・カケラは残り3つ
フェザリーヌ様にいただいた観劇の階層のカケラも残す所3つとなりましたが、第6のゲームでは世界構造を完璧に暴きましょう。根拠の構築という意味では非常に難しい面もありますが、伏線提示が非常に多い第6のゲームはまさに世界構造を推理するためのゲームですね。

・赤字の新規情報
第5のゲームまでの推理が終わった事ですし、一つ関連のある推理をしたいのですが、漫画の方で一つ赤字について新規情報がでましたね。これです。

「元々赤き真実には2種類ある。死亡状況や現場状況、アリバイなど、それぞれのゲーム盤でのみ通用する赤。もう一つは人物像や在島人数など、どのゲーム盤にも共通し並立する赤。これは猫箱の外にも通用する疑いようのない事実でもある」

注目なのはこの一文の「猫箱の外」という表現ですが、逆算しましょう。猫箱の内とは86年の10月4日5日の事ですね。この2日間をベアトリーチェさんは無限に繰り返す事ができる訳です。では猫箱の外とはこの定義以外の部分という事になります。何が言いたいのかというと、第5のゲームは85年の世界が描かれているでしょう。事件の1年前の夏妃さんのエピソード。あそこが言わば、この一文の言う猫箱の外に該当する部分であり、ここはベアトリーチェさんが無限に繰り返せる範囲ではありません。しかし、赤字は適用範囲という事なのですね。この猫箱の外という部分を、現実世界、つまりは偽書世界の外側である本当の現実世界にまで適用されていると考えては駄目です。そんな事は一切書かれておりません。猫箱の外には創作世界が含まれるからですね。この赤字の適用範囲問題は第6のゲームでも取り上げますが、漫画の方で出た「1998年に右代宮縁寿は必ず死ぬ」というのがあるでしょう。ああ言った部分も、赤字の適用範囲推理をまずは固めてから考えないといけませんよ。赤字はどこの範囲まで適用されるのか。適用不能領域というものはどこなのか。全て根拠に基づいて推理可能です。

・ロジックエラー密室
さて。第6のゲームですが私が忘却の深遠に放り出された時に既に推理済みなのですが、繰り返し同じ推理になるかと思いますがまずは戦人さんがくれたプレゼントから考えていきましょうか。戦人さんは私が宣言した在島人数である「18人目の人間」とは別の「17人」という人数を宣言されましたね。赤字で別の人数を同時に宣言しているという事は、私は「赤字システム」というものをあの第6のゲームの時まで勘違いしていたようです。赤は真実のみを語る。それはその通りであり、そこに疑問は抱きませんが、そもそも真実とは1つとは限らないわけでしょう。ロジックエラー密室でロジック差し替えが可能だったように真実が複数ある場合、赤字システムはどういう対応をするのか。ここをまずは突き詰めましょう。

一つ例えばなしをします。ある男が凶悪犯罪を犯し、刑務所に入れられたと仮定しましょう。この男は自分の罪に非常に後悔し、これからは善人として心を入れ替えて生きて行こうと思いました。そして出所後善行を積み重ねます。さて、この男は善人でしょうか?悪人でしょうか?赤字はどちらを真実と認定するのでしょう?答えはどちらもです。「この男は善人である」「この男は悪人である」このどちらもが同時に宣言可能。これが赤字システムの本来の姿なのでしょう。「赤は真実のみを語る」「ただし、唯一性までも保障するとは一言も言ってない」という事でしょう。つまりは、真実は一つといつも言ってるお馬鹿さんがいらっしゃいますけど、あの方の発言によって真実の定義をミスリードされてしまった人に向けた錯覚トリックなのですね。

