・第8のゲームの読み方
さて、では最後のゲーム盤に行きましょうか。まず最後のゲーム盤を考えるにあたって、私の読み方というのを説明したいと思います。第8のゲームは私が縁寿さんなのだと思って読む、と言うのが一番効果的だと思うのですよね。

・自分を本当の現実の縁寿だと思う
・縁寿はこの偽書の作者を、幾子という六軒島の事件と無関係の人物と思ってる
・一体自分(縁寿)はこの第8のゲームのどこで心の整理をつけたのかを考える

基本的にこのような3つの視点を前提にして第8のゲームを読むのが一番分かりやすく効果的なのではないかと思います。あなたは縁寿さんです。そして、この物語は偽書作家伊藤幾九郎が書いてますので信用できません。十八という兄が書いてるという発想がこの時点でありません。そういう前提です。

・ゲーム盤の目的
第8のゲームの目的は縁寿さんに、本当に理解するべき事を自分で気づいてもらう事です。戦人さんは縁寿さんに未来を生きる方法を伝えようとしていました。一方で縁寿さんは六軒島の真実を知りたいと願っています。しかし、六軒島の真実は第7のゲームでも推理したように、あの惨劇の物語なわけです。戦人さんが中盤にこのような発言をされますね。

「一なる真実の書は確かにこの島で何があったのかを縁寿に教えるだろう。しかし、それを知って何の意味がある?!12年前の悲しみが増すばかりじゃねえか!いったい縁寿はさらに何年かければ1人の女の子としての幸せを享受できるってんだよ! いったい何年をかければその傷口は癒されるんだよ!」

戦人さんの気持ちはもう痛いほど分かるでしょう。私も同感です。一体あの真相を知って縁寿さんに何の価値があるのでしょう。ただ縁寿さんを絶望に突き落とすだけの真実なのですよ?これを知って何の価値があるでしょう。それは結局縁寿さんの98年世界での境遇にあります。縁寿さんは世間で絵羽の陰謀説、留弗夫一家犯人説といった無責任な証拠の無い説に囲まれ、日々罵倒されながら生きてきたんです。お前の両親が犯人なんだろう?と。そんな境遇で縁寿さんの中では「六軒島の真実」というものが、自分を救ってくれるかもしれない希望になってしまってるのですね。悪いのは全部絵羽伯母さんで、自分の両親はただの被害者。そういう縁寿さんにとって都合のいい真実を、言わば幻想を求めてしまってるのです。それが縁寿さんにとって希望ではなく、絶望だという可能性もあるはずなのに。

・真実より大切なもの
だからこそ、戦人さんは真実よりも大切な物があるのだと分からせないといけません。非常に分かりやすい伏線が出てますので抜粋します。

「かつてのベアトのゲームが戦人に魔女の存在を信じさせようとする事が目的だったように、戦人のゲームは縁寿に真実より大切な何かを伝える事を目的とする。ゲームはいつだってその結果を強制しない。ベアトだって戦人が自ら認めない限り、永遠に勝つ事は出来ないゲームだった。戦人のゲームも同じ。縁寿が自ら認めない限り戦人の勝つ事はできないゲームなのだ。だから、戦人はかつてのベアトのようにゲームを進める。信じるかどうか。納得するかどうかは全て対戦相手が決める。そのために戦人は自分の幻想で縁寿を包み込もうとしている。」

ベアトリーチェさんは本当の六軒島の真相は人間が犯人なのに魔女の仕業と言って幻想、つまりは魔法で真実を包みこんでいました。今回も同じです。戦人さんは六軒島の真相である「黄金を巡る親族の殺し合い」というよりももっと大切なものを知ってほしいのですね。物語の中で天草が言いますね。「真実を暴く事に疲れ果て、お嬢はやがて右代宮絵羽を憎むだけの人生に成り果てていく」と。そう。縁寿さんは本当は真実なんか求めてないんです。自分のご両親が無実である真実が欲しいんです。でもそれは、幻想なんです。真実はご両親が犯人なのですから。

