今回のイランの首都テヘラン郊外で発生したウクライナ旅客機の墜落事故ですが、撃墜で間違い無いと断定したのは、ベリングキャット(Bellingcat)というオンライン調査団体でした。

その手法には、ただただ脱帽するばかりです。

Video Apparently Showing Flight PS752 Missile Strike Geolocated to Iranian Suburb(映像は明らかにPS752便がイランの郊外とジオロケーションされた場所でミサイル攻撃を受けた事を示している)

January 9, 2020By Bellingcat Investigation Team(2020年1月9日 ベリングキャット調査チーム)

去る1月9日、テレグラム(訳注:海外で人気のあるメッセージアプリ。LINEみたいなものだと思って下さい)の公式チャンネルに投稿された、明らかに何かが空中で爆発した映像がオンライン上で拡散した。

ニューヨーク・タイムズが、元の映像を録画した人物と接触し、高解像度の映像を入手し、本物だと確認した。以下は、Newsy(訳注:2008年創業のアメリカのニュース・メディア)のジェイク・ゴッディン(Jake Godin)氏による注釈付きのバージョンである。この映像は、事故の短いクリップを際立たせている。なお、元の映像は、こちらに直接アップロードされていた。


(おことわり:どうした訳か、ライブドアブログでは何時も見たいに貼れないので、リンク先を表示させて頂きます)

我々は、この映像の位置特定を行ったところ、イマーム・ホメイニ国際空港の西方郊外にあるパーランド(東経50.906917度、北緯35.489414度)である事が分かった。同空港から、ウクライナ国際航空752便(PS752)がキエフに向かって飛び立っていたのである。

ウクライナ1

(サイトより引用させて頂きました)

カメラは北東部、つまりPS752の飛んでいた軌道に向けられていた。ソースとなる映像が捉えている数多くの要素を、衛星写真から見て取れる。衛星写真にはアパートの一団や照明設備、およびカメラのすぐ左に映り込んでいる建設現場などがあるのが分かる。テラサーバー(Terraserver)が2019年11月15日に撮影したのが、最新の衛星画像となっているのだが(著作権の関係上、本記事では掲載しない)、ビデオに映っているのと同じ位置に建物が建設されている。

ウクライナ2

(サイトより引用させて頂きました)

時間を計測してみると、カメラに爆発音が届くまで10.7秒かかっている。そこから我々は直線距離で計算すると、爆発した位置からカメラまでの距離は約3.6キロである事が分かった。

更に、ピタゴラスの定理で計算し直すと、カメラから事件現場の真下の地上の地点までの距離が約3.3キロである事も突き止めた。

そこで我々は、この映像のジオロケーションを仮説として相互参照し、併せてPS752の飛行軌道を記入してみた(軌道については、このFlightRadar24のHPを参考とした)。また、FlightRadar24の軌道データから、地上の位置を割り出した。

[注釈 : 飛行機の高度の位置について、我々は若干の修正をしている。半径500メートルほどの幅がある(つまり、2.8キロから3.3キロの幅だ)。以下のグラフィックは、それを施したものである。『高さを修正する必要があるのでは』と御教示頂いた複数読者に謝意を表したい]

ウクライナ3

(サイトより引用させて頂きました)

カメラをお持ちだった当該の人物が、何故その時間にビデオ録画していたかは不明である。しかし、2発のミサイルが発射されていたのであれば、2発目を撮ろうと思ったという可能性は有り得るだろう。ニューヨーク・タイムズの報道によれば、カメラをお持ちだった方は、「何かが発射されたような音」(“some sort of shot fired“)を聴いた後に、録画を始めたという。

■ミサイルの破片を巡る、複数の未解明の問題について

映像からミサイルの発射があった位置が特定されたものの、トールM1ミサイルの一部と思しき2枚の写真については、多くのソースから主張があるものの、確認が取れない。ミサイルの軌道の中間で撮影されたのが、この弾頭である。つまり、不発だった可能性があるのだ。似たようなトール・ミサイルの破片が、ウクライナ東部で撮影されているが、どれ1つとして、今回の事件で映り込んでいるものと同じなのは無い。
 