ではこの異なる人数差は一体何なのかですが、どちらも真実だと言う事は、可能性としてあり得るのは「カウント方法が異なる」という事でしょう。私はゲーム盤で純粋に観測した人物を宣言しただけです。普通に数えれば私を含めて18人いる訳です。これは金蔵さんを除きますよもちろん。という事は戦人さん達が宣言した17人は、私とは違う何かをカウントしているのでしょう。これを前提にロジックエラーの密室を考えてみましょう。私はあの時点で嘉音さんの動きをずっと推理していたわけです。あの密室はあくまでも一貫して嘉音さんを論点にしていたのであって、それ以外の人物の想定はしていません。私はあの密室で物理的な意味で捜索しなかった場所というのが実はあるのです。それはバスルームから戻って来た時の2回目のベッドルームの下なのですが、あそこで私は「ベッドルームに嘉音がいる」と復唱要求し、ベアトリーチェさんに「嘉音はベッドルームに存在しない」と言われた訳です。ですからクローゼットに論点を絞ったわけですが……嘉音さん以外があそこにいたのならば、私の推理は完全に破綻します。隠れる場所は論理的に考えてあそこしかないのですから、あそこに嘉音さんではない人物がいた事になります。つまりは、この物語には同一人物がいらっしゃいます。同一人物トリックを前提にするとあの在島人数の赤字にも納得がいきます。

・同一人物トリックの種類
同一人物トリックといいますが、これは何パターンかあるでしょう。論点となるのは、一体どういうタイプの同一人物トリックなのか?です。2パターン想定できます。一つは名称トリック。一人の人物が変装によって見た目を変え、複数の名前を使い分けるというタイプの同一人物トリックです。このパターンは「本人」の定義が肉体になります。この肉体にとって紗音や嘉音という名前は、「名前を使い分ける」という意味以外はありません。どちらも本人です。もう一つが人格トリック。これは名称トリックと考え方の根本が全く違います。人格トリックは主体を人格に想定します。つまり嘉音にとって本人とは嘉音の事であり、紗音は「同じ肉体を共有しているだけの別人」という定義になります。人格を一つの主体と考える訳ですね。これはどちらかが正解でしょうが、これはトリック部分、伏線部分両サイドから特定可能です。まずはクレルさんの情報を見てみましょう。こうあります。

「ベルンカステルによって生み出された朗読役。あるいは代役。厳密には、ベアトとゲームを擬人化するための依り代である。よって“彼女”という人格は存在しない。」

普通に人格と書かれていますね。これが伏線です。しかし、こんな部分で推理確定などもっての外ですので、トリック部分を具体的に見て行きましょう。ロジックエラー密室で論点となるのはこの2つの赤字です。「戦人救出時、客室に入ったのは嘉音のみである。」「全ての名は本人以外に名乗れないと赤き真実ですでに語っている。よって、ヱリカ、戦人、嘉音の名はいずれも、本人にしか名乗れぬのだ。」まずは名称トリックで考えましょう。紗音さんと嘉音さんは同一人物だった場合、嘉音だけが入ったという部分に矛盾が発生します。名称トリックでは紗音さんも本人と定義されますので、客室に入った訳です。しかし嘉音さんしか入っていない訳ですから矛盾が発生します。逆に人格トリックの場合は「全ての名は本人以外には名乗れない」という制限上、嘉音さんは自分の事を紗音と名乗る事が不可能になります。人格トリックの場合は嘉音さんにとって本人とは嘉音という名だけだからです。紗音さんは嘉音さんにとって別人、と定義されます。つまり矛盾が発生しないのは人格トリックの方なのですね。伏線の人格という言葉とも合致しますからこれが正解でしょう。

この人格トリックを想定する同一人物説を採用すると「救出者とは、戦人の開けたチェーンロックを、再び掛け直したもの、ということにする。戦人を救う意思があったかどうかは、問わないことにしておく。」の意味が分かってくるのではないですか?嘉音さんは戦人さんを救出しましたが、中で人格を紗音さんに切り替えてしまうと、今度は「嘉音と名乗れなくなる」という状態になる訳です。ですから嘉音さんは赤字上名前が消える訳ですが、問題となるのは「紗音さんに戦人を救う意思があったのか?」です。これは分かりません。心の問題ですから。だからこういう赤字を語ってベアトリーチェさんは矛盾を潰そうと保険をかけているのでしょう。あざとい方ですね!さて、ではロジックエラー密室の流れを見て行こうと思いますが、その前によく論争の種になっている赤字の問題を解決しておきましょう。「ロジックエラー時に隣部屋の窓の封印が暴かれていたことを理由とする青き真実の使用を禁じるものと知り給え。」こういう赤字がございますね。この赤字の意図は分かりやすくすると「青で推理するな」です。青は赤で反論をしなければなりません。ですから反論の義務が発生しないように青での発言を禁止しているのですが、これはハッキリ言って観劇の階層の探偵には関係ありません。青なんてそもそも使えませんから。しいて言えば黒だけ使えます。普通の黒字です。それに途中でこの赤字は無効にされて、実際私が窓を論点に青を使ってますからね。窓を推理に組み込んで問題ありません。

