このような人格によるカウントという「論点のすり替えトリック」によりベアトのカウントを上手く隠しているのだ。

・譲治犯人説について
南條殺しについては、主流の考察の流れとして上記で語った以外に「譲治犯人説」というものが存在する。この考察を見かける人は非常に多いと思うが、ここではこの譲治犯人説が不正解である理由の説明をしたい。この譲治犯人説とは、ゲストハウスを抜け出した後に、何か薬(睡眠薬や仮死薬)のようなものを使って、屋敷に来た戦人達の目を一時的に誤魔化し、南條殺害後に自殺するという考え方だ。仮死薬の部分や探偵が直接死体を見てる部分など、細かい部分の疑問点は確かにあるが、ここでの不正解の理由には一切関係が無い。ここで大事なのは、魔女のゲーム盤のルールの「魔女側は1つでも謎を守れば勝ちである」これが非常に重要なのだ。後半の展開から南條殺しを暴かれるとベアトは魔女ではいられなくなってしまうのが分かる。仮に譲治が犯人の場合、南條殺しの犯人の説明がついたとしても、連鎖密室の謎が残ったままになるのだ。つまり、魔女側に解かれていない謎が残ったままになるのだ。譲治犯人説は、魔女が謎を守り通しているにも関わらず、魔女の姿を失うという矛盾した展開になる。これが譲治犯人説が不正解の理由である。

【戦人殺害とその後】

南條殺害後、ヤスは残された朱志香を声で誘導し、客間のカーテンに隠れさせる。おそらくこのヤスと朱志香の行動は絵羽と戦人には気づかれていないだろう。南條の死体を発見した絵羽は、朱志香と南條がいなくなった事で、戦人を容易に殺せる立場になり、戦人を射殺。南條が殺されたのを知り、ベアトに気付いた絵羽はその後ベアトを射殺したものと思われる。朱志香は発見されず島の爆発で死亡。絵羽は恐らく紗音とベアトが同一人物だとは知らない。なので、屋敷に来た時に紗音と譲治の死体を見て、紗音が死んだふりをしたヤスだとは思わなかったはずだ。ベアトを犯人と思ったに違いない。この後、南條の死体を発見して屋敷内にベアトがいる事を知った絵羽は戦人殺害後、ベアトを殺害。なぜベアトが殺害されるのかというと、連鎖密室時の赤字に「彼ら全員には致命傷となった銃創と思わしき傷痕があったぞ!」というものがあり、これはEP4の時に出た赤字で、最終的にヤスの体に銃創がないとおかしいのだ。絵羽がベアトを殺害したというのはこのためである。絵羽は恐らく楼座の幼少期の話を元にして、島に18人以外の人物、ベアトという人物がいたと思っていたに違いない。このため紗音と嘉音とベアトが同一人物とは知らず、譲治の死体発見時に紗音の死体をスルーしたものと思われる。

・ベアトリーチェの北風と太陽作戦
EP3の後半一連の流れはベアトが戦人を騙すためのお芝居だと明かされるが、南條殺しの赤字の攻防で、ベアトは戦人のために魔女を否定する赤字を語っている。文はないが、恐らく上記までに語った「ヤスのベアト人格が犯人」という部分を語ったものと思われる。しかし、この部分こそうみねこの最大の謎であり、ヤスのベアト人格がベアトリーチェという魔女の正体という部分を戦人に明かしてしまうと戦人は自分で何の努力もせずにベアトのゲーム盤の真相に至ってしまう事になる。この部分で、戦人が自分で至るべき謎なのだ、という地の文が出るように、ベアトの目的はまさにこの部分である。ベアトの目的が戦人が自分の力で真相に至る事であると明かされる部分だ。

 ・EP3後半のベアトの本心
エヴァによって南條殺しに関する赤字が連発され、戦人は南條殺しのトリックを解く事が出来なかった。それを見てベアトは自ら魔女を否定する赤字を語っている。その部分に関して非常に重要な地の文が出ているので本編より抜粋する。

「もし戦人が約束を破り、それをこっそり盗み聞いたなら。……たちまちの内に戦人は、ベアトとのゲームの勝者となり得るだろう。……この島の全ての謎を理解し、全ての魔法とトリックと、密室と呪いと祟りと伝説と、…怒りと悲しみの物語全てを理解するだろう。しかし、……それを知るのは、戦人が自らの手で真相に至った時だけなのだ。そう。…ベアトリーチェは、……その真相に、戦人が自ら至ってくれることを、最初から願っている。それは、教えられて至るのではない。戦人が自らの力で、たどり着かなくてはならない真実。」

この地の文が語るようにEP3の南條殺しは出題編のEP1~4の核となる部分で、既に語った通り南條を殺したのはヤスのベアト人格である。出題編で真犯人を明確に特定できるのは、この南條の殺害部分なので、ここの謎を解くという事は、自動的に連鎖密室の謎も解かれる事になる。連鎖密室の謎を解く事はヤスという人物に複数人格があるという事を知ってしまう事になる。あらゆる謎やトリックの真相に至った時、ベアトの事件が「嘘」「密室」「共犯」で構成される事に気付き、犯人の正体がベアトである事を知り、その正体がヤスの中の一人の人格である事を知る。そして戦人が犯人の動機を推察した先に、戦人はEP4で語られる約束の事を思い出すだろう。ベアトはこのEP3で「ベアトのゲーム盤はミステリーとして解ける問題」だというヒントを出した。そして一番の核である南條の殺害の謎を解く事が、ベアトのゲーム盤全ての真相に直結してる事を教えた。ベアトは戦人が自ら真相に至ってくれる奇跡を願って、南條殺害に関する真相を赤で語ったのだ。

しかし。

ベアトのゲーム盤で自ら南條殺害の答えを語るというのは、ベアトが魔女の姿を保てなくなる事と同じだ。本来戦人が自ら真相に至った結果として、ベアトの正体が判明するべきであって、真相に至ってない戦人にベアトの正体を晒すというのは、ベアトにとって一番あってはならない事だったはずだ。しかし、ベアトは上記で語ったような理由で危険を承知で赤で真相を語った。しかし、ここで奇跡が起こる。本編より抜粋する次の部分を見てほしい。

「……これでもう妾は魔女ではない。…だが必ず妾は魔女になるぞ。そして、再び黄金の魔女と呼ばれるに至って、再び、そなたの対戦相手だと認められに帰って来るから」
「いや、お前は魔女だったぜ」
「……え…」
(中略)
「いいや、魔法だったぜ。……お前は確かに、黄金の魔女だった。…お前自らが否定しようとも。…俺が認めてやるよ。…“お前は確かに黄金の魔女だ”」
戦人がその言葉を口にした時、真黒だった世界にぽっと一粒。小麦の種のように小さな黄金の一粒が眩しく光った。それは……小さいけれど力強く黄金色に輝く。

南條殺害に関する真相を赤で語った事によって、ベアトは魔女の姿を失った。しかし、戦人がベアトの事を魔女だと認めた事によって、本来であるならば魔女の姿ではいられなかったはずなのに、ベアトは魔女の姿を取り戻す事ができたのだ。これは戦人がベアトの事を魔女だと認めたという「黄金の真実」なのだ。ベアトは戦人にEP3で多くのヒントを与えた。ベアトのゲーム盤はミステリーとして解釈できる事。真犯人をEP3の南條殺しで特定できる事。そして、事件の真相に至った結果、ベアトの気持ちに戦人が至ってくれる事を願った。結果的にベアトは黄金郷で戦人がサインをする前にネタばらしをして、作戦だったかのような振る舞いをしてみせる。しかし、ゲーム本編でベアトが非常に複雑な表情を浮かべていた部分からも、ベアトのこの本当の気持ちが推察できる。このEP3を経験したからこそ、ベアトはEP4で「戦人に約束を確認する」という大勝負をやろうという決心がついたのだろう。

・黄金郷の描写
前述の部分とも関連するが、ベアトは戦人に魔女を認めてもらえる所で、あきらかにわざとネタばらしをして、戦人が黄金郷を認めないようにしている。という事は前々から語られている「戦人に魔女の存在を認めさせる事」という目的を自分から放棄してるシーンと言える。やはりベアトの目的は魔女を認めさせる事ではないのである。

・EP3の犯人
主犯:ベアト人格のヤスと絵羽
共犯:ベアト人格のヤスの共犯は南條、絵羽の共犯は秀吉

・事件の構成要素
EP1と2でも度々語ったこの問題。EP3の事件も「密室」「共犯」「嘘」で構成されている。連鎖密室の構成要素は南條の検視の嘘が極めて重要な役割を果たしており、これで3連続でこういう事件が語られた事の意味は既に何度も説明したとおりだ。ベアトの対戦相手である戦人に対するメッセージであり、今回事件前日に描写された戦人が忘れていた紗音との思い出「白馬にまたがって迎えに来るぜ、シーユーアゲイン」の部分と密接な関係がある。

・共犯
事件の構成要素の「共犯」以外の2つはもう意味がある程度読めてきたと思うが、共犯はどうだろうか。そもそもなぜ毎回毎回事件の犯人は簡単に共犯者を作ってしまうのか。しかもエピソードごとに共犯者は違う。この部分を考える時に「もしかして、犯人はすでに碑文を解いて黄金を手にしており、黄金によって買収した共犯を作ってるのではないか?」という推測が持てると思う。これによって犯人が資金に困っている人物の中にはいないという推理が出来るはずだ。

・EP3の事件内容
EP3はEP1と2とは大きく性質が違い、碑文が事件中に解かれてしまう。絵羽が碑文を解き黄金を手にする。今までの一族の金策の話し合いのイメージからすると、黄金が発見されると全て解決するような印象を受けるが、実際のところ絵羽は換金の手間や蔵臼の金に対する態度など、色々と問題点を感じているようで、黄金の発見そのものがハッピーエンドには繋がらないという内容が語られる。事実その後絵羽は黄金によって冷静な判断ができなくなり、殺人に手を染めてしまう。碑文が解かれれば事件は終わるという手紙の内容に反し碑文が解かれても、解いた本人によって殺人が起きるというシナリオで、その内容のまま絵羽が島から生還してしまう。なぜこのような特殊なシナリオが語られたのか?事実この話は今までの事件の実行犯であるヤスではなく、実行犯が中盤から絵羽に切り替わっており、魔女の思い通りには事が進んでいない。本来連鎖密室の事件の後、絵羽が碑文を解いたのならば、絵羽に黄金を継承し、事件は止まり生き残った人物は全員生還、というのが本来の流れなのだ。碑文を解いたのにも関わらず殺人が続くというこのシナリオは、実際の六軒島で起こった事件の真相の比喩的な意味合いがあるのではないかと思う。

・ラムダデルタの激怒
お茶会のメタ世界でラムダはベアトに「あんた勝つ気あるの?」と凄んでいる場面がある。ベルンを撹乱するためのフェイントなどは認めるけども、負けを自ら求めるような行為は絶対に許さないというラムダのセリフ。あれは恐らくEP3のゲーム盤で最後黄金郷で戦人にサインを貰えたにも関わらず、あえてぶち壊しにしたベアトの行為がラムダに不信感を与えたという事だろう。あの場面を見てラムダは「ベアトの本当の目的は、戦人に魔女を認めさせる事ではないのではないか?」と感じたはずだ。あえて勝ちを得ないベアトの態度は、もしかすると負けを選ぶかもしれない可能性を感じさせる。ベアトの負けとは人間犯人説で全て説明されてしまう事で、それがベアトの目的だった場合、ラムダの思惑と正反対の結果になってしまう事になる。ラムダが激怒した理由は恐らくそれだろう。

・EP3で戦人が射殺された事
実は全てのエピソードで戦人がここまで明確に殺される場面は非常に珍しい。EP1では爆弾によって死亡ではあるのだが、本編中では行方不明扱いでその部分は描かれていない。EP2は金蔵の部屋に招かれ黄金郷に行っている。EP4ではEP1同様爆弾により死亡だ。EP3のこの戦人の死亡の描写は、うみねこの世界構造を考える時の1つのポイントになってるのではないかと思われる。既に判明してるがEP1はヤスが書いたメッセージボトルだ。ではEP2~8はどうなのかと言うと、EP8の最後に八城十八が出てきて戦人の記憶を持ったまま実際は生きていた事が明かされるが、この八城十八が記憶を取り戻しながら幾子と一緒に書いてきた物語なのではないか?という説がある。この八城十八の話で、彼は一度戦人の記憶に耐えられなくなり自殺しかけたと語っている。もしかするとこのEP3はこの時に書いた作品なのではないか?と思われるのだ。絵羽によって戦人が殺される描写が描かれたのは、十八が断片的に実際の六軒島で起こった事件の真相を思い出し、それにショックを受けて自殺を図ったのではないか?と思えるのだ。つまり実際の六軒島の出来事は戦人が自殺を図るような内容だった可能性があるのだ。

・絵羽とヤスの共犯関係
絵羽が最終的に爆弾の爆発から逃れてるため、事件中どこかの時点でヤスと共犯関係になったのは間違いない。共犯関係でありつつも、ヤスには自身の目的もあり、絵羽と完全に思惑が一致してる訳ではない。譲治の殺害などまさにそうだろう。ただ、EP3のどの時点で共犯関係になったのかや、碑文が解かれた事で事件中止というヤスのルールを「碑文を解いた絵羽が殺人を続行したため、事件中止という選択が消えた」とも判断できる。この辺の解釈の違いはどっちが正解なのか判断が難しい。ただ事件の流れそのものは語った通りだ。

EP4

EP4 Alliance of the golden witch

事件の流れ

子供がゲストハウスへ退避させられた後、親たちと使用人全員が食堂に集められ、金蔵によって儀式が開始。夏妃、留弗夫、楼座、絵羽、秀吉、源次が死亡。熊沢と郷田は隙をついて食堂から逃亡。霧江、南條、蔵臼、紗音、嘉音は落とし穴へ落とされ、九羽鳥庵の地下牢へ

ゲストハウスに郷田と熊沢が退避してきて、食堂での出来事を報告。九羽鳥庵で囚われた蔵臼から電話がある。さらに後からもう一度電話があり、右代宮当主のテストをするので関係のない郷田と熊沢は園芸倉庫の中に閉じ込めるように指示される。戦人達は倉庫の中の郷田達に園芸倉庫の鍵を渡し、身を守るように言う。

霧江からゲストハウスへ電話があり、順番にテストを受け、呼ばれるまでは勝手にゲストハウスを出ないようになどの指示がある。朱志香は自室に行くように霧江から指示。後ほど紗音から譲治に電話があり、テストを受けるようにとの電話。

朱志香は自室、譲治は東屋で死亡。その後、九羽鳥庵より脱出してきた紗音、嘉音、南條、蔵臼が死亡

ゲストハウスに朱志香より電話が鳴る。「自分はもう死んでる。譲治もダメだった。相手は魔法を使う」等。その後霧江からも電話があり、「今襲われてる最中、ドアノブから金色の糸が襲ってくる」等の事を報告。直後殺されたような音が電話から聞こえる。

戦人が屋敷を片っ端から探そうと、ゲストハウスを出て行こうとしたところ、真里亞にベアトから電話が掛かって来る。戦人も電話でその声を聞く。真里亞はテストの場所に行くと言い、ゲストハウスを出ていく。戦人にもテストのため屋敷前に来いと告げられる。

協力して助けてもらおうと園芸倉庫の郷田と熊沢の元に行く。小窓から声をかけるが反応がない。ロープで首を吊ってるのが見える。途中東屋で譲治の死体を発見。戦人はテストの場所へ。

見た事もない女性を戦人は見る。初対面。テストの結果、ベアトは興味を失ったような態度になり、「真里亞は礼拝堂」と告げ屋敷に入る。

戦人は礼拝堂に行くが、鍵が掛かっていて入れなかった。礼拝堂前にマスターキーが落ちていて、それを使い屋敷に入る。屋敷各所から死体が次々発見。食堂で真里亞の死体、ボイラー室で金蔵の死体を発見。他の死体も各所で発見

メタ世界の攻防のあと、最後の謎の出題と共に駒の戦人も死亡しEP4終了


このエピソードは実に様々な要素が凝縮されており、事件部分、98年の縁寿の世界部分、メタ世界の攻防部分に分かれているため先に事件部分の考察から。このエピソードは実に情報が少ない。今までのエピソードは途中でメタ世界の攻防が入り、事件の経緯を詳細に絞り込む事が可能だったが、この事件はかなり広範囲に解釈可能なのだ。ただ狂言殺人の後に本当に殺されてしまう、という真相なのは間違いなく、共犯者が誰であったのかという部分や、どのタイミングで殺されたのか、等の点は解釈の仕方が実に広い。

・共犯
まず屋敷の食堂での話を信じるならば、楼座の「真里亞が手紙はお父様にもらったというのよ」というセリフがあるので、ここから既に死亡している金蔵の名を語って手紙を出した人物がいる事が分かる。そもそもあの手紙を出すのはヤスのベアト人格しかいないのでベアトが真里亞に「金蔵から貰ったと言いなさい」と言ったか、もしくは「金蔵から真里亞にだ」とでも言ったに違いない。主犯はヤスのベアト人格なのは間違いないが、事件の流れから譲治と朱志香の部分など同時刻に別の場所で殺されてる可能性の強い部分があり共犯が必要なのだが、その絞り込みが難しい。TIPSの死亡原因をみると、2種類の死体がある事が分かる。つまりショットガンのような強力な物で殺されてる死体と、拳銃のようなもので殺されてる死体だ。紗音の死亡原因が強力なショットガンのような物であるため、ベアト人格のヤスの凶器はショットガンのようなものだと考えられる。そして、拳銃のようなもので殺されてる死体は譲治と霧江だ。恐らく熊沢と郷田も「額に銃で撃たれたあとがある」とあり顔を吹っ飛ばされてはいないので、拳銃だろう。ショットガンのようなものを使ってるのがヤス、拳銃のようなものを使ってるのが共犯者だと考えると、絵羽と秀吉は共犯として譲治を殺せるとは思えないので除外。倉庫内で死んだ郷田と熊沢も狂言殺人の一環として首つりを演じてた所、額を撃たれた可能性があるので除外。ゲストハウスで戦人と一緒にいた子供達も除外だ。食堂での殺害時に九羽鳥庵に隔離されたとする5人は実際には屋敷内の電話のある部屋に行ったに違いない。この時点では5人は狂言殺人の一環として役割を演じてるので本当に殺人があったとは知らないはずだ。つまり、共犯は最初に殺された食堂の中にいる可能性が強い。絵羽と秀吉を除外すると残りは留弗夫、楼座、源次、夏妃だが、テストと称し子供を呼び出して殺すという役割を親が演じた場合、推測として自分の子供も同様に殺されるという推測に至るのは当たり前であり、結果的に裏切られる可能性さえ出てくる。つまり共犯は源次の可能性が一番強いだろう。

・狂言殺人
ゲストハウスに掛かって来る電話は一様に魔法の存在を強調する。郷田も熊沢も同様だ。つまり一同が共通認識を持っている事は間違いなく、打ち合わせとして魔法殺人があったという筋書きで狂言殺人部分をやったに違いない。前提として一同は金蔵が主犯でやっているという認識を持っており、赤字の「親族会議に居合わせた全員が、金蔵の存在を認めた!」という部分とも重なる。一同が存在しない金蔵を存在するという共通の嘘で狂言殺人をやろうとしているという事であり、一同は金蔵が存在する事にし、孫に当主のテストをするという名目で狂言殺人をする事になったという筋書きだろう。その狂言殺人の中での当主テストによって、本当に当主にふさわしい孫を決める事ができる、という筋書だと思われる。紗音と源次が金蔵がこういうテストをすると言っているとでも告げたに違いない。

・狂言殺人で起こる錯覚
狂言殺人がベースになっているエピソードでは一つ注意すべき点があり、本来EP1~3のようなケースでは「探偵サイド」と「真犯人サイド」という2グループの事だけ考えればよかったのだが、EP4では新たに「純粋な狂言だと思って参加してるグループ」という3つ目の勢力が加わる。事件中に譲治や朱志香などの子供が殺されるケースで「なぜ蔵臼のような親世代は子供が殺されるのを容認してしまってるのか」という部分は、「あくまでも狂言だと思っており、殺人が実際に起こるとは思っていないから」という理由なのだ。この部分は非常に重要で、本編は探偵サイドの視点から話が語られるため、「真犯人グループ」と「純粋な狂言だと思って参加してるグループ」が同一の目的を持った一つのグループかのように錯覚が起こってしまい、非常に危険だ。狂言殺人が真犯人サイドにとって非常にリスクが高いのは、狂言だと思ってるグループの裏で実際に殺人を犯してしまうため、事件中殺人が発覚してしまうと、この第3勢力のグループが「予定と違うじゃないか!!」と騒ぎだす危険性があるのだ。これは探偵サイドから見た場合、事件の真相が丸分かりで、真犯人サイドからするとあまりに致命的なのだ。EP4ではこの問題を回避するため、4日の22時~24時のたった2時間の間に全部終わらせてしまっている。

【第一の晩 食堂での6人殺し】

「第4のゲーム、第一の晩。食堂にて吹き荒れる虐殺の嵐。」
「幻は幻に。……黄金の真実が紡ぎ出す物語は、幻に帰る。」

霧江達5人の九羽鳥庵にいたとされるメンバーはあらかじめ狂言殺人のために屋敷の電話のある部屋に移動させられたものと思われる。熊沢と郷田は狂言殺人の役回り通り、ゲストハウスへ金蔵の殺人の報告へ行った。その後ベアト人格のヤスと源次で留弗夫、絵羽、秀吉、楼座、夏妃を殺害。

【園芸倉庫へ隔離された熊沢と郷田】

戦人達によって倉庫に隔離されたあと、2人は狂言殺人のシナリオにそって長めのロープを使い、首つり死体を演じた。小窓から見たときに首つり死体になるようにするだけであり、実際には生きていた。

【第二の晩 譲治・朱志香の殺害と園芸倉庫の熊沢、郷田の殺害】

「第4のゲーム、第二の晩。二人の若者は試練に挑み、共に果てる。」
「幻は幻に。……黄金の真実が紡ぎ出す物語は、幻に帰る。」

ゲストハウスにかかってきた蔵臼からの電話と、テストを受けさせるためにかかってきた霧江の電話。この2つは狂言殺人にそって役回りを演じてるだけで、実際に食堂で殺人があったとは知らないだろう。この事件は22時から~24時までの実に短時間に大量の殺人をやっており、狂言ではなく本当に殺しているとバレる前に全部終わらせようとしてるのが分かる。

源次は東屋の譲治殺害の前に園芸倉庫に立ち寄り、ロープで首つりを演じている熊沢と郷田を小窓から銃で射殺。紗音(ヤス)は朱志香の部屋へ行き、朱志香に紗音(ヤス)が狂言殺人である計画を話し、ゲストハウスの戦人に例の電話をさせ「金蔵が主犯となって殺人が起こっていて、自分も魔法で殺されそうだ。譲治も駄目だろう」と言ったあと安心してる朱志香に向かって発砲。殺害したものと思われる。そして、源次が東屋で譲治を殺害する。

※園芸倉庫の郷田と熊沢
戦人が最終的に現場検証をした際、郷田と熊沢は「余裕のあるロープで首を吊った状態で、頭を撃ち抜かれている」という不自然な状態だった。ここは「小窓から銃で撃ち殺す」とは別解があり、「そもそも郷田のポケットに入っていた鍵は偽物で、真犯人が本当の鍵を持っていた」という鍵のすり替えトリックが存在する。これは要は真犯人は園芸倉庫の中に入ったのか、入らなかったのかだが、中に入ったと仮定した場合、狂言殺人という真相に直結しているロープを処分しなかった事に疑問が残る。これは魔法殺人を否定する致命的物証であり、実際この郷田と熊沢の死体を見て狂言だったと気付いたプレイヤーも多いはずだ。真犯人は園芸倉庫には入れなかったので、ロープを処分できなかったと考えるのが妥当だろう。そもそも園芸倉庫の鍵は戦人達の判断で郷田に渡したのであって、指示されたものではないため、戦人達が園芸倉庫の鍵をゲストハウスに持ち帰ってしまった場合、犯人はどうするのかという問題が発生する。郷田が鍵を確実に持ってるとは限らない事を考慮すると鍵のすり替えという解法は整合性がない。

【第四・五・六・七・八の晩 南條、蔵臼、紗音、嘉音、霧江の殺害】

「第4のゲーム、第四、第五、第六、第七、第八の晩。逃亡者は誰も生き残れはしない。」
「土は土に。幻は幻に。……虚構に彩られし、物言わぬ骸。」

霧江は恐らくゲストハウスへ電話する役をしていたと思われる。源次と霧江が同室してたに違いない。紗音(ヤス)は南條と蔵臼を屋敷の裏手に移動させ2人をそこで殺害。源次は霧江が狂言殺人のシナリオに沿って電話してる時に殺害した。戦人が霧江との電話時に聞いた凄い音というのはこれに違いない。

※嘉音の殺害について
嘉音は人格を消されて死亡扱いになり、死体が出てこなかったという事なのだが、EP4で珍しく赤字が出ている部分で

「嘉音は死亡している。霧江たち5人の中で、一番最初に死亡した。つまりは、9人目の犠牲者と言うわけだ。」

このように9番目と赤字で死亡宣言が出ている。最初の食堂で源次を共犯として5人殺しており、嘉音が9番目となるにはあと3人殺し、その次に9番目として嘉音を殺さなければいけない。状況として6人目~8人目の犠牲者は朱志香、譲治、郷田、熊沢の4人なので、この4人を殺す順番の調整で成立する。例えば源次が郷田、熊沢、譲治を殺し、紗音(ヤス)が朱志香を殺す前に嘉音を殺したパターン、紗音(ヤス)が朱志香を殺し、源次が熊沢、郷田を殺した後に嘉音を殺し、最後に譲治を殺すパターン、この辺りの絞りこみはできない。

【真里亞の殺害】

ここまで殺人が終わった段階で恐らく、ベアト人格のヤスと源次は一度落ち合って、状況の報告をしたに違いない。ヤスは用済みになった源次を食堂で殺害し、ゲストハウスに電話。真里亞と戦人を呼び出す。真里亞を毒殺したあと死体を戦人発見時の時のように丁重に扱い、バルコニーに向かう。

【戦人のテストのその後】

その後ヤスは屋敷裏手の井戸のところまで行き、銃と重りを紐でつなげ、自殺をする。重りが井戸に落ち、銃はそのまま井戸の中に落下する。六軒島で1人になってしまった戦人は2日目の24時に爆弾によって死亡する。

EP4のポイント

・事件中に戦人が見たベアトリーチェ
戦人がテストを受ける番になり、ゲストハウスにかかってきた電話、そして屋敷のバルコニーにいたベアトリーチェ。この人物は戦人が主観で確認しており、別の人物と見間違えたという解釈は出来ない。この部分は正にベアトのゲーム盤での真相部分であり、魔法による幻想描写ではなく、戦人が確認した真実だ。ヤスの中には紗音、嘉音の他にベアトという人格が存在しており、EP3の南條殺害の実行犯でもあるように、ゲーム盤に登場可能な1人間なのだ。TIPSにも一貫して人間カテゴリーにベアトの名前がある。なぜ赤字の在島者の中に入っていないのかについてはEP3で詳細に説明したとおり、ベアトは人格としてカウントされた場合は魔女人格だからである。

・戦人のテスト
当主を選ぶために作られたというテストだが、その内容である「以下の2つを得るために1つを捨てよ。1.自分の命、2.(愛する者の)命、3.それ以外の全員の命」これは当主を選ぶためのテストではなく、戦人が2番目の「愛する者」の名前に誰の名前を入れるのか?というのが最大の目的だ。何を選ぶのかは全く関係がない。ベアトの目的は戦人に6年前の約束を思い出してもらう事であり、戦人が誰を愛しているのかそれが知りたかったのだろう。

・EP4のゲーム盤の目的
バルコニーでベアトと戦人が会うシーンは非常に印象的だ。今までメタ世界でのベアトの態度や目的についてEP1~3の項目で語ってきたが、EP4になってベアトは戦人が真相に到達したのかどうか確認をしてもいい時期だと判断したに違いない。このバルコニーのシーンこそがベアトが今までやってきた事の最大の目的なのだ。もちろん戦人が事件の真相に至り、ベアトの正体がヤスである事を見抜き、「密室」「共犯」「嘘」で事件が構成される理由に気付き、戦人が「約束」を思い出してくれる事だ。ベアトはその確認の時期だと判断したからこそ、EP4のような内容を作ったものと思われる。

・約束を忘れられた事で目的を失ったベアトリーチェ
しかし、戦人は完全に約束を忘れ去っていた。ヤスの動機についてはEP7で詳細に語るが、かいつまんで言えば、ヤスの動機は事件の中で「紗音人格と譲治の恋」「ベアト人格と戦人の恋」この2つの人格の恋の内どちらかが成立する奇跡を願っており、「ベアト人格と戦人の恋」については、戦人が事件の真相に至り、犯人の正体に至り、その結果約束を思い出し、戦人とベアトの恋を成立させたいという願いがある。ベアトが戦人のテストの後、急激にやる気を失っていったのは、戦人が約束を忘れてしまっていて、賭けに負け、奇跡的ルーレットの目が出なかった事の絶望のためだ。

・殺されるためだけに戦っているというベアトのセリフ
縁寿によって連れ戻された戦人とベアトは、ベアトの目的が既になくなってしまっているにも関わらず戦いを継続させられる。ベアトのセリフである「戦人に殺されるためだけに戦っている」「負けの決まった戦い」「負けるためだけに戦わないといけない」これらの意味は、本来であるならば戦人が勝つという事は「人間犯人説」で事件の説明が付けられ、全ての真相に至るという事で、その結果として戦人が約束を思い出す可能性に賭けたものだ。しかし既に戦人は約束を忘れてしまっている事が確定しており、さらに、この時の戦人はベアトの出題を真剣にミステリーだと信じて向き合っている訳ではなく、一族や家族を犯人だと思いたくないが故に、「未知の人物X」というアンチファンタジー的な戦いをしている。このような戦い方で至った結論では、ベアトが負けて戦人が人間犯人説で説明を付けようが何の意味もない事になる。単に魔女幻想が消え去るだけで、戦人が約束を思いだす訳ではない。ベアトは事件を戦人が解いてくれて、真相に到達し、戦人がベアトの目的に気付いてくれるように、今までメッセージを送ってきた。事件の「密室」は六軒島に囚われているヤスの事。執拗に繰り返された「嘘」は戦人が約束を破った事。「共犯」はヤスが碑文を解き黄金を手にし、ベアトリーチェという魔女の称号を受け継いでいる事。しかし、戦人はこれらに気付かず約束も思い出せなかった。ベアトが目的を喪失してしまったにも関わらず、戦いを継続させられるその残酷さを本編でもう一度見てほしい。「悲しいなぁ……こんなのが無限の魔法なのかぁ」というセリフからも痛切なベアトの心の痛みが伝わってくるはずだ。

・ベアトリーチェの目的とゲーム盤
ベアトの目的は自分と戦人の恋が成立する事で、それは戦人がゲーム盤の真相に至る事を前提にしている。この目的を達成するために、どのようなゲーム盤を作ればベアトの目的は達成可能なのかと考えた場合、かなり特殊な条件が必要になって来るのが分かる。まず約束を思い出してもらうという目的を達成するために、事件の核に「嘘」という要素を組み込む事で、戦人が嘘をキーワードにして約束を思い出す事が可能にはなる。しかし、ここで大事なのは、あくまでも戦人にとっては「紗音と交わした約束」であって「ベアトと交わした約束」ではないのだ。最終的にベアトと戦人が結ばれるためには、昔紗音と交わした約束が、今はベアトに受け継がれていて、今戦人に恋をしているのはベアトだという部分に戦人が気付かなくてはならない。正にこの部分が特殊な部分であり、そんな事に戦人が気付く事が可能なのか?という問題にも絡んでくる。少なくとも「紗音とベアトは同一人物であり、一人の人間の中に複数人格がある」という部分に戦人が気付く事は必須だろう。ここに気付かないと、「元々紗音が持っていた恋の気持ちが、今はベアトに受け継がれている」という部分に気付ける訳が無い。このような特殊な事情があるが故に、ベアトがゲーム盤を作成する時に「複数人格を持つ人物の犯行」というミステリーを作らなくてはならなくなった訳だ。うみねこのゲーム盤のミステリーの答えが「嘘」や「複数人格者の犯行」という特殊な構造になっているのはそれが理由で、全ては最終目標であるベアトと戦人の恋を成立させるためなのだ。本編中のEP3の部分を戦人が解く事によって、連鎖密室で犯人の複数人格に気付ける。そして南條殺しでベアトが犯人である事に気付く事によって、「ヤスの3つの人格の中の一人であるベアト人格が事件を『嘘』で構成する事によって、紗音人格との間の約束を思い出してもらおうとしている」という思考の道筋ができるわけだ。ベアトと紗音が同一人物である事に気付く事と、EP4の約束を思い出してもらおうとしてるバルコニーのシーン以降のベアトの態度、そして赤字というヒントを出してまで戦人に事件の真相に至ってもらおうとしてる態度、これらの部分から約束を思い出してもらいたいのはあくまでもベアトだという事は想像できるはずだ。もちろんこのような特殊な思考の道筋をたどって、戦人がベアトのゲーム盤の目的に気付いてくれるのかどうかは奇跡を祈る以外にないだろう。それがベアト人格の勝利条件であり、紗音人格の勝利条件の「事件中碑文が解かれる事」という勝利条件同様、事件中奇跡的低確率で達成される膨大な魔法力を秘めたルーレットの目なのだ。

