先ほどのマクラーチ破産保護申請の続報。同社のワシントン支社自らが「負の遺産となっている印刷コストをバッサリ切って、デジタル化を加速します」と宣言してました。

McClatchy files bankruptcy to shed costs of print legacy and speed shift to digital(負の遺産となっている印刷コストに大鉈を振るい、デジタルへの移行を加速させるため、マクラーチでは破産保護申請を行いました)

BY KEVIN G. HALL

FEBRUARY 13, 2020 05:24 AM

マクラーチ・コーポレーションは13日に破産保護申請を行いました。アメリカ第二の地域報道企業の家族支配を終わらせ、独立したジャーナリズムに支援を行うと表明している債権者に、経営を委ねる為の措置です。

連邦破産法第11条の申請により、マクラーチは債務を整理いたします。年金債務の大半もそうしたく願っております。連邦破産裁判所に提出した計画の概要を述べます。この計画により債務の55%が圧縮され、報道機関としてデジタルによる将来設計を試みる事が可能となります。

裁判所の認可が下りれば、新しいオーナー候補は、チャットナム・アセット・マネジメントLLCというヘッジファンドによって主導されるでしょう。マクラーチは株式非公開企業として経営される事になります。上場している700万以上もの株式は、今までのオーナーが保有するものも含め、消却される予定です。

弊社の会長であるケビン・マクラーチは、「163年の一族支配を終えた、悲しい歴史的な1日となったのは明らかだが、必要な不可欠な地域報道や情報を配信していく事に関わり続ける強力な事業会社であり続けるだろう」(“While this is obviously a sad milestone after 163 years of family control, McClatchy remains a strong operating company and committed to essential local news and information,”)と語っております。163年前とは、カリフォルニアでゴールド・ラッシュがあった頃に遡ります。 「破産保護申請を回避しようとしたものの、現職の社員1人に対して10人の退職者がいる格好となる弊社の75歳からの年金支給計画の規模が、もはや今の経済の時代にそぐわない事に疑いの余地が無かった」(“While we tried hard to avoid this step, there’s no question that the scale of our 75-year-old pension plan – with 10 pensioners for every single active employee – is a reflection of another economic era.”)とマクラーチは続けております。

この申請により、14州で発行するマクラーチ傘下の新聞社の従業員に対して速やかな影響が出る事はありません。傘下の新聞には、カンザス・シティ・スターやマイアミ・ヘラルド、シャルロッテ・オブザーバー、フォートワース・スター・テレグラムや、サクラメント・ビーなどがあります。弊社では、エンシナ・ビジネス・クレジット・ユニオンから新規に5000万ドルの融資を受けながら、破産保護申請中の経営を確たるものとしていきます。また、今後に向けたバランス・シートを作り出せる事を願っております。

弊社では、過去数ヶ月、今回の申請を回避しようと努力を重ねて参りました。破産手続きに移行する前に、年金などの債務に対処するために、幾つもの法的な手立てを研究いたしました。

昨年後半からは、債権者との交渉を強化しておりました。ところが、数週間前に議会が土壇場になって、年金控除措置の対象からマクラーチを除外してしまいました。これにより、破産保護申請もしくは年金要件の充当、債務者への支払いをせざるを得なくなりました。

また、ニューヨークの破産保護裁判所南部地区に提出した文書には、サクラメントに本社を置く弊社が、昨年2度に渡って「事業に活路を与える」(“that would have delevered the business.”)別個の戦略的取引で条件付きの合意に至っていた事が記載されていました。

しかし、いずれの合意に於いても「マクラーチにとって融資条件は受け入れがたいし、実現する事は無いだろう」(“McClatchy was unable to come to agreeable terms on financing, leaving the transactions unexecutable.”)とされていました。この他、複数の業界の専門家が、シカゴ・トリビューンなどを傘下に置くトリビューン・コーポレーションが、マクラーチとの合併を協議していると報じていました。

「公益の為に独立したローカル・ジャーナリズムにとって重要なモーメントとなる中、より強い資本構造が、弊社が奉仕するコミュニティにとって必要不可欠な力強い地域報道を続け、デジタルに移行する為の戦略を追究する事を可能にする」(“In this important moment for independent local journalism in the public interest, a stronger capital structure will enable McClatchy to continue to pursue our strategy of digital transformation and continue to produce strong local journalism essential to the communities we serve,”)と、マクラーチの執行役員であるクレイグ・フォアマンは語っています。

マクラーチの破産保護申請は、新聞業界が事業や収益構造の根本的な変化に直面しているという陰鬱な現実を浮き彫りにしました。過去15年間で、2000以上もの新聞が休刊していると、シンクタンクのブルッキンズ研究所が報告しています。