・本当の現実世界の縁寿と偽書世界の縁寿
一つ重要なのは、この第8のゲームはゲーム盤上の縁寿さんが一なる真実の書を読んで真相を知ってしまいますけど、この偽書そのものを私達探偵と同じように読んでいる現実の縁寿さんには、私達同様に真実が明かされません。あくまでも真実を知った作中内縁寿さんを眺めるしかないのです。そういう意味で、本当の現実の縁寿さんは真実を知りません。仮に作中で描かれた場合でも、今度は「偽書作家伊藤幾九郎=幾子を信用できるのかどうか」という問題が出てきますから、結局本当の現実の縁寿さんにとっては、真実は与えられないんですね。

・クイズ大会
真実が不明な状態で偽書を読み進めると、譲治と朱志香のクイズ大会のシーンが来ます。ここが非常に重要なんですね。譲治さんは事後確率の問題を出しながら縁寿さんに伝えます。縁寿さんの周りには色々な情報があります。縁寿さんを幸せにしてくれる情報、不幸にするだけの情報。これらを選んでいるのは実は縁寿さん自身だと。どんな情報を選ぶかは自分で決めている。だけど、縁寿さんが本当に大切にしたい真実があるのならば、それは自分で守らないといけないんだよ、と。実際の現実世界では爆発事故の影響で真相が特定不能になってます。絵羽さんも真相を語りません。つまりは真相が特定不能なんです。永久に。そんな状態で、縁寿さんの周りには彼女を不幸にする留弗夫一家犯人説、絵羽陰謀説、色々あるでしょう。真実は残酷です。真相は留弗夫と霧江が犯人なのですから。しかし、この真実は永久に猫箱の中に封印されました。永久にこの真実は明かされません。だとするならば、この明かされない真実をあえて悪意で縁寿さんが解釈する事に一体何の意味があるのでしょう。

全くありません。その悪意の解釈すら真実だとは確認不能なのですから。それなら、縁寿さんはご自身の未来を幸せに生きるために、自分を幸せにする情報だけを選びとって未来を生きてもいいのではないですか?それがたとえ真実ではなくとも、それは確認不能なのですから。本当の真実が明かされない現実の縁寿さんには、幸せだけを選択する事も可能なのです。十八さんは偽書を通じて、ずっとそれを伝えていたのですね。本当の六軒島の真実が悪意の塊だからこそ、その真相を永久に封印しました。そして縁寿さんの未来を守ったのです。

・手品と魔法
最後に魔法と手品の選択があります。縁寿さんはこの最後のゲーム盤で兄から一体何を受け取ったでしょうか。確かにゲーム盤の縁寿さんは真実を知ってしまったかもしれません。しかし、どんな真実も結局は自分が受け入れないと本当の意味で真実にはなりません。最後の最後に縁寿さんは考えるべきなんです。自分にとって本当に大切なのは手品の真相ですか?それとも、それを包み込む魔法という幻想ですか?縁寿さんを本当に幸せにしてくれるのはどっちですか?真実は残酷です。六軒島の真実は縁寿さんを不幸にするだけの辛い真実でした。でもゲーム盤の縁寿さんはそれを受け入れる必要なんかありません。あんなのは嘘ですきっと。そして現実の縁寿さんはそもそも真相を知らない。なら、選べる未来というのが明確にあるでしょう。本当に最後のゲームで兄の意図を把握したのなら、どっちを選ぶべきなのかは明白なはずです。

・物語中盤の黄金郷での縁寿の心理
ミステリーの世界で心を推理する場合、私はロジック的整合性、つまりは心理的整合性で考えるのですが、一つEP8中盤の黄金郷の縁寿さんの心を推理してみたいと思います。原作の縁寿さんと漫画の縁寿さんは、ご両親に対する態度が違いますね。普通に接している原作の縁寿さんと、拒否反応を示す漫画の縁寿さん。これを論理的に原因を考えていきましょう。彼女にとってご両親へどういう気持ちを抱くのか、という部分の根本的原因は、縁寿さんが見てしまった一なる真実の書ですね。あれを読まれたわけです。縁寿さん非常に重要なセリフをおっしゃいます。「お前たちの世界の真実など受け入れるものか!!」と。そう絶叫して自殺されます。一なる真実の書自体は真実ですけども、縁寿さんを主体に見る場合においては、縁寿さんがその真実を「受け入れる選択をする」と「拒否をする」というパターンがあります。真実を受け入れる選択をしたのが漫画版の縁寿さんです。当然真実を受け入れたため、ご両親が殺人犯である真実も受け入れました。だから漫画では拒否をするのだと思われますね。実にシンプル。では、拒否をした場合はどうなるのか。当然ご両親が殺人犯であった真実を拒否しますので、縁寿さんの中でご両親は別に殺人犯ではありません。すると、ご両親を拒否する心理的要因が消失します。ですから、普通に接する。

