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‘The model is broken’: UK’s regional newspapers fight for survival in a digital world https://t.co/Zmx49OIaQs
2023/03/27 07:33:50
英国のガーディアン紙で、表題のような記事が。遂に業界内部でも公言する向きが出たという話ですね。以下、拙訳(2023年3月26日午後5時投稿)。
‘The model is broken’: UK’s regional newspapers fight for survival in a digital world(『ビジネスモデルは壊れた』:英国の地方紙、デジタル世界で生き残りに苦闘)As Reach makes more job cuts on local titles, is a sustainable future in sight for local journalism to hold power to account?(メディアチェーンの『リーチ』が傘下の地方紙で更なる人員削減を手がける中、ローカルジャーナリズムが責任を持つ持続可能な未来は見えているのか?)Sun 26 Mar 2023 17.00 BST
ある記者に言わせれば、 「ジャーナリストにとってのハンガー・ゲームのようになりつつある」 と言う。経済的に不安定な地域の新聞業界で働く生活の不確実性が高まっている事を要約した格好だ。
二ヶ月の間に、バーミンガム・メール、リバプール・エコー、マンチェスター・イブニング・ニュースなど数百のタイトルとサイトを持つ英国最大の地方紙と地方紙を所有するリーチは、2度目の人員削減に着手し、経済的に不安定な地方紙業界で働く約620人の雇用に危機が迫っている。
上場企業である「リーチ」は、ミラーやエクスプレスの親会社でもある。デジタル化が進みゆくばかりのメディア時代に於いて、地域のジャーナリズムの持続可能なモデルを見つけようとする業界全体の苦闘について一般の人々に事例を提供している格好だ。
かつては強力なバックボーンであり、市場の生命線であった紙媒体広告が、フェースブックやグーグルなどのデジタル企業を中心にした攻勢によって10億ポンド以上の収入を失っている。このため、この十年間で約300の地方紙が廃刊した。
フェースブックが黎明期にあった2000年代半ば、英国の地方紙広告市場は25億ポンドの規模を誇っていた。それが昨年末の評価額を見ると2億4100万ポンドだった。
エンダース・アナリシスのダグラス・マケイブCEOは 「間違いなく厳しい市場だ」 と語る。「紙媒体市場に関して言うなら、発行部数はかなり憂慮すべき減少率で減少しており、発行部数はおそらく過去10年または12年で約65%減少している」と指摘する。
「発行元には、価格を上げたり、ページ数を減らすなど幾つかの手立てはある。だが、紙媒体の産業規模が非常に小さくなっている現状では、持続可能性が遙かに低くなる時期に近づいているように感じる」
英国の地方新聞市場のほとんどは、リーチ、ニュースクエスト、ナショナル・ワールドの 3大チェーンの独占状態であり、それぞれが規模の経営面の安定を求めているため、統合が引き続き重要となる。また、この分野の崩壊は、多くの重要な地方紙の価値が急落したことを意味する。スコッツマンやヨークシャー・ポストなどの老舗紙の元所有者である JPIメディアは、2 年前に 1000 万ポンドで買収された。
スコッツマン グループは 2005 年に1億6000 万ポンドで、ヨークシャー・ポストとその姉妹紙は2002年に5億7000万ポンドと評価されていた。
2006年、『デイリー・メール』を発行していたデイリー・メールには、地域部門への11億ポンドのオファーを断り、15億ポンドを逆提示したが、その6年後に1億ポンドの契約でレスター・マーキュリーやノッティンガム・ポストなどを売却した。
既存の紙媒体広告と発行部数は取り返しのつかない減少に直面している。その上、インフレの高騰の中で新聞用紙の価格が30年ぶりの高値を記録した事で悪化し、ランニングコストは驚異的な速度で増加し続けている。
ロンドンでは、イブニング・スタンダード紙が過去5年間で約7000万ポンドの損失を出している。パンデミックによって通勤者が自宅にとどまるようになり、財務上のブラックホールが悪化したからだ。この他、絶え間ないコスト削減が英国各地の地方紙に打撃を与えている。
あるベテランのニュース・ジャーナリストは、 「今のところ、私が知る限りでは最低のムードだ」 と語る。「多くの地元のジャーナリストは、自分たちが日々働きながらも、次のカットの一部だと言って肩を叩かれるのを待っている」。
その答えはデジタル化の推進であり、成功してはいる模様だ。エンダーズ・アナリシスによると、英国の主要出版社の現地ウェブサイトを訪れたユニークユーザー数は過去一年間で8000万人にも上ったからだ。
これまでのところ問題となっているのは、オンラインへの移行の大部分は依然として、高額な有料の紙媒体を止めて安価なデジタル版に移行している事だろう。例えば、紙媒体の広告収入10億ポンドは過去10年で消えたというのに、英国の地方紙のオンライン広告費は昨年2億2900万ポンドに留まっているからだ。
1月には、コモンズのデジタル・文化・メディア・スポーツ委員会による地域ジャーナリズムの持続可能性に関する報告書の中で、経営難に陥っている地元メディアが政府の資金援助を受けて生き残れるよう支援すべきだと提言した。また、規模を追求したデジタルローカルニュースの低コストな展開の影響に関する議論を再燃させ、議員委員会は地元の大手ニュースパブリッシャーが 「品質に妥協している」 と非難した。