【EP4ラストの背景赤字】

「早く私を殺してください」
「妾を止めてみ」
「お前が帰ってこなければ」
「いっそ、生まれたくなかった」
「誰も愛せ のですか」
「お願いです どの結末で 私の物語に 私を殺して」
「さもなきゃ」
「お前が死ね」

ヤスの動機に深く関連するこの赤字の考察に行こう。まず「早く私を殺してください」だが、これは譲治とも戦人とも結ばれず、爆弾によって全員皆殺しにするしかなくなったケースでのヤスの気持ちだと推測できる。この段階に進んでしまったらヤスはもう生きていたくないだろう。死を願う気持ちは分かる気がする。

続いて「妾を止めてみ」だが、これは「妾を止めてみろ」だろう。事件においてベアトを止める手段は2つある。それは碑文を解く事と事件の真相を解明する事だ。この2つの方法は同時にヤスの願う奇跡的なルーレットの目でもある。

「お前が帰ってこなければ」これは戦人が帰ってこなければ紗音と譲治が普通に幸せになる事が出来たという事だろう。

「いっそ生まれたくなかった」恋の出来ない体で生きてきたヤスにとって恋愛が出来ない事自体が絶望的な事であり、そもそも譲治や戦人と付き合うという事自体がヤスの中では可能性として低かったのだろう。譲治と付き合っていた時にも、譲治の語る子沢山の未来像に怯えていたのかもしれない。

「誰も愛せ のですか」これは「誰も愛せないのですか」だろう。ヤスは今まで語って来たように、ルーレットによって自身の恋に決着を付けようとしてたのは間違いないが、そもそも自分の「恋の出来ない体」に対して深く絶望してる状態だ。その状態で譲治と付き合っていて、譲治に自分の体の事は告白していない。ヤスがなぜ奇跡的な低確率なルーレットの目に自分の運命を託しているのかという部分は、そうまでして奇跡的なルーレットの目が出たのならば、きっと自分の「恋の出来ない体」の事も相手が受け入れてくれる奇跡が起きるに違いないと思ったからだろう。

「お願いです どの結末で 私の物語に 私を殺して」この部分はこの先の「さもなきゃ お前が死ね」の部分が爆弾による皆殺しを指してると考えられるので、「さもなきゃ」という接続詞を考えると、ルーレットの3つの目の内の「戦人が事件の真相に至り、戦人とベアトが結ばれる」の事を指してるのではないかと思う。つまり「お願いです。どの結末で終わったとしても、私の物語に決着を付け、私を殺してください」となるのではないだろうか。この「私を殺してください」というのは、魔女幻想を打ち破り、魔女を殺し、人間であるヤス本人の正体に至ってください、という願いなのだと推測できる。

これらを踏まえて、ヤスの立場になって告白文を作ってみようと思う。上記の赤字はEP4のバルコニーでのシーンの後に出てるので、ルーレットの目としては「爆弾による皆殺し」が確定してしまった段階だ。それを踏まえて読んでほしい。

私の計画していた事件はついにこの段階に来てしまいました。譲治様とも戦人様とも結ばれる事が出来なくなってしまいました。しかし、これも全て私が望んだルーレットの目のひとつ。早く私を殺してください。もう私は生きていたくない。私の願う奇跡は起こりませんでした。戦人様さえ帰ってこなければ……いいや、それはもう言いません。このような体で今まで生きてきて、私にも恋愛が出来るという微かな希望を抱いて生きてきました。でも、このような結末になるのなら、いっそ生まれたくなかった……私は誰も愛せないのですか。誰とも恋が出来ないのですか。私には恋をする資格が元々なかったのですか……お願いです。私の計画するこの事件でどのような結末になってしまったとしても、どうか私の物語に気付いてください。約束を思い出してください。私は事件に全てのメッセージを込めました。もし奇跡が起きるのならば、魔女幻想を打ち破り、魔女の正体が私であると気付けるはずです。魔女を殺して私に気付いてください。それが出来ないのならば……爆弾で島もろともふきとばし、あの世の黄金郷で幸せになりましょう。どうか私の真実に気付いてください。

どうだろうか。ヤスの気持ちになって上記の赤字を踏まえて告白文を作ってみたのだが、これならヤスの動機にも一定の理解が出来るのではないかと思う。もちろん許される行為ではないけども。 

では重要な部分の赤字の検証、考察にいこう

【右代宮戦人の6年前の罪】

「俺の6年前に、ベアトリーチェなどという人物は存在しないのだ。」
「妾が今、そなたに思い出すことを要求している罪は、右代宮戦人とベアトリーチェの間のものではない」
「右代宮戦人には、罪がある」
「そなたの罪で、人が死ぬ。」
「そなたの罪により、この島の人間が、大勢死ぬ。誰も逃さぬ、全て死ぬ。」

まず、戦人の罪というのは6年前使用人の紗音と交わした「迎えに来る」という約束の事で、その後紗音は迎えに来ない戦人の事に心を痛め、その戦人への恋の気持ちをベアト人格に託している。ベアトが戦人に約束を確認してるのはこの恋の気持ちを紗音人格から託されたためであり、元々は紗音が有していた恋の気持ちなのだ。この戦人の罪については、厳密に言えば「約束を破った事」が罪なのではなく、約束を覚えてすらいなかった事が罪なのだとEP7でクレルが語っている。EP8でもベアトが「忘れることが罪ではない。……思い出さぬ事が、罪なのだ」と語っている。つまり86年の六軒島で戦人が約束を覚えているのかどうかに論点がある。

次に「そなたの罪で、人が死ぬ。」「そなたの罪により、この島の人間が、大勢死ぬ。誰も逃さぬ、全て死ぬ。」の部分だが、これはEP7の動機考察で非常に重要な部分で、戦人が約束を覚えていない事が原因となって、人が死ぬという結果が起きると言っている。後半部分の「誰も逃さぬ、全て死ぬ。」の部分が非常に重要で、「誰も逃げる事が不可能」「全員死亡」これらは明らかに六軒島の爆弾によって全員死んでしまう事を指してる。という事は戦人が約束を覚えていない事が確定すると爆弾が爆発し全員死亡すると読み取れる。この部分だが、島で爆弾による皆殺しが発生するのは、戦人の罪が原因となってるとするならば、戦人が約束を思い出した場合、あるいは、覚えていた場合は誰も死なない可能性があるのではないか?という推測ができる。となると、戦人が約束を覚えているのか確認しないといけない事になる。この一連の赤字は、あくまでも「戦人が約束を覚えていない場合」に発生する事例であって、戦人が覚えていた場合は発生しない可能性がある。だから実際の六軒島で起きた悲劇が戦人のせいであると確定できるものではないのだ。EP4の内容とも関連するが、ヤスの目的は2つの人格の恋に決着をつける事だ。それを目的として事件を起こしており、事件部分はあくまでも「手段」でしかない。事件そのものが目的ではないのだ。しかし、EP4のようにルーレットの結果として「ベアトと戦人の恋」が成立しなかった場合、ヤスは爆弾で全員を道連れにして皆殺しを行う。これは紗音人格、ベアト人格、この2つのどちらも恋が成立しなかった場合に起こるヤスの絶望であり、この時の「爆弾によって全員皆殺し」という選択の気持ちは、「戦人が約束を覚えてすらいなかった」と知った時のベアトのあの態度と同じだろうと推測できる。

【ベアトリーチェの対戦相手資格】

「妾は黄金の魔女、ベアトリーチェ。そして右代宮金蔵の孫、右代宮戦人と戦うためにこのゲームを開催した。」
「右代宮戦人の母は、右代宮明日夢である。」
「俺の名は右代宮戦人」
「俺は右代宮戦人だ」
「右代宮戦人は、右代宮明日夢から生まれた。」
「俺は右代宮」
※「俺は右代宮明日夢から生まれた」が赤字で発言できなかった。
「そなたは、右代宮明日夢の息子ではない。」
「右代宮戦人は右代宮明日夢の息子ではないわ。」

この部分はEP3の霧江が殺害されるシーンにヒントがあり、霧江と明日夢は同時に出産してると語ってるシーンがある。霧江が流産し、明日夢が戦人を出産したとされてるが、これは実際は逆なのだ。霧江が出産し、明日夢の子は死んだ。赤字の「右代宮戦人は、右代宮明日夢から生まれた。」は正確には「しかし、生まれた直後流産で死んだ」という意味であり、戦人の別人がそのまま生きて存在してるという意味ではない。出産後死んでるのだ。戦人は霧江の実の息子なのである。それはEP8のクイズに正解すると留弗夫から明かされる。

【黄金郷でのさくたろう復活の反魂魔法】

「ここは妾の黄金郷」
「妾以外の魔法は絶対に存在できない世界」
そして妾の魔法でさくたろうを蘇らせることは出来なかった」
「そのぬいぐるみは特別なぬいぐるみ」
「楼座が娘の誕生日のために作った、世界でたった一つの」(この先は赤字で宣言できなかった)

縁寿が98年の世界で船長の家で発見したのは量産品のさくたろうのぬいぐるみだったのだ。手作りというのは仕事の忙しい楼座がついた嘘だったのだ。縁寿は黄金郷で引き裂かれたさくたろうではなく、全く同じ形をした別のさくたろうを真里亞に渡し、さくたろうを魔法で蘇らせたのだと説明した。これこそ縁寿が真里亞の白い魔法を理解した証であり、幸せのカケラを見つける白い魔法そのものなのだ。事実だけ言えばあれは本当のさくたろうではなかった。しかし、その事実の上に縁寿は「魔法でさくたろうを蘇らせた」という解釈を重ねているのだ。これはEP8で戦人が六軒島の本当の真実の上に「あり得たかもしれない幸せな六軒島の真相の解釈」を重ねているのと同じであり、これはうみねこにおける「魔法の定義」にも深く関係する。うみねこにおける魔法というのは、真実を優しく包み込む魔法であり、人を幸せにするために存在するものなのだ。

・魔法
黄金郷でのさくたろう復活のシーンの後、縁寿が「それが魔法の根源よね。愛が無ければ、悲しみが無ければ、怒りが無ければ、魔法は視えない。」というセリフを言う場面がある。これはベアトが縁寿の魔法を理解し、さくたろうの復活を祝福したシーンを見れば意味が分かるだろう。本当のさくたろうは楼座によって引き裂かれており、縁寿が復活させたさくたろうは同じ形をした別のさくたろうだった。しかしベアトは、真里亞の悲しみ、怒り、これを理解していたからこそ、縁寿の魔法の正体を真里亞に告げずに、魔法である事を認めて祝福してあげた。それは真実を優しく包み込む魔法であり、真里亞への愛があるからこそ、その裏にある残酷な事実を真里亞には告げなかった。愛があるからこそ、悲しみがあるからこそ、そして怒りがあるからこそ、この縁寿の魔法がベアトには理解できたのだ。

【ベアトリーチェの心臓】

「右代宮戦人。今から私が、あなたを殺します。」
「そしてたった今。この島にはあなた以外誰もいません。この島で生きているのは、あなただけです。島の外の存在は一切干渉できません。」
「この島にあなたはたった一人。そしてもちろん、私はあなたではない。なのに私は今、ここにいて、これからあなたを殺します。」

「第4のゲーム、第九の晩。そして、誰も生き残れはしない。」
「土は土に。幻は幻に。……虚構は猫箱に閉ざされることで、真実となる。」

「私は、だぁれ……?」
「幻は、幻に。……約束された死神は、魔女の意思を問わずに、物語に幕を下ろす。」

戦人しか人間が存在しないのに、戦人はこれから殺されるという。その正体こそEP1からの24時を迎えると誰も生き残れないという設定の正体なのだ。地下貴賓室の黄金の部屋の時計と連動している爆薬の事だ。

ベアトリーチェの心臓として出題される最後の謎のシーンで非常に重要な部分がある。磔にされたベアトは「今からすべてを晒すから殺してくれ」と懇願する。心臓を晒すからと。ここからのシーンが非常に重要で、できれば読み返して欲しいのだが、ベアトが両手を上に掲げると光が集まって来る。しかし右手から光が消え、右手を下げ、左手は上に掲げたままという描写がされる。この一連の描写部分について裏お茶会でラムダが「右手を下ろしたの気付いてた?」とベルンに言い、ベルンは「ああ、あれはそういう意味だったの」と言ってる。ラムダが続いて「まだあの子はどぎつい奥の手を隠してるわよ」と言ってるが、これらの部分から分かるように、ベアトリーチェの心臓とは厳密に言えば2つあるのが分かる。左手を掲げたまま出題された「私はだぁれ?」というのがその内のひとつである爆弾の事だ。直前に右手を下ろす事によってベアトは、心臓の片方である「同一人物トリック」を隠したのだと分かる。一連の描写はそういう意味で、ベアトリーチェの心臓というのは最後に全員を皆殺しにする爆弾と、紗音、嘉音、ベアトの同一人物トリックの2つの事を指すのだ。

これを踏まえれば、EP3の後半のベアトリーチェの心臓の意味が分かると思う。絵羽の銃の暴発によって目を負傷した朱志香は、南條殺害後に嘉音によって誘導されカーテンに隠れる。あの部屋をベアトが守り、エヴァによって最後心臓を晒されるが、あのシーンは南條を殺害したヤスが嘉音のフリをして朱志香を誘導し、最終的に絵羽によってヤスは射殺されるという部分の魔法解釈の描写と推測できる。なぜあそこにベアトリーチェの心臓が描写されたのかは、上記で説明した「ベアトリーチェの心臓とは同一人物トリックの事も指す」という部分に由来してると思われる。 

 ・98年世界での南條の息子の話
縁寿が南條の息子を訪ねた時にカードの話が出る。ヤスが遺族に送った一億円のキャッシュカードだが、気になるのは南條の息子の差出人名でわざと存在しない住所に送っている部分だ。確実に返送される事を目的にしていて、いつ返送されるのかは郵便局次第で不確定という話が出てくる。事件前に消印があり、縁寿たちは事件前に到着させたくなかったのではないか、と言っている。ではなぜ期日指定郵便にしなかったのかだが、これはヤスが確実な方法を嫌うからだ。ヤスはEP1の最初の園芸倉庫の時のように譲治に中に入られると死体が無い事を看破されてしまうような危険な綱渡りをしており、確実な方法を取らず危険をあえて冒している部分がある。それが、運命に身を任せ自分の運命をルーレットに託すという行為であり、バレたならバレたでその運命を受け入れるというヤスの気持ちなのだ。この郵便も事件後配達日に期日指定にすると確実に事件後に渡ってしまう。ヤスは事件後に配達される可能性と事件前に配達されてしまう可能性の2つが欲しかったのだ。事件前に配達され、それが事件前に右代宮家で話題になり、事件を起こせなくなってしまっても、それはそれで受け入れるという事なのだ。そういったあらゆる危険の中で奇跡的なルーレットの目が出る事を祈っていたのだ。南條の息子の話では銀行に入った時には緑ランプが20個は付いていたと言っており、その数から、爆薬で皆殺しをしてしまった場合に犠牲者に関連する遺族全員に謝罪のお金を送っていたものと思われる。

・紗音が語る黄金郷
事件部分の紗音が囚われているシーンで紗音が黄金郷に行った事があると語っている。嘉音が驚いてその詳細を聞くシーンだが、これはEP7で出てきたベアトに招かれたお茶会の事だと思われる。

・ラムダデルタの誤解
ベアトがやる気を失ってしまった後のシーンでラムダが「戦人に勝って屈服させたいんでしょう?」と言ってる場面がある。ここからラムダはベアトの本当の目的を知らないものと思われる。EP5でラムダがゲームマスターになり、ベアトの事件に似せて事件を展開させるが、ラムダが本当のベアトの目的を知らないために、ベアトでは絶対にやらない事をやってしまっている。碑文が解かれても事件が起こる部分はそうであり、EP3のようにイレギュラーな場合ではなく、今回は一族全員にも碑文を解いた事を知らせているし、イレギュラーな目的で殺人をやった絵羽のような人物もいない。夏妃に容疑を被せるといった行為もベアトにとっては意味はなく目的でもない。ラムダとベアトの認識の違いを感じさせるセリフがここなのだ。

・愛が無ければ真実は視えない
98年のシーンで小此木社長により語られるこの言葉。「異なる2つの視点から物事を見る」という考え方で、うみねこ自体にとってもベアトを殺人者と見るか、そうでないかと見るかという問いかけとも連動する。愛ある解釈で物事を見る事こそがうみねこの世界では正解であり、ベアトの動機を考える時にもこれは重要だ。

・メッセージボトル
縁寿と大月教授のシーンでメッセージボトルについての話が出る。漁師が拾った物と警察が押収した物の2種類あり、それぞれ内容は違う。しかし事故前日から始まり全員死亡で終わる部分は一緒だという。EP1は既にこの内の1本と判明している。EP2が警察の押収した物と誤解されやすいのだが、EP2は事故前日ではなく紗音と譲治の恋の話から始まってる事や、EP6での八城十八の話からEP3~6は彼女の偽書と判明していて、八城十八が「偽書を通して自分が伝えたいのは、真相に至った自分なりの愛の解釈の表現である」と語りながらEP2の黄金のブローチの話にも触れている。作中で「伊藤幾九郎の偽書はEP3のBanquestが初作」「八城十八は異なるペンネームで複数の出版社で同時に大賞を受賞している」という情報が出ているので、「伊藤幾九郎以外のペンネームで偽書を書いている可能性」が否定できない。総合的に考えてEP2も彼女の偽書だと思われる。

・あの日真里亞を傷つけなかったら事件は起こらなかった
縁寿が98年の世界で真実を知るための旅で出てくるセリフだ。魔法についての説明で真里亞は辛い現実を魔法によって幸せな解釈に変える事ができると説明されている。しかし、幼い縁寿によって否定され、母にさくたろうを殺されて以来、真里亞の魔法は邪悪な物に変貌していき、どうやって相手を呪い殺すか、みたいな物騒な物に変わっていく、と説明されている。縁寿が真里亞を否定せず、真里亞が縁寿に教えたような白い魔法を持ち続けていたならば、六軒島でベアトと友達だった真里亞はベアトにもそれを教えてあげられた可能性があるという事だろう。ベアトの魔法は真里亞に認められて初めて存在している。他人に認めてもらって存在できる魔法であり、真里亞のように自分の中から生み出すだけで成立する物ではないのだ。要するにつらい現実を受け止める心をベアトが持てる可能性が真里亞の魔法の思想だったのだと思われる。

・98年の現実世界の解釈
六軒島に向かうシーンで縁寿が実に奇妙なセリフを言っている。縁寿は魔法によって7姉妹を呼び出しているが、これは普通に解釈すれば縁寿の心の中の妄想だと言える。だが縁寿は次のようなセリフを言ってるのだ。「魔法を認めたわけじゃない。魔法は信じる人には存在する。私が認めなくても。誰かが信じたならその人の世界には魔法が存在する。それは私が魔法を信じたって信じなくたって干渉を受けない」これでは縁寿が7姉妹を召喚してるのは、縁寿以外の人物が縁寿に魔法は存在してると思った事で現れている魔法だという事になる。縁寿が7姉妹を生み出しているわけではない。ここに、この98年の世界は現実を元に脚色された八城十八の偽書の中の描写なのではないか?という推測ができる。

六軒島のシーンで7姉妹を呼び出してるシーンは隠れてた天草が遠くから狙撃してたとして説明がつくが、前述した魔法描写自体縁寿が呼び出してるわけではないという説明から、ここも含め一連の98年の描写は現実を元に書かれた偽書描写なのではないかと思われる。EP4は現実世界やゲーム盤のメタ世界に視点が頻繁に切り替わるが、縁寿がさくたろうを届けに真里亞に会いに行くという部分と、メタ世界での黄金郷でのさくたろうの復活、また両方の世界のマモンの態度から、どちらの世界も完全にリンクしている。

EP4お茶会のエンドロールの縁寿の所に「1998年に死亡」とあり、98年の縁寿はあの六軒島の攻防の後、天草によって殺害されたものと思われる。縁寿が遺産を相続した事により、右代宮グループの株をどうするのか注目されており、縁寿を殺すことで問題を解決しようとしていた動きもあり、EP4では冒険の末、殺されてしまった縁寿の話と、86年の世界で戦人のために一緒に戦う縁寿の話をリンクさせた八城十八の偽書描写と思われる。しかし、現実世界を元に書かれていて、様々な設定は現実に即している物と思われる。EP8の作家になった縁寿はそもそも飛び降りておらず、その後の天草とも以前に少し会った事があるだけと描写されている。このEP4の現実世界とEP8のエピローグの世界はリンクしていないのだ。

 ・EP4と縁寿
EP4は86年のゲーム盤世界と98年の現実世界両方とも偽書の描写であり、EP4全編通して描かれている縁寿も当然現実世界の幾子が文章で描いている偽書内の人物だ。この世界構造の考察についてはEP6で詳しくやっているので参照してほしい。EP4の中盤でラムダは縁寿に「戦人が戻って来るのは86年の6歳の縁寿の元であって、18歳の縁寿の元ではない」という冷酷な事実を告げている。つまり、ベアトのゲーム盤で例え戦人が勝利をしたとしても、あの偽書の縁寿には戦人は帰って来ないのだ。後半に縁寿の心の叫びである赤字が出るが、非常に大事な部分があるので抜粋する。

「早く帰ってきて、お兄ちゃんッ!! 私を独りぼっちにしないでッ!!!」
「私よ、縁寿よ…!! お父さんもお母さんもお兄ちゃんも、誰も帰ってこないッ!! 寂しいよ!! お願いだからッ、早く帰ってきてッ!」
「そうよ、縁寿よ!! 誰も帰って来ない世界の右代宮縁寿…!! ………私の家族は全て、あの日の六軒島から帰って来ない…!!」
「目の前のあの魔女が、家族を全て、お兄ちゃんさえも奪い取ってしまった…! ………お兄ちゃんだけが、あいつをやっつけられる!!あいつをやっつけて…!!そして、家族を取り戻して!! そして、………私のところに帰ってきて……!!!」

注目なのは「そうよ、縁寿よ!! 誰も帰って来ない世界の右代宮縁寿…!!」という部分だ。結局この偽書の縁寿は最終的に98年の六軒島で死亡してしまう。エンドロールに98年に死亡と書かれている。つまり、冒険の末死んでいったあの偽書の縁寿は結局生きている間に家族と会う事は出来なかった。しかし、EP8の魔法EDの黄金郷に縁寿がいる事から分かるように、あの世の黄金郷で最終的に家族と会うことはできたわけだ。

ここで大切なのはこのEP4の物語は、98年の本当の現実世界で縁寿がネットで見ているという事だ。本当の現実世界の縁寿は、ネットで話題になっていた伊藤幾九郎の偽書を読んで最終的に気持ちの整理をつけたはずで、EP4をネットで読んでいた時に、最初はそれほど注目して読んではいなかったのかもしれないが、読み進める内に真里亞の魔法の思想や、上記の偽書の縁寿のセリフを読んで「現実世界の縁寿」と「幾子の描く偽書の世界の縁寿」の気持ちが完全にリンクしてしまったのではないかと思われる。縁寿は思ったはずだ。なぜこの偽書の作者は私の気持ちがこんなに分かるんだろうかと。六軒島の事件以来、寂しく孤独に生きてきた縁寿にとって、偽書の中で自分の気持ちそのものを代弁してくれている偽書の縁寿を見て、偽書から目が離せなくなっていったことが推測できる。

現実世界の縁寿から見ると、偽書の中の縁寿には結局兄は帰って来ないが、六歳の縁寿の元には帰って来る可能性があるという部分を、自分の事のように思ってしまった、あるいは願ってしまったという側面があるはずだ。現実世界の縁寿が兄である十八に会うというハードルは実はかなり高い。縁寿が作家になった事がキッカケで2人は再会するので、「真実を追い求め続ける事」「幼少期に絵羽と悲しみを分かち合いお互いを認めて、幸せに暮らす」というようなケースの場合、結果的に縁寿が作家を目指さなくなるので2人は再会できない。縁寿が偽書を通して心の整理をつけ、真里亞の魔法の思想を理解し、それを世間の人に広めたいと願って作家になった先にしか2人の再会はないのだ。最終的な物語の締めくくりとして、現実の縁寿も偽書の縁寿もハッピーエンドと言える結末をEP8で迎えるので、この辺の現実と偽書世界の関連性は非常に大事であると同時に、そういう視点で本編を読むと凄く面白い。

・人格
このEP4までのゲーム盤で戦人は一度も紗音と嘉音を同時に見ていない。探偵の主観が保障されてるシーンでは同時には出ず、探偵でない人物の主観や3人称の地の文では紗音と嘉音は同時に出てきており、これは嘘の描写と判別がつかないので意味が無い。EP1~4一貫して戦人の前には同時に出てこないようになってるのだ。同一人物という設定が確定できる部分はEP6に明確にあるのでそこで詳しく説明するがそもそも、1人の人物が複数人格を持っており、変装によって切り替えているというのは可能なのか?と考えると、ゲーム盤の世界というのがそもそも何なのかというのを考える必要がある。EP1はワインボトルに入ったノート片であり、EP2~4も幾子による偽書である。これはそもそも作中では文字の媒体で存在しており、文字で「紗音は~」とか「嘉音は~」と書かれていて、映像による見た目の描写を前提にしていないのだ。なぜ変装によって複数人物を演じてバレないのか?という根本的な問題は、これは論理パズルを前提にした小説の設定だからという事で説明できる。「ヤスの紗音、嘉音、ベアトの変装は誰にも見破る事ができない」という設定でヤスや十八が物語を描いているのである。

EP5

EP5 End of the golden witch
 
まず初めに、EP5からは実質的に解答編という事もあり、ベアトのゲーム盤であるEP1~4のエピソードを解くための思考の方法を解説した部分が結構多く、事件部分は正直あまり重要とは言えない。EP5の事件は最終的にヱリカの説と真相に至った戦人の説が同時に成り立つと本編で語られているが、ここでは戦人の説での事件の考察を行う

事件の流れ

事件前日にボートより転落し、六軒島に漂着した古戸ヱリカという人物が現れる。事件前日に戦人とヱリカが碑文を解き、黄金を発見。一族に発見の旨を伝える。

黄金の発見により、緊急の親族会議が行われ、この時夏妃が自室に戻り「19年前の男」と名乗る人物からの脅迫を受け、部屋でそのまま就寝

食堂での親族会議にて謎のノックと魔女の手紙が出てくる。

翌朝ゲストハウスで譲治、真里亞、楼座、朱志香の死体が発見。屋敷でも使用人室で源次の死体が発見。夏妃は脅迫電話にて蔵臼の声を聞くが安否不明。

脅迫電話の指示通り、事件日の昼に夏妃は1Fの客室のクローゼットに隠れる。秀吉が入ってきて何者かに殺害される。夏妃は一同が移動したのを見計らい自室に戻ろうとするが、2Fへ向かう途中ヱリカに見つかり客間に行く。

ヱリカの推理により夏妃が犯人であると断定される

その後真相に至った戦人により、異なる事件の真相の提示があり、唯一の真相が確定できなくなり、魔女幻想復活。戦人がゲームマスターになり、EP5終了

ポイント

・探偵古戸ヱリカ
まずはヱリカの扱いについて本編中の赤字を参照する

「古戸ヱリカは探偵であることを宣言するわ。」
「探偵は、犯人ではなく、その証明には如何なる証拠も必要としない。」
「探偵は犯人でない」
「古戸ヱリカは犯人ではない」
「古戸ヱリカは、これまでのベアトのゲームに影響を与えない。」
「これまでの世界には存在しないし、影響も与えないわ。」
(島の人数は)古戸ヱリカが1人増えただけ。それ以外の在島者の人数は、これまでのゲームとまったく同じ。」
「つまり、今、この客間にいる人数が、在島者すべての人数、ってことになるわね。」

このように新たに現れたキャラクターであるヱリカが探偵であり犯人ではなく、在島人数もいままでの数から1人プラスされただけだ。大事なのはEP4までは戦人が探偵だったが、EP5ではヱリカが探偵であり、主観の保障がされるのはヱリカだけという事だ。様々な部分でEP5は戦人の主観描写が現れるが、EP5の戦人の主観は嘘が混じるという事を覚えておこう。

・上記に関連する戦人の人数確認描写
作中序盤で客間に六軒島にいる全ての人間が集まった場面で、個別の名前を挙げ確認がされているが、この時に「戦人の主観」に切り替わり描写されてる場面がある。ここで探偵ヱリカがいる場面で嘉音と紗音が同時に存在しているが、この場面は主観を偽る事が可能な戦人が見ているため、この描写はうのみにできない。EP5全体を通して、紗音と嘉音が同時に出てくるケースは非常に多いが、唯一主観を保障されているヱリカによる主観描写がほとんどないので、実際にヱリカが2人を同時に観測してるのか分からない。つまり、EP4までと同様に探偵の前に同時に紗音と嘉音は現れない、という原則がここでもまた成立しており、ヱリカに観測されたとは言えない。

・夏妃を脅す19年前の男
度々夏妃に電話をかけてくるこの人物だが、事件前日に夏妃に自室でそのまま電話を取らず、誰にも電話せず、そのまま朝まで寝るように指示している。あそこが第1の晩の殺人の時の夏妃のアリバイを無くすための真犯人の工作であり、事件の大筋の流れは19年前に崖から落とされた赤ん坊が実は生きていて、夏妃に復讐するために事件の殺人容疑を夏妃になすりつけるというシナリオだ。夏妃が好きな季節を秋だと知っていた場面は、通常複数のカードを部屋に仕込んでいて、答えに合わせてそこを探させると考えるが、今回の場合は夏妃が語った「紗音にしか語っていない」というセリフそのままだろう。

・19年前の赤ん坊
この夏妃によって語られた赤ん坊は福音の家より連れてこられたと語られているが、実際は九羽鳥庵のベアトと金蔵の間に生まれた子供であり、崖から落とされた赤ん坊は南條先生によって助けられ、一命を取りとめ生きていたヤスの事だ。この真相部分の伏線としてEP5に登場したものと思われる。筋書きとしてはベアト人格のヤスによる夏妃への復讐だ。本来ベアトがゲームマスターの場合は事件の目的はヤスの2つの人格の恋に決着をつけるため、事件を「手段」として使ってるだけなのだが、このEP5はその根本が大きく違い、事件は復讐のために起こされている。また、碑文が解かれたら事件を中断すると保証したベアトのゲームと違い、ゲームマスターのラムダは碑文が解かれても事件を続けている。このゲームマスターによるゲームの違いも如実に出てきているエピソードだ。

・戦人の推理とヱリカの推理
最終的に並び立ってしまったこの2人の推理「戦人犯人説」と「夏妃犯人説」だが、これは以下の赤字

「戦人くんは犯人ではありませんよ。戦人くんは誰も殺してはいません。これは全てのゲームにおいて言えることです。」
「右代宮夏妃は犯人ではない!」

そもそもこの赤字に抵触しており、作中で披露された推理は無効だ。つまり、作中では並び立つ真実のせいで唯一の真相が特定できなくなり、その結果魔女幻想が復活したように描写されているが、そもそも真相が特定されていなかったという解釈も可能だ。むしろ真の理由はこっちであり、戦人犯人説はあくまでもヱリカの説を唯一の真実にさせないためのものだろう。