ウクライナ4

ウクライナ5

(サイトより引用させて頂きました)

こうした写真の出元は特定中だ。撮影した人達が公の場に出ていないからである。この物体はパランド(Parand)の住宅街である事が位置特定されているが、爆発した場所の近くではない。岩や縁石の欠け具合などから2枚の写真は、同じ場所で同じ物を収めたものである事が分かっている。

ミサイルの破片を収めた、この2枚の写真の位置特定を進められそうなアイディアなどがあれば、どうかコメント欄か、我々のアカウントまでTweetして頂きたい。

※サイト編集者注釈 :最初に配信した記事では、PS752をPS572と誤記していた。修正したが、URLの誤記部分はそのままとなっている。
拙訳終わり。ね? 良く検証しているでしょ。ここまで書かれたら信じざるを得ません。

ちなみに、ベリングキャットの沿革を記したHPがあったので、そちらも紹介してみましょう。



■ベリングキャットについて

ベリングキャットは、独立した国際的研究者や調査員、市民ジャーナリストらによって構成された集団です。メキシコの麻薬王や人道に対する罪、化学兵器の使用や世界各地の紛争を追跡するべく、オープン・ソースやソーシャル・メディアを活用して調査を行っております。世界の20ヶ国以上からスタッフや貢献なさって下さる方がおられます。それによって、我々は先進的なテクノロジーや法医学研究、ジャーナリズム、捜査、透明性や説明責任などのユニークな分野で活動しているのです。

■我々の成果について

公開されているデータや市民ジャーナリストの分析を活用するという、ベリングキャットの革新的なアプローチは、紛争や犯罪、人権虐待などを報じる上で特に重要です。我々は、こうした問題について、提携先などによる協力を通じて調査を続けて来ました。また、市民ジャーナリストを大勢育てるという我々のトレーニングが、こうした報道を追及していく上での体制作りとなっています。

我々の投稿が最も注目を集めた例として、2018年4月7日のシリアのドゥーマで起きた化学攻撃が挙げられます。アメリカ国防総省の高官として、ウクライナやロシアの反プーチン系メディアでネタ元として引用されてきた人物が架空である事を暴露したのです。また、ベルギー企業によるシリアへの違法なサリン輸出の過程や、シリア陸軍の装甲車両が喪失した事、およびシリアやイラクでの非正規軍によるドローン使用などについても暴露しています。

最近の重大な配信としては、マレーシア航空17便撃墜事件で鍵となる容疑者を特定した記事があります。ロシアの諜報機関の高官だったのです。また、スクリパリ氏毒殺未遂事件(訳注:英国で2018年3月に発生した、ロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリア氏に神経剤が使われ、意識不明となっていた事件)でも、ロシア諜報機関の高官による犯行だと報じています。我々の報道は、世界の幅広いメディアで引用されています。

■我々の報道が与えたインパクトについて

2014年7月、マレーシア航空17便が、ウクライナ東部上空で撃墜されました。事件発生後の2年間をかけて、ベリングキャットでは同便の撃墜に関する重要な情報を見つけ出しました。ロシアの基地からウクライナに向けて発射したミサイルのランチャーを追跡し、発射位置を特定した他、事件に関わった多くの容疑者の割り出しも行いました。ロシア軍が関与している事も突き止めましたが、欧州各国の高官がそれを確認したのは数年後でした。

MI6のダブル・エージェントだったセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリア氏が、2018年3月に英国のセイルズバリーで毒を盛られる事件の発生後、ベリングキャットは3人の容疑者の身元を特定しました。いずれも、ロシア軍諜報機関の高官だったのです。

2018年10月には、我々の研究者が、英国の下院で記者会見を行い、事件の容疑者の内、2人について分かっている事の詳細を説明しました。この事は神経剤による攻撃の背後にモスクワがいるとする英国政府の主張を裏付けました。本件については今なお調査中ですが、メディアや政府関係者など世界中から重大視されています。