ロジック的に考えるとそういう事になるのではないでしょうか。受け入れる、受け入れないの違いでしょうね。原作の縁寿さんは、最後の我が主とのバトル時に言っていました。確かに真実を知ったけど、もしかしたら誰か一人でも帰って来てくれるんじゃないか、そう思ってもいいかなと思ってたのに、と。つまり、原作の縁寿さんは完全に受け入れたのではないのですね。真実を。希望を持っておられます。希望と絶望が同居してる状態では、ご両親に対する態度にも希望がでてくるでしょう。もしかするとアレは嘘で、両親は無実なんじゃないか、と。どんな真実も結局は本人が受け入れないと真実にはなりません。

・第8のゲームのベアトリーチェさんは雛ベアト?
さて、第8のゲームではベアトリーチェさんがまるで第5のゲームの時のような性格で出てきますね。これはおそらく偽書を執筆している十八さんの影響が大きいのだと思われます。第8のゲームは縁寿さんが主題なので、ベアトリーチェさんとの対立の物語ではない訳です。それは第6のゲームで決着がつきました。十八さんの中で。なので、物語のテーマ性が全然違うのでベアトリーチェさんはまるで生き返ったかのような性格で出てくるのでしょう。つまりは、あれが第5のゲームで死んだベアトリーチェさんなのか、それとも雛ベアトなのか、というのはさほど問題ではないのですね。どっちでもいいです。十八さんの執筆動機がそこにありませんので。

・ベルンカステルの宣言した赤字
我が主が後半かなりショックな赤字を語りました。これです。

「ベアトリーチェは、1986年10月に、死亡した。よって、彼女が生み出した黄金郷は、完全に滅び去った。黄金郷に生かされていた、お前の親族たちも全員、滅び去った。お前の父も、母も、そしてもちろん戦人も、二度とお前のところに戻り、お前の名を呼ぶことはない。」

ベアトリーチェさんは最後入水されますね。あれの事をさしているのでしょうが、さてここを推理してみましょう。今まで細かい論理を動機考察や猫箱考察で組み上げてきましたが、あれはここを推理可能にするための推理でもあります。ちょっとかなり丁寧に追って行きたいと思います。

安田紗代さんは元々戦人さんに恋をしていましたが、彼が約束を忘れていた事により心の痛みに耐えられなくなりますね。そこでベアトリーチェに恋心を移し、譲治と新しい恋を始めます。このまま順調に行けばおそらく結婚していたのでしょうが、86年に絶妙なタイミングで戦人さんが戻ってきます。紗代さんは断ちきったと思っていた戦人さんへの恋心がまだ生きていた事を自覚します。譲治さんが好き。でも戦人さんもまだ好き。選べません。おまけに自身の恋の障害が多い。近親関係にあたる事や子供を産めない事。これらは奇跡でもないと解決できないでしょう。紗代さんは計画を立てますが、本当に自分はこんな事件を起こしてまで幸せになりたいのか?と自身に問いかけます。答えはやはり「私だって現実世界で幸せになりたい」だったのでしょう。紗代さんは事件決行を決断します。

事件の中で碑文が解かれたら、戦人さんの事はきっぱり諦め碑文殺人を中断し、譲治さんと結婚しよう。もし、事件部分の謎を解いた結果、戦人さんが約束を思い出して、自分を受け入れてくれたのなら戦人さんを選ぼう。それがどちらも達成されない場合は爆弾を爆発させ、あの世で幸せになろう。具体的な計画の詳細は第7のゲームの推理を参照してください。そういう狂言と爆殺計画を組み込み事件を実行します。そして実際の六軒島では奇跡が起こりました。碑文が解かれるという奇跡が起こった訳です。絶対の意思で事件に挑んでルーレットが提示した答えは「譲治」でした。碑文殺人は碑文が解かれたために即座に中断。紗代さんはルーレットの結果に従い、戦人さんへの思いを断ち切る事を決断します。このまま事件が何事もなく終わってくれればよかった。しかし、イレギュラーが発生します。一族による黄金を巡る殺し合いが発生。これに巻き込まれ譲治が殺害されます。ルーレットは譲治を選びました。だから紗代さんは譲治と生きて行こうと決断したはずです。しかしその思い人である譲治が殺害されます。紗代さんの恋は碑文が解かれるという奇跡が起きてなお、達成不可能な状態に追い込まれます。彼が殺された遠因という意味では事件を計画した紗代さんに責任もあるでしょう。

