・第3のゲームの主役は絵羽さん
第3のゲームは何と言うか、ベアトリーチェさんのゲーム盤の核心的な要素が非常に多い部分ですね。トリック的にも物語的にも。今回は絵羽さんが主役ですね。思ったのですが、第一のゲームでは夏妃さん、第2のゲームでは楼座さんが活躍されていました。これは奥様大活躍シリーズなのですかね。順番にメイン回が回って来てるように思うのですが。でも第4のゲームは別に霧江さんメイン回ではありませんし、あの方は実際の六軒島で大活躍でしたから、ゲーム盤では出番無しよ!って事なのですかね。大はしゃぎでしたもんね。

・八城十八作の偽書がEP3
さて、第3のゲームは明確に「伊藤幾九郎の偽書である」と情報提示がされていますね。第2のゲームはメッセージボトル説、偽書説、これは別れていますけども、第3のゲームは十八さんの創作です。この十八さんの第3のゲームの偽書「Banquet」ですが、十八さんは実際の六軒島で絵羽が犯人ではない事を知っているはずなのに、なぜこのような偽書を作って発表してしまったのか、という疑問があります。いくつか推理は可能ですね。現実世界の縁寿さんに両親が犯人だったのではなく、絵羽が犯人だったと思ってもらうためだとか。そういう主流の推理というものがございますが、私はそうは思いません。ええ。思いません。全く。むしろ逆の論理で推理可能です。十八さんは絵羽が犯人ではないのだと主張したいのです。おそらくは、ですが。作中で絵羽犯人説を描いておきながら、逆の解釈を可能にするには、この物語の世界構造に「98年世界も創作世界である」という推理を組み込まなくてはなりません。

最後縁寿さんが病院で絵羽さんに会いますね。ここも創作世界であると考えます。つまり、本当の現実世界の一般読者はここのシーンも読み物として読んでいる、と仮定しましょう。絵羽さんが縁寿さんに酷い事を言っていましたね。遺産を全部縁寿さんに相続すると。あなたの人生はこれからマスコミに常に監視され、善行を行えば偽善者とののしられ、悪道を行えば犯罪者とののしられる、そういう人生が待ってると。そんな人生をあなたにプレゼントするわと。これは端的言って絵羽さん自身の事ですね。絵羽さん自身はそういう人生だった。本当は犯人ではないのに。縁寿さんのために真相を語らない事を誓った結果、そのような人生になってしまいました。十八さんは当然それが分かるでしょう。絵羽さんが犯人ではないのは知ってますし。では、十八さんは絵羽さんが常にののしられ続ける世間の様子を見てどう思ったでしょう。強烈な不快感を感じたのではないですか?それが真っ当な人間の感覚のハズです。証拠もないのに犯人にされ、罵られ続ける絵羽さん。可哀想ですね。おそらくこれこそが第3のゲームBanquetの執筆動機なのでしょう。一般読者は世間の印象にそった絵羽犯人説を楽しみますが、最後の最後にこの絵羽さんの病院でのセリフが来る訳です。つまりは、「証拠も無く絵羽犯人説を主張する世間の山羊共よ。恥を知れ」と。強烈な皮肉なのですね。Banquet。思えば伊藤幾九郎さんは物語全体を通して皮肉の作家です。ここでも皮肉を言ったのでしょう。

さて、これを仮説Bとします。最初に語った仮説Aがありますね。これは推理的に根拠に基づいて確定不能です。お好きな方を選べば結構。推理によって確定不能な部分は絞り込み不能とバッサリ諦めます。以前語った第2段階で止まってしまう類の推理対象ですね。第3段階の絞り込み段階までは行けません。

・絵羽さんの人物像
絵羽さんの人物像を考える場合に、「実は絵羽は縁寿を守っていたのだ」という部分の手掛かりが第3のゲームでは提示されていますね。冒頭の六軒島に向かう船のシーン。ここで秀吉さんが絵羽さんの人物像を語っています。一番信用に足る人物がそう語る訳ですから、信用していいでしょう。絵羽さんは六軒島に戻るとまるで別人のようになってしまうけど、本来は凄く優しい女なんやで、と言っていました。本来は優しいんだそうです。本来は優しいのであれば、絵羽さんの悪意は裏読みをしなければいけない場面があるでしょう。そう、縁寿さんに六軒島の真相を語らないとイジワルしてる部分ですね。優しさから語らないのであれば、それは縁寿さんを不幸にするからこそ、語らないのでしょう。そういう推理が伏線から構築可能です。