ベリングキャットは、シリアの紛争を調べるに当たり、オープン・ソースを活用するという方法を採用し、この方面でリードしてきました。

この作業により、我々は国際刑事裁判所( International Criminal Court=ICC)のテクノロジー諮問機関に関わり、オープン・ソースによる調査が裁判所の仕事に使える事を理解してもらう手助けをしました。

国連総会によってシリアに新設された、同国に於ける戦争犯罪その他の違反行為の可能性について証拠を収集している国際独立公平メカニズム(International Independent and Impartial Mechanism =IIIM)でも、ベリングキャットや、オープン・ソースで得られた材料や成果について、大変興味をお持ちです。

シリアン・アーカイブとの提携を通じて、こうした問題に我々は取り組んでいます。また、説明責任を果たそうと、オープン・ソースの素材をアーカイブする手立てを巡り、関連する多くの問題的に応えようとしている様々な同志的組織や個人によって構築されたネットワークの一部にもなりました。


ベリングキャットはトランペアレンシー・インターナショナル(訳注:腐敗や汚職に取り組む国際的な非政府組織)と提携し、スコティッシュ・リミテッド・パートナーシップ(訳注:ロイズの有限責任法人メンバー)の腐敗ぶりを晒し挙げました。汚職まみれの役人や犯罪組織の人間が、数十億ポンドを英国でマネー・ロンダリングしていたのです。

中でも目立ったのはモルドビアの銀行とアゼリ・ローンドロマットでした。我々の暴露は、英国のガーディアンが特集記事にして下さいました。スコティッシュ・リミテッド・パートナーシップがアゼリ・ローンドロマットと繋がりがあったからです。
 
以後、我々の主席調査員は、英国の下院を何度も訪れ、この問題についてマーガレット・ホッジ準男爵夫人と協議を重ねました。夫人が2017年10月に英国の下院の閉会審議で我々の成果を引き合いにしていました。また、我々の方から夫人の事務所に申し出て、スコティッシュ・リミテッド・パートナーシップが大規模なマネーロンダリングを出来ないよう対策を講じる手伝いをしました。

この他、ベネズエラの反政府運動指導者のオスカー・ペレス氏殺害事件で、フォレンジック・アーキテクチャー(訳注:ロンドン大学に本部がある学際的組織。世界中の国家による暴力行為や人権抑圧について調査している)と提携し、大がかりな調査の結果を配信しております。この調査は、ベネズエラ内外での主要メディアの報道に繋がった他、ニューヨーク・タイムズの論説欄でも取りあげられました。これらはまた、ベリングキャットがオープン・ソースによる証拠の更なる開示を呼びかける機会を与えてくれる結果となりました。更には、数多くの組織がベリングキャットと連絡を取り、本件の調査のアシスタントや追加情報を得る事にもなりました。

■提携の必要性について

分散型コラボレーションモデルこそが、ベリングキャットの価値ある提案の鍵となっています。 世界中からのキュレーションされた知見と、オープン・ソースのデータ分析を通じて、ベリングキャットは世界の様々な問題に光を当てています。

ドナーと、草の根サポーターによる献身的なグループを活用し、ベリングキャットの顕著な成功を収めてきました。この子尾は、我々のアプローチが何故必要なのか、そしてどう関連していくかを物語っています。すなわち、我々がネットワークの影響をマネジメントしながら拡大させ、そのインパクトを見定めるという事こそが我々のアプローチであり、発展や持続に繋がるのです。かくして、我々の仕事が重大な岐路を迎える中、皆様のサポートと提携を歓迎いたします。

連絡先などについては、こちらを御参照下さい。

■資金援助先並びに提携先について

ベリングキャットは、以下の組織から現在認証を受けております。
この他、オープン・インフォメーション・パートナーシップ(訳注:欧州の報道機関やフリー・ジャーナリストらで構成される、独立系のファクト・チェックを行うNGO団体)と提携していますし、世界調査報道ジャーナリズム・ネットワーク(Global Investigative Journalism Network=GIJN)の一部でもあります。我々のイエメンのプロジェクトを巡ってグローバル・リーガル・アクション・ネットワークとも提携しています。