・灰緑色の雨ガッパ
さて、このロジックエラー密室の一つのポイントとなるのが、最後にクローゼットに入っていた「灰緑色の雨ガッパ」です。これを推理に組み込み、考えていきましょう。まず隣部屋の紗音さんがこの雨ガッパをすっぽりとかぶり窓から脱出します。これは顔だけ露出した状態になりますから、紗音さんなのか嘉音さんなのか見た目としては分かりづらいのかもしれませんね。そして魔女の手紙を配置し、私がこれを拾ったのを見届け、客室へと行きます。戦人さんと入れ替わりで客室内に入り、雨ガッパを脱ぎます。ここで元々着ていた紗音さんの姿に戻る訳ですね。隣部屋にいた時の姿です。これはまぁ普通に考えて紗音さんでしょう。嘉音さんには見えません。そしてベッドルームの下に隠れる。トリック的にはこういう流れでしょうね。あらゆる赤字に抵触せずにトリックを実行可能です。

・連鎖考察法
ただですね、ここの部分は赤字に抵触しなければいいという話ではありませんよ。ここはちょうどいいので私がずっと言っている連鎖考察思考法というものの説明も兼ねて具体的に推理していきましょう。このような答えが明かされない物語を推理するにあたって「赤字に抵触しない解法を考える」というのは有効な推理法ではありません。解法分散が発生し、トリックが特定不能になるからです。このような場合に取る手段が連鎖考察法なのですね。このロジックエラー密室は4つ整合性をガッチリと取らないといけません。この4つを満たさない解法は不正解の可能性が極めて高いでしょう。一つが赤字に抵触せずに構築可能なトリック。これは整合性を取るべき要素の一つでしかありません。2つ目は恋の試練ですね。このロジックエラー密室はベアトリーチェさんが恋の試練を経て知った何らかの真相に基づいて出題されている密室トリックですから、当然トリックが恋の試練の意味合いと関連性が無ければなりません。つまりストーリー的な部分との整合性もキッチリ取らないと、答えが明かされない物語では推理が外れる可能性が跳ね上がるのです。ですから、こういう部分とガッチリ整合性を取り、リスクを回避するのです。3つ目はフェザリーヌ様がおっしゃる「ベアトリーチェの心臓を使えばなんとかなるかもしれないが、これは一度しか使えぬ手だ」という部分ですね。これは既に第4のゲームで推理済みです。

第4のゲームでベアトリーチェさんが出題した私はだぁれ?ですが、あの場面両手に光が集まってきますが、右手から光が消え、右手を下ろしますね。この右手についてラムダデルタ卿が「右手を下ろしてたでしょう?まだあの子はどぎつい奥の手を隠してるのよ」と言っていました。つまりはこことの整合性なのですね。最後は出題者の提示した地の文の伏線です。「この物語最大の謎はもうすぐ明かされる」とありますから、こことの整合性がなければなりません。連鎖考察法とはこのようにあらゆる要素と連携を取って行く整合性の突き詰め推理法なのです。このようにガッチガチに制限を付けたしていくとですね、もう可能性なんてほとんどなくなるんです。同一人物トリックで正解でしょう。