新聞社のビジネスモデルの変化以外の問題もあります。それは、巨大な年金債務を負う老舗企業が、自社のキャッシュ・フローや利益を喰われているという問題です。マクラーチの年金は、現職の従業員や受給対象者など2万4500人を対象としています。多くは退職した印刷や輸送部門に従業していました。これを今の2800人未満の現在の従業員で支えているのです。

2006年から18年までの間に、マクラーチの広告収入は80%も下落していました。一方、日刊の発行部数は58.6%減っていました。社としては、過去3年の間に、紙媒体とデジタルの広告を半々にするべく奮闘して参りましたが、これによる利益によっても、債務や年金などを賄う事は不可能でした。

連邦破産法第11条の申請により、マクラーチは老舗新聞社が辿ったのと似たような道を歩む事となるでしょう。トリビューン・コーポレーションやリー・コーポレーション、更には最近ガネットを買収したニュー・メディア/ゲートハウスなどの新聞チェーンは、破産からの再建という道のりを先行する企業であります。

マクラーチの新しいオーナーは、これらの企業と同じ「強烈な逆風」(“fundamental headwinds”)に直面する事となるでしょう。投資家向けのマーケット・インテリジェンスや分析を行うISS EVA社のリサーチ・ディレクターを務めるアンソニー・カンパーニャ氏によると、その逆風とは、更なる休刊や統合となるのだそうです。

「紙媒体を読む人が激減する時代にあって、規模の経済という問題が、今後起きるべくして起きるだろう」(“There’s probably economies of scale that have to happen in an era where much less people are reading print media,”)と、カンパーニャ氏は続けています。

13日早々に共同声明を出したチャットナムは、公益に於ける地域報道という弊社のミッションの支援を行う事を表明しています。

「2009年以来、マクラーチを支えてきた投資企業である弊社は、編集局の雇用や独立したジャーナリズムの維持に関わり続けて参りました。全てのステークホルダーにとって最良の利益を生むためにマクラーチと歩みを共に行う事を楽しみにしております」(“As a supportive investor in McClatchy since 2009, Chatham is committed to preserving independent journalism and newsroom jobs. We look forward to working with the company in the best interests of all stakeholders,”)と、チャットナムは語っています。

■合意が行われた分野について

弊社と弊社の債権者は、完全に事前に決められた破産には至らず、法的に争われる余地を残しております。 しかし、主要な問題については実質的な合意に達しました。

そうした合意の中には、チャットナムが率いる主要な債権者に会社の支配権を委ねる債務の株式化があります。これは、163年も続いたマクラーチ家の支配に幕が下りる事を意味します。

チャットナムは、ニュージャージーに本社を置くヘッジファンドで、14ものクライアントの代理となって44億ドル以上の資産を運用していると、昨年報じられています。ヘッジファンドとして、富豪や大規模な機関投資家からの資金をプールし、債務問題に直面している企業への投資などを行っています。

破産保護申請書で言及されている、新たな会社の所有権を握る他の債権者には、オメガ・アドバイザーズのCEOであり、有名な大富豪の投資家であるレオン・G・クーパーマン氏や、ニューヨークに本社があるブリゲード・キャピタル・マネジメント社などがあります。ブリゲード社も、重度の債務問題等を抱える企業に特化したヘッジファンドです。

破産保護申請時のマクラーチの未払いの債務は、7億300万ドルを超していました。また、申請の直接的な原因となった未払いの年金債務は、昨年7月の時点で8億500万ドルを超していたと推計されています。

2011年以降、必要とされる額を超える2億7500万ドルを超す年金を弊社では支払ってきました。 債権者および年金債務の支払いに当たっては、自社ビルその他の資産の売却で得られた金を当てがっています。

債権者との取引合意により、弊社で最も保護された「先取特権」(“first lien”)債務の保有者は、同じ満期日で現在の9の年利から10%に増加した2億1800万ドル相当の新規債務と交換されます。また、第2第3のレベルの債務を保有する関係者には、今後は非公開企業となるマクラーチのエクィティ97%と交換されます。

弊社では、互いにとって速やかな有益な解決を行いたいので、債権者との残りの交渉を監督する調停者を任命して欲しいと裁判所に求めました。

裁判所に提出された弊社の再建案には、年金給付保証公社が適格年金制度の管理を引き継ぐと書かれています。 再建案の一環として、今後10年間で年間330万ドルを連邦政府に支払う事を弊社は約束しました。 代理を担う企業は、破産によって創業される新会社の利益の最大3パーセントを取得します。 なお、年金給付保証公社は提案に対して事前に同意しませんでした。

■ナロー・ミス

弊社が破産に至る転換点は、議会から年金控除を受けられなかった事にあります。

昨年後半、土壇場になって合意が覆されました。党派政治の最新の犠牲者となったのです。

12月に、議会が「保障法」(Secure Act)を成立させました。同法は、様々な税務問題で責務を負う法的根拠となっております。その1つとして、2017年12月にトランプ大統領が署名した税務改革の法務上の間違いの修正が挙げられます。