現在、ベリングキャットの予算の約35%が、世界各国で年中行われているワークショップからの調達です。ワークショップの件について詳しく知りたい方は、こちらを御参照下さい。また、この件ではメーリングリストも構築しておりますので、そちらにサインアップなさる手もあります。

■今までの受賞歴について

発足からこの方、調査チームは数多くの賞に輝いてきました。ベリングキャット単体での受賞の他に、提携しての調査に対する受賞もあります。2015年にはハンス・ヨアヒム・フリードリヒス賞(訳注:1995年に亡くなったドイツのジャーナリスト、ハンス・ヨアヒム・フリードリヒス氏を偲んで設立された賞)を受賞していますし、2018年にはアース・エレクトロニカ賞を、そして2019年には欧州調査報道プレス賞とロンドンプレスクラブのデジタル・ジャーナリズム部門で、それぞれ受賞しています。

最近では、BBCアフリカ・アイの調査報道「殺人の解剖学」でコラボし、王立テレビ協会賞やピーボディー賞などを受賞しています。

■我々の組織について

※スタッフ

18人のフルタイム従業員と、世界各国から30人以上のコントリビューターを抱えております。マネジメントするのは、上席ディレクターとビジネス・ディレクター、トレーニング・調査担当責任者、プロジェクト・マネジャー育成責任者の4人によって、こうしたスタッフを監督しております。

※役員

エリオット・ヒギンズ(Eliot Higgins)=会長兼上席ディレクター

デシスラバ・ランゲダ・ミアノヴァ(Dessislava Lange-Damianova)=資金担当兼ビジネス・ディレクター (treasurer/business director)

アリック・トレラー(Aric Toler)=秘書兼 トレーニング・ディレクター

役員陣は、日々の財団のマネジメントの責任を負います。

※監査委員会

ポール・ラドゥ(Paul Radu)=委員長

ジョセフ・ピーラー(Joseph Peeraer)=委員

マリア・レンスケ・シェイク(Maria Renske Schaake)=委員。2019年10月15日に新任

監査委員会は、財団のポリシーの定義ならびに役員陣の仕事を監督する責任を負います。

■総合案内

スティッチング・ベリングキャットは2018年7月11日に登録されました。

住所はVijzelstraat 20, 1071HK Amsterdam

URLはwww. bellingcat.com

連作先はcontact@bellingcat.com

KvKナンバー(訳注:オランダ商工会議所を指す。同国内で活動する企業は商工会議所に年次財務諸表を提出する事が義務づけられています)は72136030。

RSINナンバー(訳注: オランダ商工会議所が、他国との税関業務などで使用する)は859000515。

消費税ナンバーはNL859000515B01。

■ポリシー・プランについて

現在のポリシー・プランは、こちらを御参照下さい。

監査委員会・取締役の役員会報酬について

監査委員ならびに取締役は、役員会の報酬を受けません。例外は、年2回オランダで行われる会合の交通費だけです。

■ポリシー策定担当ディレクターや従業員の報酬について

スティッチング・ベリングキャットの従業員やスタッフは、NGO部門の給与水準としては真ん中ぐらいです。上席ディレクターの年間報酬は11万8000ユーロで、これには年金や休日出勤手当などが含まれます。経営担当ディレクターやマネジャーの年間報酬は9万ユーロ。これには年金や休日出勤手当などが含まれます。両方とも、その規模はオランダの慈善財団の枠組みが定める上限の15万8000ユーロを下回っています。

拙訳終わり。長かった。そして、ようけようけ注釈が付けんとアカンかった(苦笑)。でも、勉強になりました。

こういう団体が、今日も世界中で調査を重ね、悪行を晒し挙げているのですね。この報道で、亡くなられた方々の御魂が浮かばれる事を祈って止みません。