では事件部分の考察にいこう

【食堂での謎のノックと手紙事件】

「親族会議以前に、ヱリカ、譲治、朱志香、真里亞、南條、郷田、熊沢は、屋敷より退出し、ゲストハウスへ移動したものなり。」
「残りは、蔵臼、夏妃、源次の3人のみが2階廊下におり、それ以外の全員は食堂におりしこと、申し上げ奉る。」
「24時の時点で、2階廊下にいた、蔵臼、夏妃、源氏の3人と、食堂にいた全員以外の、一切のニンゲンは屋敷内に存在しなかった」
「屋敷以外の全員は、親族会議開始後、屋敷内にて何を行うことも不可能なり。」
「配膳車に手紙が触れたことはなきと知り給え。」
「廊下天井に手紙が存在したことはなきなりや。」
「蔵臼、夏妃、源氏の3人に加え、食堂の全員もまた、ノックしていないこと、申し上げる。」
「このノックとは、ノック音を生み出す、直接的、間接的、意図的、無意識的、偶発的な全てを含めるものなり。」
「つまり、屋敷にいた人物全員が、ノック音の発生源とは成り得ない、という意味デス。」
「……そしてこの “全員” とは、誰も把握していない、観測されていない人物であったとしても含みマス。」
「24時の時点で、屋敷以外に存在するのは、ヱリカ、譲治、朱志香、真里亞、南條、郷田、熊沢のみである」
「蔵臼、夏妃、源次の3人は、その手紙に触れてさえいない!」
「食堂の全員の誰も、いいえ、もっとシンプルな言い方をするわ。24時の時点で屋敷内にいた誰一人!あの手紙を廊下に置いたものはいないわ。」
「屋敷内の誰一人、手紙を廊下に置いた者はいない。それは直接的、間接的、意図的、偶発的、無意識的、全ての概念でよ。」
「蔵臼、夏妃、源氏の3人は、ノックをしていない!」
「これは、扉だけはノックしていないという、限定的な意味じゃないわよ?音が伝わる柱だろうと録音したカセットテープの再生ボタンだろうと、そのノック音を生み出したことは断じてないという意味!無論、直接的にも間接的にも、意図的にも偶発的にも、無意識的にもね!」
「ノックは、人が手で扉を叩くもの」
「全ての人物は、ノック音を誤認することはない。」
「ノック音を誤認しない、ということはつまり。ノック音によく似た他の音を、ノック音と勘違いしたりはしない、ということよ。」
「柱を叩くとノックに似た音がする、なんてのもアウト。」
「ノック音をカセットテープに録音したとしても、それはもはや “ノック音を録音したテープの音” であって、ノック音ではない。だからこれもアウト!」
「そしてノックは、直接扉の前に立ち、手で扉を叩く行為を指す。」
「つまり、実際にあの扉を叩いたノック音を、全員は正確に識別し、絶対に聞き間違えないということよ。」
「そして、彼ら(※食堂の人物全員)は誰もノック音を誤認しない。」
「蔵臼、夏妃、源治の3人はノックにかかわっていない。それ以外の人物は誰も屋敷内に存在もしない。」
「あの扉を直接叩く以外のあらゆる音を、ノックと誤解することは絶対にありえないということ!!」

赤字を見ればあらゆる可能性を否定されているのが分かる。つまりノックなど最初からなかったのであり、食堂にいた全員が「ノックの後手紙を発見した」という共通の嘘をついてたと思われる。つまり食堂にいる人物が全員結託してると言う事であり、事件の共犯関係を考える場合にも非常に重要だ。

【第一の晩の譲治、真里亞、楼座、朱志香、源次、蔵臼の殺害】

「譲治、朱志香、真里亞、楼座、源次の死体は、誰が見ても、一目で死亡が確認できる」
「死んだフリなど絶対にありえぬ、誰もが一目で死亡を確認できる死体であるわ。」
「譲治、朱志香、真里亞、楼座、源次の5人はちゃんと死んでるわよ。」←5日の24時の時点での赤字
「犠牲者は全員、他殺なりや。」
「全ての死体は、決して検死を誤らぬ」
「登場人物以外の死体は登場しない」
「右代宮夏妃は犯人ではない!」
「右代宮蔵臼は犯人ではない。そしてとっくに殺されてるわ。あんたに電話で声を聞かせた直後にね?」
「譲治は死後、遺体は一切、移動されていない!」
「朱志香は死後、遺体は一切、移動されていない!」
「真里亞は死後、遺体は一切、移動されていない!」
「楼座は死後、遺体は一切、移動されていない!」
「源次は死後、遺体は一切、移動されていない!」
「蔵臼は死後、遺体は一切、移動されていない!」
「よって、遺体発見後に遺体が消失することはありえないッ!!貴様の推理、遺体は金蔵が運び出したは、破綻する!」

第一の晩について、朝の発見時よりも前の部分については、本編中の内容の通り、夏妃以外には不可能なもので、なおかつ赤字で夏妃は犯人ではないと明言されてるので、その部分の赤字は全部省かせてもらう。

この第一の晩のゲストハウス部分だが、探偵であるヱリカは毛布をかけられ隠されている死体を一切検証していないのが分かる。現場で南條に検視結果を聞いてるだけであり、自分の目で死体を見てないのだ。これは主観が保障されている探偵が死体を見てない上に、赤字により死後遺体が動かされていないとされてる以上、この時点では生きていてその後フリーになった時に別の場所で殺害されたものと思われる。一同が結託して死体を見つけたと狂言殺人を演じているという事であり、ヱリカはそれを見抜けずうのみにしてしまった。

使用人室の源次については、ヱリカの封印が朝の時点まであったとされてるので、源次は朝の時点では生きていた。嘉音と熊沢が死んでいたと嘘を言ってるという事であり、死体が消えたのもゲストハウス同様に、後で犯人がフリーになった時に別の場所で殺したという事だ。ここも狂言の一貫だ。

蔵臼については、夏妃が電話で声を聞いた後に殺されたという事だが、夏妃が蔵臼の声を聞いた時に、電話を代わるのに手間取ってなにやらガサゴソしている様子が描写されている。EP5で親族会議の時に議事録を音声で録音していた「オーディオ」を使って録音された蔵臼の声だったのだろうと推測される。電話口で犯人の名前を叫ばれる可能性があり、実際に蔵臼に電話を代わったとは思えない。実際は夏妃にオーディオ録音の声を聞かせた後に、屋敷の外の森かどこかで殺したものと思われる。この蔵臼の殺人については、真犯人が秀吉殺害時に夏妃にクローゼットに隠れるよう命令するための脅迫用の布石であり、用がなくなった途端狂言殺人部分とは別に、すぐに殺したものと思われる。

【1F客室での秀吉の殺害】

夏妃の主観描写を見ていると、部屋に一人で入ってきた秀吉が突如何者かに襲われ、その後犯人が立ち去った様子もないのに他の者が集まってきており、その後ヱリカがまたもや秀吉の死体を確認せずに死体を移動させている。この部分も一連の狂言殺人の一貫であり、夏妃が聞いていたのは秀吉の演技だった。実際は殺されておらず、第一の晩同様その後犯人がフリーになった時に実際に殺したものと思われる。

ゲーム盤部分の解答は以上であり、全体として狂言殺人のため夏妃と蔵臼以外が全て結託して嘘をついてるという、あまりに共犯者が多いゲーム盤だと言える。しかし、ゲーム盤の謎よりもEP5は非常に重要な伏線が多いエピソードであり、うみねこ全体の真相とも関連のあるヒントが多く出ている。その部分の考察にいこう。

・本編中で碑文が解かれた場面
ヱリカと戦人が碑文を解き黄金を発見しているが、この時に非常に重要なセリフがいくつか出ている。まず、ラムダが碑文について「難易度が高い謎じゃないと意味が無い」と言っているが、これはヤスの目的と関連していてベアトが事件を起こすのは自身の2つの人格「紗音人格」と「ベアト人格」について、この2つの人格の恋について決着をつけるためであり、その目的のため事件を「手段」として使っている。可能性として事件で起きる確率が非常に低い「碑文が解かれる」と「事件の謎が解かれ、真相を暴かれる」の2つのどちらかが出る事が目的で、ラムダの言う「難易度が高い謎じゃないと意味が無い」というのは、どちらの人格の恋が成立するのか試すルーレットの目として、共に奇跡的確率で出る公平さが必要なためだ。「碑文が解かれる」と「事件の謎が解かれ、真相を暴かれる」は共にルーレットの目として出る確率は低く、お互いに公平さもある。

「碑文を誰かが解くことで、この子が何かを得ることはありません。」
「もともと黄金郷の黄金はこの子のもの。見つけさせる必要も、横取りする必要も、何もありません。」
「碑文の謎が解けても解けなくても、この子にとって得るものは何もありません。」
「碑文が解かれようと解かれなかろうと、ベアトが何かを得ることはない。」

この赤字だが、ベアトにとって碑文が解かれる事の意味はない。意味があるのは紗音人格にとってなのだ。本編中の説明に「魔女を天秤に見立てた時、片方には碑文の謎、片方には碑文殺人が乗る」「碑文殺人と碑文の謎の価値はベアトにとって同じもの」「じゃんけんと同じで、どちらに勝利が傾くかが目的」とある通り、ベアトにとって大事なのは碑文が解かれ紗音人格の恋が成立するか、碑文殺人の真相を解かれ、戦人が真相に至った結果、ベアトの恋が成立するのか、その結果が大事であるという意味だ。それを踏まえた上でEP5を見ると碑文を戦人が解いていて、頻繁に「よりによって戦人が」というセリフが出てくる。戦人との恋を成立させたいベアトにとって、戦人が碑文を解いて紗音人格と譲治との恋が成立するというのは何とも皮肉な結果である。

・謎の男
夏妃にかかって来る謎の男からの電話だが、最初は源次が繋いでいたのに、直接夏妃の部屋にかかってきていた場面がある。あれは内線により真犯人が電話をかけている事を表している。犯人は屋敷内にいる事の伏線だ。

・夏妃の赤ん坊とベアト
夏妃が故意か事故か、赤ん坊を使用人と一緒に突き落としてしまったという場面で、ベアトが「赤ん坊は妾が殺した!」と主張して殺人を自分のせいにしている場面がある。この描写はEP4までのベアトのゲームと同様、人間が犯人である事件を魔女の仕業とする事で人間を庇おうとしてるベアトの行為を表したものだ。なぜベアトは度々魔女を認めさせようとしてたのかは、戦人が実際の六軒島での真相で傷つかないようにするためと思われる。

・ベアトの気になるセリフ
実はEP5で非常に重要なセリフをベアトがさらっと言ってる部分がある。本編より抜粋するが「赤で19人目が許されずとも、そこに19人目を紛れ込ませるなど、妾ならば魔女ならば、造作もなくやってのけるがな」というものだ。以前にEP3で解説した在島人数の赤字にベアト人格のヤスが入ってない理由の伏線だと思われる。

・ロノウェの気になるセリフ
金蔵の部屋での論戦の後に、戦人について語るロノウェのセリフで、上と同様重要な伏線部分と思われるセリフが出る。ここも本編から抜粋する。「右代宮金蔵の破天荒を記せば、書斎の魔導書の数に負けぬ長い波乱の物語が描けるでしょうな。その次の当主(EP5で碑文を解いた戦人)の物語も記す価値が大いにありそうだ。いえいえ、もう記しておりますとも。それはもう長い長い物語に。ぷっくっくっく」この部分だが、うみねこの各EP1~8は作中作であり、98年の世界に存在しているワインボトルのノート片と八城十八による偽書であるという考え方の伏線となる部分だと思われる。EP6の98年世界に八城幾子が登場し、EP3~6が自分の作品であると言ってる場面もあり世界構造の考察で非常に重要になる伏線だ。

・黄金の真実
ベアトは戦人に真相に至って欲しくてゲーム盤を作った。戦人がベアトのゲーム盤の真相に至る事は約束を思い出す事でもあり、さらに戦人がベアトの思いを受け止めたのなら「ベアトと戦人の恋の成立」を意味するとも言えるだろうが、細かい話をすると、戦人が魔女のゲーム盤の真相に至る事というのは、魔女幻想が消え去る事とイコールでもある。戦人が真相に至るとベアトは魔女ではいられなくなってしまうのだ。しかし、もし戦人が本当の意味で真相に至ったのならば、EP3の後半の展開と同様に「ベアトを魔女と認める」と黄金の真実を発動する事でベアトは魔女のまま戦人と結ばれる事ができる。EP5の戦人が真相に至った時に戦人が黄金の輝きに包まれていた事を覚えているだろうか。ラムダが戦人の黄金の輝きに驚いていたし、ワルギリアも「その輝きこそが戦人君が本当の意味でベアトを理解した事の証」と語っている。戦人がベアトを黄金の真実で魔女だと認めてあげる行為というのは、「真実を魔法で優しく包み込む」という意味合いでもある。戦人が本当の意味で真相に至る事というのは、戦人が魔法の成り立ちを理解する事でもあるのだ。魔法を理解しないとベアトを救う事はできないだろう。この魔法の思想というのはEP4の真里亞の幸せのカケラを見つける魔法でもあり、EP8で戦人があのようなゲーム盤を作って縁寿を包み込もうとした魔法でもある。

・EP5の意味
EP5はEP4で戦意を失ってしまったベアトに代わり、ラムダデルタがゲームマスターとして登場する。ベルンカステルが人間側であり戦人は彼女達のゲーム盤の乗っ取り行為を嫌悪し、途中まで不参加を決めているが、後半のワルギリアのセリフにあるように、本来ベアトが望まないと2人は呼べないと語られている。ベアトが望んだからこそラムダとベルンがやって来たのであり、勝手にやってきたのではないのだ。EP5で大事なのは、EP4の一件でベアトは戦人が約束を忘れていた事によって、完全に戦意を失ってしまってる点だ。しかし、かといってベアトは何をするでもなく、庭園でぼーっとしている。ベアトは戦人が約束を忘れていた事に失望したものの、まだ「戦人が事件の真相に至り、自分の気持ちや約束の事を思い出してくれる」という希望を捨てきれず、その迷いがまだある状態だ。そして、戦人はベアトの出題を「ミステリーとして解ける問題」だとは認識せずに、未だに「未知の人物X」だとか「未知のトラップX」などというアンチファンタジーとして認識し、真剣にミステリーと信じてベアトの問題に向き合っていない。

つまり、EP5の状況は真剣にミステリーに向き合わない戦人と未練を捨てきれないベアトとの間で、ゲーム盤がこの先どんなに続こうと永遠に決着がつかない状況に陥っていた。ベアトがラムダとベルンの2人を呼んだのは、これに決着をつけ「互いを苛む拷問」を終わらせるためなのだ。

ラムダは予想通りに本来ならばベアトがやらないような事件を作ってきた。夏妃を事件の犯人にした話を作った理由は、戦人がベアトの出題をミステリーとして見ずに、ずっと「アンチファンタジー」として接してきた態度や甘えを断ち切るためだ。夏妃がああいった形で事件の犯人にされてしまったのを見て、戦人は事件をミステリーとして解釈し、別の真相を構築する必要に迫られた。しかし、戦人はそんな場面でもまだ「未知の人物X」というような手段で戦っていて、最終的にドラノールの剣によって貫かれ、死亡(ゲーム盤での思考停止の意味)してしまう。ラムダによりゲーム盤を追放された戦人のあの時の状態は、ノックスの十戒というミステリーの道しるべ的意味合いの剣で殺されていて、簡単に言うと「ミステリー的解釈で事件を解くという意思が無くなった状態」なのだ。上層世界のベアトにとって、戦人が約束を覚えていない場合、最後の望みだった「戦人が事件の真相に至った結果、約束を思い出してくれる」という可能性があの時完全になくなってしまったのだ。ベアトは戦人に事件の真相に至ってほしくて存在していたため、ベアトが存在する目的がなくなってしまい、その結果ベアトは戦人の事を完全にあきらめ死んでいった。それがあのEP5の場面の意味だ。

ベアトが死亡した後、戦人はノックスの十戒を頼りにベアトの事件を再度考察し、真相に至る。ほんのちょっとの差で戦人は間に合わなかった。戦人のあの絶叫は、事件の真相に至った結果、自分がヤスとの約束を完全に忘れていて、ヤスに拷問を課してたのが自分だったと知った。ベアトはそれに気づいて欲しくて、メッセージを事件に込め戦人に送っていた。その事に気付いた戦人の深い後悔がEP5から伝わってくる。戦人に真相を伝えられなかったベアトと、ベアトの真相に気付けなかった戦人の悲しいすれ違いの場面だ。ベアトは戦人が真相に至ってくれるまで待つという行為をやめ、ラムダとベルンのゲームで「魔女を認める」「人間犯人説で説明が付けられる」いずれかの決着を明確につけ、ドローゲームという今までの「逃げ」をやめ、どちらの勝利になっても結果を受け止めるという覚悟を決めたのだ。だが、結果は人間犯人説で戦人が思考停止し死亡、ベアトの気付いてほしかった真相にもベアトが生きてる間には辿りつけなかったのだ。

・EP5の意味を踏まえた世界構造の考察
上記のような長々としたEP5の意味を踏まえて、世界構造の部分も考えたい。このEP5は98年世界に存在する偽書であり、物語を六軒島から生還した十八が作っている。EP5でベアトが死んだ事と、戦人が真相に至った事は、98年世界で物語を作っている十八ともリンクしてるのではないだろうか。実際の六軒島での事件の真相の考察はEP7で詳細にやるが、EP7で語られた内容は真実であり実際の六軒島では碑文が解かれ、一族が殺し合いをし、戦人はヤスと逃げている。ヤスはボートから海に飛び込み自殺しているが、あの実際の六軒島では戦人にそもそもEP1~4のような事件の出題がされていない。それ以前に碑文が解かれて事件を中断しているのだ。つまり、戦人はあの六軒島の時点では真相に至っておらず、実際に真相に至ったのは記憶を失ってから幾子と一緒に暮らし、ワインボトルのノート片の内容を目にしてからだろう。十八は戦人の記憶を思い出しながら、世間で話題になっていたワインボトルのノート片を読み、事件を構成する要素などからEP5の戦人同様真相に至ったのだろう。しかし、EP5の戦人が間に合わなかったように、現実の十八が真相に至ったのも遅かった。六軒島での事件のかなり後に気付いたのだろう。それが反映されたのがEP5と考えられる。

・ワインボトルのノート片をヤスが海に投棄した意味
ヤスの動機部分は今まで断片的に語って来たが、彼女は事件を使って、自分の2つの人格の恋に決着をつけようとしていた。

「ベアトは、あなたに解いて欲しいと願って、解けるようにこのゲームを、……この物語の謎を生み出しました。」 
「ベアトは、俺に解いて欲しいと願って、解けるようにこのゲームの謎を生み出した。」

この2つの赤字から分かるように、事件部分は戦人のために作ったものであり、事件の真相に至った結果、ベアト人格と戦人の恋が成立する奇跡を願ったものだ。しかし碑文が解かれ紗音人格と譲治との恋が成立した場合、ベアト人格は事件を起こす事が出来ず、戦人に何も伝える事が出来なくなる。ヤスがワインボトルを海に投げた理由は、奇跡的に何本かが誰かに拾われ、戦人が読んでくれて、真相に至ってくれる事を願ったものなのではないかと思われる。もちろん海に投げたワインボトルが誰かに拾われ、戦人にまで届く事は奇跡に近いだろう。しかし、ヤスはその奇跡を願ってボトルを投じたに違いない。ワインボトルのノート片の締めくくりの一文を思い出してほしい。

「これを読んだあなた。どうか真相を暴いてください。それだけが私の望みです。」

十八はヤスの願い通り、真相に至ったのだ。悲しいすれ違いの末に。

EP6

EP6 Dawn of the golden witch


このエピソードのタイトル画面の紹介文「これはもはや告白なのです」にもあるように、EP6は紗音と嘉音が同一人物だったという核心部分以外にも非常に多くの謎の伏線が隠されており、ヒントと答えの塊と言っていい。事件部分はロジックエラー時の嘉音の戦人救出の謎部分が主で、他の部分は戦人がゲームマスターとして企てていた狂言殺人がヱリカによって大部分解かれている。焦点はロジックエラーのトリック部分だけと言っていい。

事件の流れ

屋敷の客室や客間、貴賓室など6か所で夏妃、絵羽、楼座、真里亞、霧江、戦人の6人の死体が発見。部屋はマスターキー以外の物によって(チェーンなど)内部より施錠された密室だった

一同はゲストハウスに籠城する事にし、ゲストハウス2Fのイトコ部屋とその隣の部屋に分散して籠城した

部屋を調査のため抜け出したヱリカは、魔女の手紙を発見。屋敷の戦人の死体のあった客室へいく

客室はヱリカが戦人の死体発見時にした封印が保たれていて、戦人の死体は部屋から消失していた。ヱリカのロジックエラー申請により、ラムダが戦人の手を確認。入れ替わりトリックによる新しいロジックが提出される。しかし、ヱリカが自分で死体を検視していた際に、夏妃、絵羽、楼座、真里亞、霧江の5名を殺害していた事が発覚。入れ替わりトリックが成立しなくなりロジックエラーが発生

ベアトリーチェより新たなロジックの提出があり、ヱリカが謎を解けずにEP6終了

【戦人のロジックエラー密室 嘉音の戦人救出+消失】

「いとこ部屋は完全な密室が最後まで保証されています。」
「隣部屋は確かに封印されましたが、ロジックエラー時には、扉のみしかその維持が証明されませんでした。」
「封印時の隣部屋に居たのは、秀吉、譲治、熊沢、紗音、南條である。そして、隣部屋の人数は5人である。この5つの名に該当する者以外は存在しない!全ての名は、本人以外には名乗れない!!」
「戦人を救出したのは、間違いなく嘉音本人である。」
「戦人と嘉音は別人である。」
「戦人救出時、客室に入ったのは嘉音のみである。」
「認めようぞ。そなたの入室からロジックエラー時まで、客室を出入りしたのは、そなたと戦人と嘉音のみだ。」
「認めようぞ。そなた(ヱリカ)と戦人と嘉音で、3人である。」
「無論だ。3人、即ち3体が出入りした。そなたと嘉音は入ったのみ、戦人は出たのみ。」
「全ての名は本人以外に名乗れないと赤き真実ですでに語っている。よって、ヱリカ、戦人、嘉音の名はいずれも、本人にしか名乗れぬのだ。」
「救出者とは、戦人の開けたチェーンロックを、再び掛け直したもの、ということにする。戦人を救う意思があったかどうかは、問わないことにしておく。」
「復唱要求。 “私は救出者ではない”」 
「当然だ!」
「復唱要求。 “出入りの定義とは、客室と外部の境界を跨いだかどうかである”」 
「認めようぞ。」
「復唱要求。 “客室とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット内の全てを含む”」 
「認めようぞ。」
「定義確認。 客室内とは、ベッドルーム、バスルーム、クローゼット内の3区分である」 
「妾もその認識でいるぞ。そしてすでにそなたは、ベッドルーム、バスルームの2区分で、誰も隠れていないことを赤き真実で確認したはずだ。」
「ゲームは、私が客室に入ったところで終ってしまったのだから、私は、自分で閉めたチェーンロックを、開けてさえいない。」
「だから、私が退出した後に、私に続いて脱出、というのは通用しない。」
「また、チェーンロック施錠は、入室と同時に行っている。」
「私が入室してから、チェーンロック施錠までの数秒間に、誰も退室は出来ないのだ。」
「客室は、戦人検死時に封印したため、私が再び訪れて封印を自ら破るまで、客室の出入りは一切不可能だ。」
「よって、私の入室時、戦人は客室内のどこかに隠れていたことは確定する。」
「戦人の脱出のチャンスは、私が封印を破った後のみ。」
「さらに限定すれば、私がバスルームにいる間しか脱出チャンスは存在しない。」
「ベッドルームに嘉音は存在しない。」
「客室に、嘉音は存在しない。………もちろん、クローゼット、ベッドルーム、バスルーム、この全てにおいてである。」

この謎こそがうみねこの最大の謎である「嘉音と紗音が同一人物」という設定を明かすための謎であり、これは嘉音と紗音が同一人物でないと成立しない。それはこのロジックエラーの密室の解法が「赤字に抵触しない解法」「雛ベアトが恋の試練を経て知った事実」「フェザリーヌの語ったベアトリーチェの心臓」「地の文で語られた『この物語最大の謎はもうすぐ明かされる』という表記」これら全ての説明になっていなければならないためだ。このため、ゲーム盤に紗音と嘉音は2体いたなどとする可能性は一切ない。1つの肉体を持つ1人の人間が複数の人格を持っていないと成立しない謎なのだ。

この謎の最大のポイントはヱリカの客室での見落としだ。EP5では死体を自ら確認せずに検視結果だけ聞いて物事を判断していたヱリカだが今回EP6でも同じ失敗をしている。ベアトとの論戦時に、バスルームからベッドルームに戻ったヱリカは、再び嘉音がベッドルームに隠れた可能性を考え、ベアトに青き真実で「嘉音はベッドルームに隠れている」と主張しベアトに「ベッドルームに嘉音は存在しない」と赤字で言われている。彼女はそれに納得し、クローゼットのみに焦点を絞るが、なぜ彼女は自分の目でベッドルームを再度確認しなかったのか。赤き真実で嘉音が存在しないと断言されて、ヱリカはその言葉の本当の意味を理解できなかった。それがヱリカの見落としであり、失敗なのだ。

トリックを明かすと、封印が破られている隣部屋の窓から紗音が脱出する。紗音は例の魔女の手紙を置き、ヱリカがそれを発見するのを見届けて嘉音に変装する。ヱリカが戦人のいる客室に向かったら廊下で待機し、戦人と入れ替わりで客室に入り、チェーンロックをかける。ヱリカがバスルームで苦戦してる間に、紗音に変装しなおし、ベッドルームに隠れる。

これが真相だ。

つまり、「嘉音は客室に存在しないが、紗音は客室に存在している」という事なのだ。最初に語ったヱリカの見落としがポイントであり、ヱリカは嘉音がベッドルームに存在しないという意味を「ベッドルームに誰も存在しない」という意味に錯覚させられた。客室に入った嘉音がその後消失するトリックを成立させるには、正にベアトリーチェのゲーム盤の心臓部分である「紗音と嘉音は同一人物」という謎を使うしかなく、この謎によりこれが確定した。

※補足
ロジックエラー密室の補足だが、最後クローゼットに嘉音の姿は無く「灰緑色の雨ガッパ」が入っていたという描写が入る。上記の「客室内で嘉音が紗音に変装しなおす」というのは、実際にはこの雨ガッパを脱ぎ、「元々着ていた紗音の服装に戻った」という事で、別にあそこで着替えを始めたという事ではない。隣部屋を脱出した紗音は、雨ガッパをすっぽりと顔までかぶり、紗音としての服装や髪形を隠し、人格だけ嘉音として切り替わった状態で戦人と入れ替わり、客室内で雨ガッパを脱いだという事だ。その変装に使った雨ガッパがクローゼットに残ったままになってしまったのだろう。そして、もう一つ補足だが、「無論だ。3人、即ち3体が出入りした。そなたと嘉音は入ったのみ、戦人は出たのみ。」こういった嘉音が客室に入ったと表記される部分で、なぜ嘉音だけが入ったと表記され、同じ肉体を使っている紗音やベアトの名前が除外されるのかといった部分の理由は「全ての名は本人以外には名乗れない」という赤字があるのが理由だ。嘉音にとって紗音は人格として別人なのであって、人格目線で見た場合嘉音は紗音ではないのだ。そのためこの赤字に抵触するので、嘉音が肉体を使っている時は、自分の事を紗音と名乗る事はできない。もちろん紗音が肉体を使う場合は可能だ。この「本人」の考え方がどこに適用されているのかという部分が非常に重要だ。

・紗音と嘉音
EP6はヱリカが探偵では無い訳だが、一応ヱリカの前には今回も紗音と嘉音は同時に現れていない。つまりEP1~6において、紗音と嘉音は主観が保障されている探偵の前には同時に現れていない。これが「紗音と嘉音は1人の人間の肉体を共有している人格同士」というトリックを成立させる前提条件でもあり、探偵の前に同時に現れ同一人物トリックが破綻するというケースは1度もなかったのが分かる。以前にも語ったが変装によって一人の人間が紗音と嘉音を演じているという設定がそもそも通用するのか?なぜ誰も見破れないのか?長年右代宮家に勤めてて誤魔化せるわけがない、といった部分の疑問については、そもそもこのEP1~6の物語は98年の世界に存在しているワインボトルのノート片と八城十八による偽書であり、文字で記された物語の設定でしかないという解釈で成立する。これは読み物の世界での同一人物トリックであり、現実世界ではないのだ。

・本編中の人格に関連する伏線
「私たちにとって、人格が人そのものならば、例え同じ肉体を共有していても、異なる人格を指して別人であると言い切れるだろう」

ではその他の重要な部分を考察していこう

【古戸ヱリカの自己紹介】

「初めまして、こんにちは!探偵ッ、古戸ヱリカと申します!!招かれざる客人ですが、どうか歓迎を!!」
「我こそは来訪者ッ、六軒島の18人目の人間ッ!!!」
「…………申し訳ないが、」 「そなたを迎えても、」
「「17人だ。」」

さて、今回で同一人物トリックも明かされたという事で、赤字による在島人数のトリックについてもここで新たな赤字が出た。これは単純に肉体でのカウントのしかたと、人格でのカウントのしかたの違いを説明するためだけの物ではなく、EP3で詳細に説明した「なぜヤスのベアト人格が赤字に含まれていないのか」という疑問も明かすためのものでもある。

ヱリカの言い回しに違和感を持つと思うが、ヱリカは人間の探偵として物語に出てくるが、同時にベルンカステルの駒である魔女でもある。つまりこのような言い回しをしないと18人目の「人間」としてカウントできないのだ。この時仮にヱリカが「真実の魔女、古戸ヱリカと申します」と言ったならば、「18人目の人間」とは赤字で語れないのだ。そういう意味合いの含まれた赤字であり、人格を1人としてカウントする場合、金蔵を差し引いた17人(紗音と嘉音は2人、ベアト人格は魔女なので加算されず)にヱリカを足して18人の人間。肉体でカウントする場合、金蔵を差し引いた17人からさらに紗音と嘉音を1人としてカウントし16人、これにヱリカを足して17人となる。

・98年世界の世界構造
EP4時にEP4の98年世界は幾子による偽書の世界であり、現実を元にした架空の話と書いたが、このあたりの設定のヒントがEP6では大量に出てくる。まずEP4の六軒島に行った縁寿の冒険を記した98年世界。そしてEP6の六軒島に行く前に、出版社を通して幾子とコンタクトが取れた縁寿の98年世界。そして、EP8のビルから飛び降りずに作家になった縁寿の98年世界。大きく分けてこの3つの98年世界があるわけだが、EP4とEP8の98年世界は特に「ビルを飛び降りた縁寿」と「ビルを飛び降りなかった縁寿」に分かれておりどっちかは確実に架空の話である。EP4とEP6も同様に、「幾子に会えなかった縁寿」と「幾子に会えてEP6の偽書を読ませてもらった縁寿」に分かれていて、ここも矛盾がある。

ポイント1 天草に対する縁寿の認識
98年世界を考察するポイントの1つがこれで、EP8の作家になった縁寿は小此木社長に見送られる時に天草に会っているが、この時に天草の事はちょっと知ってる程度であると説明されている。あの縁寿は天草とほとんど初対面のような物であり、EP4とEP6のように密接な繋がりがあるわけではない。つまりEP4とEP6は現実の世界を元にして幾子が書いた偽書の中の98年世界だと考えられる。ちなみにEP6の終わりに天草と小此木が密談してる様子が描かれていて、EP4の六軒島で縁寿を殺す可能性の話をしている。EP4はエンドロールに縁寿が1998年に死亡と書かれているので、天草に殺されてしまった物と思われる。

ポイント2
EP6で幾子によってEP3~6が彼女の偽書であると明かされている。「Banquest」「Alliance」「End」は縁寿がネットで読んだと言っておりEP6の「Dawn」も読まされている。そして黄金のブローチが登場するエピソードも彼女の作であるようなセリフもあり、EP2は大月教授のいう「事件前日から始まり、18人全員死亡で終わる話」ではないので幾子の偽書であると言える。EP6内で縁寿は自分の事を「名前を明かしたルール違反で死んだはず」と言っており、また「また、あんたの偽書に私が登場するの?今度はマシな殺し方を頼むわ」と語ってるのでEP4は偽書の世界、EP6はEP4の途中で「幾子に会えた可能性世界」を描いた偽書の世界であると言えるだろう。

ポイント3
このように様々な可能性の縁寿の世界が偽書として描かれており、その部分に関連する幾子のセリフと縁寿の主観描写もかなり重要だ。本編から抜粋する。

(幾子のセリフ)「あなたとこれで二度と会わないだろうけど、いつかどこかで、別のあなたに会える幸運を祈っています」
(縁寿の主観描写)「彼女とはもう2度と会わないだろう。しかし、それは“私”は会わないという意味で、他の私たちは会う事があるかもしれない」