地下貴賓室を出た紗代さんはせめて生きてる戦人さんだけでも助けようと、彼の手を取り、地下道へ逃れ、潜水艦基地へと逃亡。戦人さんは碑文殺人を中断してしまったために、この時点で紗代さんの真相、恋心に気付いてません。約束も思い出してません。事件前に紗代さんは3つの可能性を想定していました。戦人さんと結ばれる。譲治さんと結ばれる。それが叶わないなら黄金郷で全員と結ばれる。その可能性を信じて事件を起こし、最悪のケースでも爆殺心中は可能なはずでした。しかし、譲治は殺され、戦人は事件中断の影響で真相に至らず、爆弾の説明をしてしまってるために爆殺心中も不可能。すべての可能性が……消えました。

では、このような状態にある紗代さんは、約束を思い出していない戦人さん、そもそもルーレットが指し示さなかった戦人さんにボートで連れ出された時、一体どういう心理状態にあったでしょう。これはもう「死にたい」ではないのですか。全ての希望が断たれ、自身の恋の決着のために起こした事件は最悪の結果になり、自分の計画のせいで愛する人が殺害され。こんな状態でも「それでも生きたい」と思うでしょうか。私は描写されたままの入水自殺なのだと思います。

・事件後にメッセージボトルで真相を知った十八
そんな紗代さんの恋心を事件後に十八さんがメッセージボトルで知る事になります。完全に手遅れです。あの入水時に約束を思い出せていたなら、もしかすると紗代さんは自殺しなかったかもしれない。全てが手遅れ。それがルーレットが指し示した結果でした。動機考察と猫箱考察を鍵として導けるのは、おそらくこういう物語でしょう。ポイントは、入水時に紗代さんがどういう状態にあったのか、という点ですから、私は心理として入水だろうと思いますけど、「いや、それでも生きて行こうという心の強さがあるはず」というのももちろんあり得ますよ。ここは確定はできません。このような状態で人は一体どういう心理にあるのか、という問題ですから。さすがに論理で導けるのは入水時の状況までです。その先は完全に心の問題です。

・読者罵倒
さて、ここで原作の読者罵倒について触れましょう。この物語は大きく分ければ2つの世界で構成されています。現実世界とその現実世界に存在する読み物としての偽書ですね。十八さんは六軒島の真相を猫箱に閉じると言う目的を持って偽書を発表しています。世間で無責任な説を生み出し続ける人達への罵倒や皮肉も偽書には含まれてますね。これはもちろん現実世界の縁寿さんを守るためにやっている訳です。そういう理由で作中にかなり強烈な皮肉を入れこみますが、これはもちろん「作中現実世界の人々」を対象にやっている訳ですけど、これを一階層飛び越えて、私達が直接読んでしまってるために、誤解が生まれてしまってるのですね。「私達プレイヤーが罵倒されている」と。それは論理的に考えて不可能ですよ。十八さんはあなたたちプレイヤーを認識できません。一階層上の存在ですから。ここ、誤解が強烈に生まれた所で漫画でも削除されてしまったほどの問題部分ですので、誤解なさいませんよう。あれは作中現実世界の山羊を罵倒してるのですから。

・八城十八の偽書の執筆動機
では十八さんの偽書の執筆動機の部分に行きましょう。いくつか執筆動機の理由は考えられるでしょう。

一つは死んでしまった紗代さんの恋心に事件後メッセージボトルで至ってしまった後悔ですね。この後悔を十八さんは自分の中の戦人さんのためになんとかしないといけないと思ったのでしょう。その結論が第6のゲームなのですね。ベアトリーチェさんと最後に結婚した物語。ここに思いを込めたのでしょう。

