終息どころか、まだまだ続きそうな中国の新型ウィルスの流行。これを巡って、アメリカの軍事情報サイトが「人民解放軍の動きが鈍いのは何故だ」と指摘しています。

確かに、テレビ報道とかを見ていても、軍人の姿が映り込んでいませんよね。
Defense Oneというサイトの報道です(2020年2月6日付け)。

As Coronavirus Spreads, China’s Military Is Largely MIA(コロナウィルスが蔓延しているのに、中国軍はまるで軍そのものが行方不明になったみたいだ)

FEBRUARY 6, 2020

The PLA’s anemic participation is odd given its past performance, planning, and pronouncements(人民解放軍の存在感が薄い対処は、過去の実績や計画、更には布告などを考えると奇妙だ)

2019年、新たなコロナウィルスの流行が本格化するにつれ、中国政府が途轍も無い対応策を次々と打ち出している。武漢地域では約5000万人を効果的に隔離しているほどだ。だが、同国政府が行動を起こしているというのに(そして、どこかしら遅れている感じなのだが)、中国軍という資源の動員に制約が科されているのには注目したい。これまで中国軍はパンデミックとの戦いに於いて重要な役割を果たしてきたし、ここ数年は北京政府も軍の能力誇示の宣伝に四苦八苦しているというなのに。

現在、中国全土の病院で、然るべき供給がされていないとする悲鳴を上げながらの投稿が、ソーシャル・メディア上で続いている。なのに、人民解放軍の存在感が薄い対応は、これまで喧伝されてきた幾つかの能力に疑問を持たせるようになっている。即ち、強力な補給と、不慮の事態に対する巨大な軍民による対応展開力が、そうした能力に当たる。

パンデミックは、一般の市民社会の営みを困難にさせる。そして、大がかりな対応が即座に求められる。故に各国政府は軍を動員し、健康維持や食糧供給、果ては建設や治安確保まで行うものである。

例えば、2014年にアフリカでエボラ出血熱が流行した際、米軍は第101空挺師団による4000人の派兵を行った。地域の内外の医療機関を助け、支援物資の輸送や配給に当たっただけでなく、ベッド数がそれぞれ100床ある病院を17棟も建設したほどである。

現在、アメリカ軍はコロナウィルスが発生した場所からやってきた約1000人に対し、隔離施設の提供を計画していると発表している。

一方、人民解放軍の医療部隊が武漢を最初に訪れたのは、ウィルスが広まり始めて1ヶ月近くも経った1月24日になってからである。その規模も、どちらかと言えば小さなものだった。上海や重慶、西安などから派兵された3つの医療部隊の総勢は450人だったからだ。その後も、大がかりな展開は無かった。物資の供給や建設など、多様なニーズがあったのに、軍によって病院が大急ぎで作られているという虚偽の主張すらしていたのだ。


武漢には人民解放軍の大きな基地があり、不測の事態に対応出来る事を思えば、軍の対応の欠如は更なる憶測を生む事となっている。そうした基地の1つに、联合保障中心がある。人民解放軍の補給支援部隊の中心的存在であり、物資の備蓄庫のネットワークなのだ。2019年の中国国防白書によると、人民解放軍の合同補給支援部隊は、「倉庫や備蓄庫、医療部隊や輸送部隊、経理部隊、燃料部隊、工兵部隊、予備物資の管理部隊や調達部隊などから編成される」(“comprises the support forces for inventory and warehousing, medical services, transport, force projection, oil pipelines, engineering and construction management, reserve assets management, and procurement.”)とされている。

そのタイミングも注目されて然るべきだろう。武漢に基地があり、しかも理屈の上では湖北省に部隊が出入り出来る能力があるというのに、人民解放軍の合同補給支援部隊が「対応および配置体制」(“response and coordination mechanism”)を完了したのは1月26日になってからだった。これは、ウィルスが流行し始めてから約1ヶ月後だったし、当局が公式に認めてから15日後に当たる。その時ですら、物資の補給や支援物資の配送や対処のための病院の展開などでは無く、通信システムの確立や各種の作業への資金援助というのが「体制」だったとしていたのだ。

公開されている情報を見る限り、ここ1週間でも軍の役割は喧伝されてはいるものの、実際には限定されている事が分かる。
  • 2月2日: 湖北省に配備されている人民解放軍が武漢への補給支援を開始。街中の民間の補給拠点に、日々必要な物資を輸送し始める。
  • 2月4日: 人民解放軍の医療チームが火神山医院の日常業務を引き継ぎ、患者の受け入れや治療をし始める。
  • 2月4日: 人民解放軍の機関誌、解放軍報が、合同補給支援部隊が医療物資の購入チャンネル拡大を模索していると報道。
  • 2月4日: 軍の輸送車両19両と、60の部隊が、武漢の武昌区の運動スタジアムに設置された臨時病院に物資の輸送を始める。
これ以外に大がかりな動員はされていない模様だ。ここ数年、中国ではY-20戦略輸送機を大量生産していた。これにより、中国内外に展開が出来る能力が格段に上がったとしてきたのだが、Y-20戦略輸送機を使っての救援活動は今の所は実施されていない。これも注目に値する。

また、人民解放軍は、中国最大の輸送配達企業と戦略協定を結び、緊急時に使用出来るようにしている。例えば、2018年12月には、過去最大の補給演習が行われ、こうした企業の飛行機やトラックを大量に徴用していたほどだ。なのに、今回のコロナウィルス流行の対応の一環として、協定が活用されている節が見当たらない。

各都市の緊急対応システムもまた、試練にさらされている。中国全土の多くの都市では、大規模な民間防衛訓練や危機対処訓練が毎年行われている。例えば、重慶や上海、広東などでは、警察や民兵、民間組織の動員を含む危機対処や空襲のシミュレーション訓練が実施されているのだ。こうした訓練には、人民解放軍が協力している事が多い。これらは、中国の戦争や危機対処の素早さを宣伝する事例に使われてきたのだが、いざ実際の危機が勃発している今、何故か活用されていないのである。
 
更に警戒すべき事実がある。2019年4月、武漢で行われた演習の備えとして、湖北省の保健委員会が中東呼吸器症候群(MERS)の発生をシミュレートしていたのだ。武漢市は今回の事態に備えるか、少なくとも対応の為の配置でやるべき事があった筈だ。しかし、武漢市や湖北省政府は、人民解放軍その他との協力態勢を整えなかった。その事は、情報を交換するチャンネルや、然るべき態勢が不全状態になっているのを見れば明らかだ。

皮肉な事に、中国軍は未だに大がかりな動員をされていない一方で、その穴を埋めているのは民間部門だ。医療物資の供給や治療サービスのギャップに直面し、多くの個人が必要な支援物資を寄付している事例が数多くあるからだ。イー・コマース大手のアリババは10億人民元(米ドルで1億4400万ドルに相当)の特別ファンドを設立し、医療物資を毎日購入し、武漢や湖北省の病院に送っている。また、国内の関連施設を総動員させて、医薬品の生産と調達を調整する為の詳細な計画を作成しているし、武漢の2つの病院で数百単位の朝食、昼食、夕食を無料で提供しているのである。
拙訳終わり。何だか、ガダルカナルの兵力逐次投入を想起させますね。何でこんなに鈍いのか。習近平は、軍をコントロール出来ていないのか。或いは、張り子のトラだったのか。謎だ。