幾子が98年世界の縁寿を偽書に登場させ物語を紡いでいる事の伏線部分だ。幾子は六軒島の物語と実際には会っていない縁寿の事を偽書で描写し、恐らくは、現実世界の縁寿に何かを伝えようとしてるのではないのか?と推測できる。おそらく、その部分の伏線であろう幾子のセリフがあるので抜粋する。

「私という存在など、あなたという真の継承者を覚醒させるための、ただの道しるべにすぎないのだから。エンジェ・ベアトリーチェ」

つまり、実際には会った事がない縁寿を幾子が偽書の中に登場させたのは、六軒島の事件以来1人で寂しく孤独に生きている縁寿に対してEP8のあの98年世界の縁寿のように、白い魔法を理解した人物になってほしいという願いが込められた物だと思われる。この時点で戦人の記憶を持った十八は縁寿に会うつもりはなかったのだと思われる。だから、妹のためにせめて偽書を通してメッセージを送っていたのだろう。

【世界構造の考察のポイント】

世界構造に関する考察は、うみねこの考察の中でも多くの人が悩んでる部分だが、一番良いと思うのは「作家になった縁寿は、一体何がキッカケで一族や家族が死んだ過去を乗り越えたのか?」という疑問の答えを見つける事だと個人的には思う。最終的に私は偽書説を最終結論としたが、各説のポイントや矛盾点を説明したい。

1.偽書説
これは私が最終結論として採用した説で、作家になった縁寿は偽書の兄のメッセージを読むことで心の整理を付けたとする考え方だ。つまり、現実世界は作家になった縁寿のいる世界だけであり、EP4やEP6、そしてEP8の手品EDは偽書の世界だとする考え方だ。これはミステリーとして破綻しない考え方であると同時に、十八が偽書を書いていた理由の一つとして「孤独に暮らしている縁寿にメッセージを伝えるため」という動機付けもできて、うみねこ全体としても現実世界と、その現実世界に存在している偽書という関係性がうみねこの各EPの存在意義を上手く説明できる。

2.パラレルワールド説
これはうみねこの世界に存在する現実世界のEP4、EP6、EP8の手品ED、魔法EDがそれぞれパラレルワールドであるという考え方だ。この説を考察でよく見る人も多いと思う。これを考える時も同様に「作家縁寿はどうやって心の整理を付けたのか」を主体として考える。各EPの現実世界がパラレルワールドだとすると、EP4の六軒島に行った縁寿が学んだ真里亞の魔法の思想は違う世界線の作家縁寿には何の関係もない事になる。EP6の縁寿に関しても「幾子に会えたEP6の縁寿」と「作家になるまで幾子に会えなかった魔法EDの縁寿」というふうに、パラレルワールドとしては説明がついたとしても、「縁寿が気持ちの整理を付けたキッカケ」の説明ができない。異なる世界線の縁寿の記憶は共有されている、などと言い出したら、それはもうミステリーではなくファンタジーなので、それは採用できない。さらに、パラレルワールドで作家縁寿が幾子の偽書を読んでいたと考えた場合でも、今度は「なぜ幾子は違う世界線の話と全く同じ話をさも見てきたかのように書けるのか」という問題が発生する。もうこの時点でミステリーとして解釈できないので、パラレルワールド説は問題が多すぎて採用できなかった。

3.ファンタジー説
いわゆる、作家縁寿はゲーム盤に登場した縁寿と同一人物という考え方だ。この場合縁寿の気持ちの整理に関する説明はつくが、この場合世界構造の解釈として、「作家縁寿のいる世界も偽書の世界である」もしくは「タイムマシンに乗って86年世界に行って戻って来た」という解釈になる。タイムマシンに関する馬鹿馬鹿しさはとりあえず置いておいて、この場合でも明確に矛盾する部分が実は存在する。それは魔法EDの黄金郷に18歳の縁寿がいる矛盾である。「作家縁寿のいる世界も偽書の世界である」と考えた場合、作家縁寿自体が偽書の縁寿という考え方になるが、そもそも黄金郷とは死後の世界の概念なので、人格死であれ、肉体死であれ、概念として死んでいないと行く事はできない。では何故、黄金郷に縁寿がいるのか?という疑問が当然発生する。作家縁寿はどう見ても死んでいない。うみねこの物語で唯一死亡と断言されたのはEP4の縁寿だ。黄金郷は幻想住人が一緒にいるので、黄金郷の死んだ縁寿のいる世界は偽書世界だといえる。つまり、あのシーンに「作家になった縁寿」と「偽書世界で死亡した縁寿」という別人の2人の縁寿が描かれた事になり、「作家縁寿が偽書の世界を旅してきた縁寿」という考えが成立しないのだ。偽書世界の縁寿は黄金郷にいる方の縁寿であって、作家になった縁寿ではない。

つまり総合的に考えて筋が1本キッチリと通る考え方は偽書説しかないのである。

・ヱリカの自己紹介の赤字の解釈
「初めまして、こんにちは!探偵ッ、古戸ヱリカと申します!!招かれざる客人ですが、どうか歓迎を!!」この赤字の前半部分の、「初めまして、こんにちは!」の部分と「探偵ッ、古戸ヱリカと申します!!」の部分だが、この部分を読んでいて違和感を持った人は多いのではないかと思う。まず、誰に対して初めましてなのか?という疑問が1つ目。ヱリカは殺人を犯しているのだから、探偵を名乗れないはずなのでは?という点が2つ目だ。まず、誰に対して初めましてなのかという部分だが、世界構造に関する説明を終えた今なら、ある程度の推測が出来る。あの時点であの場にいる人物の中でヱリカと初対面の人物など存在しない。EP6は冒頭で触れたタイトル画面の紹介文にもあるように、答えそのものが書かれてしまっていると言っていい。なぜEP6だけ、上層に幾子と朗読者である縁寿が描かれているのか。なぜこのような構造で話が語られるのか。それは、その構造自体がうみねこの答えそのものだからである。紗音と嘉音の変装が何故バレないのか?という疑問の答えも、この「原稿を読ませてもらっている縁寿」という視点で読めば、縁寿が単に文章を読まされてるだけという部分から、「現実世界ではなく、物語世界だから」という発想に結び付く。ヱリカの自己紹介もその発想によって、幾子が原稿を書く時に、読んでくれる読者に対してヱリカに自己紹介させたと考えれば、誰に対して初めましてと言ったのか分かるだろう。これはうみねこの世界構造を考える際に「偽書世界と、その読み物としての偽書が実際に存在する現実世界という『対比構造』で物語を読まないといけませんよ」という事なのだ。この発想はEP8の物語を読む時も非常に大事になる。誰に向かって語られている物語なのか?をEP8は意識して読まなければならない。ヱリカが探偵を名乗った部分については、ロジックエラー密室の時の赤字にヒントがある。

「ゲームは、私が客室に入ったところで終ってしまったのだから、私は、自分で閉めたチェーンロックを、開けてさえいない。」

ヱリカが探偵宣言を出せないゲーム盤は、ロジックエラーを戦人が出した中盤の展開の時に終わってしまってるのだ。最後の赤字の場面はもうゲーム盤の外だという事になる。だから、ヱリカは探偵を名乗れたと考えるとスッキリする。

・地の文
うみねこという作品は地の文で嘘の描写がされる作品だが、その部分の設定の説明がされている。EP6で「Dawn」を縁寿が語り手として物語を朗読しており、「物語の語り手が神の視点」ではなく、私見の入る人間だと明かされている。これがうみねこが地の文で嘘を付く理由であり、各EPが作中作である理由でもある。

・縁寿について
幾子に会った時に「98年世界では縁寿の事はワイドショーで色々報道されてる」と説明されている。右代宮グループの遺産を継いだ事による物だろう。実際の現実の98年世界での幾子は縁寿には作家になるまで会っていないが、このようにワイドショーやら、その他の手段などを使って縁寿の情報を得る事は可能だったようだ。

・赤字について
うみねこの世界で出てくる真実を保障する「赤字」とはそもそも何なのか。本編での幾子のセリフを抜粋する。

「おや、赤インク以外で書いた文字は全て読むに値しないとまで言い切る御仁も多いというのに。光栄なるかな人の子よ。黒い文字も読んでくれて」

つまり幾子の書く偽書自体に赤字があるという事で、赤字とは作者である幾子が真実だと保証して記すものだと思われる。十八のプロットを元に偽書を書くときに、幾子が真実だと保証した物を赤字で記していると思われる。

・雛ベアトと姉ベアトの意味
姉ベアトとは六軒島でヤスが魔女として作った人格であり、悪食島の伝説の設定も受けついだ人格だ。雛ベアトというのは6年前にヤスが戦人に聞いた「戦人の理想の女性像」を反映させたものであり、ヤスの紗音人格と戦人との恋心を、戦人の約束破りの辛さ故にベアトに託した物だ。元々の魔女人格と戦人の理想女性像とヤスの戦人への恋心を融合させて、黄金の魔女ベアトリーチェが生まれた。雛ベアトが戦人を愛するように行動しているのは、ヤスがベアト人格にそう命じた事の比喩だと思われる。雛ベアトが夏妃の殺人の時に霊鏡を苦手としていたのは、元々のヤスが自分のみすぼらしい姿を鏡で直視したくない事の反映だと思われる。いくら人格で理想像を作ろうが、その魔法は鏡を見た瞬間に解けてしまうのだ。

「あのベアトリーチェが蘇ることは、二度とない。」
EP6で出たこの赤字は非常に重要で、EP5でベアトは戦人が真相に至ってくれる事をあきらめ死んでいる。新たに生み出されたEP6のベアトはゲーム盤から生み出した新しいベアトであり、正確にはEP5のベアトが復活した訳ではないのだ。このEP6の意味合いは現実世界での八城十八の気持ちが大きく反映されていて、EP5の時に説明したように、十八はヤスの真相に至るのが遅かった。恐らくは記憶を失ってからワインボトルのノート片を読んで真相に至ったものと思われ、偽書の中にEP5で死んだベアトをそのまま復活させる事は、十八の心が許さなかったと思われる。しかし、遅くなったとはいえ、真相に至りヤスの気持ちを知った十八は、EP6に自分の気持ちを込めたのだろう。それが新たに生み出されたベアトとの結婚であり、十八が真相に至った末にヤスに捧げる物語なのだ。ベアトリーチェが死んだ事は覆せないけども新たなベアトリーチェと結婚する事で十八は自分の気持ちを偽書に込めたのだ。

・ヱリカと真里亞の魔法論争
本編中のキャンディーの魔法のシーンだが、なぜあのようなシーンが描かれたのだろうか。ヱリカが真里亞の魔法を手品で説明し、無理やり真相を暴いているが、あのシーンは六軒島の魔女伝説殺人事件とも関連してる物と思われる。例えば、ヱリカのように魔女伝説を無理やり暴き、真相は人間による黄金をめぐった殺し合いでした、と真相を暴く事がどれだけ大事なのか?という問いかけだ。そうやって真相が暴露され縁寿や死んだヤスや親族、生き残った戦人が心を痛めるよりは「魔女の仕業だった」という魔法で守る事の方が大事だという作者の問いかけだろう。ここで勘違いしてはいけないのは、あくまでも98年の現実世界の作中世界の人々が真相を暴く事についてであり、実際にゲームをプレイしてる私たちが真相に辿りつく事を否定してるものではない。この巧みな世界構造のしかけで勘違いしないようにしよう。

・結婚した時のベアトのセリフ
「あなたと一緒になりたくて生み出した物語。だからこの世界の目的は果たされました。だからこれからはあなたが紡いでください。私とあなたのこれからの物語を」

ベアトは戦人が真相に辿りつき、約束の事を思い出し、その結果戦人と恋が成立する奇跡を願ってゲーム盤を作った。その目的がEP6でついに達成された事を裏付ける部分で、非常に印象深いシーンだ。十八がヤスに真相に至った事を報告するための偽書でもあり、EP8のエピローグ部分とも関連する、ある意味うみねこの「真ED」とも言えると思う。

EP7

EP7 Requiem of the golden witch

EP7のヤスの回想から読み取れる重要な部分は大きく3つだ。それはヤスの身の上話の部分とヤスが黄金を受けついだ事とヤスの恋の話だ。ヤスは金蔵が夏妃に預けた九羽鳥庵のベアトの子供であり、崖から落ちたものの、南條により一命を取りとめ福音の家で幼少期を過ごしている。右代宮家に使用人として源次に連れてこられており、金蔵がまた過ちを犯すのを恐れてヤスの年を3歳少なく申告している。碑文の謎が掲げられた時に紗音と嘉音がいる時に源次は「懐かしき故郷とは台湾の事だ」とヒントを出しており、源次は元々ヤスが金蔵の子供であると明かすつもりだったのが分かる。つまり、右代宮家に連れてこられ、碑文を解き、金蔵が反省したのを確認して2人を引き合わせるという筋書きがあり、それがクレルの言う「人生の岐路に置いて私は一度も自分で運命を決める事が出来なかった」という言葉の意味だ。

ヤスが碑文を解く事によって共犯の買収に使える黄金と、最後に皆殺しが可能な爆弾を手に入れてしまい、本編でいう「本当の魔力を手にしてしまった」という部分にも繋がる。これで事件のおぜん立てがそろった訳だ。

ヤスの回想で重要なのは紗音人格の戦人との恋の描写であり、戦人が約束を忘れていた事により紗音は耐えられなくなり、戦人への恋の芽をベアト人格に預けている。この部分はEP6の恋の試練の部分に伏線があり、ベアトは主人格の「お母様」によって戦人を愛する人格へと作り直されてる描写があり、これ以降ベアトは「自分が戦人を愛する人格」として行動をする。ヤスの回想は事件の2年前で終わっているが、その後は延々本編中で語られた通りだ。紗音が譲治に恋をして86年の親族会議の日にプロポーズされる。一方戦人が86年に帰って来る事によってベアトに預けていた戦人の恋の芽が再び活動を始める。EP6の恋の試練の部分が正にこの部分を指しており「2つの人格が違う人間に恋をしている」状態だ。クレルも「決闘はしたのです。決着もつきかけていた。でも86年という年は余りに無慈悲が過ぎた。なぜ86年だったのか…」と語っている。85年なら譲治がプロポーズをしてないので戦人と素直に結ばれたかもしれない。あるいは87年なら既に譲治と結婚しているから、戦人の事はすんなりあきらめられるかもしれない。

・動機のポイント
ここまでの部分から重要なのはヤスが「紗音人格と譲治の恋」「ベアト人格と戦人の恋」これを自分で決められなくなっている点だ。ヤスが右代宮家に連れてこられ、碑文を解くまでの過程を「自分の意思が一切関与できなかった」と信じているヤスは、自分の運命をルーレットに任せる決断をしている。そして、自分の決めたそのルールに絶対に従うと。つまりヤスの動機というのは「紗音人格と譲治の恋」「ベアト人格と戦人の恋」をルーレットによりどっちかに決めるという事なのだ。動機というのを「殺人事件を起こす動機」という風に考えるのはその時点で間違いだ。ヤスの回想に右代宮家に対する恨みなどは一切描かれてなく、あくまでもヤスは事件をルーレットの手段として使うだけで、事件自体が目的ではない。

・ヤスのルーレットの目
以上の事から、ヤスがやろうとしてる計画にはルーレットの目として「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」が存在していないといけない。なぜならそれをルーレットにより選ぶ事が目的であるからだ。そしてもう一つ「誰とも結ばれない」が存在する。これは以前に語った部分でもあるのだが、「そなたの罪により、この島の人間が、大勢死ぬ。誰も逃さぬ、全て死ぬ。」という赤字は、戦人が約束を忘れている事が原因となって、島の人間が全員爆弾によって皆殺しにされる、と読み解ける。戦人が約束を忘れているという事は、「戦人と結ばれる」が達成できなくなる。これは譲治と結ばれず、戦人とも結ばれない目が出た場合、ヤスは爆弾によって全員を殺し、良くいえば「黄金郷で全ての人格が思い人と結ばれる」悪く言えば「誰とも結ばれなかった絶望ゆえに心中をする」という事なのだ。

・それぞれの恋のルーレットの目
これまで過去EPで語って来たように「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」はヤスが奇跡的な低確率で出る事を祈っているルーレットの目であり、事件の中でも「奇跡的に出る低確率なルーレットの目」といえる。まず紗音は譲治にプロポーズされているので、碑文が解かれると事件を中断し、黄金を解いた人に継承し、紗音は譲治と結婚しそのまま島を離れて幸せになるという目が成立する。碑文殺人による事件部分自体は過去何度も「戦人が解ける事を祈って作られた」と語られてるように、戦人のために作られたものなので譲治には関係がない。つまり、戦人が事件の謎を解き、犯人の正体を暴き、トリックや事件の構成要素「密室」「嘘」「共犯」や犯人の動機を推測した先に戦人が約束を思い出し、最終的に戦人がヤスの思いを受け止めるという可能性にかけた物で、これも確率的には非常に低く、それでもこの目が出たならば「戦人と結ばれる」が成立する。そして最後に誰とも結ばれなかった場合爆弾によって全員皆殺しが起きる。

・ヤスと魔法大系の思想
ヤスが最後に爆弾による皆殺しを予定してる部分は、「皆殺しにしたいから設定してる」という事ではない。これはEP2で詳しく解説した彼女の魔法大系の思想と「リスクの概念」が非常に重要になるので参照してほしい。

・奇跡が無ければ達成できない願い
ヤスは赤ん坊の時に使用人と共に崖から突き落とされ、大けがをした際に「恋の出来ない体」になってしまったと、クレルのハラワタで挿入されるシーンで語られている。インタビューでも竜騎士07先生によって、性的な不具合によって子供が産めない体になってしまったんじゃないか、と読み取れるようなニュアンスの説明がされており(譲治の語る子沢山の未来像が紗音にプレッシャーを与えていたというような説明)、恋愛を成就させる事自体がヤスにとっては難しい事だ。相手が自分の体を受け入れて一生愛してくれるのかどうかなんて分からない。ヤスが奇跡的な低確率で出るルーレットの目に運命を託しているのは、奇跡が起きるのなら、きっと自分の「恋の出来ない体」の事も相手が受け入れてくれる奇跡が起こるに違いないという、ヤスの願いなのだろう。

・クレルが理御に言ったセリフ
「ありがとう。……幸せになって。そして素敵な人と出会って。……願わくば、あなたが魔女として目覚めず、ニンゲンとして生き。……一なる魂を以って、愛するたった一人の人を愛しぬける……。……そんな人生を送る事を、願っています」

・ヤスの具体的な計画
ここまで語って来たヤスのルーレットの目が出るために、具体的にはどういう事件を想定していたのか、これはハッキリ断定できるので詳しく説明をしたい。一番大事なのは事件部分であり、「ヤスに殺意があったのか」「ヤスには殺意がなかったのか」これが非常に重要になって来る。

1.殺意のある計画殺人説
ヤスがまず右代宮の人間を殺そうと思っており、計画殺人だったと仮定した場合、まず事件が発生する前に碑文が解かれたならば、「譲治と結ばれる」が成立する。しかし、碑文は何も前日だけに解かれるとは限らない。第一の晩の後にEP3のように解かれる可能性だってあり、その場合いくら碑文が解かれて紗音が譲治と結ばれるという目が出たとしても、殺人者を妻にする訳がない。そして一番のポイントとして、この計画殺人説には「戦人と結ばれる」という目が存在しない。いくら事件の謎を戦人が解いたからといって、殺人者を受け入れて幸せになるなんて選択が常識的に考えて成立する訳がない。そもそも計画殺人説は最大の不確定要素である「台風」の説明ができないのだ。台風が4日5日に確実に来るなんて保障はなく、2日くらい前後する可能性も十分にある。台風が来なかった場合、外界から孤立してる訳ではないので、何らかの手段で警察に連絡される可能性は強い。ヤスに殺意があったと仮定した場合、ルーレットの目が成立しないだけではなく、事件そのものが中断される可能性があるのでこれはヤスの計画としては成立しない。

2.殺意はなく、推理ゲームをする予定だった説
ヤスに殺意はなかったと仮定する場合、事件は一族を買収して「狂言殺人」に協力してもらうという筋書きになる。つまり死者が全く出ないと仮定した場合だ。この場合「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」は問題なく成立する。しかし、殺意が無いと仮定してしまうと、どちらとも結ばれなかった場合、爆弾による皆殺しが起きなくなってしまう。さらに、殺意が無いと仮定した場合「なぜヤスは事前に遺族にキャッシュカードを送付してるのか」が説明できなくなってしまう。なので、この完全に殺意が無かったと仮定する推理ゲーム説も違うという事になる。

つまり、ヤスの計画として成立するのは、事件部分は狂言殺人によって誰も殺さないで進め、もし戦人が約束を覚えていなかった場合は爆弾によって全員道連れで皆殺しをするという場合のみなのだ。これが実際の六軒島でヤスがやろうとしていた計画の全容だ。狂言殺人の場合不確定要素である台風も何も問題はなくなる。気付いた人はピーンと来たかもしれないが、EP4~6で3連続で狂言殺人が描かれたのもこの部分の伏線だと思われる。

・狂言殺人に関する伏線
EP1で触れた魔女の手紙について覚えているだろうか。

<特別条項>
契約終了時に、ベアトリーチェは黄金と利子を回収する権利を持つ。ただし、隠された契約の黄金を暴いた者が現れた時、ベアトリーチェはこの権利を全て永遠に放棄しなければならない。利子の回収はこれより行いますが、もし皆様の内の誰か一人でも特別条項を満たせたなら、すでに回収した分も含めて全てお返しいたします。

この部分の本当の意味が今なら分かると思う。ヤスの計画は事件部分が狂言殺人で行われるため、この一文の言う「利子の回収」すなわち、殺した人物の命が碑文を解く事によって返却される事になる。それが成立する条件はまさしくこの「狂言殺人」というケースだけだ。実際に殺害した場合、この特別条項の部分は達成不可能だ。戦人に向けて出題される事件部分として、事件を解くための戦人へのヒントとして書かれた一文なのだろう。

【六軒島の猫箱の中身】

EP7のお茶会で明かされた実際の六軒島で起こったとベルンが語るあの物語は本当に真実なのか?それを検証しよう。実はここの部分は98年世界からの状況証拠で推測可能な物が多い。

1.絵羽が九羽鳥庵で難を逃れている事
九羽鳥庵に行くには、黄金のある地下貴賓室の奥から地下道へ行き、そこから地下通路を通って島の反対側に行くしかない。楼座が森をさまよって九羽鳥庵に辿りついているが、これはまぐれでたどり着いただけだ。実はこの部分は「我らの告白」によって九羽鳥庵に行くには地下通路が唯一の道と説明されており、絵羽が地下貴賓室を通って九羽鳥庵に行ったのは間違いない。つまり、あの部屋を通るという事は碑文が解かれていた事を確定させる。実際の六軒島でも碑文は解かれていたのだ。

2.絵羽だけが生き残ってる事
九羽鳥庵で難を逃れたという事は絵羽が爆薬のスイッチを入れたという事だ。何らかの事件があったからそれを誤魔化すためなのは間違いない。仮に絵羽が主犯だとすると、なぜ秀吉と譲治は生き残っていないのか?絵羽が彼らを殺す事はありえない。しかし、生き残ったのは絵羽だけという事は、絵羽以外の人間が秀吉と譲治を殺害した可能性を思わせる。

3.絵羽と縁寿
なぜ生き残った絵羽は縁寿に島で起こった真相を語ろうとしないのか?ここから絵羽は縁寿が傷つかないように何かを隠してるのはでないか?と推測できる。EP8の一なる真実の書を読んだ縁寿は絶望して自殺しており、実際の六軒島では霧江と留弗夫が何かよからぬ事を企んで何か事件を起こしたのではないかと推測できる。

4.八城十八の証言
EP8の八城十八と縁寿が再会した場面で十八は「私たちは潜水艦基地の方に逃げました」と言っている。「私たち」と複数形で言ってる事から何者かと一緒だった事がわかる。EP7のお茶会にこの伏線はあり、霧江と留弗夫の銃の狙いがズレているという部分と、ベアトが撃たれた場面には「魔女は口からどろりと血をこぼし」としか書かれて無い部分、そして絵羽が気絶から気がついた場面に「傍らには愛する夫の屍。蔵臼夫婦の屍に楼座の屍。死屍が累々と横たわる死の部屋だった」とある部分、ベアトの死体が描写されていないのだ。つまり、戦人はベアトと逃げていたのではないか?と推測できる。そもそも地下通路の事など知らない戦人がそこへ逃げるには誰かに先導されないと知りようがないのだ。

以上の部分からEP7で語られた物語は実際の六軒島で起こった真相だと推測できる。ベルンがフェザリーヌに答え合わせを求められて語られているエピソードという事もあり、嘘が描写された可能性はかなり低いだろう。状況証拠もEP7お茶会の内容を指し示している。


【EP7お茶会で語られた真相の描写時のベアトの態度】

あのベアトの態度は動機と計画の詳細を説明した今なら分かると思う。碑文が解かれたという事は「紗音人格と譲治の恋が成立した」という事であり、ベアト人格は戦人と結ばれる事ができなくなったわけだ。ベアト人格も最終的には抹消される事になり、ヤスの人格は紗音だけに統一され、譲治とその後を幸せに暮らすことになる、という筋書きだろう。ベアトがあのような態度なのはそういう訳で、地の文で「ベアトリーチェは既に死んでいる。自分で殺したのだ」というような描写がされており、ルーレットの結果紗音が選ばれ、ベアトは選ばれなかった事の説明だと思われる。

・銃
お茶会で語られた真相はアレが真実なのだろうが、殺意のないヤスがなぜ銃を持っていたのかという疑問が残る。それはヤスの立場を考えれば分かる。ヤスは実際には碑文を解いてはいるが、それを一部の人間にしか知らせず、右代宮家で使用人として働いている。だから「こういう狂言殺人をしたいんです」と蔵臼夫妻などに頼みに行ったところで相手にされないのは分かっている。おそらく黄金での買収をするのは間違いないけれども、強制力を持たせるために銃を「脅し用」として持っていたのだろう。実際に使うつもりは絶対になかったはずだ。

・ベアトの葬儀
EP7でベアトの葬儀が行われているが、棺桶に入れられた本は恐らくEP6だろう。ベアトと戦人が結婚した物語を入れたに違いない。EP7は戦人が登場しないが、それには理由があり、その部分の伏線部分を抜粋する。

「人は誰かに理解され初めて救われる。死後も何年も経っても……そして一番分かってほしかった男に、理解される事なく生を終えた哀れな魔女を、もう誰かが赦してもいい」

「最後には思い出した。ただし、お前が諦めて消えたよりずっと後の事だがな」

つまり、実際の六軒島ではEP7のお茶会のような事件が起こってしまったが故に「事件部分」自体が中断されてしまい、戦人に問題自体が出題されていないのだ。戦人が真相に到達するための問題が出題されなかったため、戦人が実際に真相に到達するには、事件後記憶を失ってから、幾子の家でネットで話題になっていた「ワインボトルのノート片」を見ないといけなかった。葬儀に戦人がいないのはこの「真相に気付くのが遅かった」という部分の反映であると思われる。

・クレルのハラワタ
クレルのハラワタとして唐突に挿入される3つの場面がある。金蔵のイタリア人からの金強奪部分、九羽鳥庵ベアトが金蔵の思いを拒否してる部分、碑文を解いたヤスが金蔵に対面した時に自分の体の事を家具と言ってる部分、の3つだ。この場面背景が赤くなっているので、嘘の描写ではなく真実の描写と思われる

1.金蔵の金強奪
この描写のポイントは日本軍側の人物に説明をしている場面であるという部分で、金蔵が単独でやろうとした事ならばあのような相談をする必要がない。恐らくは、ベアトを通じてイタリア人が日本人を皆殺しにしようとしているのを聞いた物と思われる。それを踏まえて上官に「それならいっそのこと金を強奪してイタリア人を殺しましょう」と提案していたに違いない。ただこれはただの推測なので断定はできない。

2.九羽鳥庵ベアト
これは金蔵が九羽鳥庵ベアトを妊娠させたという部分の伏線だと思われる。

3.ヤスの家具発言
ヤスの体には事故の時の後遺症で何らかの不具合がある事を明かす伏線だ。インタビューで竜騎士07氏が「ヤスには何らかの性的な不具合があった」「譲治の語る子沢山の未来像がプレッシャーを与えていた」と語ってるので、恐らく子供を産めない体だったのだろう。後遺症として事故の傷跡なども大きく体に残ってるものと思われる。


【クレルのハラワタの意味】

クレルのハラワタとして描写される3つのシーンだが、各シーンが真実だとかミスリードだとか、そういう個別の真偽の話は置いておいて、うみねこ全体に関する意味合いの話をしたい。EP7において出てきた金蔵の過去のエピソードだが、金蔵が語った部分とクレルのハラワタでは明確に違いがある。九羽鳥庵ベアトに関してもEP3では「金蔵」と呼び捨てにしてたのに「お父様」と呼んでいるし、3つ目の「恋の出来ない体」に関しても、クレルの告白には無かった部分だ。この3つのシーンの矛盾はもしかすると、

「さも事実かのように描写されてる物は実は嘘かもしれないよ」

というメッセージなのではないだろうか。例えば、EP1~7において金蔵は厳しく気難しい変人として描写されているが、EP8において「孫に優しい金蔵」という描写がされている。つまり本来EP8の金蔵が昔の優しかった金蔵だったのだとすると、EP1~7の金蔵というのは作者であるヤスや幾子によって描写のコントロールがされていた事になる。

つまり、このように物語全体としてさも事実かのように描写されている部分が実は全くのデタラメの嘘なのではないか?という思考方法の提示として出てきたのではないかと思う。例えば、紗音と嘉音が変装によって同一人物が演じていたというのは、偽書の中なら「読み物としてのトリック」なので筋が通るが、実際の現実世界でヤスがそのような事をしていたとは思えない。心の中だけに存在していて、紗音人格を励ましていたのなら分かるが、実際に男に変装して日々働いていたというのは、あまりにも突飛すぎる。つまり、朱志香が学園祭に嘉音を呼んだというあのエピソード自体が幾子の創作とも考えられるのだ。同様にEP4の楼座と真里亞の親子間の確執の物語も「些細な事実を元にした拡大解釈の創作」あるいは「完全な創作」とも受け取れる。EP6の恋の試練において「19」という数字の説明がされている部分がある。「本当の当主の年齢」「物語を作るのに要した日数」といった場面だ。あのヤスしか知り得ない情報を幾子が知っていたのはおかしいので、あれも「幾子による創作」とも受け取れる。そういう考え方で行くと、EP1の留弗夫の隠し事の気配の描写も、あれは単なる意味の無いミスリードとして登場した描写を、幾子がさも「戦人の生まれの問題」を話そうとしてたかのように創作してEP2以降で書いていたとも考えられる。

ここで大事なのは「どれが真実なのか?」という話ではなく、「物語の楽しみ方としての思考方法」がクレルのハラワタという部分という事だ。ベルンが語っていたように、最初は愛でて楽しみ、次にハラワタを引き裂いて楽しむという事で、描写を信じて楽しむ。そして次にその描写の真偽を疑って楽しむという事だ。1から100まで全てミステリーとして完全解明しようと思うのなら、描写の真偽をクレルのハラワタ的思考法で明らかにしていくしかないが、でも物語を竜騎士07先生が作る時に、例えば前述した「19」に関する説明を「幾子が創作した完全な創作」という設定で物語を書くような意味の無い物語の作り方をするだろうか?これはプレイヤーへのうみねこの楽しみ方の提示であって、重箱の隅をつつくような楽しみ方の提示ではないと私は感じた。

「愛が無ければ真実は見えない」といわれているように、物語をプレイヤーに愛ある解釈で楽しんでもらうためのギミックがクレルのハラワタなのだと思う。

・EP7は何に基づいて書かれているのか
EP7ももちろん八城十八による偽書だ。このEP7は何に基づいて書かれているのか?という点だが、EP2の第一の晩の後に、紗音が金蔵に呼ばれて筆耕をしていたのを覚えているだろうか。おそらく金蔵の告白であるあの筆耕がEP4で大月教授が語っていたような「右代宮蔵書」として幾子の元に渡ったのではないかと思われる。恐らく、金蔵の過去部分と屋敷でのヤスの生活なども書かれているに違いない。

ではヤスの具体的な回想部分だが、EP8の戦人とベアトが逃げている部分の描写を思い出してほしい。島の爆発は24時の夜中に起きたはずだが、あの2人が逃げているのは明るい時間帯なのだ。仮に朝の8~9時くらいだったとしても、24時以降かなりの時間が過ぎているのが分かる。その間2人は一体何をしていたのか?戦人は当然事件の事をヤスに聞いたはずで、色々とヤスと話をしていたに違いない。恐らくこの時にヤスは自分の計画の部分は隠し、それ以外の問題のない部分を語っていたに違いない。EP7はその時の話を元に構成されていると思われる。

