さいがいじのぶろっく


今回の大阪大地震には、あそこで30年近くを過ごした身として、大変衝撃を受けました。発生直後に、北摂に住む妹と即座に連絡が取れなかった時には、これが今生の別れかと思ってしまったほどでした。

目下、被害状況の把握と、復旧活動が行われている中、今後こういう事態でブロック・チェーンが果たせる役割について、紹介していきます。ドイツの大手ソフトウェア企業、SAPの配信記事です(2017年11月14日付け)。
Blockchain for Disaster Relief: Creating Trust Where It Matters Most(災害救助向けのブロックチェーン:最も重要な場所に於ける信頼の創造とは)

災害時に国やNGOが迅速に対応しているものの、多くの人道努力は、救援組織同士の透明性の欠如というネックがある。

そうした中、大災害に見舞われた被害者に、迅速かつ効果的な支援を提供していく重要で独立した記録システムを素早く簡単に展開出来るのがブロック・チェーンである。

2010年1月、マグニチュード7.0の地震がハイチの首都、ポルトープランスを襲った。人類史上屈指の悲劇となった。発生24時間で、20以上の国や非政府組織などが救助活動に動き出した。その範囲は、復旧活動や飲食料品の配送支援など幅広いものだった。そうした活動を合体させ、より効率的に行っていこうと、救援組織は各々が有するリソースやノウハウを提供した。

しかし、その後はどうだったろう。国連では、共通のコミュニケーション・チャネルが存在せず、電子メールやソーシャル・メディア等の構造化されていないデータソースが多すぎるとし、協力や効率化が上手くいっていない事を明らかにした。

以下に書くことを御想像頂きたい。当時のフランスの組織は、医療救援活動をしたいと考えており、ハイチの島の特定のエリアに複数の医師を派遣しようとしていた。だが、どうすれば良いかが分からなかった。一方、アメリカは対応できそうなヘリコプター3機を近くに待機させていた。ただ、そうしたフランス側の窮状が直ぐには分からず、双方の意思を合致させられなかったのだ。

待機させている利用可能なリソースがあっても、何が必要かを他の当事者に知らせる迅速かつ信頼できる手段が存在しないのが現状だ。共通の記録システムを確立すれば災害への対応を進められようが、システムの所有権や関係者のデータをどこが手動するのかといった課題に取り組まなければならない。

■災害救助ではパートナーと相互に運用していく事が必須

災害救助活動で人類は驚くべき進歩を遂げた。そこは疑う余地が無い。異なる国やNGOなどが手を組んで共同で活動を行っているが、災害に遭遇した国や被災者が事態に対処するには、それだけでは不十分である。

様々な援助団体が錯綜する活動を行うに当たって求められるのは、迅速な対処である。しかし、そこにはある種の課題が付きまとう。災害地域に送られる政府機関には、軍隊が関与しがちだ。しかし、そうした軍隊は自らの運用システムを他国に知られたく無いと考えているのである。

不幸な事に、機密データを明らかにしてしまうという理由から、拒否そのものは妥当だ。ただ、それは人命を救う可能性のある情報の遅延や、情報へのアクセスが出来なくなる可能性がある。こうした共同活動の最大の強みは、最大の弱点になるかもしれないのだ。

■災害時には、分散型ネットワークだけが配信出来る絶対的な透明性が必要

これまでは、連合型システムが、複数の組織のオペレーションを行っていく上での手立てだった。だが、技術上の複雑性により、文字通り時間のロスが許されない状況での運用が難しかった。その上、システムに自らの知見を提供しようにも、セキュリティ上の危険を懸念し、躊躇する場合があったのである。

だが、災害時には完全な透明性や、淀み無き相互運用、それにリアルタイムの情報交換が求められる。それらを配信できるネットワークだけが、参加している組織を助けていくのだ。そこに登場したのがブロック・チェーンである。

■信頼と効率性の両方を構築

ブロック・チェーンのテクノロジーは、災害復旧支援に参加する組織の中核に成り得る。例えば、国連の人道支援組織やNGOなどが、分散型のネットワークであるブロック・チェーンを通じて繋がり合うのである。そうした団体にとっては、以下のようなメリットがある。

※権力の分散:全ての参加組織に同等の権利が与えられ、独自のリソース計画システムを引き続き使用出来る。

※パートナーによる相互運用性:ブロック・チェーンでは、リアルタイムで更新される全てのオペレーションを知らせる唯一かつ信頼される情報源である。全ての当事者が履歴にアクセス出来る。

※即興性:参加組織は何時でもネットワークへの参加や脱退が可能である。

※プライバシー:参加組織は、データの保有権を保持し、自らのリソースを他の組織に公開しなくても済む。

ハイチのような状況で、どんな対応ができるかを戻って考えてみよう。フランスは、ブロック・チェーンを通じて全ての参加団体に、空での移動手段があるかどうかを参照出来るのだ。そうなれば、他の組織は即座に情報として把握し、対応していけるのである。そうなれば、アメリカは3機あるヘリコプターの1機を、30分以内に派遣出来ていただろう。

ブロック・チェーンに組み込まれた、シンプルかつ開放されたアルゴリズムであるスマート・コントラクトを使って、参加した組織が同意した共通のルールに従うようにしていけば、要求に合致したオファーが自動的に受け入れられ、遅滞無く執行できるようになるのである。また、やり取りの履歴は、ブロック・チェーンに安全に保存される。

まだ現実化してはいないものの、このような構図は、複数の組織の参加で起きる複雑なプロセスを簡略化し、参加者同士の信頼関係を構築する有望な方法となる。SAPが、ブロック。チェーンを活用したいとする理由の1つである。 SAPでは、25もの業界や12の事業に精通している。潜在力を明らかにするべく、ブロック・チェーンのテクノロジーを模索しているのである。

拙訳終わり。今回の大阪の大地震のように、本当に不幸中の幸いというか、海外の支援団体を仰ぐほどの惨状では無かったシチュエーションには当てはまらないかもしれません。

ただ、今後については考えておく必要があります。我が国もまた、ハイチの翌年に東日本大震災を経験しています。あの時にも、ハイチほどでは無かったにせよ、似たような齟齬があった筈です。

そして、来て欲しくはないけど、確実に起きうる南海トラフによる超巨大地震での減災手段として、ブロック・チェーンの研究と導入を視野に入れておくべきではないのか。そう思ってしまいました。皆様、いかがお考えでしょうか?