高齢者ほどフェイクニュースを鵜呑みに
嘆かわしく、かつ、情けない話。アメリカでは、高齢者ほどフェイク・ニュースを鵜呑みにしたがる傾向があるのですって。

体の衰えと引き換えに賢くなるとばかり思っていたのですが・・・。

theverge.comが報じています(2019年1月9日午後2時投稿)。

ニューヨーク大学とプリンストン大学の共同研究から明らかになりました。それによると、65歳以上のアメリカ人は、学歴や性別、人種、収入を問わず、フェースブック上のフェイク・ニュースを若い世代よりもシェアしている事が明らかになりました。つまり、もっとも親和性が高いとなります。

フェイク・ニュースが2016年のアメリカ大統領選に影響を与えたのは皆さんの御記憶に新しいかと愚考します。実際、トランプ氏に好意的なフェイク・ニュースが、クリントン氏からの投票乗り換えに繋がったとの研究結果もあるそうです。また、フェイク・ニュースのリンク先をクリックする人は比較的少ないものの、ニュース・フィード経由でのフェイク・ニュースの見出しの伝播力は凄く、実際にどれ位の影響があったのかを正確に測定するのは困難だとの事です。ともあれ、高齢者ほどソーシャル・メディアでフェイク・ニュースをシェアリングしたがるという研究結果によって、今後は誤解が広まらないよう、プラットフォームの効果的なデザイン改善をする上で参考になるだろうとしています。

なお、この研究結果はサイエンス・アドバンシズから9日付けで配信されたもので、2016年の選挙の前後数ヶ月のユーザーの行動を分析した結果だそうです。2016年初頭に、両大学はYouGovと共同で3500人を対象に調査しています。こうした人達は、フェースブックのユーザーと、非ユーザーの両方が含まれています。

11月16日、つまり選挙直後に、両大学ではフェースブックのユーザーに対し、公開しているプロフィールや宗教、政治的見解などを含むデータがシェア出来るようなアプリのインストールを打診。ユーザーのタイムラインに投稿される内容やフォローしている投稿などをチェックしました。ちなみに、ユーザーは当人のデータカテゴリーのシェアリングを拒否する事は可能だったそうです。また、研究に携わる調査員は、自分達の友人のニュースフィードへのアクセスが禁じられていました。

結果として、フェースブックを使っている研究対象者の49パーセントが、プロフィールのデータのシェアに合意していたそうです。

調査員は、こうした対象者のタイムラインに投稿されたリンク先をチェックし、バズフィードの記者であるクレイグ・シルバーマン(Craig Silverman)氏が作成したフェイク・ニュースサイトのドメインかどうかを確認。更に、他の4つのフェイク・ニュース記事やドメインのリストと重ね併せ、結果に一貫性があるかどうかも調査しました。

その結果、全ての年齢層で、フェイク・ニュースをシェアするカテゴリーは比較的レアだった事が分かりました。こうしたフェイク・ニュースのサイトのリンクを最低1つでもシェアしていたユーザーは8.5パーセントに過ぎなかったからです。

また、保守系を支持するユーザーは、リベラルを支持するユーザーよりも、フェイク・ニュースをシェアする傾向も浮かび上がりました。共和党の支持者で、フェイク・ニュースをシェアした人は全体の18パーセントでしたが、民主党の支持者は4パーセント未満だったからです。研究では、こうしたシェアによってトランプ氏が当選する大きな追い風になったのだと見ています。

そして、年齢層。65歳以上の人がフェイク・ニュースをシェアしていた割合は11%。一方、18歳から29歳までの年齢層では、僅か3パーセントに過ぎませんでした。45歳から65歳未満の年齢層と比べても倍以上ありました。

サイトの取材に対し、プリンストン大学で研究報告を共同執筆した政治家学者のアンドリュー・グエス(Andrew Guess)氏は「年齢について指摘したら、多くの人が『そうだね、当然だよ』と言った」(“When we bring up the age finding, a lot of people say, ‘oh yeah, that’s obvious,’”)と答えています。

「イデオロギーや党派性を把握した上で、このような結果が出た事は、私にとってかなりの驚きだ。他の特徴から独立している事も同様だ。高齢者が保守的になりがちだという要素だけでは説明出来ないものがある」(“For me, what is pretty striking is that the relationship holds even when you control for party affiliation or ideology. The fact that it’s independent of these other traits is pretty surprising to me. It’s not just being driven by older people being more conservative.”)と続けています。

なお、今回の研究では、どうしてそうなるかについては結論を出していません。ただ、複数の調査員が2つの可能性が考えられるとしています。1つは、高齢者ほどインターネットを始めたのが遅く、若い世代に比べてリテラシーが欠落しているのではないかというもの。もう1つは、年齢を重ねる事で認知機能が低下し、こうしたフェイク・ニュースを信じがちになるのではないかというものです。

なお、こうしたデジタル面のリテラシーにギャップがある事は、かねてよりフェイク・ニュースのシェアに繋がっているのではないかと指摘されていました。実際、WhatsAppではインドでデジタル・リテラシー向上のプロモーションを行っているほどです。同国では、インターネットを比較的最近になって始めた人が2億人も存在し、WhatsAppで拡散したフェイク・ニュースが原因で複数の殺人事件が発生しているほどです。

また、高齢のアメリカ人ほど詐欺に引っかかる傾向もあるそうで、FBIでは専用のHPで注意喚起しています。こうした多面的な解決の模索は、フェイク・ニュースの拡散を防止する上で有効だろうと見なされています。

グエス氏等は、上記の2つの仮説を今後検証していきたいと望んでいますが、実行は容易ではないそうです。特定の人がデジタル・リテラシーを持っているかどうかを判断する事自体、方法論が無いからです。一方、フェースブックのデザインに問題があると指摘しています。と言うのも、ニュース・フィードで表示される記事は、ニューヨーク・タイムズのそれと、クリック稼ぎを目的としたそれとが、デザイン面で酷似しているからです。

今後の研究で、ニュースフィードで何を読んでいるのかや、フェイク・ニュースと、そのシェアリングとの関係性があるかどうかが解明される可能性があります。研究者らは、ユーザーは信用している友人によってシェアされたフェイク・ニュースをシェアリングしているのかもしれないと予測しています。

フェースブックによるフェイク・ニュース拡散を遅くする試みを調査しているマシュー・ゲンツコウ(Matthew Gentzkow)氏は、今回の研究結果で年齢が要素となっているという指摘は、今後フェースブックが効果的なツールになるよう設計を改善するのに役立つかもしれないと指摘しています。なお、ゲンツコウ氏は、今回の研究には参加していません。

同氏は、スタンフォード経済政策研究所のシニア・フェローですが、研究結果について「最も効果的になりそうな複数の解決策を絞り込む上で、大変有意義な指摘となっている」(“The age result in this paper points very directly toward at least narrowing down the set of solutions that are likely to be most effective,”)と絶賛。「比較的少数の人に問題が集約されているとなれば、そうした人達の蒙を啓く最も効果的な手立てについて考えられよう」(“If the problem is concentrated in a relatively small set of people, then thinking about the interventions that would be most effective for those people is going to take us a lot farther.”)と、言葉を結んでいます。

うーむ。考えさせられますね。高齢者が、そうした改善策を用意した所で応じてくれるかどうかという問題もありましょうし。

いずれにせよショッキング。日本でも同種の調査をしてみたら?