・砂浜での紗音の思い出話
今回事件前日に、紗音さんが砂浜で思い出話をされますね。戦人さんに関するエピソードですが、このような事を言っていたらしいです。「白馬にまたがって迎えに来るぜ、シーユーアゲイン」これはもちろん犯人が事件を起こす動機に関連する情報提示ですね。戦人さんが忘れている約束、ベアトリーチェが第4のゲームで思いだすように要求する罪、これらはこの第3のゲームの事件部分のトリック、連鎖密室と南條殺しを解く事で特定されます。かなり難易度が高い謎ですが、推理は可能です。事件の犯人はベアトリーチェさんですが、普通ここに気付く人はいません。深読みに深読みを重ねて、やっと可能性が出てくる程度のものでしょう。そういう意味では非常に難解です。難解であるため、出題者には「手掛かり」を配置する義務があります。ベアトリーチェ犯人説が手掛かりから論理的パズル的に推理可能でなければなりません。なぜなら、それがミステリーだからです。手掛かりの配置。これは出題者と探偵の間の信頼関係の根本なのですから。

・ロノウェのセリフから読み取れる魔女の伏線
さて、第3のゲームでこの問題に関する情報提示がキッチリされました。ロノウェが登場し、このような事を言いますね。

「今は卑しい人間の分際で、悪魔も裸足で逃げだすような大魔女であられるベアトリーチェ様の家具頭として仕える身ですよ」

ベアトリーチェさんは魔女であり、人間ですよという情報が提示されました。これ私と同じですよね。私は真実の魔女です。しかし六軒島を訪れた招かれざる客人としての人間でもあります。2重属性の人物。これは、赤字上で存在確認をする際に、言葉の定義によっては確認漏れをする可能性が出てきます。私はその辺キッチリやってますから、第6のゲームで人間としてカウントされるように、「初めまして、こんにちは!探偵ッ、古戸ヱリカと申します!!招かれざる客人ですが、どうか歓迎を!!我こそは来訪者ッ、六軒島の18人目の人間ッ!!!」と言った訳です。この時に私が真実の魔女、古戸ヱリカと申しますと言った場合は、私は18人目の人間としてカウントできません。魔女の定義になりますので。

・赤字のルール追加。赤字で魔女の存在を宣言するのは禁止
第3のゲームではこのあたりのルールが追加されましたね。魔女の存在を赤字で語るとステイルメイトになります。戦人さんに返し手がなくなり反論不可能、ゲーム盤の進行が永久に停止します。これを回避するため、魔女の存在を赤字で語るのは禁止されました。そこで、ベアトリーチェさんは言う訳ですね。「この島には18人以上の人間は存在しない」と。これは第4のゲームですか。論点はもちろん「人間」の定義です。これが肉体をさしているのか、中身の人格の属性をさしているのか。第6のゲームで戦人さん達は「人間」という言葉を排除した状態で17人と宣言されます。同時に私が宣言した18人の方は、人間という言葉を入れていますね。つまりは、人間という言葉を用いて宣言された人数赤字は、肉体以外をカウントしている事になります。

ベアトリーチェさんのゲーム盤では蔵臼、夏妃、朱志香、絵羽、秀吉、譲治、留弗夫、霧江、戦人、楼座、真里亞、源次、南條、熊沢、郷田、紗音、嘉音の17名の人間人格が存在し、ベアトリーチェという魔女人格が1名いらっしゃいますね。これは人間の中身の人格の話ですよ。これを前提にした時「この島には18人以上の人間は存在しない」と宣言されると、それは確かに真実ですが、1名カウント不可能な定義で赤字を使ってしまった事になります。ベアトリーチェさんをカウントするには「この島には~人以上の人格は」と語らない限り不可能なのですが、例によって魔女の存在は赤字で語れません。ステイルメイトですから。非常にややこしい話ですが、このような赤字の使い方で真犯人を隠蔽しているのが、ベアトリーチェさんのゲーム盤なのですね。しかし、何度も言いますが、これは推理可能でなければなりません。出題者はこれが解けるように手掛かりを配置する義務があります。その手掛かりというのが、今回ベアトリーチェさんが後半死にかけてしまった原因なのでしょう。後でお話しましょうか。トリック推理と一緒に。