・同一人物トリック
同一人物トリックは以前にも推理しましたが、「探偵が同時に主観で目撃していないこと」「彼らが別人として認識されている論理的解決法が存在する事」この2つの解決が必須です。前者は物語を検証すれば通ってるのが判明しますが、問題は後者です。漫画のコンフェッションでも、この後者は放置されていたでしょう。特に朱志香さんの態度は妙でした。まったく気付いてませんよあれ。「変装によって一人の人間が紗音と嘉音を演じているという設定がそもそも通用するのか?なぜ誰も見破れないのか?長年右代宮家に勤めてて誤魔化せるわけがない」このような常識的な疑問があるでしょう。この解決が必須なのです。特に朱志香さんの配置は重要です。使用人は口裏を合わせて協力してくれるでしょうが、朱志香さんは嘉音さんに恋をしてる訳ですから、譲治と恋をしている紗音を応援するには、別人だと認識していなければなりません。朱志香さんは、長年右代宮家に在籍し、つねに嘉音さんと紗音さんに接していながら、別人と認識している訳です。これは一体何故なのか。

作中作だからです。

執筆者の十八さんがそういう設定で物語を書いてらっしゃる訳です。彼は十八とは名乗ってますけど、内部に戦人さんがいらっしゃって、それを十八さんは別人だと思ってるわけでしょう。執筆者自体が人格を別人だと思ってる訳ですから、創作世界にそのような主張を入れこんでいるのだと思われます。この部分に関しては具体的伏線がありますから抜粋しましょう。

「私たちにとって、人格が人そのものならば、例え同じ肉体を共有していても、異なる人格を指して別人であると言い切れるだろう」

要は、このような思想で創作を書いているのですね。結局これは物語の根本である「複数の恋が並立してしまった紗代の恋の板挟み」という部分を分かりやすく物語にするためでしょう。紗音さんと嘉音さんがあのように別人として描かれる事で、恋の板挟みが実に分かりやすくなっています。私は我が主一筋なので板挟みなんてよく分かりませんけど。

・在島人数赤字
さて最後に島の人数が明かされますね。赤字を具体的に見てみましょう。

「初めまして、こんにちは!探偵ッ、古戸ヱリカと申します!!招かれざる客人ですが、どうか歓迎を!!」
「我こそは来訪者ッ、六軒島の18人目の人間ッ!!!」
「…………申し訳ないが、」 「そなたを迎えても、」
「「17人だ。」」

この赤字は人格をカウントした18人の人間と、肉体をカウントした17人という赤字ですが、注目なのは18人目の「人間」という部分です。私は2重属性の人物として物語にいますので、人間の探偵でもあり、我が主の駒である真実の魔女でもある訳です。第3のゲームで「赤で魔女の存在を語る事はステイルメイトになるので禁止」とルールが追加されました。ですので、赤で魔女の存在を語る事は許されません。なので私は人間として定義されるように、このような長々とした前口上を述べてるわけです。魔女として定義されない言いまわしですね。ですから、私を人間として定義する場合においては、私が18人目になるわけです。ベアトリーチェさんは盤上に普通にいますし、南條を第3のゲームで殺していますけど、赤字上カウントされないのはこの「人間」という制限を人格に向けて設定してるせいなのです。そのせいで、言わばベアトリーチェさんだけカウント不可能な卑怯な赤字を使っているのです。

・第6のゲームの意味
第6のゲームは戦人さんが第5のゲームで真相に至った事を証明するためのゲームですが、これは第5のゲームで物語全体の真相の推理をした内容を考慮すると、実質「十八さんが紗代さんの事を理解した事の証明」のためのエピソードと言えるでしょうね。なぜ十八さんは第6のゲームで恋の物語を描いたのか。特に恋の試練ですね。紗音さんと嘉音さんがご自身の死をかけて決闘なさいますが、あれが86年に事件が起こる根本的な理由だからでしょう。ですから第6のゲームでそれを理解した事を示すために描写したと推理できます。そのように考えると不可解な部分にも説明がついて行きます。戦人さんが最初に想定していたトリックは内部より構築された密室でしたね。あのトリックは内部で死んだふりをしているというものでしたが、なぜあんなすぐバレるような陳腐なトリックを戦人さんは実行したのか。あの陳腐なトリックが真相を理解した事の証だからでしょう。ゲーム盤自体では犯人は殺人を実行しますが、現実世界の方では狂言を予定していたのではないですか?このへんは第7のゲームの推理時に具体的に推理しますが、意図はそういう事でしょう。戦人さんは真相に至った結果ベアトリーチェさんに謝罪されてますから、仮に狂言ではなく、本当にトリック部分で殺人をやろうとしていたとなると、殺人の重さと約束忘れの重さがつり合いません。殺人犯に約束の件をグチグチ言われて謝罪するわけがないですから、狂言だった可能性は高い訳です。恋の試練で紗音さんが最終的に勝利しますね。実際の六軒島では碑文が解かれてますから、本来ならばあのまま何事もなく事件が終わり、紗代さんは譲治と結婚する予定だったのではないでしょうか。紗音さんの勝利。これはそれの示唆なのかもしれませんね。

