「備えあれば憂い無し」。この諺ってホンマそうやなと思わざるを得ません。今回の新型ウィルスの大流行で、日本をはじめ、各国や各地域でマスクの入手が困難となっているのは皆さんも御存知でしょう。香港では長い行列が出来るほどになっているそうですが、その一方でシンガポールは備蓄していたマスク500万枚を配り、国民の間にパニックが起きていないのですって。
bloomberg.comが報じています(2020年2月6日午前6時投稿)。

終息の兆しを全く見せない中、普段なら安値で買えるマスクの値段がアジアで高騰し、政治的な問題にまで発展しています。

そんな中、選挙を間近に控えたシンガポールでは、公務員約1500人を使って500万枚ものマスクを配布する一方、異なるプラットフォームで他言語による公衆衛生キャンペーンを展開しているのだそうです。

対照的なのが香港。林鄭月娥・香港特別行政区行政長官に対して政治家からの非難が集中しています。供給で失敗したばかりでなく、その効果について述べる際にも下手を打ち、結果として流行の初期段階でのマスクの使用に関して一貫性を欠く言動となってしまったからです。

これについて、本人は5日に公務員がマスクをするのを制限した事で「混乱が生じた」(“confusion caused”)と謝罪していました。また、香港では世界からマスクを調達しようとしているが、四苦八苦している事も明らかにし、一般大衆に使用を控えるよう呼びかけていたそうです。

「香港政府としては、医療従事者へのマスク供給を最優先としたい。それが私の言いたかった事だった」(“What I wanted to say is that government should put the mask supply to medical workers as a priority,”)と本人。記者会見の席上でもマスク着用を止めました。「故に我々は、公的な行事での公務員がマスクを着用する是非を評価する必要がある」(“Therefore we need to evaluate the need of mask use by officials in public events.”)と続けていました。

矛盾が生じているのはマスクだけではありません。本土との境界線を巡る政策や、学校の休校措置や旅行の制限などでも混乱が生じています。今回の場合、香港でも3人が死んでいます。

「感染の対応には国際的な強調が重要だと言うのが、今回浮き彫りとなっただけだ」(“This only highlights the importance of international coordination in response to the outbreak,”)と、アメリカのニュージャージー州のセトン・ホール大学世界健康問題研究所のディレクターを務めるYanzhong Huang氏は指摘しています。

「各国政府は、1つだけでなく2つの流行に対処出来る能力を持つべきだ」(“Governments should have a surge capacity that can deal with not just one but two outbreaks,”)と続けた上で「皆さんにはマスクやゴーグル、アルコールなどの供給が必要だ。政府は備蓄をするべきだ」(“You need a supply of things like face masks, goggles, even alcohol -- they should stockpile these things.”)としています。

ちなみに、世界保健機関(WHO)によりますと、外科用手術マスクは、健康を保つには限られた効果しか無いそうです。むしろ、丹念な手洗いの方が遙かに効果的だと推奨しています。また、介護士や医療従事者や呼吸器系疾患にかかってしまった人にはマスクをしなさいと薦めています。

「呼吸器系疾患になっていない一般人が医療用マスクをする必要は無い。病にかかっていない人を守るに当たっての有効性が証拠として存在しないからだ」(“A medical mask is not required for members of the general public who do not have respiratory symptoms, as no evidence is available on its usefulness to protect non-sick persons,”)とWHOのマニラ駐在コミュニケーション・マネジャーのオリビア・ロー・レイビー(Olivia Lawe Davies)氏。「だが、幾つかの国では、それぞれの文化的な習慣により、マスクが必要になる場合がある」(“However, masks might be worn in some countries according to local cultural habits.”)。

2003年にSARSが流行し、健康な人がバタバタと倒れた国々では、こうしたマスク着用は必須とはなっていない模様だと記事では指摘しています。一方、日本や中国などのアジア諸国では、マスクの着用により感染が防止出来ると考えられています。ちなみに、アメリカではビタミンCやエキナシアという薬草が重宝されているそうです。

香港の場合、別の事情もあります。昨年の抗議デモの際、参加者が身元を特定されないようにマスク姿となっていた事から、当局が着用を禁じようとしていたからです。

そうした経緯があった中、先週からマスクの買いだめや価格の高騰、偽マスクの横行などが、香港のソーシャル・メディアや主要メディアの間で取りあげられるようになっていました。

親中派の議員であるEunice Yung氏は、「子供や妊婦を含む市民がマスクを求め続けている」(“Citizens have been very keen on the demand for masks, including children and pregnant women,”)とした上で「数百人もの人がドラッグストアやスーパーマーケットの外にまで列を作ってマスクを入手しようとしていたニュースを目にしている」(“We can see on the news that hundreds have had to queue up for masks outside (drugstores) and supermarkets.”)と続けています。

アジアの他の地域では、こうしたマスクの配布は秩序正しく行われているとの報道があります。香港と同様の半自治体制を敷くマカオでは、1月24日から2000万枚のマスクを配布しています。ただし、10日毎で1回10枚まで。公的な交通機関を利用する際には着用が義務づけられています。対象となるのはIDカードを持った67万人だそうです。

シンガポールでは、SARS危機以降、医療用マスクの備蓄に腐心してきました。どこで購入可能かをオンライン上で教えてくれるようにもしているそうです。当局によると供給は十分だとしていますが、厚生省では自国民に対して、健康なら使わないようにと推奨しているのですって。

Gan Kim Yong厚生相は「国によっては事情が異なったり、各国政府では考慮せねばならない事柄があるのだと理解する必要がある」(“We will have to appreciate that different governments have different considerations and their local situations also vary from country to country,”)と、4日に語っています。

そんなシンガポールでは入国制限政策を強化しています。7日以降は中国からの入国を停止していますし、2月1日からは中国本土を旅行した人のトランジットを拒否しています。
政治的な利害はどこでも高いが、選挙が近い国での影響は、より直接的なものとなろう。現在アジアでもっとも影響を受けるのは、凝り固まった体制の国だ。そう、中国である。マスクが地域によって購入出来なかったりするが、一党独裁国家として異論を抑圧しているのだ。
香港では、数ヶ月に及ぶ民主化運動のせいで、林鄭月娥長官の支持率は既にボロボロです。本人は中国との境界線を封鎖せよという各方面からの要求に抵抗し続け、深セン湾の港と港珠澳大橋、空港など人の行き交いが多い3箇所を今なお開けたままにしています。これに対し、医療従事者は抗議のストを起こしていますし、マスクは店の棚から無くなり続けているのだそうです。

なお、香港の貿易会社が、1人2箱までと限定したのに、衣料用マスク1万1000個が2日間販売する事を2月4日に明らかにしています。お値段80香港ドル。米ドルで10ドル30セントだそうです。これに数千人が列を作り、中には椅子やテントまで用意する人までいたとの事です。

行列に並んでいたウォンと名乗る男性は、香港ナウテレビの取材に対し、「林鄭月娥のせいで、70代や80代の人まで徹夜で並んでいるんだぞ」(“Thanks to Carrie Lam, these elderly people in their 70s and 80s are queuing up overnight for masks,”)と怒り心頭。「マスクは何処に行ったんだよ」(“Where have the masks gone?”)と、憤懣やるかたなしだったそうです。

何だか、シンガポールGJ!というより、香港のトホホぶりにウェイトを置いた記事ですね。ともあれ、シンガポールの組織的な対応の素晴らしさと、香港の反面教師ぶりに、我々は多くを学ばねばなりますまい。

・・・あ、もう遅いか。