【第一の晩 6連鎖密室】
さて、最初の第一の晩の連鎖密室ですが、この事件前夜の幻想描写でまたまたベアトリーチェさんマジ切れしてましたね。紗音さんが恋の話を始めると、とにかくベアトリーチェさんは切れます。これは第2のゲームの夏妃の部屋の密室と理由は同じでしょう。ベアトリーチェさんは戦人さんと恋が成立していないのに、恋が成立してルンルン気分の紗音、お前の態度が気に入らない、という事です。

まずは軽く連鎖密室の状況を確認しましょう。1階の客間で紗音の死体と紗音のマスターキー、2階客室の鍵が発見されます。当然この2階客室の鍵の存在から、2階客室へ向かいますね。すると2階客室で熊沢の死体が発見されます。密室で内部より熊沢のマスターキーと3F控室の鍵が発見。このよう連鎖的に6つの部屋が全て密室になっており、密室内部に全て鍵が閉じ込められているという状況でした。3階控室で郷田、2階貴賓室に源次、ボイラー室に金蔵、礼拝堂に嘉音、このような順番で密室が構築されています。ポイントなのは金蔵さんのいらっしゃるボイラー室です。ここに閉じ込められていた礼拝堂のキーですが、第2のゲームでこのような赤字があります。「礼拝堂の施錠は礼拝堂の鍵以外では開錠不可能」つまりですね、紗音さんが最初に死体を発見され、一同が2階に行った隙に礼拝堂に移動する訳ですが、施錠をしてしまっていると、その開錠のためのキーが金蔵さんのいるボイラー室に閉じ込められているため、中に入れなくなるのです。なので、礼拝堂の扉は事件日の朝の時点で開いていた可能性が高いです。つまりは礼拝堂は最終的に内部から密室構築しなければならない訳ですね。嘉音さんの担当でしょう。重要なのは南條さんの検視が嘘だという点で、この嘘の検視により、紗音さんと嘉音さんは死んだふりが可能になっているのです。紗音さんと嘉音さん以外の部屋は普通に殺して鍵を残して、紗音さんの鍵で施錠します。ポイントは紗音さんのいる1階客間と嘉音さんのいる礼拝堂ですね。部屋の配置を工夫していますので、最初に外から死体が確認可能な紗音さんの部屋が発見される想定です。最初に紗音さんの部屋が確認され、一同が次の部屋に行ったスキに、紗音さんは礼拝堂に移動します。そして嘉音さんとして死体を演じます。

トリック的にはそのような事になる訳ですが、ゲーム盤の後半、扉に8ケタの文字が書かれますね。07151129です。これ、ヤスさんが黄金を発見した11月29日と、戦人さんの誕生日7月15日の組み合わせです。犯人にしか知りえない情報が後半に出てくる訳ですから、当然生存してる訳です。しかし、連鎖密室で紗音さんと嘉音さんは死亡が赤字宣言されています。という事はもう一人ヤスさんの肉体内部に人格が存在しないと、後半にこの8ケタの文字を描く人物がいなくなるのです。さらに、碑文を解いた絵羽さんに、逃げ道を教える人物も必要となります。ベアトリーチェ犯人説というのは、こういう部分とも関連しているのですね。

・連鎖密室の存在意義
非常に重要なお話を一ついたします。この連鎖密室ですが、メタ世界の方のベアトリーチェさんにとって非常に重要な意味があります。ベアトリーチェさんは戦人さんに約束を思いだしてほしい。しかし、戦人さんにとっては約束とは、紗音さんとの約束な訳です。ベアトリーチェさんなんか関係ありません。実際はベアトリーチェさんは紗音さんと同一人物な訳です。しかし戦人さんは別にベアトリーチェさんを紗音さんだとは思っていません。という事は、仮に戦人さんが事件の真相に至り、トリックの嘘の意味が分かったとしても、その紗音さんとの約束をベアトリーチェさんが思いだすように要求する意味が分からなくなるのです。ベアトリーチェさんの目的は自分と戦人さんの恋が成立する事です。第6のゲームで明確におっしゃいました。「あなたと一緒になりたくて生みだした物語です」と。という事はベアトリーチェさんにとっては戦人さんに「ベアトリーチェ=紗音」だと気付いてもらう事が必須になって来る訳です。そのための手段の一つがこの連鎖密室、なのです。連鎖密室の目的は「島の中に同一人物がいる事を知ってもらう事」です。ですから、こういうややこしい手順で解かなければならない密室をわざわざ配置しているのですね。