2つ目に現実の縁寿さんの事ですね。十八さんは自分が戦人さんに変わってしまう事を恐れていました。縁寿さんに会うのを拒否していたのは、自分が戦人さんになってしまう恐怖が強かったからですが、だからといって事件後ずっと寂しく生きている縁寿さんを放置する事もできないでしょう。そこで、十八さんはせめて偽書を通じて縁寿さんにメッセージを送ろうと思ったのではないですか。第4のゲームと第8のゲームは特に縁寿さんに向けたメッセージ性がかなり強いですからね。

最後に、おそらくは魔女幻想を世間に広げる目的があったのだと思われます。実際の六軒島の事件は魔女なんか関係ありません。ただこの真相は現実の縁寿さんを自殺させるレベルの衝撃があります。そのため十八さんは六軒島の真相から縁寿さんを守りたかったのでしょう。だからずっと魔女の物語を描き、魔女の仕業と言ってきたのですね。幾子さんによる絵羽の日記披露パーティーが中断された影響で、結果として世間の六軒島の事件への印象が「魔女の仕業」で残ってしまったのではないですか。これが縁寿さんを真実から守ってくれる魔女幻想=魔法なのでしょう。

・福音の家の黄金郷
十八さんは最後に作家になった縁寿さんに福音の家に招待されますね。あそこの意味を考えましょう。おそらく意味合いが2つ重なっていると思われます。一つはベアトリーチェさんの言う黄金郷の復活です。黄金郷とは死後の世界の概念ですから、基本的に概念として死んでいないと行けません。縁寿さんも「十八先生も兄の記憶の重責から解放されてもいいと思います」と言ってますね。だから、あの瞬間に十八さんの中から戦人さんが人格として完全に死んだのでしょう。死んでやっと戦人さんは黄金郷に行けたんです。もう一つの意味は、事件後に完全に手遅れになってメッセージボトルで紗代さんの恋心を知った後悔が、今まで紡いできた偽書と一緒にやっと天国の紗代さんに届いたのでしょう。戦人さんを通じて。あの瞬間やっと十八さんの長かった苦しみが終わりました。天国の紗代さんへの謝罪と共に。

・作家になった縁寿の心の推理
さて、最後に作家縁寿さんの心の推理をしたいと思います。作家縁寿さんは、伊藤幾九郎の偽書を読み最終的に第8のゲームを経て、「真相を追う事は私にとって価値は無い」と思ったのでしょう。だから作家縁寿さんは真実を追うのをやめ、自身の幸せを選んで生きる事にしたはずです。ここで重要になるのが、今まで断片的に語ってきた「魔法の思想」です。さくたろう復活や、キャンディーの魔法という部分で推理しました。魔法には表と裏があります。裏に辛い「量産品のさくたろう」という事実があり、表には「魔法で蘇らせたさくたろう」という嘘があります。魔法を使う者はこの辛い魔法の裏を知ってます。知ってるからこそ、相手を幸せにするために、嘘ではあっても表の魔法を提示する訳です。最後のゲームの戦人さんもそうでした。六軒島の真実はとても辛い真相です。ですからこの魔法の裏を知る戦人さんは、表の魔法としてあのような温かな物語を提示した訳です。

作家になった縁寿さんは両目で物事を見て判断したはずです。真相は第7のゲームの悪意の解釈、第8のゲームの善意の解釈、両方あり得るでしょう。縁寿さんは両目で真相を見て最後にやっと気付いたはずです。自分は真実を追っていたのではなく、自分にとって都合のいい真実を追っていた、と。結果、作家縁寿さんは真実を追うのをやめ、兄が紡いでくれた最後の偽書のメッセージをキッチリ受け止め、未来を生きたはずです。作家縁寿さんは、この魔法の思想の象徴的存在であるさくたろうの物語を書いていましたね。十八さんに「十八先生も兄の記憶の重責から解放されてもいいと思います」と言ってますが、縁寿さんは兄を福音の家に招待する事で、兄を解放できるんじゃないか、と思っているのだと推測できます。これはよく考えると不思議です。縁寿さんは一体なぜそう思ったのでしょう。六軒島の真実は縁寿さんの世界では確定しませんから、知らないはずです。なのに、福音の家に招待する事で辛い過去から解放できると思ってるフシがあります。これは縁寿さんは六軒島の真実を確定はしないまでも「察している」のでしょう。魔法の原理を考えれば分かります。第4のゲームでさくたろう復活の時に縁寿さんはこういうセリフを言いますね。