法成立前に、その定める範囲について論じられていた頃、弊社とサンディエゴ・ユニオン・トリビューンなどと交渉してまいりました。その交渉の中で、経営に苦しむ地域の新聞が年金へのコミットメントをすると表明するに当たり、更なる時間を確保出来る事を法案に盛り込んで欲しいと求めていました。

これは法案に盛り込まれ、現在の年金債務問題に完全に対処するのに小さな新聞社に30年の猶予を与え、債権者と破産という二択の重荷を軽減する事となりました。

弊社は、この駆け引きに遅れ、「ヘイル・マリー」(訳注:アメフット用語。ゲーム終盤で負けている側が、一か八かで投げるロングパス)を試みました。

社として、保有する新聞の発行地域を選挙区にしていたり、指導的な立場を持つ数人の議員に働きかけました。

傘下の約12社に対して、年金の資金要件を満たす期間引き延ばす代償として、年利8%以上とするとの条件を提示していました。

今のワシントンで良く見られる事ですが、この問題に関しても党派政治が全面展開されていました。

年金控除についても、ユタ州選出のマイク・リー上院議員(共和党)が、即座に反対しました。リー議員は、年金支払い問題の延長について反対する事を公言していました。11月8日付けの声明で、延長行為は「こうした新聞への特別な救済」(“special interest bailout to these newspapers.”)になってしまうと主張していました。 同時に、不足を補う事とは、まずならないだろうとも語っていました。

年金政策問題を専門とし、マクラーチの交渉を代理として行っていたのは、デービス&ハーマン法律事務所のパートナーであるケント・A・メイソン氏でした。メイソン氏は、この提案は、弊社が現在の窮境を乗り切る事を可能にする救済であるとしていました。

しかしながら、破産保護申請により、弊社は年金給付保証公社にすがらねばならなくなったのです。

「1つの企業に控除抜きで支払い義務の猶予時間を与えるとしていた財務上の支援によって防げた筈なのに、こうした実質的な救済を行う事となってしまった」(“That is an actual bailout that could have been prevented by funding relief, which simply gives a company more time to pay its own obligations without a bailout,”)と、メイソン氏は指摘しています。

下院議長のナンシー・ペロシ議員(民主党。カリフォルニア州選出)や、上院の民主党指導者であるチャールズ・シューマー議員(ニューヨーク州選出)は、この問題について積極的に動いて下さいました。上院の共和党指導者であるミッチ・マッコネル議員も、こうした動きに反対していなかったと、複数の関係筋が語っています。同議員の選挙区はレキシントン・ヘラルド・リッダーというマクラーチ傘下の新聞が発行され得射るケンタッキー州です。

この交渉には複数の議員が関わっていましたが、そうした議員が言うには、9日の夜に問題は解決されるだろうと考えていたそうです。

ところが、そうはならなかった。10日未明に何かが起きたのです。

交渉に関わった1人によると、「少なくとも交渉には複数の材料があった」(“There were at least parameters of a deal,”)そうです。この方によると、協議は「人質劇そのもの」(“basically a hostage drama.”)だったとしています。

俗に「四天王」(Four Corners)と呼ばれる議会の指導者4人の内、3人が合意していたのに、どうして成立しなかったのでしょうか?

「私自身が知りたいぐらいだ」(“I myself would like to know,”)と、ドリス・マツイ下院議員(民主党。カリフォルニア州選出)は語ります。議員は子供の頃からフレスノ・ビーの読者であり、問題解決に向け下院の指導者と共に働いていました。「多くの進展があったと思えた。準備万端だとも思っていた。だが、実際は違った」(“We felt like we made a lot of progress. We thought it was ready to go. It didn’t happen.”)と、議員は振り返ります。

この問題で奔走した議員や業界関係者、議会の関係者らの間では、交換条件が何なのかや、どこまで成立に近づいていたかなどについては意見を異にしています。

控除に関する交渉が進んでいる最中に、匿名を条件に語った関係者が口を揃えていたのは、与野党議員への怨み節でした。

「保障法」が成立したのは12月19日でした。下院の民主党が、トランプ大統領の弾劾決議を採択した翌日でした。この時点での超党派に漂う空気は不明瞭でした。

この法律が、マクラーチやサンディエゴ・トリビューンが控除されるお墨付きとなるかどうかは不明でした。もっとも原案では、シアトル・タイムズやミネアポリス・スター・トリビューン、タンパ・ベイ・タイムズなどに控除措置が与えられるだろうとなっていました。