EP7の内容について一つ大事なのは、「プレイヤー」と「うみねこの現実世界の人々」この両者の情報量の決定的違いだ。プレイヤーはEP8で十八の情報を明かされてるため、偽書が戦人の記憶に基づいて書かれてる事を知っている。だが、うみねこの現実世界の人々にはその情報がない。つまりEP7の内容を発表したとしても、うみねこの現実世界の人々にとっては「六軒島の事件とは何の関係も無い一作家が書いた悪質なフィクション」としか認識されないはずだ。信用する根拠がまったく存在しないのだ。この両者の情報量の違いは非常に大切だ。98年世界にEP7の偽書を流すという行為は真相を暴露する事と錯覚しがちだが、真の意味で暴露だと認識可能なのは私達プレイヤーだけなのだ。

・ベルンの赤字
「このゲームに、ハッピーエンドは与えない。」これは非常に重要で、世界構造をプレイヤーに分かってもらうための赤字だ。ゲームというのはもちろんゲーム盤の事であり、EP8の最後の部分が黄金郷が消え去り、縁寿の魔法によって全員生き返っているだけという部分はハッピーエンドではないとも言えるだろう。これは現実の98年世界とは関係のない赤字であり、そもそも赤字で未来がハッピーエンドではないと確定できるのはどういう世界なのか?という事なのだ。うみねこが98年世界に存在している偽書の世界であると分かってる人には特に問題のない赤字なのだが、それに気付いていないプレイヤーのために「この世界は偽書の世界ですよ、現実ではありませんよ」と明かすための赤字だ。

・メッセージボトルの意味
メッセージボトルにはどういう意味があるのかというと、紗音と譲治が結ばれるという目が出た場合、事件は1人の死者も出ずに狂言殺人として終わり、全員元の生活に戻る事になり、紗音は譲治と結婚をし、ベアトの中の恋の芽は人格と共に抹消される事になる。つまり、ベアト人格の戦人への恋心が誰にも知られる事なく抹消されてしまうケースがあるのだ。その時の事を考えて、いくつもの「密室」「嘘」「共犯」という構成の事件を作って海に投げたに違いない。もちろん、これが誰かの目に触れる可能性は低いし、ましてや戦人が見る可能性はもっと低いだろう。ヤスにとっては発見されなかったのなら、それはそれで受け入れたという事なのだ。ただ奇跡的に戦人が読んでくれる可能性を信じて投じた物と思われる。うみねこはこのヤスの思いの通り、記憶を失った十八がメッセージボトルを読み、真相に至った物語なのだ。キャッシュカードについてはEP4で詳細に説明してるので、それを参照してほしい。

・真犯人とは誰なのか?
メッセージボトルや八城十八の偽書の物語であるEP1~4のベアトのゲーム盤の真犯人とは一体誰なのか?人格を無視して答えるならば、このEP7で出てきたヤスと言えるだろうが、ヤスには3つの人格が存在する。そして、ここまでの物語から分かるように事件部分は「ベアトと戦人の恋の成立」を願って作られた物だ。このEP7でついに犯人を絞り込むための決定的な赤字が出た。

「使用人が犯人であることを禁ずッ!!……ヴァンダイン二十則、第11則。」

この赤字はインタビューで「真犯人の事を本当の意味で理解できてるか試すために出している」と竜騎士07先生が語っている。「ヤスの中に存在する3つの人格の内、誰が真犯人なのか、あなたはきちんと特定できていますか?」という意図で出された赤字なのだろう。つまり犯人はヤスのベアト人格、ベアトリーチェと言う事だ。碑文を解いた後、ヤスは右代宮家で使用人生活を続けている。なので紗音と嘉音はヤスが碑文を解いたとしても使用人である事実に変わりはない。動機面から考えても、紗音人格は譲治と恋をしてる人格なので、事件を起こして戦人に真相に至ってもらうという動機そのものが存在しない人格だ。もちろんその動機を持ってるのはベアト人格である。

この犯人の正体に至らせないために、うみねこは実に巧みなミスリードをやっている。EP1の時点からベアトリーチェという人物は「ファンタジー世界の人物」という印象で塗り固められ、おまけにメタ世界でも魔法を主張する人物として登場する。さらにEP3で説明した在島人数に含まれないための「論点のすり替えトリック」なども使い、徹底的にプレイヤーの頭の中に「ベアトはファンタジー世界の人物」という印象を植え付け、犯人考察の際に自動的に犯人から除外されるような誘導をやっているのだ。しかしベアトリーチェという人物はヤスの有する1人格であり、ファンタジー的な存在でもない、ただの人間なのだ。

EP8

EP8 Twilight of the golden witch


いよいよEP8を迎える事になったが、EP8は縁寿のために開かれたゲームであり、戦人は縁寿に未来を生きるための力を伝えようとしていた。一方の縁寿は六軒島で起こった事件の真実を求めていた。六軒島の事件の真実はEP7で語られたあの内容そのものであり、EP7の時もそれは説明した。EP8にそれを裏付ける伏線がいくつか出ているので抜粋する。

「一なる真実の書は確かにこの島で何があったのかを縁寿に教えるだろう。しかし、それを知って何の意味がある?! 12年前の悲しみが増すばかりじゃねえか! いったい縁寿はさらに何年かければ1人の女の子としての幸せを享受できるってんだよ! いったい何年をかければその傷口は癒されるんだよ!」

そして、縁寿が実際に「一なる真実の書」を見た後に絵羽に対する心象を全く正反対に変えていて「絵羽は私の一番の味方だった」と語っている。六軒島の真実はEP7の内容の通りであり、絵羽は縁寿に両親が殺人犯だった事を隠していたのだと読み取れる。

この戦人と縁寿の対立の構造として本編中に分かりやすい説明部分があるので、そこを抜粋する。

「かつてのベアトのゲームが戦人に魔女の存在を信じさせようとする事が目的だったように、戦人のゲームは縁寿に真実より大切な何かを伝える事を目的とする。ゲームはいつだってその結果を強制しない。ベアトだって戦人が自ら認めない限り、永遠に勝つ事は出来ないゲームだった。戦人のゲームも同じ。縁寿が自ら認めない限り戦人の勝つ事はできないゲームなのだ。だから、戦人はかつてのベアトのようにゲームを進める。信じるかどうか。納得するかどうかは全て対戦相手が決める。そのために戦人は自分の幻想で縁寿を包み込もうとしている。」

かつてのベアトのゲームは彼女の目的が別にあったとはいえ、魔女を認めさせる事も大事だった。それは事件をEP7のような事件ではなく「魔女の犯行」と信じさせる事で、戦人が傷つかないようにしていたからだ。でもそれは戦人が自分で魔女を認めないと成立しない。今回の縁寿のゲームも同じ事であり、戦人は縁寿が「六軒島の黄金をめぐる殺し合い」という真相で傷ついてほしくなかった。幼少期の彼女がもう覚えてはいないだろう右代宮家のあたたかな空気を感じてもらう事と、真里亞の教えた白い魔法で、縁寿が幸せを自分で見つけてくれるような未来を送ってほしいと願っていた。それがEP8のゲーム盤の意味合いだ。

・なぜ真実を知る事が駄目なのか
EP8の真相を求める縁寿は実際には98年の世界で得られもしない真実を求め、絵羽を犯人と決め付け、絵羽に復讐するためだけに生きている。彼女の中で「絵羽が犯人」と真相は決まっていて、それに都合のよい真実を求めてるだけなのだ。本編中から天草の語る重要なセリフを抜粋する。

「真実を暴く事に疲れ果て、お嬢はやがて右代宮絵羽を憎むだけの人生に成り果てていく」
「お嬢の旅は最初真実を知る旅でした。それが段々復讐の旅になっている。」

結局縁寿が真実を知ったところで、彼女にとってその真実は受け入れられる物ではなく、ただ彼女を傷つけるだけの物でしかないのだ。縁寿が一なる真実の書を読み、自殺する描写のあと戦人達と合流するが、ここで戦人が「真実なんてたいしたもんじゃなかっただろ」と言っている。これは、縁寿にとって受け入れられる都合のいい真実ではなく、絵羽が犯人ではないと知り、自分の未来のために何の価値もない真実だったという意味だ。「真相がたいしたもんじゃない」という意味ではなく、「縁寿にとって価値のある真実ではなかった」という事だ。当然だろう。両親が殺人犯だったなんて真相を縁寿が受け入れる訳が無い。それがたとえ真実だったとしても。

・譲治と朱志香の出題
クイズ大会で譲治と朱志香が伝えようとしている事は非常に重要だ。縁寿は今までの人生の中で様々な情報を自分で選び取って生きてきているはずだ。その中には縁寿を幸せにしてくれる情報、縁寿を不幸にするだけの情報、両方あるだろう。今までの縁寿は世間の六軒島の事件の真相を巡る熱狂の中から、絵羽の陰謀説、留弗夫と霧江犯人説など、縁寿を不幸にする情報ばかり選んで育ってきてしまった。でもそれは間違いなのだ。譲治と朱志香が伝えたかった事。六軒島の事件の真相なんて縁寿のいる世界では明らかにはならないのだ。猫箱に真相が閉じ込められた以上、未来の縁寿にはその真相を知る手段はない。だから、縁寿は自分を幸せにしてくれる情報だけを選び取って、それを大切にして未来を生きる事が大事なのだ。譲治と朱志香は縁寿が幸せな未来を送る事が出来るように、それを伝えたかったのだろう。そして、この偽書そのものを読んでいる「現実の縁寿」は、十八のこのメッセージをきっと受け取ってくれたはずだ。

・最後の選択
最後に縁寿は魔法か手品のどちらかの選択を迫られる。縁寿が見たベアトの行為は明らかに手品にしか見えなかっただろう。縁寿は兄が紡いでくれたこの最後のゲーム盤で何を受け取ったのか。確かに縁寿は一なる真実の書を読み、真相を知ってしまったかもしれない。しかし、縁寿は真実を知ってもそれを拒否する事ができるのだ。あんなのは真実じゃないと。どんな真実も結局は本人がそれを受け入れないと真実にはならない。そして、縁寿は兄から右代宮一族の温かな気持ちや思い出を受け取った。自分の未来のために本当に大切なのは何なのか。手品という名の現実なのか。それとも、縁寿を幸せにしてくれる可能性を持った魔法なのか。真実を知る事は現実を突きつけられる事と同じだ。六軒島の真実は黄金を巡る殺し合いであり、縁寿を不幸にするだけの辛い真実だった。でも、それを縁寿が真実だと認める必要なんかないのだ。真実は縁寿が自分で決める。自分が未来を生きていくために、本当に大切な事は何なのか。それが本当に理解できたのなら、縁寿が選ぶべき選択はもう明らかだろう。

・一なる真実の書
この本は幻想世界と現実世界の両方に出てくるが、EP8の作家になった縁寿がこの時の日記披露パーティーの様子を回想しているため、これは現実でも実際に存在してて、幾子が突然公開中止をしたエピソードも本当の出来事だろう。絵羽はEP8で語られた通り、真相を日記に書きとめており、右代宮蔵書の流出と共に幾子の元へ渡ったのかもしれない。

・ベアトリーチェ
EP8で登場するベアトリーチェはEP6の時のような雛ベアトのような口調を一切出さない。これはEP5で死んだベアトがまるで生き返ったように見える。この部分は現実世界で偽書を書いている八城十八の気持ちが大きく反映されてる物と思われる。EP5でベアトが死亡し、EP6で新たなベアトが復活し結婚するというのは、十八が真相に至るのがあまりに遅かった後悔と、ヤスに自分の気持ちを伝えるためのエピソードとして書いた物であり、EP5とEP6は彼の心のけじめなのだ。なのでEP8の時点で十八の中では六軒島に関する問題は全て整理できていて、問題は縁寿だけに絞られている。そういう意味合いなので、EP8のベアトはEP1~5に登場していたかつてのベアトと同一と言っても何の差しさわりもないと思われる。幻想世界ではEP5で死亡し「あのベアトは二度と生き返らない」と宣言されているが、現実世界部分の事を考えるとこれは矛盾しないように思える。もちろんあれが雛ベアトだと解釈するのも間違いではない。要するに過去のベアトと雛ベアトの違いに意味なんてないのだ。

【ベルンの赤字】

「ベアトリーチェは、1986年10月に、死亡した。よって、彼女が生み出した黄金郷は、完全に滅び去った。黄金郷に生かされていた、お前の親族たちも全員、滅び去った。お前の父も、母も、そしてもちろん戦人も、二度とお前のところに戻り、お前の名を呼ぶことはない。」

ベアトリーチェはEP8の最後に語られたように、間違いなく死んだ。ボートから飛び降り自殺したのは真実の描写だ。ここで「なぜベアトリーチェは自殺したのか」を考察しよう。

EP7のヤスの動機、計画考察を思い出してほしいのだが、実際の六軒島でEP7のような一族による殺し合いが発生した結果、とんでもないイレギュラーが発生してしまったのだ。碑文が解かれる事によって「紗音人格と譲治の恋が成立」というのは前に説明した通りだが、一族の殺し合いに巻き込まれ、紗音の思い人である譲治が殺されてしまったのだ。つまり、碑文が解かれたにも関わらず、紗音と譲治が結ばれる事が不可能になってしまった。その後戦人とベアトは潜水艦基地の方へ逃げたようだが、戦人と結ばれるためにはルーレットの結果が出ないといけない。つまり、戦人が事件を解決し、真相に至るというルーレットの目が出ないといけないのだ。EP7の通りヤスは2つの人格の恋に決着をつけるために自身のルールを絶対に守ると言っている。なので、事件の真相に至っていない戦人とベアトが結ばれるというのは、紗音人格に対する重大な裏切り行為なのだ。「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」これが不可能になり、「爆弾によって全員皆殺し」もあの時の状況では出来るわけがない。

つまりあの時の彼女は想定していた全ての選択肢が消えてしまった状態なのだ。最悪の目と想定していた爆弾による心中すらも不可能だったのだ。あの時彼女がどれだけ絶望を感じただろう。ルーレットですら運命を決める事が出来ず、初めて出来た選択が絶望による「自殺」だったのだ……

戦人の死亡宣言はこのベアトの自殺時に、助けるために海に飛び込んだものの助けられず、記憶と人格を失ってしまった事を指しているものと思われる。EP8で黄金郷が消滅しているが、もちろん「爆弾によって皆殺し」が成立しなかったために、黄金郷が成立しなかった事の比喩だろう。黄金郷の思想である「死んであの世で思い人と結ばれる」というのは一つ欠点がある。それは思い人が生きている場合成立しないという事だ。それはそうだろう。ベアトが死んで黄金郷に行ったところで、戦人が現実世界で生きてるのでは成立しない。この赤字はその部分も総合的に含めた赤字だろう。

 ・入水自殺とベアトリーチェの幸せ
ヤスの自殺部分については自身のルールを順守した上で、彼女が自殺という最終的な選択を行ったし、絶望ももちろんあるだろう。しかし、戦人が「島を一緒に出よう」と言ってくれた事によってベアト人格の思いの一部は少なからず叶えられたはずだ。戦人からすれば目の前でヤスが自殺を行った事は深い衝撃と悲しみや後悔を生んだに違いないが、ヤスのベアト人格は満足して死んでいった一面もあると思う。一緒に島を出ようと戦人が言ってくれた事でヤスは一つのゴールにたどり着いたに違いない。ただ、それを見ていた戦人が理解できたのかは分からない。

・フェザリーヌとラムダの戦い
あのフェザリーヌが物語を「ラムダが死ぬ」というように書き換えて戦ってる描写は、このうみねこの世界が偽書の世界であるという真相の比喩だと思われる。物語を紡いでいる幾子と十八の事を暗示する部分だ。

・なぜ戦人達とエリカが戦っているのか
この部分は現実世界の部分の反映だろう。真相に至った十八は縁寿を守るため、そしてヤスへの思いも守り、六軒島の事件の真相を知られたくないと思うようになった。しかし、世間では六軒島の事件は大ブームになっていて、偽書もどんどんネットで生み出され、様々な悪意のある物語が生み出されていった。この十八と現実世界部分の対立がEP8の幻想世界のバトルとして反映されている。あれはプレイヤーに対する批判ではないので、そこを勘違いしないようにしよう。

・階層構造の仕組みによる読者への誤解
うみねこの世界は大きく分ければ2つの世界によって構成されている。ヤスと十八の描く偽書世界と、その読み物としての偽書が実際に存在している現実世界だ。この偽書世界というのは本来、うみねこの世界の現実世界の人々に向けて発信されているメッセージであり、EP8の読者への攻撃性も、当然うみねこの世界の現実世界の人々へ「六軒島の事件を猫箱へ閉ざす」という目的のために発信されている。ここでポイントなのは、本来うみねこの中の現実世界の人々へ向けられた物語を、私達プレイヤーが一階層飛び越えて直接読んでしまっているため、作中のメッセージ性を「私達プレイヤーに向けられたメッセージ」と勘違いする例が顕著に出てしまった。それがEP8発売後に「自分が批判された」と誤解してしまったユーザーによる作品批判へと繋がってしまったのだ。それは誤解なのだという事をここで再度言っておきたい。

・手品ED
縁寿の登場する98年世界でEP4、EP6、EP8の手品EDの部分は全て偽書の世界であり、現実の98年の描写ではない。幻想世界のクイズ大会の景品を手品EDで持ってる部分なんか分かりやすいだろう。実際の縁寿のいる現実の98年世界は作家になった縁寿が描かれている部分のみだ。

・縁寿はどうやって作家になったのか
以上のような98年世界の考察を踏まえると、「どうやって作家になった縁寿は、一族や家族が死んだ過去を乗り越えたのか?」という疑問が残る。それに対する伏線部分が十八と縁寿の再会部分にあるので抜粋する。

「しかし、私は兄からのメッセージをちゃんと受け取れていたはずだ。それは伊藤幾九郎の事。私は真実に至ったと自称する偽書作家、伊藤幾九郎の正体が八城十八だと気付いた~」

つまり、縁寿は98年世界で八城十八がネットに流していた偽書をずっと読んでいたのだ。EP8は特に縁寿に向けられた物語であり、EP4は真里亞の魔法を理解するには大事なエピソードだっただろう。彼女は偽書を読む事で、十八のメッセージを受け止めたのだ。

・なぜうみねこは真相が本編中で明かされないのか
最後の結びの一文からも分かるように、うみねこのEP1~8は全て98年世界に存在している。人の目に触れている物語のため、これに真相を書いてしまうと、うみねこの世界の98年世界の人々も同時に真相を知ってしまうという事になり、縁寿が幸せに生きる事ができる世界が無くなってしまう。そのため、このような構成になったのだと思われる。さらに言うならば、この偽書の作者として名乗り出たのが幾子であるため、うみねこの現実世界の人々にとってはただの創作物でしかない。十八という事件関係者が実際は偽書作成に関わっていると知らない限り、偽書内に何を描こうがそれは創作としか受け止められないだろう。たとえ、真実が描写されたとしても。

・八城十八が偽書を書き始めた理由
まず一つに作家になった縁寿と再会したシーンでの会話から分かるように、十八は記憶障害を持っている。それがキッカケで自殺未遂をした経験もあり、戦人の記憶との葛藤はとても大変な物だったのだろう。戦人の記憶に整理を付けるためという理由も少なからずあるだろう。

二つ目に、EP5でも触れたヤスの真相に至るのが遅かったという部分もある。メッセージボトルを読んで真相に至った十八は激しく後悔しただろう。戦人の記憶が自分の物と思えない記憶障害の部分と、戦人のこの真相に至るのが遅かったという後悔の部分との狭間で、十八の精神状態は極限まで混乱してたと推測できる。戦人のこの後悔の気持ちを十八は物語として決着をつけてあげなくてはいけないと思ったはずだ。EP6の物語がその決着のつけかたの答えであり、ヤスへの気持ちを綴った物語でもある。

三つ目に縁寿の事だ。十八は戦人の記憶が自分を全て塗り替えて、別人にしてしまう事を恐れていたと告白している。縁寿に会うという事はそれを加速させてしまう危険性があり、縁寿に会う事は精神的抵抗がかなり大きかっただろう。しかし、六軒島の事件以来縁寿が一人で寂しく孤独に暮らしている事実に目を背け続けるのも苦しい。そこで十八はせめて偽書を通して縁寿にメッセージを送ろうと思ったのだろう。EP4やEP8の物語は現実の縁寿にかなり大きな影響を与えたはずだ。それはもう人生観が変わるほどに。

最後に魔女幻想を世間に広めるためという理由だ。EP6の「赤字」という項目で語ったが、幾子は偽書を作成する時に真実だと保証したものを赤字で記している。物語で赤字が登場するのはメタ世界なので、98年の世界でネットで公表されている偽書には私達が見たのと同じメタ世界の攻防が描かれている。つまり、98年世界の人々にあの魔女と戦人の攻防を見せる事がひとつの目的でもある訳だ。記憶を失った十八がメッセージボトルを読んで真相に至った時に、十八は実際の六軒島で起こった出来事はもちろん、ヤスがやろうとしていた事や動機部分まで全て知ってしまった。真相に至った十八はヤスのあまりに悲しい結末と、一族による黄金を巡る殺し合いという真相を世間に知られたくないと思うようになった。これは縁寿が希望を持って生きていける世界を守るためにも必要だ。そうした理由から、十八は「六軒島の事件は魔女による犯行だった」という黄金の真実で98年世界の人々を真相から遠ざけようとしたのだろう。本編中で語られているように六軒島の事件は最初絵羽の遺産を巡る陰謀説が主流で、魔女がどうのこうのという説は後から急に広がり始めた説だ。思惑通り世間の六軒島の事件への印象は真相とは程遠い「魔女による犯行」という印象で塗りつぶされていった。この黄金の真実で十八は六軒島の悲しい事件全てを覆い隠したのだ。縁寿のため、死んだ一族のため、そしてヤスのために。

・福音の家の魔法EDの意味
あのEDの意味はまず一つはベアトの語る黄金郷の復活という部分にある。前にも語った通り、黄金郷は思い人が死んでいないと成立しない。縁寿が「十八先生も兄の記憶の重責から解放されてもいいと思います」と言ってるように、あの時やっと十八の中から戦人の人格が完全に死んだのだ。死んで戦人は黄金郷にやっとたどりついた。ベアトも自分の思い人がやっと来てくれた事を喜んでいるのが伝わってくる。

もうひとつの意味は、記憶を無くした十八がメッセージボトルを読む事でヤスの気持ちを知り、真相に至る事があまりに遅かった自分の事を後悔し、そのけじめのためにずっと紡いできた物語を、やっとあの瞬間ヤスに伝えられた事を意味している。最後の結びの一文「この物語を最愛の魔女ベアトリーチェに捧ぐ」からもその気持ちが伝わってくるだろう。

・縁寿の反魂の魔法
十八と幾子が福音の家を訪れた時、そこには六軒島のお屋敷のホールが再現されていた。施設の子供がハロウィンパーティーを催しており、とても幸せな空気が充満していた。十八の偽書を読み、自分にとっての真実を大切にしようと思ったであろう縁寿は、六軒島の真実をEP7お茶会のようなものではなく、EP8の前半のような幸せな真相の解釈だったと信じ、あのホールを再現したのだろう。縁寿にとっての肖像画のベアトリーチェは白い魔法を教えてくれる魔女として解釈されてるのかもしれない。その縁寿の想いが詰まったあのホールを十八が訪れた時、十八は昔の温かな右代宮家の雰囲気をきっと思い出しただろう。十八は縁寿に魔法という考え方を偽書を通して教え、縁寿の幸せを願った。それは「魔法を他人にかける」という事だが、本当の意味で何よりも難しいのは、魔法を自分自身にかける事だ。十八にとって六軒島の真実は確定したただの真実であり、違う解釈の余地が存在しない。それに加え、ヤスとの約束の一件もあり、十八の精神状態は縁寿に会った時も不安定のままだった。兄から魔法をかけてもらった縁寿は、十八に会った後、その兄の葛藤や苦悩を察したのだろう。縁寿の愛がつまった福音の家のホールは、昔の温かな右代宮家の雰囲気が充満していた。これこそが、縁寿が兄にかけてあげる反魂の魔法なのだ。

・魔法EDの黄金郷に18歳の縁寿がいる理由
一見するとスルーしがちなこの部分は実はかなり重要だ。なぜ死後の世界である黄金郷に18歳の縁寿がいるのか。それは、この縁寿が偽書の物語のあの縁寿だからである。縁寿はEP4のエンドロールで1998年に死亡と書かれている。現実の縁寿はもちろん作家になった縁寿だけなのだが、偽書の中で家族の帰りを望んでいたあの縁寿にも黄金郷で家族と再会というハッピーエンドが用意されていた訳だ。実に感動的なシーンだ。

・黄金郷の扉
EP8で黄金郷の扉は、外から2人で閉じないといけないという情報が出た。魔法EDの最後の黄金郷は扉が閉まってエンドロールに入るが、あれは恐らく真相を猫箱に閉じた十八と幾子が、黄金郷の扉を外から閉じてくれたのだろう。

・ベルンカステルとラムダデルタ
ここまでのうみねこの考察で偽書世界と現実世界の関係性を重点に考えてきたが、最後に偽書世界的な魔法解釈の話をしようと思う。ベルンカステルは幾子の猫がモデルなんだろうなとEP8の描写から分かるが、ラムダデルタは一体何がモデルになっているのか。推測だが、ヤスが事件を起こそうとした時の「絶対に成功させる」という絶対の意思がモデルなんじゃないだろうか。ラムダはヤスの人間の頃のみすぼらしい姿を知っていたし、彼女の後見人でもあり、なおかつ、ゲームマスターをEP5で務めるほどの最初からあらゆる真相に至っている魔女でもある。ヤスの絶対の意思がモデルとなった魔女なのだとすると、なぜ彼女がヤスの事にあんなに詳しいのかや、真相に至ってる理由、ゲームマスターを務められた理由も納得できる。

絶対の意思を持ったヤスにラムダデルタは、ルーレットの目のひとつを叶えてあげる事にした。しかし、それは苦難の道のりだったのは言うまでもない。ラムダデルタが安易に幸せをほいほいと与えてくれるような魔女ではないのは本編からも分かる。事件は想定していなかったイレギュラーによって失敗し、ヤスは自殺をする。それを見ていた戦人の深い後悔と謝罪の物語であるEP2~8を経て、やっとEP8の魔法EDにて全員が黄金郷でハッピーエンドを迎える。本来ヤスが現実世界で叶えたかったのは紗音かベアトのどちらかの人格の幸せであっただろう。しかし、ラムダデルタは苦難の道のりの末に全人格の幸せを叶えてあげたのだ。そんな願いの叶え方をするのが実にラムダデルタらしい(笑)そしてベルンカステルの「奇跡」もうみねこの物語の中では重要な奇跡を叶えてくれている。うみねこの現実世界の物語で明らかに奇跡としか言いようの無い部分が一ヶ所ある。それはワインボトルのノート片が十八まで届き、十八が真相に至った事だ。EP7の理御の話の部分で、ベルンカステルは奇跡的な確率で夏妃に拒絶されずに育った理御が、結局は86年の親族会議の日に殺される運命であると告げている。EP7から抜粋する次の部分を見てほしい。

「257万8917分の257万8916の確率で。あなたはクレルとしての世界に生き、逃れ得ぬ運命に翻弄され、気の毒な最期を遂げる。そして、257万8917分の1の確率で右代宮理御として生き。今夜、霧江に殺されるの。…………つまりあなたの、いいえ、あなたたちの運命は、257万8917分の257万8917の確率で、…………つまり如何なる奇跡も許されない絶対の運命で、逃れ得ぬ袋小路に、運命の牢獄に囚われてるということなのよ!」

「決して出られぬ牢獄の鉄格子の先に見えるわずかな空に、ベアトリーチェという魔女は、幸せになれたかもしれない世界を夢想した…。しかし、その鉄格子の先の空は、…………またしても、牢獄の中だったのだ……。」

どんなに探しても理御が助かるカケラは存在しなかったのだろう。それを考えるとヤスが事件を起こした時に、一族が殺し合いをしないカケラというのも存在しなかったのではないだろうか。ベルンカステルは奇跡を司る魔女だ。1%でも可能性があればそれを奇跡に昇華できる。しかし、ヤスの計画にそのカケラはなかったのだろう。だから、ベルンカステルはメッセージボトルが誰かに拾われ、最終的に十八が読み真相に至るという奇跡を叶えた。ベルンカステルが常に人間側に立ち魔女幻想を打ち破ろうとしていたのは、このメッセージボトルが十八まで届くという奇跡を叶えたからではないだろうか。メッセージボトルはヤスが戦人に真相に至ってほしいと願って海に投じた物だ。だから、ベルンカステルはその思いをないがしろにする事は出来なかったのだろう。

この2人の魔女の「絶対」と「奇跡」によって、最終的にEP8の魔法EDのような結末が実現した。それがうみねこのなく頃にという作品の魔法解釈としての物語なのではないだろうか。そんな視点であの魔法EDを見るのも面白い。
 
【うみねこのタイムライン】

・金蔵が戦時中六軒島でイタリア人のベアトリーチェと出会う。黄金をめぐる殺し合いが発生し金蔵とベアトリーチェだけ生き残る。
・イタリア人のベアトリーチェを愛人として迎え入れ、金蔵とベアトリーチェとの間に子供が出来る。ベアトリーチェは子供を産んだ際に死亡。
・金蔵が六軒島に屋敷の本館とは別に九羽鳥庵を建て、そこでベアトリーチェとの子供を育てる。
・金蔵は子供である九羽鳥庵ベアトを死んだイタリア人のベアトの生まれ変わりだと信じ、子供を作ってしまう。
・その子供を福音の家からの子供という名目で夏妃に預ける。しかし、夏妃は事故か故意か使用人と一緒に崖から突き落としてしまう。使用人は死亡。子供は南條先生の手当てのおかげで一命を取り留める。
・九羽鳥庵ベアトの元に楼座が迷い込み、彼女を外に連れ出した結果、海岸で崖から落ちて死亡させてしまう。
・九羽鳥庵ベアトの娘ヤスは、幼少期を福音の家で過ごす。
・源次によって右代宮家の使用人として連れてこられたヤスは、使用人生活を続けつつ学校にも行くようになる。
・ヤスが親族会議の度に会うイトコ達と仲が良くなり、戦人に恋をする。
・その後戦人との約束の件で心を痛め、恋の芽を自分の別の人格に預け、新しい恋を探す事に。
・ヤスが碑文を解き、黄金を発見。黄金と爆薬、そしてベアトリーチェの称号を手にする。
・ヤスは譲治と新しい恋をし、順調に交際を進める。
・86年に戦人が帰って来る事によって2つの人格が譲治と戦人に別々に恋をしてる状態になる。
・ヤスは事件を通して自身の恋に決着をつけるべく事件を起こす。
・事件前日に碑文が解かれ、ヤスは黄金を一族に継承する。しかし一族が黄金をめぐり殺し合いを始める。一族が次々に殺されていき、ヤスは生きていた戦人と逃亡。その後、ボートから海に飛び込み自殺。
・戦人はヤスを助けようとしたものの、溺れて記憶と人格を失ってしまう。
・戦人は八城幾子に助けられ、八城十八として生きる。
・十八は戦人の記憶を思い出し、幾子の家で「ワインボトルのノート片」を読むことで、あの日のヤスの真相に至ってしまう。
・自分の罪に激しい後悔を覚えた事と、十八として戦人の記憶自体が自分の事と思えない症状により精神不安定になる。
・幾子と共に十八は偽書を書き始める。
・幾子が絵羽の日記を手に入れ、パーティーでそれを公表すると言いつつ、それをやめてしまう。その影響で六軒島の事件は世間から風化していく。
・十八の偽書をネットで読んでいた縁寿が、一族や家族の事を自分の中で整理し、作家になる。
・作家になった縁寿と十八の再会。
・縁寿が再稼働した福音の家に十八は招待され、戦人の記憶に決着をつける。

補足考察

この補足考察記事では、考察記事本編では構成の都合上書けなかった考察、文章量制限にひっかかり追加できなかった考察、推論の度合いが強くて書くのに躊躇してた考察を書こうと思う。

 ・嘉音と朱志香の恋愛
嘉音と朱志香の恋愛については本編中の情報から明確に確定が不可能な部分なので、現実世界で嘉音がいたのか、そして朱志香と恋愛をしていたのか、という部分は考察不能だ。ただ考察不能とバッサリ切り捨てるのも良くないので、ここでは「推測」をしたい。嘉音と朱志香の恋愛で個人的に重要だと思うのは「86年のルーレットの目」だ。作中で86年にヤスが起こす事件のルーレットの目は、明確に説明されており、「碑文と碑文殺人」がヤスが設定してる奇跡のルーレットであり、これはEP5で明確に提示されている。そして事件中その奇跡が達成されなかった場合、爆弾による心中が発生し、この場合嘉音は黄金郷で朱志香と幸せになるとも言える。