「それが魔法の根源よね。愛が無ければ、悲しみが無ければ、怒りが無ければ、魔法は視えない。」

ベアトリーチェさんに縁寿の魔法が視えたのは、魔法の裏である「量産品」を知ったからです。だから表の幻想の意味が分かった。魔法を使う者は裏の真実を知らなければなりません。という事は、魔法の思想を世の中に伝えようとしている縁寿さんは、確定しないまでも「察している」のでしょう。両親が犯人なんだと。縁寿さんにとって大事なのは、これが確定しない事です。あくまでも推測であり、これは永遠に確定不能です。だからこそ、縁寿さんは希望を信じられる訳です。魔法を理解した縁寿さんは、十八さんに会い、魔法の裏を察してしまったのでしょう。辛い真実を。だから縁寿さんは兄を福音の家に招待する事で、解放できると思ったではないでしょうか。

・福音の家に右代宮家のホールを再現した理由
縁寿さんが福音の家を六軒島のお屋敷のホールのように作り変えた理由。これは推測になりますが、縁寿さんは魔法を理解した事で表の幻想を心の支えにし、未来を生きる力を得ました。しかし、魔法を縁寿さんに使ってくれた人は魔法の裏を知っている事になります。偽書の内容は右代宮家の内部情報に詳しいですから、縁寿さんは親族のだれかが生き残っているのではないかと疑っていた可能性は強いでしょう。六軒島で生き残った親族が偽書を書いてるかもしれないと。しかし、魔法という考え方は裏と表があるわけですから、一つ問題が発生します。縁寿さんは裏の真相を事実として確定情報として知っている訳ではありません。だからこそ、表の幻想を信じられる訳です。しかし、縁寿さんに魔法を使ってくれたこの親族の誰かは、魔法を使っている以上、裏の真実を知っているはずだと推測可能です。実際十八さんが真相を知ってる訳です。魔法はあくまでも縁寿さんのように、真相を知らない者に有効なのであって、真実を知っている人間に魔法は効果を持ちません。ただ残酷な真実を受け止めるしかない訳です。

縁寿さんはそこに至った時思ったのではないでしょうか。「私を救ってくれた親族の誰かがいるのなら、その人は自分自身に魔法をかける事はできない。それなら、私が違う魔法でその人を救ってあげたい」と。それが福音の家に再現された反魂の魔法、六軒島のお屋敷のホールなのではないでしょうか。真実を知る人間は結局真実を受け止めるしかありません。逃げられません。それならば、その辛い真実を上回るほどの過去の温かな幸せで心を包めば、きっと真実を知ってなお、魔法が有効なはずです。縁寿さんはきっとそう思ったのでしょう。十八さんの長かった辛い後悔の物語は、妹の反魂の魔法によって、やっと解放されたのです。これで第8のゲーム終了です。お疲れ様でした。

・プルガトリオ
さて、第8のゲームまで推理を終え、魔法EDの意味を推理しましたね。あの瞬間戦人さんはやっと天国に行け、今までの苦悩がやっと天国の紗代さんに伝わった。そういう推理をしたと思います。この伏線が実は第1のゲームの時点で貼られています。お茶会に「プルガトリオ」と出てくるでしょう。プルガトリオとはイタリアの詩人ダンテが書いた神曲という作品の煉獄編の題名です。煉獄編プルガトリオ。ダンテは煉獄山を登って行くのですが、煉獄山は「自分の犯した罪に後悔している者」が罪を贖うためにあります。ダンテは煉獄山を登る過程で罪を浄化され、山頂で永遠の淑女ベアトリーチェに導かれ天国へ昇っていく。それがプルガトリオ煉獄編なのですね。戦人さんの罪は長い年月を経てやっと最後に浄化され、ベアトリーチェさんの元へと魂が行きましたね。これはまさにプルガトリオでしょう。

・うみねこという作品は推理可能でしたか?
漫画版が完結し、うみねこと言う作品に関するある問題に評価を下さないといけない時期に来ました。それは私個人でどうこうという話ではないので、ちょっとみなさんに聞いてみたいのですよね。うみねこを愛しているみなさんに。「うみねこのなく頃には推理可能だったのですか?」という問題に対する評価です。原作漫画版と出題側の情報提示が終わり、探偵サイドの推理も出そろってると言っていいでしょう。私を含め、タウンメモリーさん、KEIYAさん、多くの推理がありますよね。さて、うみねこの真相を特定している推理は探偵側にありましたか?あったのならば、この作品は「推理可能だった」という事です。しかし、ないのであれば「結局は推理不能だった」となります。うみねこのなく頃には推理可能でしたか?ここに評価を下すべき時期にきたんです。出題側の原作がああいう終わり方をしてるのですから、ここを曖昧にして、漫画版で綺麗に終わったから良かったねじゃ終われませんよ。ここに結論を出すべきでしょう。