・世界構造の推理
さて、世界構造に行こうと思うのですが、この第6のゲームは非常に特殊です。朗読者の階層というのがでてきましたね。今まではゲーム盤の上にはメタ世界があった訳ですが、今回その上に幾子さんと縁寿さんのいる98年世界階層が来てしまっている訳です。このエピソードは「これはもはや告白なのです」と書かれていますが、まさにこの構造自体がこの作品の答えなのですね。ゲーム盤やメタ世界をこの「98年世界から書物として読んでる視点」というのが世界構造の答えな訳です。ですから、その手掛かりの提示としてこういう構造が今回出ます。あまりに堂々と出てくるため逆に分かりにくい気もしますけど。厳密に言うとこの98年世界も創作世界だと推理できますけど、手掛かりの提示としてはそういう意図でしょう。EP4の時に98年世界に妙な場面転換がある、という話をしましたが、今回も縁寿さんが「さくたろうを届けに黄金郷に行った」という記憶を98年世界で思い出すという妙な描写があります。この98年世界を本当の現実と考えるとこれはおかしい訳ですから、ここも創作世界、という事でしょう。

・98年創作世界説の意図
この98年世界創作説というのは重要なのはその構造なのではなく、「なぜそのような構造で物語が語られないといけないのか」という必然性の問題にあります。意味もなく複雑な世界構造を採用している訳ではないんです。問題となるのは作家になった縁寿さんの心の問題です。第8のゲームで魔法を選択するとビルの屋上で自殺をやめた縁寿さんが描写されますね。あの縁寿さんに自殺を思いとどまらせた心理的要因は一体何なのか、という点です。このシーン自体は偽書世界でしょうが、論点としては作家になった縁寿さんとそう変わりません。つまり、現実世界の縁寿さんは一体どういう理由で過去の辛い出来事に決着をつけたのか、です。これは2つ可能性が考えられるでしょう。ゲーム盤で兄や親族に会ってきたから。これは世界構造をファンタジーで考える場合ですね。しかし、この物語をミステリーで考える場合にはこの説は受け入れがたいでしょう。物語全体がファンタジーだったと解釈する訳ですから。縁寿さんに心理的決着をつけてくれたのは、間違いなく第8のゲームでしょう。提示された物語から推理できるのはここしかありません。では、この第8のゲームを「実際に経験した」と考えるのか「読み物として読んだ」と考えるかの違いがあります。後者が言わば偽書説ですね。縁寿さんが伊藤幾九郎の偽書をずっと読んでいたため、最終的に「六軒島の真相を追う事は間違いなんだ」と思ったのだとすると、心理的な要因に説明がつきます。この98年世界創作説というのは「十八さんが縁寿のために、六軒島の真相を追わないようにメッセージを伝える階層」と考えると執筆動機に説明がつく訳ですね。第4のゲームの幸せのカケラを探す魔法は正に「六軒島の真相なんか追うな。今の生活の中で幸せを見つけろ。」というメッセージでしょう。98年世界というのはどのルートも縁寿さんが最終的に六軒島に行って死ぬのではないですか?六軒島の猫箱の真相を追うと死が待ってるというメッセージがある訳です。第6のゲームでも最後天草と小此木社長が暗殺の打ちあわせをやっていたでしょう。