しかし、「現実世界で嘉音が幸せになるルーレットの目」というのが作中で提示されていないのだ。碑文殺人は戦人に約束を思い出してもらうためのものであり、碑文の謎は、碑文殺人部分を中断するための設定なので、EP7お茶会のように事件前日に碑文が解かれ、事件そのものが中断されるようなケースでは、本来最初から恋が成立してる紗音が勝利をする。

事件構成を見ると、嘉音の恋愛が組み込まれる隙が全く存在しないのだ。つまり、最初から嘉音を除外した事件構成であり、嘉音と朱志香の恋愛は86年のルーレットには関係が無いように見える。では嘉音とは一体何なのか。

本編中いくつか嘉音に関する恋の説明がある。EP6のゲーム盤冒頭で紗音と嘉音が恋愛の話をしているが、嘉音は元々ベアトのゲーム盤では朱志香との恋について消極的だった。EP1のボイラー室で死亡する際にも嘉音は「僕は事件中紗音が死亡し、自分だけが生き残るような場合では、自分の身を投げ出し、ベアトのルーレットを台無しにしようと思ってた」と発言してる。つまり、嘉音はあのボイラー室の場面で肉体ごと自殺する事で、ベアトが現実で幸せになれる可能性を潰そうとしていたのだと分かる。EP6のゲーム盤冒頭で、嘉音はまだ恋愛に対して消極的だった。しかし、紗音に「嘉音君が恋愛をする資格を自分で与えられないのなら、私がその資格をあげる」と、言わば紗音に許可されると嘉音は急に恋愛をする事を決意する。

この嘉音の恋愛に対する消極性は、EP7で「紗音を支えるための人格として生み出された」という部分を考えると、嘉音というのは、人格的に「紗音を支えなければいけない」という制限がつけられた存在なのだと思われる。偽書世界の描写を見る限りでは、このように嘉音は恋愛に対して消極的であり、紗音を支える立場という部分から、86年の段階では恋がスタートすらしてなかったのだと思われる。だから嘉音は86年のルーレットには参加できなかったし、ルーレットの目も存在してないのだろう。

この偽書世界で描かれる嘉音の設定を現実世界にあてはめるとどうなるのか。

まずそもそもヤスは現実世界では複数人格者なのか?という問題がある。クレルのハラワタで挿入されるヤスという人物を見ると、明らかに紗音でも嘉音でもベアトでもない人物が描写されている。一つの考え方として、現実世界のヤスというのは普通の女の子であり、複数人格者ではなく、事故の後遺症によって恋愛に絶望してる女の子だという考え方もできる。つまり、現実世界のヤスの「戦人への気持ちがベアト人格」「譲治への気持ちが紗音人格」として、偽書世界ではこの「心の表現」が人格描写へ脚色されてると考えるのが自然なのではないかと思う。つまり、偽書のベアトVS紗音という構図は、現実世界のヤスの「戦人への恋心VS譲治への恋心」という構図になる訳だ。これはヤスの性別を普通に女の子と考える際に自然に成立する構図だと思う。嘉音とは子供を産めない体になってしまったヤスの「性に対する複雑な心理状態」が表現されている人格なのではないだろうか。現実世界でヤスが女なのか男なのかというのは非常に重要で、物語のテーマ性を考える際、ベアトと戦人の恋愛を男同士のホモカップルと考えるのはあまりにも突飛なので、普通に女の子と考えるのが自然だろう。

とするならば、やはり嘉音と朱志香は肉体的には女同士であるのだろう。そもそも朱志香は作中で女の子同士の恋愛を肯定してる場面なんかなく、あくまでも嘉音を男として見ている。こういった部分を考えると嘉音とは作品のテーマ性を伝えるために偽書に登場した存在であり、偽書世界では「現実世界のヤスの性に対する複雑な心理状態」を反映した「86年の恋のルーレットには関係がない存在」なのではないかと思われる。

・推理作家としての八城幾子の思想とEP7の公開の真意
幾子は十八の記憶を元にして六軒島の真相を知ってしまった訳だが、彼女は本来どういう思想の持ち主なのか。十八が戦人の記憶と葛藤してる時に、幾子は「戦人の記憶の整理としての偽書作成」という意味合いで十八を支えてはいたのだろうが、そういった部分とは別に、推理作家としての思想も、幾子は偽書の中に組み込んでるのではないかと思う。

幾子は偽書の中に「愛が無ければ真実は視えない」というキーワードを組み込んでいる。これは愛ある解釈をしなさいという意味ではなく、異なる違う視点から見る事によって、物事を多角的に見なさいという事で、愛ある解釈が既にあるのならば、逆に愛の無い解釈をする、逆に愛の無い解釈が既にあるのならば、愛のある解釈をする。そういう視点で物事を見る事よって、一方だけの見方では見えなかったものを見えるようにするという思想なのだ。

この思想が極めて大事なのはとりわけ現実の縁寿にとってだ。六軒島の真相を知ってる幾子や十八にとって、現実の縁寿が六軒島の真実を知る事は害悪でしかない。彼らは縁寿が真実を知らずに幸せに生きる方法を伝えたかった。そのために、彼らはあえてEP7のような物語を公開したのだ。ポイントなのは、表向き八城十八というのは幾子の事であり、六軒島の事件とは何の関係もない人物が好き勝手に偽書を書いているという事になっている。当然縁寿にとっても偽書の作者は幾子の事であり、偽書を信用する根拠にはならない。これはうみねこの現実世界の人々にとっても同様だ。

ただ、縁寿にとって信用に値しない幾子の偽書は、右代宮家内部に関する事が細かく描写されてるため、信用するに値しないとバッサリ切り捨てる事もできないのだ。縁寿は、信用できない気持ちと「何故こんなに右代宮家の内部に詳しいのか」という疑問の間で揺れている心理状態だろう。EP7の内容を公開する事によって幾子は「愛の無い真相の解釈」を現実の縁寿につきつけたのだ。そしてEP8においては、「愛のある真相の解釈」をつきつけた。この2つの解釈がそろう事で、初めて現実の縁寿に葛藤が生まれるのだと思われる。本当に六軒島の事件の真相を追う事が縁寿のためになるのか、という根本的な部分の疑問が縁寿には生じるはずだ。都合のいい真実ならば信じる、都合の悪い真実ならば信じない、この「自分の都合に合わせた真実」を縁寿は求めているのだと縁寿が気付いた時、縁寿は六軒島の真実は自分にとって何の価値もないのだと気付くはずだ。

推理作家としての幾子の思想は一般の人々にも向けられる。幾子と十八が紡ぐ物語は根本に「信用する」「信用しない」という大きなテーマがある。物語中あらゆる場面で登場人物が嘘をつくが、一方でこの物語をミステリーとして解ける問題だと信じて謎に挑む場合には、ある程度描かれる描写を信じるという行為が必須になってくる。とりわけ赤字を真実だと信じなければいけないという部分は重要だろう。EP6の恋の試練の決闘の物語なんかも、あれを意味の無い描写とバッサリ切り捨てた場合、真相に到達する事はできなくなるだろう。うみねこを解こうとするのならば、描写を信じるという行為が必要になってくる。

嘘と虚実に満ちたこの物語を、それでも愛ある解釈で読むことができますか?というのが、幾子が偽書に組み込んだ推理作家としての譲れない重要な思想なのだろう。EP7お茶会の物語を読んだ時、ほとんどの人が最初あの六軒島の猫箱の中身を嘘だと思ったはずだ。今まで敵として出てきたベルンが、悪意を持って語った物語を素直に真相だと信じるのは難しいだろう。表向きこの偽書の作者は六軒島の事件とは何の関係もない幾子だと思われている。その幾子が描く六軒島の猫箱の中身を、一般の人々は信じることができるだろうか?それは無理だと思う。あれを信じることができるのは、物語を細部まで読み込み、作者の意図をキッチリと把握し、散りばめられた伏線を回収した一部の愛ある読者だけだろう。

しかもその愛ある読者にとって、その真実は「作者への信頼によって成立してる真実」であり、絶対的な真実として成立してるものではない。読者が幾子の偽書を細部まで読み込み、作者と読者の間に信頼関係が成立して初めて成立してる真実なのだ。ニンゲンの世界に赤き真実など存在しないと作中で言われたように、現実世界で絶対的な真実なんか存在しない。

「それでも作者を信じて、愛ある解釈で物語を読むことができますか?」

それが幾子が偽書に仕掛けた推理作家としての思想だったのだろう。作者と読者の間に信頼関係は構築可能なのか。ファンタジーなのかミステリーなのか、それさえ保証されない物語において、それでもミステリーだと信じてくれる読者がいるのかどうか。物語を愛ある解釈で読んだ人達は、六軒島の真相に至った事になる。それは何の根拠もない真実かもしれないが、幾子は自分の偽書を真剣に読んでくれた人にだけ、真相に至れる物語を書いたのだ。

なお、プレイヤーは最後に十八の情報を明かされたため、偽書が戦人の記憶に基づいてるという「反則的な情報」を得た。そのため、プレイヤーにとって幾子が読者に仕掛けた挑戦の難易度は大幅に下がっている。

・【EP2】そなたは無能だ
ベアトによって語られたこの赤字は一見深い意味がないようで、実はかなり深い意味が込められているのではないかと思う。EP2が十八による偽書なのだとすると、十八は何を思いながら偽書を作ったのだろうか。真相に至る事があまりに遅かった後悔。それが原動力になってるのは間違いないだろう。このベアトのセリフには、現実世界で完全に手遅れになって真相に気付いてしまった自分への戒めの意味合いが込められているのではないだろうか。

・【EP3】碑文が解かれる事と紗音が生き返る幻想描写の関係性
碑文が解かれると事件が終わるという作中の説明は確かに正しいと言えば正しいのだが、意図的に「中間プロセス」を排除した説明がされているため、色々と誤解が生まれてしまっている。碑文が解かれると、本来はヤスのルールの中では紗音の勝利条件が達成され、「紗音は譲治と幸せになる権利を勝ち取った」という意味合いになる。その後、人格統一がなされ、紗音以外の人格は全部抹消される。ベアトがこうして殺されるため、結果として事件が終わるのだ。EP3ではこの中間プロセスにおける、「紗音と譲治の恋の成立」が達成されていない。第一の晩で紗音が殺されてしまっているためだ。元々ゲーム盤の世界は、ベアトが戦人に向けて約束を思い出してもらうために開催しているものであり、ゲーム盤上で紗音の勝利条件を達成する事の意味は無い。このためEP3では碑文が解かれても紗音が死んでるという状況によって、ヤスの本来の目的が達成されてない状況に陥っている。碑文を解いた絵羽が殺人を続行するため、結果として第九の晩に到達してしまい、最終的に皆殺しの段階に突入して行く訳だが、ヤスのルールとして本来碑文が解かれたのならば、紗音は幸せになるべきなのだ。そういったヤス本来の目的を少しでも叶えるため、EP3本編でベアトは紗音を生き返らせ、譲治と一時的とはいえ再会をさせてあげたのだ。幻想描写の中ではあるけども、紗音は自分の恋を成立させたのだ。

・ベアトリーチェと戦人の勝利条件
ベアトリーチェが主催のゲーム盤で、ベアトは戦人に魔女を認めさせるために戦いを挑んでいる。一方、戦人は事件を人間犯人説で説明するために戦いを挑んでいる。この2人の勝利条件は本来対立関係にあるのだが、事件中に奇跡的に2人が同時に勝者になるケースが存在する。それは、戦人が事件の真相に至り、黄金の真実を理解し、魔法が過程を修飾する事で成り立っている事を理解し、ベアトの事を最終的に黄金の真実で「ベアトを魔女と認める」と認めてあげるケースだ。この場合、戦人が人間犯人説で説明を付けた上に、なおかつベアトも魔女として認められるという結果になり、2人の勝利条件が同時に達成されるのだ。本編中でベアトが心から願っていた結末というのは、これだったのかもしれない。

・ゲーム本編とメッセージボトルや偽書の同一性
うみねこで世界構造を考える際に議論になりやすい部分で、私達が読んでいるゲーム本編は偽書やメッセージボトルと若干違うのではないか?という論争がある。偽書には魔法描写なんか無い、メタ世界なんか無いといった議論はよく見る。この問題を考える際に重要なのは、そもそも、うみねこは何故嘘の描写がされるのかという部分だ。出題編では死んだ金蔵がまるで生きてるかのようなアンフェアな描写が堂々とされ、魔法描写も頻繁に描写される。ミステリーとして極めてアンフェアなこの描写は、別に「うみねこだから許されてる独自ルール」ではない。これが許されるロジックがキッチリあり、それはEP5で明確に説明されている。

「第1のゲームのラストで、この物語が、メッセージボトルによって後世に語り継がれていることが明記されている。……誰かが事件を、物語に記した。つまりこの物語は全て、……メッセージボトルを執筆した人物という観測者によって、私見が含まれた世界という事になる。つまり、観測者は神ではない。ニンゲンなのだ。よって、その記述の真の意味での公正は保証されていない。ミステリーでお約束とされている、本文は神の目線でなければならないとする前提が破られていることが、第1のゲームの時点で、……もうはっきりと明記されている。だからこそ、目撃者と同時に、観測者(執筆者)もまた、疑う事が可能なのだ」

つまり金蔵が生きてるかのように描写されたり、魔法が描写されたりする部分自体が「ヤスや十八による私見」なのだ。私達が読んでいるゲーム本編自体が彼らの執筆した原文であり、彼らの私見を読まされてるからこそ、本来非常にアンフェアな嘘描写、魔法描写が許されているのだ。これはEP6でも朗読者の階層を描写する事でキッチリ提示されている。要するにメッセージボトルや偽書に嘘描写や魔法描写は存在するという事で、ならば魔法描写自体「ベアトが戦人に魔女を認めさせるために語っている」という物語的意味合いを考慮すれば、メタ世界も当然原文にあると考えるのが自然だろう。幻想描写や嘘描写が描かれる部分は少なくとも原文に無いとおかしい。

・赤字に対する勘違い 
EP2から登場した赤字だが、本編中何度も赤字は真実を保証すると言われている。「赤き真実は、ただ真実であり、証拠も証明も、議論の余地も必要ない」といった言い回しがされるため、「赤字=唯一絶対の真実」だという錯覚が起こってしまうのだ。赤字が保証するのは真実だけであって、「唯一性」までは保証していない。これはどういう事なのかというと、一つの謎に対して真実が複数ある場合に、片方だけ赤字で提示されると、もう片方の事を考えなくなってしまったり、矛盾してると感じたりする錯覚が発生する。例えば、在島人数に関する赤字がそうだ。EP6で異なる2種類の赤字が本編で提示されたのは、正に「赤字は真実しか保証しない」からであり、唯一性までは保証していないのだ。

連鎖密室で出た 「6人は即死であった」のような場合、金蔵の死因が病死であるため、金蔵が死んだ原因を即死と言えるのか?というような問題が発生する。こういう場合は本編でベアトが即死の定義を説明してくれたりするわけだが、ベアトが全ての赤字に対してこのような補足説明をしてくれる訳ではない。在島人数の赤字の「人間」の定義が人格を指してるなんて説明はしてくれないのだ。赤字が提示された時点で、その赤字がどういう定義で成立してるのかをまず疑わないといけない。赤字が保証するのは真実だけであり、それ以外の何も保証しないのだ。

 ・ヤス=幾子説について
これはよく考察で見かける主流考察であり、本編考察記事では特に触れてなかったため、ヤス=幾子説についての反証要素をいくつか列挙したい。私は幾子とヤスは全くの無関係の他人同士という考え方をしてるが、正直この辺は推測を交えて個人で見解が分かれる考察不能領域に入るのではないかと思う。

1.日記披露パーティーの一件
まず、作家縁寿がこの一件を回想しているので、現実で幾子はマスコミの前に出てきて「私が伊藤幾九郎です」と発表して、日記披露パーティーをやり、中断するというのをやったのだろう。これはヤス=幾子だと仮定した場合、マスコミの情報収集能力、元使用人や、たまたま10/4、5のシフトに入ってなかった使用人達から、幾子=ヤスなのが判明してしまい、伊藤幾九郎の偽書に信憑性が出てしまうため、猫箱に真相を閉じ込めるどころか、猫箱の中身を暴露する方向に繋がりかねない。このためヤス=幾子だと考えると縁寿を自殺させる方向に進む危険性すらあり、わざわざマスコミの前にヤスが姿を現す必然性が説明不能になる。

2.動機から判断する入水シーンの解釈
ヤスは元々、誰とも結ばれない結果が出た場合、爆殺による心中を想定していた。その可能性がかなり高いことから遺族にキャッシュカードを送付したりしている。クレルも「私は運命に抗わない」と言っており、あの場面で幾子という人格を作り生き延びるというのは、ヤスの動機と整合性が取れない。そもそも生き残るのなら幾子なんて人格を作らず、ベアトのまま生き残ればいいのだし、そもそも86年の事件が失敗した場合死のうと思っていたヤスが、生き残るという選択を行うという考え方は、彼女が86年に起こした事件そのものを否定するに等しく、本編情報と整合性が全く取れない。

3.記憶喪失というのは偶然の産物
EP8の入水シーンは十八の偽書の締めくくりとして美しい終わり方をしているが、現実世界の事をシビアに見た場合、あの場面戦人はヤスのゲーム盤の真相に至っていないので、人命救助あるいは緊急避難的な意味でヤスを助けようとはしてたのだろうが、ヤスと結婚しようと思ってボートで逃げてた訳ではないだろう。だから、仮に幾子という人格で生き延びた場合、そもそも何を目的にして生き延びようとしているのか、ヤスの心理面に説明が付かなくなる。結果として一緒に暮らしているのは、あくまでも戦人が記憶を失うという偶然の産物の上に成り立っているのであって、戦人が記憶を失って一緒に暮らしてくれるというのを前提にして、幾子人格を作るという考え方が既におかしい。

4.人格という考え方の適用範囲
うみねこをミステリーなのだと考える場合、作中の人格表現のような特殊な考え方をどこまで適用するべきなのかという問題がある。現実に作中の紗音嘉音のような表現は適用不能であり、紗音嘉音の人格表現は創作世界にのみ通用する同一人物トリックだ。嘉音と朱志香の恋愛の項目でも述べたように、現実では複数人格者ですらない、普通の女の子だという考え方もできる。幾子=ヤスという考え方をすると、一種のファンタジー的な要素そのものである人格表現というのを現実世界に適用しなくてはならなくなり、それが本当にまともなミステリーと言えるのか?という観点から見ると、まずあり得ない。入水シーンで都合よく違う人格を作るだとか消すだとか、そういう考え方は既にファンタジーであり、ミステリーではない。

5.インタビュー関連
当初幾子と十八は結婚してるという設定にしてたようで、そのプロットを見た女性スタッフから猛反発を受けたというエピソードがインタビューで出ている。「戦人は清いままでないと駄目だ!戦人を守らないと駄目だ!」のような事を言われたらしいが、これは要はヤス本人は入水シーンで肉体ごと死んでるため、十八が幾子と結婚してるという設定は、女性スタッフにすれば、戦人が結果的にヤス以外の人物と結ばれた事になってしまい、物語の悲劇性が台無しになるという女性視点からの感覚が働いたのだと推測できる。

6.作家縁寿の主観描写
「八城十八という、右代宮家と何の縁もない人間が、どうしてその内情をあれだけ詳細に書けたのか」

以上の6つの項目はもちろん確定的な根拠ではないものの、反証要素がかなり多く、個人的にはヤス=幾子説は成立してないのではないかと思う。 

 ・作中の紗音嘉音ベアトとヤスという人物とは一体どのような存在なのか
ヤスが現実世界ではどのような存在なのかというのは、もちろん明確に確定不能ではあるのだが、うみねこをミステリーなのだと考えた場合に自然に成立すると思われる個人的な見解を書きたい。

まず世界設定。うみねこの世界は現実世界と偽書世界という2つの世界で構成されているという前提で考える。現実世界のヤスは事故の後遺症で子供を産めなくなったものの、多重人格者とかではなく、ごく普通の女の子。体に傷跡などは残っているだろう。現実世界のヤスの「戦人への気持ち」「譲治への気持ち」「子供を産めなくなってしまった自分の性に対する複雑な気持ち」こういう心の表現が、偽書世界では人格表現で脚色されて描かれている。偽書世界上では紗音嘉音ベアトは一つの肉体を共有している人格同士として描かれ、彼らは個別に自意識のような物があり、彼ら人格同士にとってはお互い他人。あくまでも同じ肉体を共有している関係性だ。彼らは肉体的には1人であるため、探偵の前に同時に現れる事はできない。紗音の時は女の服装、嘉音の時は男の服装をするけども、彼らの人格は偽書世界では1人の人間として個別認識される。それは偽書世界を執筆してる十八がそのように創作して書いてるから。なぜそんな設定にしたのかは、執筆者である十八自身が自分の中にいる戦人を別人として認識してるため、例え同じ肉体を共有していても、他の人格は別人なのだという主張が十八にあり、それを偽書世界では動機の部分と絡めて完全に別人として創作執筆している。

【メリット】
この考え方には一つメリットが存在する。現実世界でヤスが86年に事件を起こそうとする場合、作中のEP1~4のような人格トリックを想定した事件を想像してしまうと思うのだが、現実的に考えて女を演じたり男を演じたりして、完全に別人になりすますなんて事は現実世界では不可能だろう。EP4でも説明したように、紗音とベアトというのは作中で別人として認識されるため、EP3の連鎖密室や南條殺しを解く事によって同一人物なのだと気付く必要があった。作中ではそのために人格トリックが必須になっていた。しかし、上記のようにヤスの設定を考えた場合、戦人にとって約束をした人物はヤスそのものであり、紗音でもベアトでもない。つまり、現実世界の事件では単純に「犯人の正体」と「嘘」に気付くだけで約束を思い出す事が可能になるのだ。要するにEP1~4のような現実世界では再現不能と思われる人格トリックの必然性が消え、極めて現実的な事件構成で事件を実行可能になる。

・ベルンカステルやラムダデルタは現実世界にはいるのか
うみねこをミステリーと解釈する場合、ファンタジーに関係する要素はバッサリと切り落とさなければいけない。しかし、ミステリーで解釈しながらも、そこにファンタジーを融合させる解釈が実は可能だ。EP8の考察の最後に書いているように現実世界で起きた奇跡を魔法解釈で考える方法で、これは分かりやすく言えば神社の神様に対する考え方に近い。例えば受験合格を祈って学業の神様にお参りに行ったりするが、仮にその願いが叶った場合、私達は「神様が願いを叶えてくれた」と解釈する。これはもちろん自分の努力によって叶えた事実に「神様が叶えてくれた」という解釈を重ねているという事であり、これはうみねこにおける魔法解釈にも通じる。現実世界でメッセージボトルが十八まで届いた奇跡は、現実目線で見ればただの偶然ではあるだろう。しかしこれは同時に「ベルンカステルが叶えてくれた奇跡」という解釈を重ねる事も可能だ。そういう意味では現実世界にベルンカステルがいるのかどうかという問題は、私達にとって神様が本当にいるのかどうかという問題に対する答えと同じだ。いるとも言えるし、いないとも言える。しかし、いると考えた方が愛のある解釈なのだと思う。

・偽書説を採用する場合の情報ソース問題
この問題は、実は突き詰めると「可能性がさらに広がってしまう」という類の考察であるため、考察を突き詰める事に意味があるのかどうか懐疑的な部類のものなのだが、一部考察を続けている考察者の中では半ば前提にしている側面もあるので書いておきたい。偽書説を取る場合最初誰もが「作者である十八はどうやって情報を仕入れたのか?」という問題を考えるはずだ。本人しか知らないような回想だとか事実などを十八はどうやって知ったのかというような問題だ。この部分はクレルのハラワタの項目で述べたように「そもそも創作や拡大解釈で書いている可能性」というものを考慮しなくてはならなくなった。つまり情報ソースに基づいているものと、ソースに基づかないものが混在しているという考え方だ。

しかし、一つ問題なのはクレルのハラワタの描写が真実だった場合の情報ソース問題だ。ヤスが自分の事を「恋の出来ない体」と言っている部分は特にインタビューでも「妊娠できない体だったのだ」というような発言が作者によりされているため、真実なのだと思われる。クレルのハラワタは画面を真っ赤にするという手法で真実が伝えられている。これは「文字を赤くする」という作中人物でも可能な手法ではなく、ゲーム製作者である竜騎士07先生にしか出来ない手法だ。つまり、情報ソース問題として最初に提示した「情報ソースがある」「創作である」の2つの可能性の他に「作者自らが原文にはない真実を挿入している」という3つ目の可能性が出てくるのだ。つまり、私達の見ているゲーム本編は基本的にはメッセージボトルや偽書ではあるが、ゲーム的な都合で作者自らが書いている部分が追加されているという可能性がある。

これは結局「本編に作中人物が書いてはいけない文章が存在するのかどうか」で立証できる。本編中に明らかに私達プレイヤーの階層から挿入されている文章が存在するのならば、私達がプレイしているゲームは純粋な意味でのメッセージボトル、偽書ではない事になる。EP5で出てきたこの文章を見て欲しい。

「第1のゲームのラストで、この物語が、メッセージボトルによって後世に語り継がれていることが明記されている。……誰かが事件を、物語に記した。つまりこの物語は全て、……メッセージボトルを執筆した人物という観測者によって、私見が含まれた世界という事になる。つまり、観測者は神ではない。ニンゲンなのだ。よって、その記述の真の意味での公正は保証されていない。ミステリーでお約束とされている、本文は神の目線でなければならないとする前提が破られていることが、第1のゲームの時点で、……もうはっきりと明記されている。だからこそ、目撃者と同時に、観測者(執筆者)もまた、疑う事が可能なのだ」

上の方でも一度抜粋したものだ。これがどの階層から書かれたものなのかを考えて欲しい。この文章は幻想描写のトリックの説明をしているものであり、「地の文が神の視点であるという本来のミステリーでのお約束が守られておらず、作中人物の私見が混じった世界を読んでいるため、そのためミステリーではありえない魔法が描写される」という説明だ。この文章は読んでいる読者にとってその物語が「作中人物が書いたもの」でないと成立しない。私達プレイヤーにとって竜騎士07先生は同階層の人物であり、先生が私見を入れて書いてるのか、神の視点で公平に書いてるのか判別が付かないため、当初EP2を読んだプレイヤーが魔法描写を読んで、素直に魔法だと思ったのだ。これを打ち破るためのヒントがEP1のラストで明かされたメッセージボトルに関する描写であり、私達プレイヤーにとってはこの「メッセージボトルを執筆した人物の主観」を考慮にいれなければならなかった。

この文章を仮に十八が書いたのだと考えると、メッセージボトルの物語は、十八にとって同階層のヤスが執筆したものであり、これは神の視点で書かれたものなのか、私見が入ったものなのかの判別が付かない。私達プレイヤーと竜騎士07先生の関係性と同じだ。十八にとっては、メッセージボトルを指して「物語が神の視点ではなく、メッセージボトルを執筆した人物の私見が混じっている世界である」とは断言できない。これを断言できるケースというのはメッセージボトルの物語の中に、さらに作中執筆者が登場するようなケースだけだ。言わばフェザリーヌのような人物である。実際このメッセージボトルは「六軒島の真相」だと思われていた。しかし警察の押収した2本目のメッセージボトルが出てきた事によって、そのお互いの異なる内容から、このメッセージボトルは創作なのではないかという可能性が出てきたのだ。フェザリーヌが仮に魔法世界の人物だと想定した場合でも、フェザリーヌにとってメッセージボトルは人間世界の人物が書いたものであり、「私見の入っている世界」という断定は不可能だ。ヤスが神の視点で物語を書いているのかどうかが判別不能なためだ。

つまり作中にプレイヤーと同じ階層の視点から書かれている文章が存在する。おそらくそれはTIPS、タイトル画面に書かれているエピソード説明、EP1エンドロールの文章、この辺りが該当するのだろう。私達が読んでいる物語は「ソースに基づいているもの」「創作で書かれているもの」「竜騎士07先生自らが真実を挿入しているもの」の3種類が存在する。

なぜ私がこの考察を書いたのかというと、EP6で出てきた19に関する説明「それは、この物語を生み出すのにかかった月日の数」「それは、避けえぬ今日という日に至るまでの月日の数」この表記の解釈のためだ。物語上極めて重要だと思われるこの表記を創作とは思えなかったのだ。しかしこれはヤス本人にしか知り得ない情報でもあり、情報ソースがあるとも思えない。これを解釈するために考えたのが、この3番目の解釈の方法なのだ。結果として本編の記述にソースがあるのかないのか、それともゲーム的都合で挿入されているものなのか、その解釈が広がってしまう結果になるのだが、そこはもう個人で想像して楽しむところだろう。 

・執筆者と朗読者
うみねこの物語はヤスと十八、幾子が執筆をしている。物語に彼らの主観が入っているのは間違いない。情報ソース問題でも述べたように、「情報ソースがある」あるいは「創作」という考え方が基本だ。しかし、前の項目でも述べたように作中にはプレイヤーの視点から書かれている文章が存在する。EP1のエンドロールの文章もヤスが書いた部分は「これをあなたが読んだなら、その時私は死んでいるでしょう。」から始まる部分であり、18人全員の存命は絶望的と言っている部分から、十八や幾子が書いているものでもない。これもプレイヤーの視点からEP1までの情報に基づいて出されているゲーム的都合による文章だろう。EP1のお茶会でも戦人が冒頭で「おー、みんな『うみねこのなく頃に』お疲れさん!」とゲームタイトル名を言ってしまっており、これもプレイヤーの階層からの文章だ。

うみねこには「朗読者」という概念が存在する。例えば一つの考察として、ヤスや十八が書いたメッセージボトルや偽書を現実世界の縁寿が朗読をしていて、それが私達が読んでいるゲームであるという説があったりする。これもやはり、プレイヤーの視点から出されている文章の存在を説明できない。一番問題なのは、作中で作品的に非常に重要だと思われる伏線でありながら、ヤス本人しか知らないような記述が出てきた場合、それを「創作」と考えなければならない点で、前述した「それは、この物語を生み出すのにかかった月日の数」「それは、避けえぬ今日という日に至るまでの月日の数」というEP6で出てきた19という因縁の数字に関する記述が典型例だろう。

十八やヤスは確かに作中でメッセージボトルや偽書を書いただろう。しかし私達がプレイしているのはゲームなのだ。媒体が変わっている以上、そこに新たな主観が加わってもおかしくない。私達がプレイしているゲームの朗読者とは竜騎士07氏本人なのではないだろうか。ヤスや十八が執筆したものを竜騎士07氏が朗読をしている。つまりヤスや十八の主観と竜騎士07氏の主観が入っている。こう考えないと、プレイヤーの階層に関する説明が不可能になる。本人しか知り得ない記述をどう判断するのかという部分に関する説明も同じだ。タイトル画面のエピソード紹介文やTIPSの情報が偽書やメッセージボトルにも入ってるとは思えない。あれもゲーム的な部分そのものだろう。

正直作品外の作者の存在を考察に組み込むのが正しいのかどうか私には分からない。この考察は言い換えればゲーム的都合で原文にはない文章も入ってるという一言で終わりだ。クレルのハラワタが「画面が赤い」という部分を考慮すると「ゲーム画面の色味を赤に調整する」という手段はやはり竜騎士07氏にしかできない。作中人物には不可能な手法だ。朗読者は竜騎士07氏であるという考察は正しいのかどうか自分でも判断がつかないのだが、考える価値はあるのではないだろうか。

・幻想描写の根本的なトリック
幻想描写は「うみねこ独自ルール」ではない。一般的ミステリーで通用する普通の叙述トリックだ。

金蔵が生きてるように描かれる。事件の殺人の部分で魔法、魔女、家具が描写される。しかも3人称の客観的視点で。普通小説の世界でこれをやると小説のルールとしてこれは真実なのが確定する。実は嘘でしたなんて論理は通用しない。しかし、うみねこは「ミステリーでも解釈可能」と説明される。普通は不可能だ。魔法が描写されたら魔法があるのだ。ワルギリアがEP3で「この世界は魔法とミステリーの主張が同時に存在できるあやふやな世界」と世界観を説明するが、疑問に思わないといけないのは「何でそんな事が可能なのか」だ。あの説明はむしろ問いであって答えではない。