この連鎖密室とベアトリーチェさんの目的は南條殺しでも関連します。南條殺しの犯人はベアトリーチェさんですが、犯人がベアトリーチェであるという解法は連鎖密室で死亡しなかった人物がいる、という発想が前提にあります。つまりは、連鎖密室で同一人物としてトリックを実行した紗音と嘉音、この2名の他にもう一人いて、その人物が南條を殺している。そして、それがベアトリーチェである。ここに至ってもらう事で「紗音=ベアトリーチェ=約束」という構図が成立する訳です。ここまでやって、やっとベアトリーチェさんの恋が叶う可能性が出てくるのですね。連鎖密室の存在意義はそういう事なのです。

【第二の晩 薔薇庭園での楼座・真里亞殺害】
第二の晩の薔薇庭園での楼座と真里亞殺害ですが、これはウィルが言っていましたね。語られし最期に、何の偽りもなしと。状況から提示された情報を見てみましょう。絵羽が碑文を解きますが、楼座さんも遅れて解きました。私は、あぁ碑文解かれてお金の問題解決したなぁと思ったのですが、絵羽さんと楼座さん言い争いを始めましたね。碑文を解いた事実を皆に知らせる、知らせないで揉めていました。欲深な人は死にますよ!!絵羽さんが疑心暗鬼になっている様子が描写されます。こういう部分を見ると、犯人は絵羽さんなのでしょうね。楼座さんとバラ庭園で言い争いをしてたのでしょう。「何なのよアンタ!」とか言って楼座さんを突きとばしたら、柵にささって死んでしまった。真里亞さんが泣き喚いたので絞殺。まぁそういうような事が起こったのでしょうね。この時に秀吉さんが部屋でタバコを吸っていた事実が判明しますね。部屋で絵羽さんが寝たいたのならタバコを吸うのはおかしい。絵羽さんは部屋を抜け出していたのではないか?霧江さんはそのような推理をされました。これが次の殺人に繋がるのでしょうね。

【第四・五・六の晩 屋敷での留弗夫・霧江・秀吉殺害】
さて、第四・五・六の晩の屋敷での留弗夫・霧江・秀吉殺害ですが、死因を見てみましょう。留弗夫さんは屋敷のホールで、額を杭状の凶器で貫かれて死亡した、とあります。致命傷ですね。頭ですから。霧江さんは腹、秀吉さんは胸です。状況から推測できるのは、霧江さんと留弗夫さんは秀吉さんに絵羽さんの事を確認しようとしていた事です。部屋を抜け出してたんじゃないの?つまりは楼座と真里亞を殺したの絵羽さんじゃないの?と。ビンゴ!グッドです!正解でした!殺人の汚名を着せられ、なおかつビンゴでしたとなると、ここに殺意が生まれる可能性があります。おそらくは秀吉さんは留弗夫さんと霧江さんを射殺したのでしょう。しかし、腹に銃弾を受けた霧江さんが致命傷でなかったため反撃された。結果秀吉さんの胸にあたり、秀吉さんは死亡です。ここは犯人を絵羽さんに想定するのも可能ですし、こっちも可能性が高いのではないですか。玄関先で蔵臼さんたち夫婦が留弗夫さん達の帰りを待っていますので、絵羽さんは玄関から抜け出す事はできません。出るとしたら自室の窓ですか。しかしですね、蔵臼さん達に部屋を覗かれるとアウトという部分や、そのそも窓に関する手掛かりがない事から、絵羽さんが犯人だった説は根拠構築がぼやっとします。私は絵羽犯人説を押したいですが、恐らくは秀吉さんなんでしょう。

【第七・八の晩 蔵臼・夏妃殺害+譲治のゲストハウス失踪】
第七・八の晩の蔵臼・夏妃殺害ですが、死因が絞殺なのですよね。銃じゃありません。という事は、銃声を聞かれる可能性があった、という事でしょう。ウィルの推理は「明白なる犯人は、無常の刃を振るいたり」ですね。ということは絵羽さんですか。ゲストハウス一階には絵羽・蔵臼・夏妃さんがいましたし。この場面の前後、絵羽さんがコーヒーを入れますね。そして絞殺をする。という事はこのコーヒーに睡眠薬を入れたのでしょう。ゲストハウス内では銃声の問題があるので絞殺。その後東屋に死体放置ですね。さて問題はこの時間帯前後にゲストハウスから消えた譲治さんですが、この譲治さんは最終的に屋敷で殺されますね。では譲治を殺したのは誰なのか。ゲストハウス外で探偵の確認できない場所で殺されてます。これは生き残っているベアトリーチェさんでしょう。彼女が殺した。これは恐らく事件が第9の晩に達してしまったからなのだと思われます。この第3のゲームでは碑文が解かれますが、第一の晩の時点で紗音さんが死亡していますね。これとよく似た状況が実際の六軒島でもありました。碑文が解かれたのに、譲治が死亡してしまいました。

