ポン引きはドアを開けて「さあ入れ」と言う。

おいらはワンに会えるかもしれないという期待と、会ってどうするんだという不安に似た気持ちが入り混じった複雑な心境でドアをくぐった。

さっきから胸の高鳴りはとっくに最高潮に達している。

ヤバい、息苦しくなってきた。('A`|||)

そして・・・

ポン引き「今はこの2人だけだ」
おいら「え・・・他にはいないのか?」
ポン引き「今日は土曜日だからな」

中のひな壇にいたのは、もちろん見た事の無いタイ姫が2人。

でもこの店の造りとかひな壇とか全て見覚えがある。
そしてこのヨコの階段。
この上にワンの部屋があったんだ。

ポン引き「この娘なんかどうだ?」
おいら「え?ああ・・・いや、またにするよ」

少しボーっとしてしまった。

あわてて外に出て店から離れると、道端の縁石に座り込んでしまった。
何ていうか・・・緊張感から解き放たれたというかあまりに拍子抜けだったので力が抜けてしまった。

しかしなぁ・・・
ここに来るまでホントにワンに会おうとか、そういうのはホントに考えていなかったのに何でおいらこんなにがっかりしてるんだろう・・・

でも少しホッとしているのもまた事実だった。

だって、ホントにワンがいたらおいらどうしてたんだろう?
何を話せばいいのかも分からないし、向こうだって今更って思うだろうし・・・

でも考えてみればあれから5年以上経っているんだよな。
ワンだってもうアラサーだ。

とっくにタイに帰って再婚してたっておかしくない。
っていうか、むしろまだここにいる方がおかしいじゃないか。

仮にワンがいたとしたら、これじゃただのタチの悪い冷やかしだ。

はー
シンガポールに来てまさかの自己嫌悪だ。ε=ε=(;´Д`)

5年以上たってもおいらはアホだな・・・

ふとスマホを見るとアムからラインが来まくっていた。
内容は「無事にシンガポールに着いた?」と言うような心配している感じのメッセージだった。

そう言えばアムにはシンガポールに行くこと言ってたんだっけ。
「無事着いてメシ食ってたとこだよ」と返信すると、すぐ既読になり返信のメッセージが。

何回かやり取りをしていたらライン電話がかかってきた。

さすがにここで電話に出るとパケット代がエライ事になるので、ホテルに帰ってから電話すると返信しておいた。
※この頃はまだSIMフリーのスマホなんて知識は無かったからバカ高いローミングで通信していた。

アムとのラインのおかげで少しココロが落ち着いた。

そう、ワンとはとっくの昔に終わってるんだからすべてが今更だ。
きっと今頃ワンはタイに帰ってジェーンたちと楽しくやってることだろう。

全く、おいらの女々しさだけは5年前と変わってなかったって事だ。

・・・なんつって、実は上の部屋で接客中だったってオチもあるかもしれないが、それは言わないでおこう。