・世界構造の伏線
ではそのような仮説を持って第6のゲームを見て行った場合に、いくつか伏線がありますので、そこを推理していきましょう。縁寿さんは98年世界でこのような発言をされます。「名前を明かしたルール違反で死んだはず」「また、あんたの偽書に私が登場するの?今度はマシな殺し方を頼むわ」これは第4のゲームの事ですね。縁寿さんは第4のゲームを偽書として読んでいる事を示唆しながら、自分が第4のゲーム盤で死んだ事も示唆しているのですね。さらに幾子さんとの別れ際の会話にも伏線があります。幾子さんが「あなたとこれで二度と会わないだろうけど、いつかどこかで、別のあなたに会える幸運を祈っています」と縁寿さんに言うのです。別のあなた。何を言ってるんでしょうねこの方。

そして縁寿さんはこういう事を思います。「彼女とはもう2度と会わないだろう。しかし、それは“私”は会わないという意味で、他の私たちは会う事があるかもしれない」縁寿さんも妙な事をおっしゃいますね。別の私達とはなんでしょう。色々な縁寿さんの存在が示唆されてますが、これは要は分岐した98年世界やゲーム盤に出てくる縁寿さん、これを別の私達と表現しているのでしょう。創作世界上で分岐した98年世界を描き、複数の縁寿さんのエピソードを使って、本当の縁寿さんに十八さんがメッセージを送っているのだと推測されます。幾子さんは第6のゲームで縁寿さんにこういうセリフを言います。「私という存在など、あなたという真の継承者を覚醒させるための、ただの道しるべにすぎないのだから。エンジェ・ベアトリーチェ」縁寿さんは結局の所六軒島の真相は追わずに、真里亞さんの教えてくれた幸せのカケラを見つける魔法を習得し、未来を生きなければなりません。過去の真実は絶望しかありませんから、縁寿さんにとって何の価値もないわけです。そういう意味で幾子さんは縁寿さんに魔法を理解してほしいのでしょう。これが十八さんが妹に送るメッセージなのかもしれませんね。

・世界構造の分類
さて世界構造ですが、今までの推理を前提にいくつかの説を検証してみましょう。この世界構造を考える際には「作家になった縁寿は一体どういう心理的要因で心の決着をつけたのか」を解決すべき最優先論点に設定します。

偽書説
まずは偽書説です。これは作家になった縁寿は偽書のメッセージを読んで心の整理を付けたと考える説です。これは98年世界を創作世界と考える事でパラレルワールドという部分をミステリー的に解釈可能になり、十八さんの執筆動機も説明可能な説ですね。正解はおそらくこれです。

パラレルワールド説
次にパラレルワールド説です。これは98年世界を本当の現実世界と考え、パラレルワールドになってる考えるSF的な解釈ですが、これは作家になった縁寿さんがどういう要因で心の決着をつけたのかが分からなくなります。問題点は第4のゲームの98年世界ですね。第4のゲームの98年世界は真里亞さんの幸せのカケラを見つける魔法という非常に重要な思想が語られますので、パラレルワールド説を採用すると、作家になった縁寿さんにとって、第4のゲームが完全に無関係になってしまいます。魔法を理解できなくなるため、非常に問題です。さらに、第4のゲームの時にも言った「意味不明な場面展開の説明」もできません。問題が解決できないので説としてこれは駄目でしょう。

ファンタジー説
最後にファンタジー説ですが、これは最後の作家になった縁寿さんのいる世界も偽書世界だった、あるいは全部まとめてファンタジー世界だった、という説ですね。ゲーム盤の縁寿さんと作家になった縁寿さんは同一人物だから、心の決着は第8のゲームでつけたのだ、という方向です。これは先ほども言った、最後の黄金郷に縁寿さんがいる事と整合性が取れません。死後の世界に縁寿さんがいるのに、作家になった縁寿さんは死んでいない。黄金郷には偽書世界の登場人物がいっぱいいますから、あそこは創作世界でしょう。創作世界の死んだ縁寿さんと、作家になった死んでいない縁寿さんが同時に描写されたという事は、作家縁寿さんは偽書世界でゲーム盤にいた縁寿さんではないという事になります。別人です。