これは作中で明確にトリック明かされたが、うみねこで幻想描写が許されるのは「その3人称の客観的視点だと思われてた部分すら私見だった」というトリックなのだ。論点となるのは嘘が描写されてる部分が「神の視点」なのか「人間の私見」なのかの違いである。神というのは言うまでもなく竜騎士先生という最上位執筆者だ。竜騎士先生が書いている文章は先生の私見を含めて「神の視点」と位置付けるために、ここに嘘を書く事は許されない。しかしヤスや十八といった作中執筆者が金蔵を生きてるように描いたり、魔法を描く場合は「その執筆者が嘘を書いているかもしれない」を考慮に入れないといけないため、ワルギリアが言うようなファンタジーとミステリーの可能性が両立する。

つまり、作中の幻想描写が成立する状況というのは「ヤスや十八がメッセージボトルや偽書に幻想描写を書いている場合のみ」なのだ。この場合に限って「執筆者の私見を疑わないといけない」という状況が発生する。この論理から作中幻想描写で出てきた魔女や家具が原文に書かれていることが確定する。EP2のドレスのベアトリーチェ、7姉妹、山羊、嘉音ブレード、全部原文に書かれているわけだ。書かれていないと考える場合には、この幻想描写に誰の私見も入っていないという事になり、ファンタジーが確定、ミステリーで思考不能になるというロジックエラーが発生するため、これはもう議論の余地がない。

EP3のエヴァ・ベアトリーチェは幻想描写部分に出て来るため、当然原文に書かれていることになる。彼女は中盤に幻想描写の部分からメタ世界に移動する。十八の原文に書かれているキャラがメタ世界にもいる。ここを考えると物語的繋がりや、十八が何故エヴァを原文に描けるのか、なぜその存在を知っているのか、という問題が発生するため、メタ世界も原文に書かれているという可能性が出てくる。幻想描写部分は原文に書かれている事が確定、メタ世界も書かれている可能性が極めて高い。

・メッセージボトルに記された真里亞の署名
メッセージボトルの最後には執筆者として真里亞の署名がされている。しかし、実際に執筆したのはヤスだと作中で明かされている。なぜヤスはメッセージボトルの最後に真里亞という署名を入れているのか。これは一種の暗号トリックになっているのではないだろうか。

暗号トリック。ベアトリーチェのゲーム盤ではトリックの嘘と、犯人の正体から戦人の罪が連想されるという、戦人にしか分からない暗号が組み込まれている。こういった「特定の人物にしか分からない情報が組み込まれる」という意味で、真里亞の署名というのは、もしかすると「真里亞をよく知ってる人間に向けて書かれている暗号トリック」なのではないだろうか。つまり、十八がメッセージボトルを読むと、戦人の記憶と照らし合わせ「いや、真里亞はこんなものを書くような子じゃない」ともしかすると判別できるのかもしれない。戦人にとってミステリーと言えばヤスの印象が強いはずだ。

つまり十八は真里亞の署名を偽物だと判別可能である可能性がある。ここからが重要なのだが、この真里亞の署名というのは実は上記で述べた幻想描写のトリックと密接に関連しているのではないだろうか。幻想描写のトリックは論理的に原文に書かれている事が確定する。EP1で言えば、金蔵が出てくるシーンだ。実際金蔵は死んでいるが、幻想として生きてるように描かれる。当然十八もこれを読んでる訳で、ここの部分をトリック的に「いや、死んでる可能性もある」と推理できなくてはならない。事件の殺人部分で描かれる嘘の描写もそうだ。十八にとっては原文に書かれている「嘘の記述」を判別する必要が出てくる。

私達プレイヤーはヤスという作中執筆者の主観を疑う事で推理するが、十八にとってはこの「設定上の執筆者である真里亞の主観」を疑う事で、推理可能になっているのではないだろうか。真里亞の署名は幻想描写を嘘だと見抜くためのトリック的な意味で署名されているのだろう。

・嘉音は暗号キー
うみねこの物語で一つ不思議に思うのは、十八はそもそもメッセージボトルを読んで「犯人はベアトリーチェ」という真相に到達可能なのだろうかという部分だ。EP1では一番最後に肖像画の前に出てくるだけで、トリック的に犯人ベアトリーチェ説にまで到達できるようになっていない。存在の示唆がされるだけだ。プレイヤーはEP3まで読んでやっと南條殺しによって特定できるわけで、EP1の時点では不可能だろう。しかし、十八にだけはそれが可能である可能性がある。

嘉音を「実際の六軒島にはいない人物」と考える。つまり十八がメッセージボトルを読むと、嘉音というメッセージボトル上にしかいない人物が紛れ込んでいるという「暗号キー」が伝わる。嘉音の存在というのは十八に向けた「この物語には架空の人物が紛れ込んでいる」という前提で推理するためのトリック的なパーツなのかもしれない。EP1のボイラー室で嘉音が殺されるが、この時、嘉音は「紗音が先に死に、僕が生き残るような場合には、僕はベアトのルーレットを台無しにしようと思っていた」と主張し、肉体ごとベアトリーチェを道連れに自殺しようとしていた。ここのシーンは同一人物説を示唆している部分である。

つまりメッセージボトルの物語には「同一人物説」の情報提示と「架空の人物がいる」という情報提示の2つがされているのだ。この2つの前提に基づいて十八が物語を推理した時、最後に出てくるベアトリーチェが「人間としての犯人」として推理可能、なのかもしれない。

・同一人物説における誤認という要素
うみねこのゲーム盤の世界では紗音や嘉音は明らかに別人として他の登場人物に認識されているように見える。彼らを同一人物と疑っているような描写が一切ない。ここの部分を「創作世界だから」という結論で説明していた訳だが、今回はここの間に入る部分のロジックを補強したい。まずはEP4で語られた次の赤字を見てほしい。

「全ての人物は右代宮金蔵を見間違わない。いかなる変装であったとしても、右代宮金蔵を見間違わない!」

実に不思議な赤字だ。金蔵はゲーム盤の世界で絶対に誤認されない事が赤字で保証された。例えば、金蔵の特徴を完全に衣服で包み込むような変装をした場合でも誤認されない事になる。つまり、金蔵に関するゲーム盤の「強制認識ルール」というものが存在する。金蔵は絶対に金蔵と認識され、誤認を排除する。そういうルールがあるのだろう。ではこのルールは金蔵にだけ適用されるのだろうか。次の赤字を見てほしい。

「彼らは異なる人物を嘉音と誤認することは絶対にない!」

この赤字で嘉音が誤認されない事が示唆されているが、重要なのはこの「異なる人物」という部分が、同じ肉体を共有している紗音にまで適用されている可能性がある事である。作中で人格に関する説明は明示されている。

「私たちにとって、人格が人そのものならば、例え同じ肉体を共有していても、異なる人格を指して別人であると言い切れるだろう」

EP6においてこのような説明がされている。人格は別人なのだ。という事は嘉音を紗音という別人に誤認する事が赤字上で禁止されている事になる。嘉音を紗音と誤認する、紗音を嘉音と誤認する、こういう誤認がゲーム盤上では禁止されているのだろう。だから、彼らは作中で別人と認識されているのだろう。

・ウィルの髪の毛
ウィルには一本だけ赤い髪の毛がある。うみねこのキャラクターはシナリオを書いている竜騎士先生が描いているため、あの髪の毛にもちゃんと理由があるのではないだろうか。結論から言うと、あの髪の毛は戦人の髪の毛の赤を示唆してるのではないだろうか。そもそもウィルとはどういう意味合いのキャラなのか。本編でクレルと対決する際にクレルはこう言っている。

「私にとって大事なのは、縁ある人ではなく理解してくれた人です。あなたは良き傍観者であり、私を理解してくださったたった一人の人」

ウィルは戦人ではなかったけども、クレルにとっては理解してくれたウィルの方が大事だと言うのだ。十八というのは厳密に言うと戦人ではなく、十八という別人だ。このため、十八がメッセージボトルを読んで真相を理解するというのは、正に「ウィルが真相を理解する」という事と意味合い的には同じなのだ。十八は戦人ではなく、ウィルも戦人ではない。しかし十八の中には戦人の記憶があるわけで、ウィルのあの赤い髪の毛はその戦人の記憶を持った十八という部分を示唆してるのではないだろうか。

・ベルンカステルの物語
ベルンカステルには本編で描かれなかった部分にストーリーが存在している可能性があるのではないだろうか。ベルンカステルは奇跡を司る魔女だが、本編で奇跡を見つけられなかったと自白している。

「257万8917分の257万8916の確率で。あなたはクレルとしての世界に生き、逃れ得ぬ運命に翻弄され、気の毒な最期を遂げる。そして、257万8917分の1の確率で右代宮理御として生き。今夜、霧江に殺されるの。…………つまりあなたの、いいえ、あなたたちの運命は、257万8917分の257万8917の確率で、…………つまり如何なる奇跡も許されない絶対の運命で、逃れ得ぬ袋小路に、運命の牢獄に囚われてるということなのよ!」

ヤスが事件を起こすと100%の確率で惨劇が発生する。回避不能だ。ベルンのキャラ説明を見るとこう書いてある。

「奇跡を司る魔女だが、奇跡が起こらぬことを知る魔女とも呼ばれる。」

作中でウィルがベルンに向かって「てめぇは神じゃねえ!てめぇにできるのは運命をあざ笑う事だけだ」というセリフを言っている場面がある。そう。ベルンはあくまでも「存在するカケラ」から奇跡を探すのであって、存在しない奇跡を生みだす能力はない。ベルンも作中で「奇跡なんて所詮はファンタジー!」と言っている。ベルンカステルはそもそも、なぜ257万個という膨大な量のカケラを探したのだろうか。ベアトをあざ笑うためだけにそういう事をやったと考えるのは、対価と労力のバランスが変だ。ベルンカステルはヤスを助けようと奇跡のカケラを探していたではないだろうか。

しかし、そんなカケラは存在しなかった。そこに至った時、ベルンカステルは何をしただろうか。現実世界で一つ奇跡が起こっている。メッセージボトルが2本拾われたのだ。この奇跡はベルンカステルが叶えてくれた奇跡なのではないだろうか。メッセージボトルはヤスが事件前日に「戦人への想い」を込めて流しているものだ。事件部分のトリックと犯人から連想される約束が戦人にしか分からない暗号になっているため、メッセージボトルの対象者は戦人に限定されているはずだ。

そもそも「ベルンカステル」というのはドイツのワインの名前が由来なのだ。ベルンカステルの寄り代というのは、メッセージボトルなのではないだろうか。メッセージボトルには「戦人に真相に至って欲しい」というヤスの想いがこもっている。これを寄り代にしたベルンカステルというキャラには「魔女幻想を否定し、真相に至らなければならない」という行動原理の核が存在する事になる。ベルンカステルがずっと魔女幻想を暴こうとしていたのは、寄り代であるメッセージボトルに理由があるのかもしれない。

偽書作家テスト

EP1

Q1 真里亞の薔薇に込められた意味と、消失の理由は?
物語上真里亞の薔薇の話になると、殺人事件の物語が始まる合図のような役目になっている。言わば事件開始の象徴であり、ベアトリーチェのゲーム盤の象徴でもある。EP8で描かれるベアトリーチェの猫箱の上に落ちてきた黄金の薔薇と意味合いが重ねられている。消失の理由は郷田が料理に使うために摘んだから。

Q2 真里亞が持っていた傘と手紙を渡したのは誰?
ヤスのベアトリーチェ人格。ちなみにEP2の礼拝堂の密室殺人時の赤字に「妾が真里亞に預けた封筒の中身は、確かに礼拝堂の鍵だった」とあり、「妾」と言ってしまっておりこれはほぼ確定だと思われる。

Q3 夏妃の部屋の扉に不気味な汚れを残した人物と、その理由は?
ヤスのベアトリーチェ人格。彼女の人格は悪食島伝説の悪霊の設定を入れた人格であるため、夏妃の部屋のドアの内側にかけられた「サソリのお守り」を見て、部屋に入れない設定なのを思い出した。86年の事件はヤスが自身のルールを厳守する事に最大の意味があり、これを破る訳にはいかずベアトリーチェは部屋を退出し、「サソリのお守りの効力で中に入れなかった証」として不気味な汚れを残した。

Q4 園芸倉庫の6人殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。紗音の人格自体はこの時点でおそらく殺害されているが、肉体はベアト、嘉音として生存している。銃で脅しながら園芸倉庫まで移動させ5人を殺害。秀吉に「紗音が死んでる」と嘘の証言をさせた。もし、死体を確認されてたら、この時点で事件終了だった。運命のルーレットに自身の危険さえも賭けていた犯人の心が重要。

Q5 チェーン密室の絵羽・秀吉殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。今後の打ち合わせとでも言って中に入れてもらい、銃で殺害。チェーンを切断し魔方陣を書き、あとは熊沢や源次と口裏を合わせて幻の鎖で密室を構築した。

Q6 ボイラー室の嘉音殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。肉体的にはヤスは生きているものの、嘉音人格自体はこの時点で恐らく殺害されている。つまり、肉体を操っているのはベアトリーチェ人格。嘉音は紗音が死亡した事によりベアトのルーレットを台無しにするため、「肉体ごと自殺」しようとしていた。ベアト人格に返り打ちにされ嘉音は人格的には死亡。

Q7 金蔵の書斎内に手紙を置いた人物と方法は?
犯人の共犯である使用人や南條なら誰でもいいが、おそらく右代宮家へ忠誠を誓う源次がヤスの指示通りに手紙を出したのだろう。

Q8 客間の源次・南條・熊沢殺しの犯人と方法は?
ヤスのベアトリーチェ人格が犯人。この時点で紗音と嘉音の人格自体は死亡しており、ベアトリーチェ人格だけが生き残っている。マスターキーで普通に部屋に入り、真里亞に歌を歌わせている間に3人を射殺。鍵をかけて部屋から退出。

Q9 玄関ホールの夏妃殺しの犯人と方法は?
犯人はベアトリーチェ人格。銃で同時に発砲しているが、漫画版によると夏妃の銃は弾丸が入っておらず空砲だった模様。

Q10 EP1ゲーム盤の真相は?
ヤスが事件前に海に投棄したメッセージボトルの物語であり、犯人ベアトリーチェとは「戦人への恋心」の象徴。事件を起こす犯人とは、戦人に約束を思い出して欲しい人物である。


EP2

Q1 ゲーム盤上に登場したベアトリーチェの正体は?
ヤスのベアトリーチェ人格。紗音・嘉音・ベアトは1つの体を共有する人格であり、探偵の前には同時に出現しない。創作世界上でのみ成立する同一人物トリックである。つまり、この世界は創作世界である。

Q2 楼座が受け取ったベアトリーチェの封筒の中身は?
真里亞が受け取った封筒には普通に礼拝堂の鍵が入っている。礼拝堂の口裏合わせの密室を生み出すための下準備。ベアトリーチェの手紙というのが事件中各所で出てくるが注目なのは差出人に「黄金のベアトリーチェ」と書いてある点で、魔女が抜けている。ゲーム盤上に出てくるスーツのベアトは別に魔女ではないのだ。黄金を受け継いでベアトリーチェという称号を継いだだけ。メタ世界の魔女ベアトリーチェと混同して「魔女」と錯覚させるための仕掛けだが、手掛かりの提示として手紙には魔女と記載していない。

Q3 親達7人は深夜の礼拝堂で何を見た?
地下貴賓室に積まれている黄金の一部を見せられていた。

Q4 礼拝堂・ハロウィンパーティーの6人殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。黄金を見せて楼座を共犯化。残りの6人はその後銃で殺害された。食事に睡眠薬を混ぜるなどして眠らせた可能性もある。犯行方法の詳細は不明。礼拝堂の鍵はかけておらず、そもそも密室ではなかったのだ。使用人と楼座が「密室だった」と嘘をついていただけ。

Q5 朱志香の私室での朱志香・嘉音殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。朱志香を銃で殺害後に嘉音を人格的に殺し、紗音用のマスターキーで施錠して退出。

Q6 使用人控室での南條・熊沢殺しの犯人と方法は?
犯人は源次。嘉音は幻想であり、南條と熊沢は屋敷の別の部屋に隠れていただけだった。右代宮家に忠誠を尽くす家具として源次は南條と熊沢をナイフのような物で殺害。犯行方法が刃物であるため、銃で殺しているベアトリーチェではないだろう。彼らの殺害が第7・8の晩である点も重要。ベアトリーチェが殺害する事も可能だが、本編中に提示された手掛かりは源次の犯行を示している。

Q7 夏妃の私室の紗音・郷田・譲治殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。郷田と譲治を銃で殺害した後に自殺。内部より構築された完全密室だった。

Q8 生き残った人達は最終的にどうなった?
24時に爆発する爆弾で全員死亡した。戦人が源次に案内されて見た金蔵の書斎での金蔵とベアトリーチェは幻想であり、実際には誰もいなかったのだと思われる。

Q9 EP2のゲーム盤の真相は? 
楼座と使用人を共犯にした、ヤスのベアトリーチェ人格が主犯の事件。EP2で重要なのは疑心暗鬼になっている人間たちの描写で、この構図との対比として「魔女を認めれば全てが解決する」という論法を持って来ている。魔女とは人間の犯行を幻想で包み込むものなのだ。これはEP8でベアトリーチェの猫箱の上に、黄金の薔薇が落ちてきた描写と深く関連する。魔女の犯行とは黄金の真実であり、真実を優しく包み込むものだ。

Q10 ベルンカステルが語ったベアトリーチェの隙とは?
犯人ベアトリーチェが仮に「殺害」を主目的にしてるのならば、深夜に殺して回ればあっという間に目的達成する。魔女の手紙で予告をするという行為自体が既に隙であり、これは事件を解いて欲しいという犯人の気持ちの裏返しでもある。碑文を解く、あるいは事件の真相を特定する、こういう犯人にとっての敗北の可能性を提示する事がベアトリーチェの隙であり、これは犯人が望んでいる事でもある。ゲーム盤で起こる奇跡という魔法を得るために、犯人はリスクを背負って事件に挑んでいるのだ。


EP3 

Q1 碑文の謎の答えは?
台湾の淡水線の駅名を鍵とする。文字遊びの類の暗号であり、礼拝堂の入り口のレリーフを弄ると地下貴賓室への道が開く。

Q2 連鎖密室の6人殺しの犯人と犯行は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。紗音と嘉音は南條の検視の嘘で逃れた。客間の紗音が礼拝堂で嘉音として死体を演じ、その後ベアトリーチェが紗音と嘉音の人格を殺害。

Q3 薔薇庭園の真里亞・楼座殺しの犯人と方法は?
犯人は絵羽。楼座はおそらくアクシデントで偶然死亡したのだろう。事態の発覚を恐れた絵羽は真里亞を絞殺。その後秀吉との口裏合わせで寝込んでいた事にした。

Q4 玄関ホールの留弗夫・霧江・秀吉殺しの犯人と方法は?
留弗夫と霧江殺害の犯人は絵羽。腹に銃弾を受けた霧江は致命傷を避けて生きていた。霧江が発砲した銃弾が秀吉に当たり、秀吉は死亡。

Q5 譲治がゲストハウスから屋敷へ行った方法とは?
2Fの窓から飛び降り、開いた窓を内部の者が施錠。おそらくは南條あたりだろう。

Q6 ゲストハウスの蔵臼・夏妃殺しの犯人と方法は?
犯人は絵羽。ロープのような物で絞殺後、死体を東屋に放棄した。

Q7 客間の扉に「07151129」を書いた人物と数字の意味は?
書いたのはヤスのベアトリーチェ人格。これはキャッシュカードの暗証番号であり、碑文を解いた絵羽に向けて、譲治を殺した謝罪の意味を込めて贈っている。

Q8 客間の譲治殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。ヤスの目的は自分の恋の決着にあり、「碑文が解かれる」「事件の真相が暴かれる」これが発生せずに第9の晩を迎えた場合、黄金郷で自分の全ての恋を叶えようとしている。黄金郷は思い人が死亡していないと成立しないため、犯人ベアトリーチェは絵羽が譲治を連れて島から生還しないように、譲治を殺害した。黄金郷で紗音と譲治が結ばれるためにだ。

Q9 使用人室の南條殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。創作世界上で紗音・嘉音・ベアトの人格はそれぞれが別人として認識される。このためベアトは別に紗音と思われている訳ではない。共犯関係にある絵羽もベアトを紗音と思っている訳ではなく、純粋にベアトという人物だと認識している。序盤の楼座の九羽鳥庵ベアトの話が伏線として効いている。

Q10 EP3のゲーム盤の真相は?
ベアトリーチェと絵羽の殺人が混ざっているゲーム盤だが、重要なのはそもそもゲーム盤というのはメタ世界のベアトが対戦相手である戦人に出題しているものであり、メタ世界目線で見た物語の目的は「戦人が約束を思い出してくれる事」であり、ヤスの恋の決着をつける事ではない。このため、ゲーム盤の構成として「紗音の恋が成立する」という状況は存在しない。メタ世界のベアトにとって紗音などどうでもいいからだ。このためゲーム盤上では「碑文が解かれたにもかかわらず、それ以前に紗音が死亡している状況によって、紗音と譲治の恋が成立しなかった」という特殊な状況が生まれている。これは実際の六軒島で「碑文が解かれたにもかかわらず、譲治が殺されてしまう」と同じ状況であり、恋の成立が達成されない状況になると犯人は「爆弾で皆殺し」に向かう。EP3のゲーム盤はヤスの本当の目的を理解してないと、碑文が解かれたのに事件が続く理由というのが理解不能になるので注意。


EP4 

Q1 食堂の6人殺しと5人の幽閉の犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。共犯は恐らく源次。九羽鳥庵に幽閉された人達は屋敷の電話のある部屋で狂言殺人として加担している。ベアトと源次で食堂の残りの5人を射殺。

Q2 朱志香の私室の朱志香殺しと薔薇庭園の譲治殺しの犯人と方法は?
朱志香を殺したのは紗音の格好をして紗音のふりをしているベアトリーチェ人格。狂言である事を明かし、電話をゲストハウスにさせた後、銃で殺害。薔薇庭園の譲治は源次が銃で殺害した。

Q3 屋敷の裏手と客室・嘉音・紗音・南條・蔵臼・霧江殺しの犯人と方法は?
紗音と嘉音は人格的に殺されただけ。肉体はベアトリーチェ人格が操っている。蔵臼と南條はベアトリーチェが裏手で銃で殺害。霧江は共犯者である源次が霧江に狂言である事を話し、ゲストハウスに電話させ、電話の途中で銃で殺害。

Q4 園芸倉庫の郷田・熊沢殺しの犯人と方法は?
狂言殺人のシナリオにそって首吊りを演じている郷田と熊沢を小窓から銃で殺害した。首吊りを演じているため頭の位置が一定の場所で固定されており、さらに銃撃から逃れるにはロープを首から外さないといけないため、小窓から素早く連射すれば終わる。ヤスが使っているのは命中率を犠牲にして破壊力を上げたソードオフであるため、この園芸倉庫の2人は命中率が高い普通のライフルで源次が殺したのだろう。事件中頭部半壊死体と穴が開いてるだけの2種類の死体があるのは、ベアトリーチェと源次が使っている銃の特性によるものだろう。

Q5 客間の真里亞殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。毒殺によるものだろう。当主テストはおそらく関係ないと思われる。それは犯人の目的が恋の決着にあり、戦人と譲治どちらとも恋が成立しない場合は爆弾により皆殺しをする予定であるため、真里亞に「自分が生き残る」という選択をされても困るのだ。全員死亡は犯人の中では確定であり、真里亞の意思は一切関係がない。

Q6 戦人の罪とは?
昔紗音と交わした「迎えに来る」という約束を「覚えてすらいなかった」事。破った事ではない。

Q7 ベアトリーチェの問い「私はだぁれ?」の答えとは?
ベアトリーチェの心臓の「掲げられたままの左手」にあたる爆弾だ。下ろされた右手は同一人物トリックを指す。この問は「戦人にゲームを挑んでいるベアトリーチェとは誰だったのですか?」という意味も込められており、これはEP3の連鎖密室と南條殺しを解く事で判明する。人格としてのベアトリーチェの事だ。ベアトは紗音であり、嘉音である。その問いが「私はだぁれ?」なのだ。

Q8 EP4のゲーム盤の真相は?
存在しない金蔵を存在するという嘘で成立させ、結託した一族の狂言殺人という表向きの事件の裏でヤスのベアトリーチェ人格が本当の殺人をやっていた。EP1~4の事件は「嘘」という要素に気付く事が根幹になっており、逆に言うとそれ以外の部分、詳しい犯行手順や状況というのは、ベアトリーチェが論点にしていない事から分かるように、さほど重要な意味はない。

Q9 縁寿がマルフク寝具店で発見したものは?
さくたろうの量産品のぬいぐるみ。このさくたろうのエピソードはうみねこの世界での「魔法の定義」を説明するために語られている。縁寿は楼座が引き裂いたさくたろうではなく、別の同じぬいぐるみを「魔法で蘇らせた」と嘘を吐いて真里亞に渡した。「これは同じ形だけど、量産品の別のさくたろうだよ」と言って真里亞に渡すのと「魔法で蘇らせた」と言って渡すのとでは、どっちが真里亞は幸せになれただろうか。うみねこの世界での魔法というのは、辛い真実を知っている人間が、相手を幸せにするために使うものなのだ。

Q10 12年後の六軒島で行われた、縁寿と須磨寺霞一派の戦いの真相は?
天草が遠くから狙撃して射殺した。重要なのはこの六軒島のシーンで縁寿は真里亞の魔法の思想を完璧に理解した点であり、その後この六軒島のシーンから急にビルの屋上のシーンに切り替わりベルンと一緒にゲーム盤に向かう。この98年世界は偽書の世界であり、本当の現実世界ではない。


EP5

Q1 親族会議休憩中、食堂の扉をノックして手紙を置いた人物とその方法は?
そんな人物はいない。食堂の全員が結託しており、ノックがあったと嘘を吐いただけ。

Q2 いとこ部屋4人殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。朝の発覚時にはまだ生きており死体ではなかった。中盤にワルギリアにより死亡宣言が出ており、朝の発見時からこの死亡宣言時までの間に別の場所で殺された。

Q3 使用人室の源次殺しの犯人と方法は?
犯人はヤスのベアトリーチェ人格。朝の発見時は普通に生きており、実際に殺害されたのは発見時以降からワルギリアの死亡宣言が出るまでの間。なお狂言に加担し夏妃を追い詰めている一同は、「実際に殺害されている」という事態を把握しておらず、あくまでも狂言のシナリオにそって夏妃を追い詰めている。これはEP5のゲーム盤がヤスのベアトリーチェ人格の夏妃への復讐のために起こされているからであり、狂言に参加している絵羽などは金蔵が死亡している事をヤスに聞いて知っている。このため夏妃を追い詰めるようなシナリオが展開されているものの、「実際に譲治や秀吉が殺害されている」という事態を把握していないため犯人ではない夏妃を追い詰める事に執着してしまっている。このまま幻想法廷に舞台が移ってしまった。

Q4 謎の場所からの脅迫電話・蔵臼殺しの犯人と方法は?
5日の朝にかかってくる電話は使用人室を経由せずに直接かかってきており、内線でヤスのベアトリーチェ人格が電話してきている。これは表向きの狂言とは別の「本当の殺人」を目的にした電話であり、オーディオ録音の蔵臼の声を聞かされた後、蔵臼は本当に殺されてしまった。

Q5 客室の秀吉殺しの犯人と方法は?
客室での秀吉殺しは演技であり、実際に殺されたのはゲーム盤で描かれなかった部分。5日の24時を迎えての答え合わせとして幻想法廷が開かれるが、この時秀吉が「さっき殺されたばっかりや」と言っている。5日の24時の時点で「さっき」と言ってる事から、24時にかなり近い時間に殺されたのかもしれない。

Q6 突如現れた古戸ヱリカはどのような存在か?
ゲーム盤に登場させたベルンカステルの分身である駒。元々この世界自体が創作世界であり、現実世界の八城十八が探偵として登場させたキャラとも言える。

Q7 19年前の男の正体は?
ヤスのベアトリーチェ人格。

Q8 作中で示されたノックスの10戒の意味は?
うみねこをミステリーとして思考するための杖。本当にうみねこをミステリーと信じるのならば、特に8条の「提示されない手掛かりでの解決を禁ず」は非常に大切であり、プレイヤーにとっての強力な武器にもなる。8条は後期クイーン問題を潰す役目もある。

Q9 ベアトリーチェに対する戦人の心証が大きく変わった理由は?
EP1~4の事件を再考した結果、ベアトリーチェは紗音であり、嘉音である事に気付き、事件に込められた「嘘」というメッセージから6年前の約束の事を思い出したため。さらに言うなら自分と譲治の恋の板挟みにヤスが悩み、事件を起こしている事にも気付いた。自分が86年の事件の根本的な原因になっていると知った。

Q10 EP5のゲーム盤の真相は?
ベアトリーチェ人格のヤスが夏妃への復讐のために事件を起こした。表向きの狂言殺人の裏で実際に殺害をしている。この事件はEP4までの事件を見ていたラムダが、戦人とベアトの思惑が修正不可能なレベルまですれ違っている事を察し、戦人にベアトの事件を「ミステリー」として思考するように仕向け、慈悲をかけたゲーム盤。ラムダは現実世界での「ヤスの絶対の意思」を反映している魔女であり、ヤスのあらゆる真相に最初から至っている。ベアトと戦人を救うためにEP5のゲーム盤を開催してあげた。


EP6 

Q1 各所で発見される死体・恋の試練の6人殺しの犯人と方法は?
一同がヱリカをからかうために開催した狂言だった。実際は死んでいなかったが、ヱリカが検視の際に戦人以外を本当に殺害してしまった。

Q2 ゼパルとフルフルによる恋の試練と決闘が描かれた意味は?
86年に事件が起こる根本的な原因を描いている。ゲームマスター戦人が真相を理解した事を示すために描写した。事件の原因はヤスの恋の板挟みであり、86年に誰と結ばれるべきか決められなくなったヤスの恋心の葛藤を表している。

Q3 回想シーンで戦人が女性の好みを語った相手は誰?
紗音。元々戦人に恋をしたのは紗音人格だった。

Q4 「お母様」の正体と、彼女がベアトリーチェに恋心を託した理由は?
恋心をベアトに託したのは紗音だが、お母様とはヤスの3つの人格の統合的な意味合いの存在だろう。戦人が迎えに来ない事に心を痛めた紗音が耐えられなくなり、ベアトがそれを引き受けた。ベアトはこれ以降「自分が戦人を愛する人格」となる。

Q5 紗音と嘉音はどのような存在?
1つの肉体を共有する人格同士であり、嘉音は紗音を支える目的で生み出されているため、紗音の恋の障害となるような事を自ら行う事はない。今回は紗音に許可されたから恋の試練に挑んでいるのであり、冒頭に紗音に「恋をする資格を私があげる」と言われているシーンがある。

Q6 いとこ部屋にいたはずの嘉音が脱出した方法は?
隣部屋の紗音が窓から脱出した。紗音が嘉音でもある。ただ赤字上は「全ての名前は本人以外は名乗れない」とあるため、紗音が肉体を使っている時、自分の事を嘉音と名乗ることはできない。人格目線で見た場合、紗音は嘉音とは別の存在だからだ。つまり、肉体を使っている人格の名前しか名乗ることはできない。

Q7 嘉音がチェーンで閉ざされた客室から戦人を助け出し、消失する方法は?
客室に入った嘉音が中で雨合羽を脱ぎ元々着ていた紗音の服装に戻る。雨合羽をクローゼットに入れ、紗音はベッドルームに隠れた。客室に嘉音人格で入ったものの、中で肉体を紗音が使い始めたため「全ての名前は本人以外には名乗れない」から、赤字上は嘉音の名前が消え、紗音のみが存在する状況になった。肉体は普通にベッドの下にいる。

Q8 「18人目の人間」「17人だ」。ヱリカ退場時、2つの赤字が並び立った理由は?
そもそも赤字は「真実を保証する」のであって、「唯一性」を保証しているのではない。つまりどっちも真実であり、「人格をカウントした場合」と「肉体をカウントした場合」のそれぞれの真実が表記されただけ。

Q9 EP6のゲーム盤の真相は?
狂言殺人をヱリカが本当の殺人事件にしてしまった。このゲームは戦人が真相に至った事を証明するためのゲームであり、恋の試練やベアトリーチェとの結婚の描写、紗音嘉音が同一人物であった事、この辺は重要だ。恋の試練で紗音が勝利した事は、実際の六軒島で幸せになる権利を勝ち取ったのが紗音である事を指している伏線でもある。

