ロイター予測
ロイター研究所が、「今年は大がかりな報道機関のレイオフが発生し、ソーシャル・メディア大手に罰が当たるだろう」と予測しています。

pressgazette.co.ukが報じています(2019年1月11日付け)。

Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2019というのがレポート名です。拙く訳すと、「2019年のジャーナリズム・メディア・テクノロジーのトレンドと予測」ぐらいになりましょうか。

この予測によりますと、報道機関では講読やメンバーシップ・モデルに着目。そうする事で、オンラインに流出し続けて先細りするばかりの広告収入の損失を補いたいと考えているのだそうです。「しかし、その限界が明らかになりそうだ」(“but the limits of this are likely to become apparent”)と、レポートでは警告しています。

「ジャーナリズムは、既に広告収入が重大なまでに落ち込んでおり、それによる構造的なシフトが空洞化をさせ続けるだろう」(“Journalism will continue to be hollowed out by structural shifts that have already led to significant falls in advertising revenue.”)。

こうした傾向が、雇用を脅かし、権力者への影響力を削いでいると、レポートは続いています。

さて、研究所では200人のデジタル・メディアの専門家にインタビューしています。その3分の1が、英国。残る29ヶ国がドイツやアメリカ、オーストラリアだったそうです。

また、200人中、編集主幹の人は40人。デジタル担当責任者は30人。18人は役員やCEOだったとの事です。

そうしたインタビュー対象者の52パーセントが、講読モデルやメンバーシップ・モデルは、発行元が今年最も力を入れるべき対象だと答えています。

一方、ネイティブ広告に力を入れるべきと答えたのは27%。寄付に頼ろうというのは7%で、上記の数字と比較して「これは業界の取り組み対象の大きな変化だ」(“This is a huge change of focus for the industry,”)と、レポートを作成したニック・ニューマン(Nic Newman)氏は語っています。

ニューマン氏によると、2019年は「誤情報やプライバシー、市場での力などへの懸念が高まる中、プラットフォーム企業への規制が着実に始まる年となろう」(“the year when the regulation of platform companies starts to bite following growing concern about misinformation, privacy, and market power”.)との事です。

ケインクロス・レビューでは、デジタル時代に質の高いジャーナリズムを維持し続ける手立てとして、今年前半に新たに判明した事を公表したいとしています。それによって、ソーシャル・メディア大手に何らかの影響が出る可能性も有るだろうとしています。

また、チャンネル4ニュースのエディターであるベン・ド・ペア(Ben de Pear)氏はレポート作成の際にインタビューを受けましたが、2019年は、どのソーシャル・メディアのプラットフォームが「真実をケアし、真面目なジャーナリズムに代償を払うかを証明せねばならない。或いは、両方を適切に行うよう、規則を定めねばならない」(have to prove they care about the truth and about paying for serious journalism, or be properly forced to do both by regulation”)とし、「重要な年」(“crucial year”)になるだろうと答えています。

フェースブックは、昨年(2018年)にニュース・フィー路のアルゴリズムを変更。ニュース・コンテンツのプロモーションを少なくしました。この結果、報道業界の側からすると優先順位が下になり、FBを重要もしくは非常に重要だと答えた回答者は半数を切ったそうです。

それ以外のプラットフォームとしては、アップル・ニュースとYouTube、グーグルなどが挙げられていましたが、最優先されているのはグーグル。回答者の87パーセントが、そう答えています。

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(サイトより引用させて頂きました)

ニューマン氏は「優先順位に変化が現れているのは、各発行元がアルゴリズムの変化によって参照される率が低くなったのを受け、フェースブックから乗り換えているという要素がある。しかし、サード・パーティーのプラットフォームへの見方に全般的な変化が現れているようにも思える」(“The differences in ratings are partly a reflection of the lower number of referrals that publishers now get from Facebook following algorithm changes, but there also appears to be a change in sentiment toward third-party platforms in general.)と語っています。

「多くの発行元は、特別なコンテンツを制作しているが、結局は目標の設定の変更をしなければならないか、収益化の実現が遅れているだけだと気づく事になっている」(“Many publishers have been burned by creating bespoke content only to find the goalposts changing or the monetisation slow to materialise.”)と続けています。

御本人によると、各発行元が目指す課金は「ソーシャル・メディアをマーケティングや読者獲得の経路だと考えつつあり、コンテンツによってユーザーの反応(エンゲージ)を引き起こす場としての優先順位は低くなりつつある」(“increasingly looking at social media as a marketing and acquisition channel, not primarily as a place to engage users with content”)と分析し、YouTubeのようなチャンネルを「マネタイズ化の可能性があると考え」(“on the basis of monetisation potential”)優先順位を上げているとの事です。