つまり色々な説を考えると、整合性がキッチリとれている説が偽書説しかないのですね。偽書説は十八さんが妹に向けたメッセージという解釈を可能にし、この解釈を第8のゲーム自体にも適用できるために、正解である可能性が非常に高いです。この98年創作説というのは、第8のゲームでも伏線が出ていますね。縁寿さんは兄の意図を把握し、一なる真実の書を見ようと決心しますが、ここで我が主とフェザリーヌ様の所にいくでしょう?あそこをよく見ると、また意味不明な場面転換が起こってるのが分かります。メタ世界から98年の天草のいる世界に移動しますね。そこで鍵が消失するため、またメタ世界に戻る、という描写がされます。これは世界が繋がっている事を示唆します。つまりは、本当の現実世界ではないのですね。98年世界は。

・私の自己紹介
さて、こういう世界構造を分かった上で、この赤字を考えてみましょう。

「初めまして、こんにちは!探偵ッ、古戸ヱリカと申します!!招かれざる客人ですが、どうか歓迎を!!」

初めましてとは一体誰に言っているのか。あの場で初対面の人物とは一体誰なのか?ヒントは第8のゲームにあります。縁寿さんが山羊に襲われる時に、私が「直接ご挨拶するのは初めてですね」といいますが、そう。縁寿さんに「はじめまして」と言ってるのですね。朗読者の階層の縁寿さんに。フェザリーヌ様と一緒にいる縁寿さん。幾子さんと一緒にいる縁寿さん。結局世界は繋がっているのですから挨拶可能という事です。世界構造を暴くための手掛かりの提示です。

・赤字とはそもそも何なのか
今回赤字に関する非常に重要な伏線が出ています。赤字はそもそも何なのかという根本的な疑問があるでしょう?その伏線提示は作中で一か所しかないのですが、こういうセリフを幾子さんがおっしゃいます。

「おや、赤インク以外で書いた文字は全て読むに値しないとまで言い切る御仁も多いというのに。光栄なるかな人の子よ。黒い文字も読んでくれて」

ノックス第8条。提示されない手掛かりでの解決を禁ず。これを基本とするのならば、赤字も手掛かりから推理構築しなければなりません。この手掛かりを前提にして考えると、赤字とは執筆者十八、幾子が偽書に赤インクで記しているものである、となります。当然適用範囲は創作世界内です。この問題は先ほどの98年世界創作説とも関連します。創作世界に98年世界が含まれるのなら、漫画版の新規赤字「1998年に縁寿は必ず死ぬ」の適用は創作世界上の98年世界にしか適用できません。作家縁寿さんの世界は創作世界の外ですから、赤字適用不能領域です。これは第7のゲームで出た「このゲームに、ハッピーエンドは与えない。」も同じですよ。赤字の適用範囲は創作世界上のみ。ですから、この赤字も現実世界には適用できません。さて、世界構造と赤字の問題を踏まえた上で、今回出たこの赤字を見てみましょう。

「あのベアトリーチェが蘇ることは、二度とない。」

これは今までの赤字の問題を考えると十八さんが偽書世界上に書いているものだと推測されます。これを十八さんはどのような気持ちで書いたのでしょう。これは第2のゲームで出た「そなたは無能だ」とも関連しますが、十八さんは第5のゲームでも推理した通り、事件後に手遅れになって紗代さんの真相に至っているのだと思われます。その結果、幾子さんが語ったような自殺未遂までしてしまった。その彼の心の痛みは想像すると非常に辛いものがありますけども、十八さんが心に負った傷というのはベアトリーチェさんに表れているのではないでしょうか。ベアトリーチェさんは戦人さんに非常に攻撃的ですね。これは裏を返せば、十八さんはそれくらい自分を許せなかったのではないでしょうか?罵倒してほしい、自分の罪を断罪してほしい、そのような心理がこのような赤字に出てしまった、のでしょうね。恐らく。ベアトリーチェさんは二度と蘇りません。それはつまり、死んでしまった紗代さんはもう二度と生き返らない、という事でしょう。もちろん創作世界上で第5のゲームのベアトリーチェさんを都合よく蘇らせる事は可能でしょう。しかし、それを十八さんは絶対に許さなかった。そんな嘘を許さなかったのでしょう。彼女はもう絶対に生き返らない。その悲しい現実を自分に突きつけているのでしょうね。そんな心理が赤字から伝わってきます。それでも、最後に十八さんは手遅れになったからこそ、天国の紗代さんにメッセージを込めました。恋の試練を経て真相を理解した事を伝え、密室に閉じ込められる事で、ずっと六軒島という密室で戦人を待っていた苦しみを伝え、最後にベアトリーチェさんと結婚しましたね。