碑文が解かれるという奇跡はヤスという少女の恋に決着をつけるためのルーレットの目です。彼女のルールとして、碑文が解かれると事件を中断し、戦人さんが事件の真相から約束を思い出す手段を中止します。つまり、86年に事件が起こらなかった場合と同様な状態に戻す事を意味します。これは紗音さんの勝利条件なのですね。碑文が解かれると紗音さんは自分の恋を叶える権利を手に入れます。ベアトリーチェさんの勝利条件は戦人さんが碑文殺人の真相に至る事です。第3のゲームは碑文が解かれましたが、紗音さんが死亡してるために全く意味がなくなっているのです。これはメタ世界のベアトリーチェさんが対戦相手である戦人さんに約束を思いだしてもらうために出題してるのが理由なのでしょう。メタ世界のベアトリーチェさんにとって、駒の紗音さんの恋を叶える意味なんてありませんからね。だから、碑文が解かれても、紗音さんの恋が成立しなくなってしまってるため、事件を起こす根本的目的が達成されていないのです。だから、最終的な皆殺しの部分に行くために事件続行されるのですね。

・黄金郷という概念の欠点
黄金郷というのはあの世の概念ですが、一つ欠点がございます。それは黄金郷で恋を叶えるには恋人が両方あの世に行かなければなりません。それはそうでしょう。片方生きてたら、あの世にパートナーが来ない訳ですから。紗音さん死亡していますね。という事は紗音さんが恋を黄金郷で叶えるには譲治にも死んでもらわないといけません。真犯人ベアトリーチェが譲治を殺しているのはそういう理由なのですね。あのまま放っておくと、絵羽さんが譲治を連れて生還してしまうじゃないですか。そうなると紗音さんは一人ぼっちになります。黄金郷で。それの阻止なのですね。彼女の論理では。私、どうかと思いますよ!そういう理由で人を殺すのは!!

【第九の晩 南條殺害】
さて、南條殺しですが、トリック的な部分はもう話しましたが、ここ一つ重要なポイントがございます。エヴァさんが物凄い量の赤字を宣言されましたね。あれをまずは丸ごと無視します。誰が死んでて誰が生きてるのかだけ分かればそれでよろしい。「赤字に抵触せずに構築可能な推理」というのは、ミステリーに挑むにあたっては最低限満たすべき部分であり、ここにさらに絞り込み要素を付けたしていかなければ、解法分散が発生します。つまり、特定不能、という状態です。南條殺しでは、ベアトリーチェさんが自ら赤で真相を語られましたね。結果として彼女は魔女ではいられなくなってしまいました。よく考えるとこれは原因がよくわかりません。魔女が魔女で居られなくなる理由とは何でしょう?魔女の存在を自ら否定したため、魔女の姿を失う、という論理は、おそらく2ケースの想定が可能でしょう。魔女のゲーム盤で魔女は一つでも謎を守ればいい。逆に人間サイドは全てを人間で説明しなければなりません。という事は、南條殺しを語るとゲーム盤の謎がすべて人間で説明されてしまうケースを想定します。このため、ベアトリーチェさんは魔女で居られなくなった。この論理を譲治で考えましょう。南條を譲治が殺した。では全ての謎が解明された状態になったのか。連鎖密室が未解明のため、この論理は通用しません。

という事は可能性として考えられるのは「南條殺しの犯人の正体そのものが魔女の否定に繋がる」という論理です。これはベアトリーチェ犯人説とガッチリ整合性が取れます。これが正解でしょう。ベアトリーチェとは紗音さんや嘉音さんの肉体を使っている一つの人格であり、肉体的には人間である。なので南條殺害が可能だった。このような事を赤で語ってしまうと、そりゃあ魔女ではいられないでしょう。この部分ですが、いやぁちょっと私感動した出題者さんの手掛かりがありまして。物凄い最強の手掛かりの提示がされてます。フェアプレイ精神ここに極まれり、という感じで非常に感服いたしました。凄い。では抜粋しましょう。