また、人工知能や、アマゾンのアレクサやグーグル・アシスタントのようなスマート・スピーカーなどのテクノロジーは、2019年のジャーナリズムにある種の役割を果たし始めているとしています。ちなみに、スマート・スピーカーの保有者は、英国だけで700万人を突破しています。

回答者の78パーセントが、人工知能への更なる投資が重要となるだろうとしています。それが「今後のジャーナリズムを保障する」(“help secure the future of journalism)と考えているからです。一方、人工知能の導入で編集者の雇用を少なくすると言う考えは持っていないそうです。

今後、ニュース・サービスに於けるパーソナライズ化を増やしていく事が重要だろうと答えた人は73%。人工知能が、そこで重大な役割を果たすだろうとも考えています。

一方、ポッドキャストのようなオーディオ・ニュースのコンテンツが、2019年にはコンテンツ全体に占める割合や商業戦略に重要な部分となっていくだろうと考えている人は75パーセントでした。

音声アシスタントのテクノロジーは「ごく近い将来、コンテンツへのアクセスの手立てとしてオーディエンス(視聴者)に大きなインパクトを与えるだろう」(“significant impact on how audiences access content over the next few years”)と考えている人は78パーセントでした。

以下、レポートが指摘している点は、以下の通り。
  • 各プラットフォームが偽情報や意図的欺瞞情報との戦いを強化する中、問題はクローズドなネットワークやコミュニケーション・グループに移行して行くだろう。追跡やコントロールが難しいからだ。
  • ニュースの信頼を計測する新たな取り組みや、利用者が何を誰を信じるべきかを決める手立てとなるニュース・コンテンツのラベリングなどの取り組みが行われるようになろう。
  • より多くの利用者が、ソーシャル・ネットワークから離れていくだろう。無駄な時間を費やしていると気づき始めているからであり、より「意味のある」(“meaningful”)コンテンツを指向するようになっているからだ。
  • Slow news will become a theme with the launch of new journalistic enterprises such as Tortoise and the Dutch De Correspondent building an English-language website.ダッチ・デ・これスポン伝との英語版の構築や、トータスのような新興ジャーナリズム企業のローンチなど、スロー・ニュースがテーマとなるだろう。
ニューマン氏は、「経済的な逆風に晒される中、課金を目指す報道機関が増えるだろう。複数のテクノロジー・プラットフォームは、当局の規制という脅威が顕在化する中で、依然として用心深く、事故防衛的である。また、テクノロジーの変化は鈍化する兆し見せていない」(“More news organisations will go to the wall as economic headwinds bite. Tech platforms will remain cautious and defensive in the light of regulatory threats. And the pace of technological change shows no sign of slowing down.)と、結論の冒頭で問題提起しています。

そして、次のように述べています。

「人工知能は、よりパーソナルで関連的なニュース・サービスの提供や、記事を見つけ出す新たな手立てや、コンテンツの配信やパッケージ化に効果を出せる可能性がある」(“Artificial Intelligence offers the possibility of more personal and relevant news services, new ways to uncover stories, as well as more efficient ways of packaging and distributing content.)。

「ブロック・チェーンは、最終的には認証や支払いの新たな手立てに道を開くだろう。音声アシスタントは、あらゆるタイプのメディアにとってアクセスの新たな入り口に成り得る」(“The blockchain will ultimately open up new forms of payment and verification, while voice assistants could become a major new gateway for accessing media of all types.)。

「こうした事を鑑み、報道機関は自分達が奉仕するオーディエンスや、何に依拠するのかを今にも増して明らかにする必要があるだろう」(“In this context, news organisations will need to be clearer than ever about what they stand for – and about the audience they are serving.)

「また、報道機関は、ユニークな人的資源と、新たなるテクノロジーを合体させ、自らの可能性を最大化させ、より反響を呼び起こし、今後の持続的ジャーナリズムとせねばならないのである」(“They’ll also need to find ways to combine their unique human resources with this new wave of technologies to maximise their potential to create more engaging and sustainable journalism going forward.”)

なお、ここからレポートの全文が読めます↓


嵐が吹き荒れるけど、それでも歯を食いしばってテクノロジーの積極的取り入れを怠るな、となりましょうか。

日本の新聞業界の現業者の皆様は、どうお考えになるのかな。軽減税率適用で全てが丸く収まると思うなら、大間違いだぞ。何時か、「ジャーナリズムもどき」な存在になってしまうで。