批評家たちは、出版社が 「クリックベイト」 戦略を追求していると批判しているが、これは一部の地元の編集者が 「俗物的」 と表現しているものであり、読者の体験を損なうような広告でコンテンツを過剰展開させているとも言える。
「オンラインのオーディエンスの規模は非常に印象的だが、ユーザーの利用を維持し、価値を構築する方法はわかっていません」 とマケイブは指摘する。「サイトの大半は持続可能な形での収益化にはほど遠い。1ページに可能な限り多くの人の目を集める事に焦点が当てられているようだが、何が価値があるのかに焦点を当てるべきなのだ」。
リーチの上司たちは、デジタル視聴者を成長に戻すことを試みる最新の戦略の概要を説明する際に、 「オンラインの注意力の後退」 を認めた。
リーチの上層部によると、デジタル視聴者を成長に戻そうとする最新の戦略を概説するに当たり、「オンラインの注目度の低下」を認めた。一方、デジタルローカルニュースやハイパーローカルニュースを含む成長分野では、人員削減プログラムとともに強力な採用が行われており、全体のスタッフ数はパンデミック前のレベルでおおむね安定していると答えている。
同社のチーフデジタルパブリッシャーであるデビッド・ヒガーソンは、「可能な限り多くの人に読まれていれば、リーチや他の地元紙が主張するように、地元のジャーナリズムは善の力にしかなり得ない」と述べている。「地元のニュースには多くの楽しみがあり、マンチェスター・イブニング・ニュースやノーザン・アジェンダのニュースレターで行ったことがそれを証明している。他の出版社と同様に、我々はニュースレターで多くの成功を収めてきた。これを背景に、より小さなローカルタイトルを再考し、よりニュースレター主導のモデルに移行し、エンゲージメントに更に重点を置くようにしている」。
また、フェースブックがユーザーのフィードに表示されるニュースを減らしたことや、世界的なデジタル広告市場の低迷の影響もパブリッシャーに及んでいる。
また、業界では、英国の競争規制当局のデジタル市場部門に法的な権限が完全に与えられることを待ち望んでいる。そうする事より、ビッグテックの行動規範が施行され、広告取引がより公正な条件で行われるようになるからだとしている。
しかし、同様の法律がオーストラリアで初めて導入されたとき、当初グーグルとフェースブックはより大きな発行元と契約を結んだものの、より小さな新聞社は除外された。
また、デジタル市場の減速という問題が発生し、生き残りをかけた戦いに大きな圧力を加えている。リーチでは最近、今年に入ってデジタル収入が12%減少したと報告した。
もっとも、ローカル・メディアの話題は、暗いものばかりでは無い。
プレス・ガゼットの分析によると、2020年9月からの2年間で、新たな地元メディアの立ち上げ数は閉鎖と均衡している。これは、多くの人が予想していた壊滅的な崩壊の段階には達していない事を示すものだ。
新たに参入した企業の1つがマンチェスター・ミルで、Substackの購読者から収益を得てニュースレターを発行している。同社は昨年末に黒字化を達成した。
2020年6月にパンデミックの最中にマンチェスター・ミルを立ち上げたジョシ・ヘルマンは、「地元のメディアを支配する企業は、基本的にあきらめたように感じられた。地元のメディアが私が巨大なビジネスを構築する場所になるとは絶対に思っていなかった。確信を持てなかったが、挑戦の場として魅力的だった」と語る。
スリム化されたマンチェスター・ミルの事業は、2000人の有料購読者に基づいて利益を上げており、購読者は毎月7ポンド、年間70ポンドの費用で週に4回ニュースレターを受け取る。お金を払っていないファンには、2通のニュースレターだけが配信される。
シェフィールドとリバプールへの拡大は、どちらも今年中に損益分岐点に達する見込みであり、加入者数は4250人を超えた。
ヘルマンは、約6人のフルタイム相当のスタッフによる運営は、有料の聴衆のために質の高い実行可能な製品を生産するために必要な 「絶対的な最小限」 であると語る。ビジネスモデルの問題であり、地域出版の経済的衰退の根底にある地域コンテンツの関連性の問題ではないと述べている。
「ここ数年で学んだ最も重要な事がある。質の高いジャーナリズムには大きな需要があるというのがそれだ」 と言う。「衰退の原因は、人々が優れた地元のジャーナリズムを望んでいないからでは無い。問題は、全国的に焦点を合わせることがかなりおざなりにされている事だ。モデルが壊れているのだ」
地元メディアの成功例としては他に、2014年から会員所有者モデルを運営し、助成金と資金調達の達人となったブリストル・ケーブルや、超ローカルネットワークのナブ・ニュースなどがある。
既存の新聞社の中でも、DCトムソンによるダンディー・クーリエや、英国で最も売れている地方紙アバディーン・プレス・アンド・ジャーナルは、これまでに見事な仕事をして、紙媒体の読者層を維持しつつ、デジタル版の購読者を約3万人にまで増やしている。
業界団体であるニュース・メディア協会の最高経営責任者であるオーウェン・メレディスは、 「地域のニュースメディアは、英国全土のコミュニティを代表して責任を追及し、権限を精査する上で極めて重要な役割を果たしている」 と述べている。「この分野はビジネスモデルの課題に直面しているものの、デジタルの成長により依然として多くの視聴者を獲得している。地元のジャーナリズムにとって真に持続可能な未来に耐えるために出来る事は沢山ある」。(文中敬称略)
拙訳終わり。悪い話ばかりでは無いという所が救いでしょうか。日本の場合、記者クラブ制度が最後まで新陳代謝の障壁となるから、そのまま模倣は出来ないだろうけど・・・。
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