ベアトリーチェさんは結婚式でこうおっしゃいます。「あなたと一緒になりたくて生み出した物語。だからこの世界の目的は果たされました。だからこれからはあなたが紡いでください。私とあなたのこれからの物語を」これが紗代さんに送るメッセージなのでしょう。

・ベアトリーチェの心臓を止めてあげる事とは
戦人さんは第4のゲームでベアトリーチェさんに「お前を殺す」という赤字を使っているでしょう。あの辺の意味合いと第6のゲームの関連性のお話をしましょう。ベアトリーチェさんは第5のゲームで死んでいますけど、彼女の残したベアトリーチェの心臓の片側、第4のゲームで下ろされた右手のトリック、同一人物トリックが放置されているでしょう。ベアトリーチェさんを死なせてあげるにはトリックを完璧に解かないといけません。第7のウィルの推理の場面を思い出して欲しいのですが、彼は最後にクレルの心臓を止めてあげるでしょう。あれは爆弾と同一人物トリック両方を解いた事で、彼女のトリックを完全に暴き、未練を断ち切った事を意味します。つまりは第6のゲームでは戦人さんはこの心臓の片側を潰してあげないといけません。在島人数の赤字が出る最後ですが戦人さんはベアトリーチェさんに「いいのか?」と言い、べアトリーチェさんは「構いません」と言いますね。ここは「ベアトリーチェの心臓である同一人物トリックを明かしてもいいのか?」「構いません」という事なのですね。これによって彼女の未練をウィルの時のように完全に断ち切る訳で、最後フェザリーヌ卿がおっしゃいますね。これでベアトリーチェは眠りにつけたと。心臓を止めて殺してもらう事とは、要は十八さんが天国の紗代さんに真相を理解した事を宣言する事なのです。同一人物トリックは結局第6のゲームで描かれた恋の試練のための道具です。あそこを伝えるためのものであり、これを暴く事によって、紗代さんの気持ちを理解した事を伝えているのですね。だから、もう安らかに眠ってくれ、そういう十八さんの気持ちが込められています。第7のゲームもそうですが、彼女のトリックを暴くとベアトリーチェは安らかに眠りにつく、という描写がされるでしょう。これはそういう事なのですね。第5のゲームの時に語った現実世界の十八さんの真相と繋がっています。

・キャンディーの魔法
さて、最後に非常に重要な魔法の推理をしましょう。あえてこれを最後に推理するのは、これは物語全体の意図を正確に把握するためです。第6のゲームでは真里亞さんのキャンディーの魔法のエピソードがありますね。これは私が手品だとむりやり暴きましたが、これ結局どうなったでしょう。真里亞さんの心はズタズタになりましたよね。あのキャンディーの魔法が手品だったというのは誰にだって分かるでしょう。それをわざわざ暴くという事は、結局「真実を知る事がいい事だとは限らない」という事に繋がるのですね。これは第4のゲームのさくたろう復活と同じです。仮にあそこでさくたろうが量産品だった、と告げるとどうなるのか。キャンディーの魔法の時と同じ結果になったでしょう。この構図は結局第8のゲームの意図と重なるのです。六軒島の猫箱の中身を暴く事は、本当に幸せに繋がっているのか?と。箱の中身は惨劇ですから、当然幸せになんか繋がっていません。だからこそ、戦人さんは魔法で縁寿さんを包み込んでくれたわけでしょう。真実を知ってからではもう魔法は効果を持ちません。真実を知らないからこそ、幻想に意味が出てくるのです。この魔法の思想は辛い真実から、大切な人を守るための大切な思想なのですね。第6のゲームはこれで終了です。世界構造がこれで終わった訳ですから、非常に推理が楽になりました。