・推理は可能です
私の主観ですと、出題側の公式解答を当てたうえで、さらにその先の公式が想定しない部分まで行ってしまってた印象ですけども。推理は余裕で可能だった、という結論です。私は。ただ、これは私の主観ですから。推理不可能だったのなら二度とこういう作品を作るべきじゃないんです。でも推理可能だったのなら、出すべきなんですよ。重要な問題なんですこれは。先生がリスクを背負って答えをふせたわけでしょう。その選択は結局プレイヤーにとってどうだったのか。評価がないと先生もどうしていいか分かりませんよ。私はあえて言いたいです。先生がまたこのような作品を作ってくれるためにも。推理は余裕で可能でした。完全特定しましたと。

私としてはこの物語で物凄く重要な謎は魔法EDの福音の家のラストの意味の解明なんです。ここが私の設定するうみねこの真相なんです。そういう意味で、ここのシーンの解釈のためにゲーム盤の事件の謎や動機や86年の実際の事件の謎があり、それを解いた結果、ラストの意味が分かるんですね。このラストのシーンの意味を解明できたのか、これが出題者さんと私の推理対決の結末を飾る最後の謎という事になるわけです。公式が想定している解答というのは、あの場面で十八さんの中の戦人さんが黄金郷に行き、十八さんと戦人さんが完全に決別した事。そして、十八さんが事件後にヤスの恋心を知り、その後悔から自殺未遂をし、その後けじめのためにずっと紡いでいた物語が、やっとあの瞬間天国に届いた事。この二つでしょう。この2つの想定されているであろう公式解答というのは当然私ドンピシャで特定済みなわけです。問題はですね、公式が想定しなかったのかもしれない部分まで考えてしまった点なんですよね。縁寿さんサイドの解釈がそうなんですけども。うみねこという作品は「魔法」についての物語と言っていいでしょう。辛い真実を魔法で包み込む思いやりの物語です。そういう意味で福音の家を改装した縁寿さんの解釈というのは、その魔法をめぐるうみねこの物語の締めくくりにあたる謎な訳でしょう。当然推理必須だと思ってたんですよ。

全く触れてないでしょう!!漫画版!!つまりここは謎じゃなかったんです!!公式の想定しない部分まで考えちゃった結果、十八さんの後悔、縁寿さんが自分を救ってくれた人のために作った反魂の魔法の寄り代である六軒島の再現ホール、この2つの解釈によって、うみねこという作品のラストに感じる感動がですね、物凄い事になってるんです私の中で。この出題者さんと私の推理対決、私の完全勝利じゃないですか?完全勝利でしょう!!「公式解答はもちろん分かってる。でも私のこの解釈の方がより美しい!!」みたいな事になっちゃったわけですから。解かせる気が毛頭ない物語?あなたが屈服するまで続く拷問?あっはっはっは!!いやぁ~っはっはっはっは!!完全特定しましたからぁ!!ざまぁないですね!!
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※イラスト 城雅さん

ただそこに「うみねこのなく頃に」が存在するだけで、古戸ヱリカにはこの程度の推理が可能です。いかがです?出題者、竜騎士07先生?リザインをオススメしますよ。

結局謎というのは解いて欲しいんです。ですから、ベアトリーチェさんも先生も「どうせお前には解けはしない!」とおっしゃるわけです。戦人さんがベアトリーチェさんの心臓を第6のゲームで止めてあげたように、竜騎士先生の心臓も誰かが止めてあげる必要があったんです。謎を暴く事によって。先生の心臓が見事に止まったのならば、探偵としてこんなに嬉しい事はありませんよ。楽しい戦いでした。また何かがなく事があれば、再度探偵として現場に行く予定ですので楽しみにしていますよ。今度は私の武器「連鎖考察法」に対する対抗手段を用意される事をお勧めします。