Q10 冒頭で部屋に監禁されていた人物が、女性めいた言葉を発した理由は?
戦人が約束を忘れていた事によってヤスは六軒島という密室に閉じ込められた存在になってしまった。事件の密室は「戦人の嘘」によって六軒島という密室に閉じ込められたヤスの事を指している。その暗喩として出たのかもしれない。


EP7

Q1 ベアトリーチェ殺人事件の犯人は?
作中で言われたように、理御とベアトリーチェは同時に存在できない。赤ん坊が夏妃に崖から突き落とされるとベアトになり、受け入れられると理御となる。ベアトリーチェを殺しているのは理御の存在そのものだ。

Q2 「戦人が1986年の六軒島に来なければ事件は起こらなかった」のはなぜ?
ヤスが事件を起こすのは自分の恋の決着が目的であり、戦人が帰って来ないのなら恋は譲治だけに絞られるため。そのため事件を通して恋の決着を行う根本的理由が消失する。嘉音は紗音を支える役目のため紗音の妨害行為は行えない。なお現実世界ではそもそも嘉音という存在自体存在しないのだと思われる。

Q3 戦人から紗音への手紙は本当になかった?
なかった。そもそもうみねこという物語は事件後にヤスの恋心を知ってしまった戦人の後悔から執筆されているものであり、ヤスの事を気にかけていたという方向性はないだろう。

Q4 ヤスが1986年の六軒島で行おうとしていた計画とは?
事件の中で「碑文が解かれると譲治を選ぶ」「事件の真相を解かれ、約束を思い出したのなら戦人を選ぶ」「どっちも達成されない場合は爆弾による皆殺しで黄金郷で全人格が幸せになる」というルーレットの目を設定し、自身の恋に決着を付けようとしていた。事件部分は第8の晩までは狂言であり、第9の晩を迎えると爆弾による皆殺しに移行する。

Q5 ヤス、紗音、嘉音、理御、ベアトリーチェ、クレル、それぞれの関係は?
夏妃が赤ん坊を崖から落とすとヤスになり、受け入れると理御となる。ヤスの中には紗音、嘉音、ベアトリーチェという人格があり、嘉音は紗音を支える役目として生み出された。クレルは犯人ベアトリーチェを隠すための仮の存在である。

Q6 ヤスが魔女になってからの2年間に何があったのか?
譲治の恋と戦人の恋の板挟みに苦しんでいた。また、元々の恋の出来ない自分の体の事にも苦悩していた。

Q7 「幻は幻に。……黄金の真実が幻の錠を閉ざす」黄金の真実とは?
事件部分の意味では「共有された真実」の事であり、言わば結託して犯人側が吐いている嘘の事だが、物語全体としては「真実を優しく包み込むもの」である。これは辛い真実の上に魔法解釈を重ね、違う解釈の幸せを見つける魔法解釈の事だ。ベアトが黄金の蝶を纏っているのは、ベアトの姿は元々「戦人の理想の女性像」を反映させて作られた人格設定であり、現実的にベアトのような姿はしてないからだろう。これも真実を優しく包み込むものだ。

Q8 お茶会で描かれた次男夫婦による殺人の真相は?
若干脚色は入ってるかもしれないが、大筋で真実だ。これに近い出来事が現実で起こった。それは物語全体に散りばめられた伏線と合致している。

Q9 クレルのはらわたで描写されたシーンの真実は?
クレルが隠していた真実。これは作者である竜騎士07氏本人がゲーム上に描いている絶対的真実である。偽書自体にはおそらく無い。

Q10 ウィルの二十の楔がベルンカステルに通用しなかった理由は?
本当の六軒島での出来事はそもそもミステリーですらない、ただの殺戮だから。ヤスが予定していたミステリーは事件前日に中断している。


EP8

Q1 ゲームマスターと作家の違いは?
ゲームマスターはメタ世界でゲームの筋書きを作る者であり、ゲーム盤に強く影響を与えるが、うみねこは98年の世界も最後のエピローグを除いてすべて創作世界であり、作家は98年世界とメタ世界、ゲーム盤世界、全てを使って「うみねこの現実世界の人々」にメッセージを送っている。

Q2 各EPの作者は誰?
EP1がヤス、EP1のお茶会からEP8まで(裏お茶会を除く)が八城十八。なお、私達がプレイしているゲームはヤスや十八の主観以外に、竜騎士07先生本人の主観も入っており、私達がプレイしてるゲームとメッセージボトル・偽書は完全に同一ではない。

Q3 ベアトリーチェの心臓とは何か?
爆弾と同一人物トリックの2つ。EP4で描かれた左手と右手にあたる。

Q4 ヤスの血縁関係を分かる範囲で説明せよ
金蔵と九羽鳥庵ベアトの間に生まれた娘。

Q5 真里亞は事件にどのような影響を与えた?
ベアトの魔法は他人に認めてもらって存在できる魔法であり、真里亞の白い魔法のように自分だけで成立するものではなかった。真里亞はベアトの魔法大系の構築に必要不可欠な存在だった。

Q6 赤字と金字について説明せよ
赤字とは現実世界の十八が偽書に書いているものであり、「真実だけ」を保証する。金字は全員が信じている共有された真実。

Q7 八城幾子&フェザリーヌの正体と登場理由は?
偽書世界上で幾子は「十八」と名乗って登場する事によって、偽書の作者は六軒島とは関係の無い人物であるというミスリードを行っている。私達プレイヤーは「記憶を失った戦人である十八」が偽書を書いていた事を知っているが、うみねこの現実世界の人達はそれを知らず、偽書の作者を幾子だと思っている。このため、彼らの偽書は現実世界での出来事を証明する根拠にはならない。うみねこの世界の現実世界の人々は、幾子の偽書を「真相だと信じる」「信じない」という信頼に基づいて結論を出さなければならない状況になっている。フェザリーヌは幾子を物語の中に魔女として登場させた存在。

Q8 ベルンカステルとラムダデルタの正体とは?
現実世界でメッセージボトルが戦人まで届いた奇跡を「奇跡の魔女ベルンカステル」として偽書に登場させた存在。ラムダデルタは現実世界のヤスが事件を起こす際の「絶対の意思」とベアトのキャンディーの魔法を反映させて偽書に登場させた存在。

Q9 「一なる真実の書」の内容は?
EP7のお茶会の惨劇が描かれている。十八の記憶がそれを保証したのだろう。実際の現実世界にもおそらくあったのだろうが、無くても成立する。実際の六軒島の真相は十八自身が知っているからだ。

Q10 八城幾子が真実の書と鍵を持つ理由は?
作中では病院で発見され幾子の元に来たと説明されているが、そもそも絵羽の日記は存在しないという考え方でも問題はない。最終的にこれは公開されていないため、中身は真っ白だった可能性もある。

Q11 ボトルメッセージを流した人物とその理由は?
「譲治と恋が成立した場合、戦人への思いはベアト人格と一緒に抹消される」という事態を想定して事件前にヤスにより流された。ヤスのメッセージボトルは事件の「嘘」と「犯人の正体」から戦人の罪が連想される作りであるため、「戦人の罪」を知っている人間にしか意味のない一種の暗号である。一般の人々はこの戦人の罪を知らないため単に「事件が嘘で構成されている」までしか到達できず、ヤスの真のメッセージを理解する事は不可能。戦人に向けて流されたものだ。

Q12 12年後の世界やメタ世界は偽書に書かれていた事?
98年の世界は現実世界の縁寿に向けて十八がメッセージを送るために執筆されている。EP4の真里亞の魔法の思想は六軒島の辛い真相を追わないようにするための十八のメッセージだ。メタ世界は、メッセージボトルでヤスの恋心を知ってしまった後悔と苦悩、謝罪の意味を込めて十八が執筆している世界であり、同時に世間を魔女幻想に導く役割もしている。どっちも偽書には書かれている。

Q13 八城十八が偽書を発表した理由は?
縁寿に対するメッセージ、死んでしまったヤスに対する謝罪、世間の絵羽犯人説や留弗夫一家犯人説を霧散させ、最終的に魔女幻想に導くために発表されている。最終的に六軒島の事件を猫箱に閉じたのは十八の偽書と日記披露パーティーの一件であり、自らの手で事件を猫箱に閉じ、縁寿の幸せを願った。

Q14 3日目の描写の前には何が起こった?
基本的にはEP7お茶会に近い出来事が起こった。4日に事件が起こり、島の爆発は5日の24時であるため、戦人とヤスはかなりの長い時間一緒にいた事になる。何を話していたのかは不明。

Q15 戦人とベアトリーチェが入水した意味は?
十八の偽書の締めくくりとして、天国のヤスへの謝罪の意味が込められている。現実世界ではヤスは自分の恋が成立しない状況に絶望して自殺している。戦人はこの時点で事件の真相に至っておらず、ヤスと結婚しようと思って逃げている訳ではない。偽書の中では事件後に真相に気付いた戦人の後悔の気持ちの総決算として、一緒にベアトと入水して物語を終わらせた。

Q16 八城十八が寿ゆかりに行った告白の真偽は?
うみねこにおける本当の現実世界はこの裏お茶会だけだ。十八が語った事は全て真実。十八は偽書をベアトの入水シーンで完結させたものの、本当の意味での心の決着はまだついていなかった。未だに戦人の記憶との葛藤に苦しんでいる。

Q17 福音の家の黄金郷が意味するものは?
真相に至る事が余りに遅かった十八の後悔がやっとヤスに伝わった。人格として戦人は完全に死亡し、天国のヤスの元へ行った。十八の長かった苦しみもここでやっと終わった。

Q18 魔法と手品、縁寿にとってより良い選択は?
魔法。六軒島の真実は黄金を巡る殺し合いであり、現実の縁寿がそんな辛い真相を追わないようにするために描いていたのがEP8の物語だ。

Q19 山羊が世界を食い尽す描写の意味は?
現実世界で六軒島の真相を巡った多くの悪意のある偽書の数々の象徴として描かれている。恐らく現実世界では留弗夫一家犯人説がメインになってきていて、縁寿の身を心配した十八がEP8のような物語を書いてネットに晒した。

Q20 『うみねこのなく頃に』全体の真相は?
真相に至る事があまりに遅かった十八の苦悩と葛藤、そして謝罪の物語。 

漫画版の解釈

現在漫画版EP8で色々な事が明かされていますが、メッセージボトル『confession』について、僕がどういう見かたをしてるのかというのを書いておこうと思います。confessionの内容は言ってしまえばEP7のヤスの回想の脚色排除バージョンと言えると思います。confessionとはそもそも何を説明している告白なのか。それは、EP7のヤスの回想とは何を説明しているのかと同義だと思います。そもそもヤスの回想というのは真犯人クレルがウィルと理御に説明をしている物語な訳で、クレルは事件の2年前まで語って、その後ウィルとゲーム盤の答え合わせを始めます。

つまりここにヤスの回想=confessionとクレルに物語的連続性が発生している訳で、要は僕はヤスの回想=confessionとは「EP1~4の86年10月4日5日に至るまでの動機の告白」という見方をしてるんですね。86年に真犯人ベアトリーチェは殺人をやってますから、当然狂言では無いわけです。普通に殺人をやっており、そのトリックの解説が実際confessionで描かれてました。

僕自身はEP8そのものが偽書であるという考え方をしているので、confessionに関する新規エピソード全般も偽書の中の記述と思って見ているんですが、原作の時点で一つ疑問に思っていた部分というのが僕にはあります。それは、現実世界の幾子=伊藤幾九郎は自分の書いた偽書があまりに真相に近く、マスコミに「事件関係者と知り合いなのではないか?」と疑われている部分を一体どういう回避策を取ったのかという点です。原作では何故かそこに触れられずあっさりと猫箱に真相が封じこめられましたけど、その詳細な経緯が描かれてないんですね。今回confessionはその補足ではないのかと思います。幾子にとって致命傷となるのは、現実世界で戦人が生きていた事を知られてしまう事です。これを知られると、彼らの偽書が「戦人の記憶に基づいて描かれている」という見方をされてしまい、猫箱に真相を封じ込める事が不可能になるでしょう。最悪、縁寿が自殺する可能性まであります。

「メッセージボトルconfessionを実は手にしていたから、伊藤幾九郎は真相に至っていたんだよ。事件関係者なんか知らないよ」

というマスコミ向けのミスリードなのではないかと思うんですね。confessionは僕が考察で書いてるように、「ヤスの変装がなぜ誰にも見破られないのか」の説明が全くされてません。僕はそれを成立させるための仮説を考察で書きましたけど、それを前提にすると、やはりあの物語は偽書世界上に描かれているものという事になるんだと思います。

僕のEP7の動機考察というのは、そういう前提を全て考えた上で「じゃあ本当の現実世界ではヤスは何をしようとしていたのか?」という考察なんですね。偽書世界上で描かれる情報から、何とか本当の現実世界の真相を特定できないだろうか、という路線の考察な訳です。

 ・冒頭の新規追加描写
漫画版EP8ではゲームには無かった描写が追加されている。まずはエピソード冒頭に出てきたこの描写だ。

「今一度物語を紡ごう。安らかに眠るあの人のためではなく、もう一人の大切なあなたのために」

うみねこはEP1~8まで作中作であり、この一文の「あの人」とは入水自殺してしまったヤスの事だろう。八城十八は事件後に真相に至った後悔の気持ちから偽書の執筆を始めた。しかし、このEP8ではもう一人の大切な「現実世界の縁寿」のために物語を紡ごうとしている。真実の価値とは一体何なのか。それは縁寿が未来を生きて行くために本当に大切なものなのか。現実世界の縁寿は、このエピソードの意味をきっと真剣に考えてくれたはずだ。

・縁寿のループ世界の解釈
漫画版冒頭では作中に登場する縁寿について、実に分かりやすい補足がされている。「いくつかの人生の分岐、そしてループ。魔女たちに駒と弄ばれながらも、数々のゲームを経て断片的な情報を得る事はできた」このような文章と共に、縁寿が98年の分岐世界やゲーム盤を体験してきている事が示されている。つまり、うみねこの98年世界やゲーム盤世界は地続きの世界であり、縁寿のいる98年世界というのは本当の現実世界ではないわけだ。98年の世界も偽書の世界だった。これは「右代宮縁寿は1998年に必ず死ぬ」という新規赤字が出た事からも分かる。EP6の考察で書いたように、赤字は偽書に十八が書いているものであり、赤字の適用範囲は創作世界のみという事だ。死んだ縁寿は最終的に魔法EDの黄金郷に行った。

・郷田が薔薇庭園で薔薇の手入れをしている描写
これは真里亞の薔薇が事件前に消失してしまう部分の種明かしだろう。うみねこはノックス8条が赤字になっているため、手掛かりを絶対に提示しなくてはならないという制限がある。EP1では料理にバラの花びらが使われている描写があるわけだが、薔薇に関する描写はそこしか存在しないため、ここを伏線として解くべき謎だったのだろう。犯人は郷田だったのだ。

・紗音と嘉音とベアトリーチェ
ミステリーのゲーム盤では彼らは探偵の前に同時に存在できない。漫画版では同一人物だった事が既に明かされており、これはもう確定している。冒頭で紗音と嘉音が2人同時に存在している。ミステリーと関係のないゲーム盤では紗音と嘉音は普通に2人同時に出てくる。これはやはり創作世界だからだろう。EP8は明確に意図が存在する。EP8は縁寿のために紡がれているものであり、戦人とベアトの確執の物語は既にEP6で決着がついているのだ。物語の意図に合わせて描写もどんどん変更される事が明かされている。明らかにEP5で死んだベアトそのものとしか思えないような描写がEP8ではされてしまうのも、これが理由だろう。

・源次の電話の受話器居合取り
源次は居合をやっているのかもしれない。EP2で熊沢と南條が刃物で殺されているが、やはり実行犯は源次だったのだろう。

・型紙とスプレー
紗音が型紙を使って一瞬で扉に文字を書いている場面が追加描写されている。ゲーム盤の魔法陣の模様を描いたトリックの説明だろう。

・赤字とは
「元々赤き真実には2種類ある。死亡状況や現場状況、アリバイなど、それぞれのゲーム盤でのみ通用する赤。もう一つは人物像や在島人数など、どのゲーム盤にも共通し並立する赤。これは猫箱の外にも通用する疑いようのない事実でもある」

この追加説明で重要なのは「猫箱の外」という表現だ。猫箱の内とはもちろん10月4日5日の事であり、それ以外の部分は外側と言う事になる。例えばEP5では85年の世界が描かれている。あそこは猫箱の外ではあるが、赤字は適用されてますよ、という事だ。偽書世界上で猫箱の外にあたる描写にはすべて赤字が適用される。赤字が適用されないのは、偽書世界の外、本当の現実世界だけだ。

 ・六軒島の猫箱の中身が確定
漫画版では一なる真実の書の内容が公開されている。EP7お茶会の惨劇が描写されており、「これは全て真実」と断定系の確定赤字も出ている。六軒島の猫箱の中身はEP7お茶会だったのだ。

・図書の都にあったconfessionのボトル
このメッセージボトルは幾子が描写されている部分にも出てくる。縁寿は図書の都でこのボトルをカケラ化してスカートに入れる。この後縁寿は一なる真実の書を見て自殺するわけだが、カラーページになっている部分の漫画のコマの外の部分がクレルのハラワタの描写の時のように真っ赤になっている。その後縁寿が飛び降り自殺したあと、このカケラは死体の血の中からフッと消える。クレルのハラワタ的手法で描かれる描写は、作者(竜騎士07)がプレイヤーに向けて発信している絶対的真実なのではないかという仮説が私にはあり、一なる真実の書で描かれた惨劇の物語は本当の現実世界での絶対的真実なのだろう。

・戦人が霧江の実子なのは98年世界では周知の事実だった
「戦人お兄ちゃんがお父さんとお母さんの実子であった事は1998年では周知の事実だった。六軒島事件の陰謀説を疑う警察やマスコミが親族の身辺を嗅ぎ回り、件の医者が赤ん坊の入れ替えについて暴露したのだ」

・古戸ヱリカと縁寿の対面
この場面でヱリカは「直接ごあいさつするのは初めてですね」と言っている。EP6のヱリカの「初めまして、こんにちは!探偵ッ、古戸ヱリカと申します!!」という部分は、やはり朗読者の階層の縁寿に向けて間接的にあいさつしていたのだろう。

・新規追加の黄金の真実
黄金の真実とは事件部分の意味では「犯人側が結託して吐いている嘘」の事であり、共有された真実の事だが、物語全体としては黄金の真実とはそのような定義ではない。

「俺から縁寿に贈る最後のゲームなんだ…ッ」

EP8の最後の入水シーンでは海の底のベアトリーチェの猫箱の上に黄金の薔薇が落ちてくる。つまり、魔女の犯行だと主張するベアトのゲーム盤は黄金の薔薇が示すように、黄金の真実なのだ。これは作中のEP4でのさくたろうの復活の描写、EP6のヱリカと真里亞の魔法論争の描写と密接な関係があり、黄金の真実とは「辛い真相を知っている人間が、知らない人間を幸せにしてあげるために真実を優しく包み込んであげる事」なのだ。戦人は縁寿が幸せな未来を生きて行く事ができるように最後のゲーム盤を開催した。たとえ幻想の86年の描写だったとしても、それを通じて縁寿に幸せになってほしい。辛い真実なんか知るべきじゃない。そういう戦人の想いが全て詰まった黄金の真実だ。

 ・入水シーン
漫画版の入水シーンではアレンジがされている。まず原作の文章であるこの部分を見てほしい。

二人は互いをきつく抱き締めました。
……もう、運命は二人を引き裂こうとはしませんでした。
そして、何も見えない真っ暗な世界で、……ぽっと、輝きました。
それは温かな、黄金の輝き。二人は一つとなって、……奈落へと沈んでいきました……。

ここの部分がこのように改変されている

そして、何も見えない真っ暗な世界で、黄金の薔薇となり輝きました。

入水したベアトと、ベアトを抱きしめた幻想の戦人は黄金の薔薇になり猫箱の上に落ちてくるのだ。漫画ではこの後ベアトと戦人が、ずっとメタ世界で戦っていたあの部屋にたどり着き、EP1に繋がるような演出がされている。入水とEP1のメタ世界が繋がってるような演出がされているのだ。この漫画版の描写のおかげで、やっと原作のこの部分の意味が分かったように思う。次の部分を見てほしい。

それがふわりと、………純白の無垢な砂の敷き詰められた世界に、辿り着きます。
そこには、白い砂に半分埋まった、……小さな箱が。
それは、静かな海の底での安らかに眠る、ベアトリーチェの猫箱。
その上に、ふわりと、……黄金の薔薇は舞い降りるのでした………。
それは、深い深い海の底のお話。
真っ暗な真っ暗な暗闇の中に。
……ほのかに輝く、黄金の薔薇が眠っているという、とてもささやかな物語……

この文章の「ささやかな物語」ここの意味だ。黄金の薔薇となったベアトと戦人はこの文章のように、猫箱の上に落ちてくる。そしてその猫箱とはEP1から始まったあの戦人とベアトの戦いの物語なのだ。これが「ささやかな物語である」という論法は、十八の視点から語られているものだろう。そもそも実際の六軒島では事件の出題がされていない。戦人は実際の六軒島ではヤスと対決できなかったのだ。十八は事件後にメッセージボトルで物語に触れ、真相に至り、ヤスの恋心を知った。この時の十八の後悔の気持ちは、彼を自殺に追い込むほどのものだった。

十八の綴る偽書に描かれるベアトと戦人の戦いの物語こそが、実際の六軒島では果たせなかった幻想であり、黄金の真実なのだ。実際の六軒島ではヤスのミステリーに触れられなかった。それを偽書上で実現した物語は十八にとって「ささやかな物語」なのだろう。海の底に沈んで死んでいったヤスと、戦人の人格。この二人の温かな黄金の輝きは十八のささやかな物語の中でほのかに輝き続けるのだろう。

・魔法ルートの98年世界
ゲーム盤で「魔法」の扉を選ぶと原作ではビルの屋上のシーンに繋がるわけだが、漫画版ではすでにビルの屋上からダイブした部分に繋がっており、このビル落下の最中に「もう一つの可能性」として手品ルートの回想シーンが始まる。その後防護ネットに引っ掛かり助かるのだが、この縁寿は原作とは違い、ゲーム盤でもらったプレゼントを魔法ルートでも持っているのだ。つまりゲーム盤世界と明確に繋がりが存在する事を示唆している。

・作家縁寿の描かれる最終話
この漫画の最終話は原作から変更されている部分がかなり多い。中でも大きな違いは縁寿に関する変更だ。原作の縁寿は八城十八に面会を求めたが断られ会えなかったと説明されているが、この漫画版では幾子に過去に一度会っていると説明されている。挿入されている背景の絵を確認すると、これはEP8のゲーム盤中に絵羽の日記を巡って、フェザリーヌのいるメタ世界階層から、天草と幾子のいる98年階層に移動したあのシーンの事のようだ。前述した「魔法ルートの98年世界」の項目から分かるように、ゲーム盤世界と98年世界は創作世界として繋がっており、行き来可能だ。この時の記憶を指して「幾子に過去一度会ってる」と発言しているという事は、この最後の最終回の部分が「創作世界である」という可能性が出てくる。

この創作世界という方向性の考え方として、最後の福音の家のでの黄金郷の復活の部分が漫画版では幻想脚色度が原作よりもかなり強い。十八や作家縁寿が幻想勢を普通に認識しているような描写があり、この辺も原作とずいぶん違う点だ。

・最終話の解釈
この最終話について一つ仮説を立てたい。原作の幾子に会っていない縁寿と漫画の会っている縁寿の違いというのは「階層構造」の違いから発生している問題だと思われる。原作の裏お茶会は普通に現実世界を描いているだけだと思われるが、漫画版というのはそうではなく「現実世界の出来事を後に十八と幾子が偽書の物語の締めくくり的な意味で文章化、物語化した世界」なのだと思われる。つまり原作の現実世界の作家縁寿は幾子には会えなかったが、漫画版はこの現実世界の縁寿の部分を「創作世界の縁寿のエピソード」に差し替えているのだと推測される。このためEP8のゲーム盤中に98年世界で幾子に会ったという部分が反映されているのだろう。

この漫画版最終話創作説というのは、根本的な部分としては原作のラストの「この物語を最愛の魔女ベアトリーチェに捧ぐ」と関連している。十八は事件後に手遅れになって真相に至った。この後悔の気持ちから執筆されているのが十八の偽書であり、天国のヤスへの謝罪の意味が込められている訳だが、例えばの話、入水シーンで偽書が完結していると考えると、天国のヤスに向けた物語がある意味で悲しい場面で終わっている事になる。十八が天国のヤスに捧げる物語として適当だと思われるのは、やはり最後の福音の家の黄金郷で戦人人格が迎えられた部分だろう。あそこまでを指して「この物語を最愛の魔女ベアトリーチェに捧ぐ」と考えた方が自然だ。

そういう意味で、この漫画版の最終話というのは、現実世界で起こった出来事をベースに創作化した偽書の本当のラストにあたる部分なのだろう。十八の情報を偽書で明確に描き、ネットに発表する事は「六軒島事件の再熱」を意味するので、おそらくネットには公表しない個人的な心の決着のラストとして書かれたものなのだと思われる。基本的に解釈として創作と考える場合でも大筋の現実世界の出来事に沿ってるはずなので、創作世界とはいうものの、この最後の部分は現実世界と考えて問題ないように思う。
 

【感想】うみねこのなく頃にを終えて

うみねこのなく頃にの考察を終え、とても満足して作品を終える事が出来てとても嬉しいです。
思い起こせば、作品と出会ったのはPS3版を知ったからでした。そう、僕は実は原作をずっと追っていた古参ユーザーではなく、PS3版から入った新規ユーザーだったりします。原作でいうと、EP8直前から遊び始めたユーザーです。

当初ミステリーとは「探偵役が勝手に謎を解いていくジャンル」と思っていた事もあり、全く考えずに物語を読んでいました。EP8を読み終え、世間では批判が増大していましたが、僕はというと、そもそもうみねこをPS3版から遊び始めたため、特に作品に思い入れも無く、そういう感情は全くなかったですね。そもそもEP8を読む頃にはEP1~4の事件の詳しい状況を覚えてすらいないっていう(笑)覚えてないもんの答えを明かされた所で何の感慨も沸きませんし、縁寿が兄と再会できてよかったなーくらいの印象で一周目を終わりました。

僕のような作品完結時に作品を遊び始めたユーザーにとって、とても嬉しい事はたくさんの考察を読める事でした。有名考察者のKEIYAさんの考察はもちろん、ネットのwikiの考察、2ちゃんねるのスレの考察、個人のブログの考察、色々と読みましたね。今の時代ネットを漁れば答えは転がっているだろうという気楽な感じで見てたんですが、確かに答えらしきものはあるものの、どうも核心に迫っていないような、そんな印象を受けました。

僕が考察を自分でやりはじめたのは、KEIYAさんの最終考察がキッカケです。色々な考察を見ても、どうしても納得できない部分が結構ある。ネットをこれだけ漁っても納得できないという事は、もう自分で考えるしかないと思いました。あの時僕が納得できなかったのは、動機、紗音嘉音同一人物説の具体的トリックの詳細、世界構造、猫箱の中身、だいたいこの辺です。特に動機は意味がさっぱり分かりませんでした。

僕にとって一つの転機になったのはロジックエラー密室の考察をやっていた時でした。クローゼットに紗音が隠れている。これがまぁ王道の解釈なんですが、ある時ふと思ったんですね。僕はうみねこを考察をしてるけども、そもそもミステリーとして今まで考えていたか?と根本的な考察姿勢の間違いに気付いたんです。ファンタジーを許容した考察をいつの間にか自分がやっている事に気付き、愕然としました。仮にクローゼットではなく、ベッドルームだと気付いていたとしても、そもそも紗音嘉音同一人物説という前提が成立してるかどうかも分からないのに、それを前提にしてトリックを解いていい訳がありません。

紗音嘉音同一人物説が少なくとも仮説として構築できてから、そのロジックを使うのがミステリー的な考え方だろうと。これ以降考え方をあえて偏った方向で考える事にしました。完全ミステリー解釈とでもいいましょうか、ファンタジーを絶対に認めない、という根本的な方向性です。辻褄を合せるために根拠を探す訳ですが、うみねこは確かに根拠は作中にあるものの、完璧な根拠ではなく、ぼやっとした根拠しかありません。答えが明かされずに終わったうみねこは、どんなに考察してもそれは所詮OSS(お前がそう思うんならそうなんだろう)でしかないという根本的問題に結局向き合わざるを得ませんでした。

答えが明かされないという悪魔の証明に対して、考察サイドは全くなす術がないのか?この根本的問題点に対する答えを教えてくれたのは、必死に考察した動機考察でした。僕の構築した動機考察は何故か色々な部分に連鎖的な説明付けが可能でした。何故か分からないが論理的説明付けが可能になる。具体的にいうと動機を前提にすると、ゲーム盤の犯人、メタ世界のベアトの目的、入水の理由、偽書の執筆動機、この辺に説明がついていく訳です。

これは一体何なんだろう。それが僕の疑問でした。偶然説明がついてしまったのか、それとも必然として説明がついたのか僕には判別がつきませんでした。この時に逆転裁判1のサユリさん(インコ)の尋問の時の裁判長のあるセリフがふっと思い浮かびました。「偶然が2度続くことはありません。それは必然です」確かこんな感じのセリフだったと思います。

もしかしてこれこそが、答えが明かされない物語に対する唯一の考察側の武器なんじゃないのか。後に僕は「連鎖考察法」と名付けますけど、本編中のあらゆる部分と横の連鎖的繋がりを作っていく。連鎖的説明付けを構築する。もしそれが可能だったのならば、それは作者の用意した公式解答だから必然的にそういう説明付けが可能になってるんじゃないのか?そう思いました。結局ここまでやってもOSSな事は変わらないのだと思います。しかし、納得の度合いが明らかに違う。少なくとも作品の謎に確信を持つ事はできる。

こうして僕はうみねこを考察し続け、ついにその考察を全て終えました。

個人的に魔法EDがとても素晴らしく思えた事が何よりも嬉しかったです。賛否両論なんてのは論外と言いきれるレベルの、最高の終わり方だと思えました。絶賛するレベルのEDだと思えました。

考察って不思議ですね。作品を1周目よりも何倍も楽しめた。そして考察を通じて僕は読書が大好きになりました。久々に考察、創作も含め膨大な文章量を書きました。考察を書くのも楽しかった。自分で読み返すのも楽しかった。僕の考察は僕の中で真実のカケラとして存在してます。少なくとも僕自身は自分の考察を信じ大切にします。おそらくうみねこ以上の物語にはもう出会えないだろうなと思います。

こんな素敵な作品を遊べて本当に良かった。必死に考え、悩み、壁にぶち当たり、ファンタジーに屈服しそうになり、そのたびにミステリーだと再度信じ直すという繰り返しでした。考察は楽しくもあり、苦しくもあり、時には考察者同士で激論になりました。

それも含めてやっぱり、心から楽しかったと言えます。
うみねこの楽しさが多くの人に伝わる事を信じて、ガートルードさんの名ゼリフをあなたに贈ります。

謹啓。謹んで申し上げる。物語を、……遡り給え。……今の汝には、真実のか弱き光を見逃さぬ眼が、与えられていると知れ。

ここまで読んでくれてありがとう!うみねこをプレイしたユーザーが、良い思い出として作品を終えられますように。

※PDFファイル
考察本編
http://blog.livedoor.jp/takeumineko/%E3%81%86%E3%81%BF%E3%81%AD%E3%81%93%E6%9C%80%E7%B5%82%E8%80%83%E5%AF%9F%E5%AE%8C%E5%85%A8%E7%89%88.pdf
本編考察は元々「本編再読用のガイド」的な意味で当初自分用に書いてたので、本編再読する方は役立つかもしれません。

とある推理研究部とうみねこのなく頃に
http://blog.livedoor.jp/takeumineko/%E6%8E%A8%E7%90%86%E7%A0%94%E7%A9%B6%E9%83%A8.pdf 
これは言ってしまえば、竜騎士先生に向けた僕の読書感想文です。作家さんは考察の結論よりも、その過程の思考錯誤の部分こそ知りたいと思うんじゃないかと思って書きました。彼ら5人は僕の脳内議論のキャラ化です。

Magic of the golden witch
http://blog.livedoor.jp/takeumineko/Magic%20of%20the%20golden%20witch.pdf
僕のうみねこ関係の総まとめ創作です。

古戸ヱリカのガチ推理
http://blog.livedoor.jp/takeumineko/%E5%8F%A4%E6%88%B8%E3%83%B1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E3%82%AC%E3%83%81%E6%8E%A8%E7%90%86.pdf
探偵古戸ヱリカの本気の推理の物語。ヱリカVS竜騎士07は、どちらが勝利したのか。


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