あの古賀茂明氏が、20日付けのニューヨーク・タイムズに「日本では報道の自由に脅威が」と題した寄稿をしています。
「日本では報道の自由に脅威が」(The Threat to Press Freedom in Japan)

2015年5月20日付 古賀茂明


【東京】3月に行われた記者会見で、菅義偉官房長官は日本の大手民放であるテレビ朝日で私が述べたコメントについて懸念を表明した。そのコメントで、私は首相官邸から「強烈なバッシング」(“fierce bashing”)を受けて局が屈服し、もはや番組に出演する事は無くなると発言していた。日刊紙の朝日新聞によると菅氏は「放送法に従い、この問題をテレビ局がどのように扱うかを注視したい」(“We will closely watch how the TV station handles the issue in line with the Broadcast Law”)と語っていた。放送局の免許を無効にすると遠回しに脅迫したのだ。

4月17日に、与党の自民党の特別部会が党本部で特別会議を開き、テレビ朝日と公共放送のNHKの両局の役員を査問した。2つのテレビ番組で安倍晋三政権を批判していると自民党側は考え、その事を協議したのだ。

4月25日にローカル局の東京MXテレビに出演後、自民党の幹部は何人かのジャーナリストに対し「古賀氏を出演させる事を許すテレビ局があると聞いている。何と勇気のある局だと言うべきだろうな」(“I heard that there was a TV station which allowed Mr. Koga to appear on a program. What a courageous TV station, I should say!”)と語っていた。

その他にも日本政府はメディアの独立性に干渉している。これは日本のメディアと国家との長年の特殊な関係に起因している。しかし、安倍政権は特にこれをアグレッシブに使って有利に運ぼうとしている。そして大手メディアは急速に政権側の好みに合わせようとしている。

例えば、菅氏の脅迫に抵抗する代わりに、テレビ朝日は私が政府を非難したテレビ番組を制作した従業員を懲戒処分にした。そして、放送法にある干渉禁止規定を行使せず、こうしたテレビ局役員は党の査問に従ったのだ。

日本では、国家とジャーナリストとの関係は記者のクラブのネットワーク(別名『記者クラブ』)によって維持されている。それぞれの省や地方自治体や各業界の協会に記者クラブが置かれている。こうしたクラブのメンバーシップは大手メディア企業に限定されているのが常である。メンバーだけが記者会見に出席できたり、組織のオフィスにアクセス出来るのが、その典型だ。この特権的な地位を提供される事と引き換えに、政府は好ましい取材をしてくれる事を当然だと思っている。また、しばしばメディア側もそうしているのである。

日本のメディアは独立した官庁によって監督されていないのも問題だ。例えば、政府が、具体的には総務省がテレビ局の免許を発行しており、定期的に更新している。その結果、テレビ局は、常に監視下に置かれ、政府に挑戦すれば放送の権利を失うのではないかと恐れている。日本の議会制度を考えるなら、これは与党が放送に大きな影響力を持つ事を意味しているのだ。

その上、大手メディア局には編集局と経営とが実質的に分離されていない。各局の会長や社長は、しばしば報道の取材を細かく監視する。甚だしきは、記者個人の駆動も対象となっている。日本の雇用システムにより、このような介入に抵抗する局員は希である。歴史的に、主導的なメディア企業では身分が保障され、退職まで高給だからである。多くのジャーナリストは、自分達の上司が政府に服従し、自分達のキャリアを守る事を考えては、政府に対し批判的になるのを控える事を知っている。会社への中世は、ジャーナリズムの独立性という職業倫理に優るのだ。

こうした仕組みは目新しくない。第二次世界大戦前からあったし、独立した官庁による監督は連合軍によって行われていた。これは1952年に日本の保守主義者によって廃止されたが。しかし、最近になって政府は前例の無い規模でメディアに圧力をかけるようになった。安倍政権下で、大手企業の役員らは、政府高官や首相との高級な会食やゴルフに出かけている。またそれが臆面もなく世間に知られているのである。

昨年11月の総選挙の直前には、自民党は大手テレビ局に、いわゆる要求というものを手紙にして送付した。「一方的な」(“not be one-sided”)取材をしない事を保証し、インタビューのコメンテーターや取材トピックにも指示を出した。自民党は、安倍政権の経済政策で恩恵を受けるのは富裕層だけであるとする番組に不平を述べていた。世論調査によると、こうした見方は、多くの日本人の共通した考えだ。

こうした状況で政府の監視をどうやってメディアが出来るのだろう? 安倍政権によるジャーナリストへの扱いは、独裁国家のそれであり、日本がそうあるべき自由な民主主義国家のそれではないのである。



古賀茂明氏は1980年から2011年まで経産省の官僚を務め、今はライター兼コメンテーターである。



この寄稿は2015年5月21日付けのインターナショナル・ニューヨーク・タイムズ(訳注:昔のヘラルド・トリビューン)の紙媒体に掲載された。

拙訳終わり。エディター&パブリッシャーというアメリカのメディア業界情報サイトで、この記事を見つけました。つまり、英語圏のメディア業界関係者や研究者の相当数の目に止まっている可能性があります。

何とか収拾を図ろうとしたテレビ朝日サン、どうする積もりでしょう。また、他の日本のメディアさんは、どうするんでしょう。他所の国での取材がしづらくなるかと。

ま、ちょっと今後に注目ですな。華麗にスルー?