「もし戦人が約束を破り、それをこっそり盗み聞いたなら。……たちまちの内に戦人は、ベアトとのゲームの勝者となり得るだろう。……この島の全ての謎を理解し、全ての魔法とトリックと、密室と呪いと祟りと伝説と、…怒りと悲しみの物語全てを理解するだろう。しかし、……それを知るのは、戦人が自らの手で真相に至った時だけなのだ。そう。…ベアトリーチェは、……その真相に、戦人が自ら至ってくれることを、最初から願っている。それは、教えられて至るのではない。戦人が自らの力で、たどり着かなくてはならない真実。」

これもう真相じゃないですか。多少ぼかしてますけど、これはもう真相でしょう。戦人さんに自ら真相に至ってほしい。それがベアトリーチェさんの目的であり、南條殺しを語ったベアトリーチェさんの赤字は、全ての真相に繋がっている。この一文によって、今までの推理が推測から確信に変わる瞬間があります。それが推理の物凄く楽しい瞬間なのですね。

・魔女の姿を失ったベアトリーチェさん
ベアトリーチェさん魔女じゃなくなっちゃいましたけど、どういう理由で元の姿に戻ったのでしょう。この辺の伏線も凄いですね。

「いいや、魔法だったぜ。お前は確かに、黄金の魔女だった。お前自らが否定しようとも。俺が認めてやるよ。“お前は確かに黄金の魔女だ”」
戦人がその言葉を口にした時、真黒だった世界にぽっと一粒。小麦の種のように小さな黄金の一粒が眩しく光った。それは……小さいけれど力強く黄金色に輝く。

黄金の真実によって、戦人さんに魔女だと認めてもらった。このため、魔女の姿を取り戻したのですね。実はこの黄金の真実というのは物語全体を見る場合に「魔法の定義」という意味で非常に重要な伏線です。ここがこの物語の核と言ってもいいかもしれません。事件部分の意味では、黄金の真実とは犯人側が結託してついている嘘の事ですけども、物語全体としては「真実を幻想で優しく包み込んであげる事」なのです。嘘によって。ベアトリーチェさんは本当は魔女ではないのかもしれません。しかし、戦人さんは言いました。いいや、お前は魔女だと。それは真実ではないのかもしれませんが、ベアトリーチェさんの気持を考えれば、魔女だと認めてあげるのが正解でしょう。それが優しさという物です。黄金の真実の本質は、このような「辛い真実」を幻想という温かな解釈で包み込む事を意味するのですね。例え嘘ではあっても、幸せを追求するためには大事な事だと。そういう意味合いが物語全体にございます。

ちなみに私は真里亞さんの信じていたキャンディーの魔法の正体を暴き、ハラワタを引きずり出しました!!魔法なんてある訳がないじゃないですか。それはそれ、これはこれです。まったく悪びれるつもりなし!(どーん)

さて、第3のゲームはこれで終わりですけど、ラムダデルタ卿マジ切れしてましたね。「あんた勝つ気あるの?」と。ベアトリーチェさん魔女を認めてもらえる場面でちゃぶ台返しをしましたからね。戦人さんが推理の結果として真相に至ってくれる可能性を信じたかったのでしょう。あそこで終わりにして妥協する訳にはいかなかった。しかし、あれのせいでラムダデルタ卿に真意がバレてしまった気がしますね。アンタ本当は勝っても負けてもどうでもいいんじゃないの?と言われてましたし。

物凄くメタな事を言いますけど、基本的に「私ヱリカがそう思う」ってだけの推理ですからね。ただのOSSです。ご自身の推理は大切にしてください。

・情報ソース問題は実は解決済み
マニアックな推理なのかどうかは分かりませんが情報ソース問題というのがあるでしょう。そのようなマニアック推理は最終的にもちろん手を出す訳ですけども、そういうのは基本的に8つのカケラの基本的な謎を解いてから手を出す、ボーナスステージなのだと思うのですよね。情報ソース問題は解決済みなのですが、例によって根拠構築に問題がございます。よって確定推理ではなく、ただの仮説の一つなのですよね。しかし、一つの仮説により説明方法が構築できるのは推理の楽しい所ですね。私は仮説を量産し「さぁこの中のどれかなぁ」というのが好きなのですけど、これは数を用意できない推理対象というのが何か所があります。そこが怖いのですよね。正解を構築できなかった可能性が上がる気がして。気持ちの問題なんでしょうかこれは。