業界団体であるニュース・メディア・アライアンスの会長兼CEOを務めるデビッド・チャバーン氏に言わせれば「議会が約12のコミュニティ新聞に年金問題に関して控除するとした事を嬉しく思ったが、一方で規定に明確に合致しているマクラーチなどの新聞に控除が適用されなかったのには完全に落胆させられた」(“We were delighted Congress provided pension relief to roughly a dozen community newspapers but at the same time completely disheartened that the relief was not extended to McClatchy and other newspapers that clearly match the spirit of the provision,”)との事でした。

年金控除だけが重要な問題ではありません。議会指導者は、エネルギー効率の良い電球を製造する業者や、小売業者や飲食店業者の支援を目的としたトランプ大統領による税制改革案に誤りがあったのに、修正に合意する事が出来ませんでした。こうした修正協議は、あたかも年金控除とトレード・オフかのように思えました。

共和党は、一部の企業がより短い期間で、より多くの税金を償却を可能とする「認定改革プログラム」(Qualified Improvement Program=QIP)の修正を求めていました。 しかし、下院の民主党は、共和党が上下両院で与党だった際に断行した税制改正に不満を抱いており、1000億ドル相当の還付可能な税額の控除や、自動税額控除を引き換えとして要求していました。

法案成立を巡る、こうした駆け引きは良くありますが、協議に関わった議員の数が多かった民主党側が、共和党に対して冷淡だったとの証言があります。

QIPの修正は、年金控除対象にマクラーチを入れない事が決まった夜になされました。例え他の障害が除去されたとしても、そうなっていた事でしょう。

トランプ政権は、年金控除に対して反対する姿勢を示していませんでした。

ホワイトハウスの高官は、日曜の夜に何かが起きていたと分かっていましたし、協議が再開された際「ホワイトハウスへの提案は、下院の民主党と上院の共和党によるもので、最終的に合意が成立したもの」(“what was on offer from House Democrats and Senate Republicans to us was what ultimately agreed to and enacted.”)だと見なしていたそうです。

土壇場での変更が両党の指導者の間で起きたのでしょう。両党の関係者は、繰り返しコメントを求めていた我々に対し、答えてくれようとしませんでした。

■歴史は繰り返される

今後、NMIという略称で知られてきた、ニューヨーク証券取引所でのマクラーチ株は姿を消します。上場廃止と既存の株式の消却手続きのプロセスを開始する予定です。

マクラーチ一族は、敵対的な投資家の買収から自社を守るクラスB株の保護を諦めざるを得なくなりました。投資家の主導によって、メディア・チェーンのナイト・リッダーが身売りを余儀無くされ、弊社が新聞発行元の最大手となっていた事を思えば、皮肉でも何でもありません。

弊社は、2006年3月に最大の競争相手だったナイト・リッダーを45億ドルで買収し、世に知られていました。それにより、ナイト・リッダーの20億ドルもの債務を背負う事にもなりました。

買収の前年、弊社の株式は1株740ドルを記録していました(これに次ぐのは、1対10で株式併合を行った2016年10月の株価です。実際の株価は74ドルでしたが)。

しかし、2007年には最初の綻びが発生し、やがて世界的な金融危機に発展していきました。世界大恐慌に次ぐ経済危機は、住宅価格の崩壊に端を発していましたが、弊社や弊社の競争相手に高くつきました。広告収入が下がったからです。クレイグスリストやジローといったインターネット企業が台頭し、産業広告の収入を奪っていったのです。

破産保護を申請するのではないかとの恐れが高まっていた昨年11月27日、弊社の株式は35セントにまで落ちていました。年金給付保障公社と密やかなる協議に入り、状況が解決されるのではないかと思われた今年1月半ばには1.5ドルまで保ち直しましていましたが。

11日の株価は、引け値で75セントでした。

編集部注:2005年の株式の詳細を追記しました(2020年2月13日午後4時45分更新)。

13日に提出した再建案で、弊社の債務の約55%が圧縮される事となりました。当初の配信記事では、やや高い圧縮率となっていましたが、2020年2月13日午後6時20分に更新しております。

拙訳終わり。えづきそうになる程の長い記事ですね。こんだけの長文、ニューヨーク・タイムズに寄稿したスティーブ・ジョブス氏の妹さんの追悼記事以来やわ。

でも、それだけの長さはあるというか、全編これ生々しく、恨み節に満ちていますね。さながら、新聞業界の平家物語という感じ。ただ、平家物語と違うのは、今後デジタルへの移行を加速させるという未来への方針を明示している所でしょうか。

この悲喜劇を他人事と出来る日本の新聞社が、一体どれほどあるのか。あったとしても、そうした社の方々は、本記事の見出しを目にした瞬間に画面を強制終了させるんでしょうけどね。

そうした方々に言っておきます。与野党の内紛劇によって、まとまる話が潰れて社の倒産に至ったというのが、このドラマのあらすじでっせ。日本の与野党も揉めてますわな。そこをお忘れなく。