やはり、時代はアプリやな。BBCがアプリを強化していくと、局のトップが表明しました。あわせて、ロンドンからサルフォードという場所での業務に軸足を移していくとの方針を打ち出しています。
pressgazette.co.ukが報じています(2020年1月15日付け)。

BBC会長のトニー・ホール(Tony Hall)卿が、新年のスタッフ向けの演説の中で表明しています。

それによると、BBCの少なくとも3分の2を、2027年までにロンドンの外に移すとしています。場所は、英国北部のグレーター・マンチェスターのサルフォードという場所。ここにメディア・シティ・ハブというのが既にあるそうで、そこから「更なるジャーナリズム」(“much more journalism”)を目指すとの事です。

このハブでは現在BBCのブレックファストとラジオ5ライブという番組を配信しています。一方、BBCのチームの半数がロンドンで過ごしているのが現状だそうです。

ホール卿は、サルフォードからBBCの「多くの」(“a lot”)デジタル配信を行っていたいとしています。また、新たに作るBBCサウンズというアプリの「中核」(“the heart”)にしていくとの方針を打ち出しています。その為のキュレーション・チームも数週間以内に異動させる予定だとの事です。

また、ロンドン以外でのBBCの展開を行うに当たり、地域ラジオは「重要な一部」(“an important part”)であり、「商業メディアが撤退する中、かつてなく問題となっている」(“matters more now than ever as commercial media retreats”)と考えています。

さて、今回の演説はロンドンでは無く、新たに作ったカーディフから行っています。席上、来年からはBBCニュースのオンライン配信に「本腰を入れる」(“real push”)と発言しています。特に、モバイル・ユーザーを重視。「より際立った、より有益な、より日々の生活に関連づけた」(“more distinctive, more useful and relevant to more users every day”)配信を行っていきたいとしています。

その一環として、BBCニュースのアプリを「完全に刷新する」(“complete reinvention”)とまで言い切りました。「より視覚に訴える、直感的で使いやすい」(“more visual, more intuitive, easier to use”)ようにしていくのですって。

「我々のジャーナリズムや知見、そして広がりを示してくれるアプリにしたい。同時に、ログインした瞬間から、我々一人一人に向けたパーソナライズ化がますます深まっていると分かるようなものにもしたい」(“An app that will showcase the best of our journalism, our expertise and breadth, an app that signs you in from the start and is increasingly personalised for each one of us,”)と、続けています。

この他、番組編成を巡って明言は避けつつも、興味深い仄めかしをしています。局の時事問題報道ディレクターとして名高いフラン・アンスワース(Fran Unsworth)氏から、「ストーリー主導」(“story-led”)の新たなる報道について今月中に詳細が語られるだろうと発言しています。

以下、御本人の意気込みの抜粋。

「我々が、どう取材していくかでは無く、何を取材するかというのも重視したい。視聴者は、『今日何が起きたのか』だけを知りたいのではないと我々に告げている。騒ぎの向こうを見やった説明や分析や説明を望んでいるのだ。問題を特定し、解決策は何かを知りたがっているのだ」(“It’s not just about how we cover news, it’s about what we cover. Our audiences tell us that they don’t just want to know ‘what is happening today’. They want explanation and analysis, to look beyond the noise – identify the issues – and explore the solutions.)。

「だからこそ、2020年は1つの大きなテーマや、ヘッドラインや即応性を超えた事に取り組みたい」(“That’s why 2020 will see a major focus on big themes, the things that matter beyond the headlines and the immediate.)。

「今の我々にとっての試練となっている気候変動や、シリコンバレーや深センを問わず、世界のテクノロジー大手がどうやってAIによって我々の生活を変えていくかという問題、高齢化という試練、更には万人にとって上手く作用する経済とは何かという問題が、そうしたテーマだ」(“Climate change – the challenge of our era, the global technology giants whether they are from Silicon Valley or Shenzhen, how will AI change our lives, the challenges of an ageing population, how can the economy work for everyone.)

「こうした大きな問題は、時として遠くて『他人事』になりがちだが、一人一人にとっての問題なのだ」(“These are major issues that can sometimes sound distant and ‘over there’. But they matter to every individual.)。

「洪水や、ポケットに入れているスマート・フォン、諸君らのご両親の介護の問題、諸君らの健康問題、労働の問題。グローバルとローカルが一体となって押し寄せ繋がりを深める中、その幅を示せる唯一の報道機関がBBCなのだ」(“Flooding, the smart phone in your pocket, your parent in a care home, your health, the world of work. Global and local brought together and connected up in a way only an organisation with the breadth of the BBC can do.”)
なお、BBCでは特別番組やデジタル取材、イベントを16日から手がけるとの事です。11月には英国のグラスゴーで国連の気候問題についての会議が行われるので、そこに繋がる盛り上げとしたいのだそうです。

また、女王から法人として与えられている更新制の勅許(ロイヤル・チャーターと言います)が切れる2027年末までは、BBCの運営を環境に優しく行いたいと望んでいるそうです。

「私も諸君も知っている事だが、気候変動の試練を際立たせる報道機関としてBBC以上の存在は無い」(“I know, we all know, that nobody has done more than the BBC to highlight the challenges of climate change,”)とし「だが、気候変動の深刻さや切迫性を反映させた、我々の事業の在り方について、もっと確実に行う策がもっとあると考えている」(“But I believe there’s more we can do to ensure the way we run our business reflects the seriousness and urgency of the climate challenge.”)と続けています。

ちなみに、英国のメディアでは、ガーディアン・メディア・グループだけが、二酸化炭素排出ゼロを2030年までに達成するという具体目標を掲げています。

そうした中、ホール卿は、男女や人種、障害者などを平等に扱う番組作りをしていくという50:50プロジェクトを拡大していく事も表明しています。

英国では、非白人の事をBAMEと称します。そのBAMEの人達を扱った報道を確実に15%やるとしています。また、障害者(体だけでなく、認知力や感覚面での障害を持った人も含めます)については12%という枠確保をするそうです。

かなり具体的な数値を盛り込んでの決意表明ですね。考えてみれば、インターネット時代にあって、わざわざ首都にデンと構えて報道をする必要は無い。日本の報道メディアも見習うべきでは。特にテレビ局!