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解説

米カリフォルニア・データ税が地元ジャーナリズムの資金源になる

グーグル、ゲーム開発業者のエピック・ゲームズに敗訴。一連の収益分配契約が競争を阻害しているとの指摘も



プラットフォーマー・ニュースの記事を拙訳していきます(2023年12月13日付け)。

An Epic win jolts Google(エピック社の勝利がグーグルを震え上がらせる)

The company's app store monopoly has been ruled illegal, and the ramifications will extend well beyond Fortnite(アプリストアの独占が違法とされた。その影響は『フォートナイト』にとどまらない)

CASEY NEWTON

2023/12/13

本日は、注目されている独占禁止法訴訟でグーグルに対する重要な判決について話してみたい。それが関係する企業とより大きなデジタル経済の両方にとって何を意味するかを考えてみよう。

11日遅く、エピック・ゲームズがグーグルを相手取って起こした訴訟を審議していた陪審が、フォーとナイトを開発したエピックに有利な判決を下した。それによると、グーグルはアンドロイドのエコシステム内でアプリ内課金とアプリ配信を独占し、アプリストアと課金システムを違法に結びつけエピックに損害を与えたという。また、開発者やデバイスメーカーとの一連の収益分配契約が競争を阻害している事も明らかになったとしている。

エピック社の訴訟は2020年に起こされた。同時期、同社は同様の理由でアップルを訴え、アプリストアの独占とサードパーティの課金システムの禁止は反競争的で違法だと主張していた。しかし、エピックは(ほぼ)その裁判に敗訴した。

この新しい判決が明らかになるにつれ、ショーン・ホリスターはザ・ヴァージに、「エピック対グーグルは全く違うケースだった」と書いた。

ホリスターは、こう続ける。
それは、グーグルとスマートフォンメーカー、大手ゲーム開発会社との間の秘密の収益分配契約に依存していた。グーグルの幹部は、ライバルのアプリストアを抑えるためのものだと社内で考えていた。つまり、グーグルが特にエピックを恐れている事を示すものだ。そして、アップルの判決とは異なり、全会一致の評決となった。

先週、ホリスターは裁判の要約を書いていた。そこでは、各社の主張の多くの側面を探ることに加え、長年のグーグルのアプリストア関連の策略を非常に面白く説明している。SpotifyやNetflixのような人気デベロッパーとの甘い取引;サードパーティーのアプリストアがローンチされないようにすることに成功した。そして、アプリストアが利益センターとして設計されていないという嘘をついたというのだ(2021年のプレイストアの利益率は71%と試算された)。

そしてエピック裁判は、その全てすべてを証明する事に成功した。——関係する証拠の多くはグーグルによって隠滅されていた。これは同社幹部がGoogle Chatのデフォルト設定を使用し、24時間後にメッセージを自動的に削除していたためだ。(この裁判の判事であるジェームズ・ドナトは、これを『公正な司法運営に対する正面からの攻撃』である事は言うまでも無く、『関連証拠を意図的に抑圧している当事者に関して、私の10年間の法廷で見た中で最も深刻で憂慮すべき証拠』 とした。彼は調査すると約束した)。

Stratecheryでベン・トンプソンは、グーグルが同社の課金システムを違法にプレイストアに紐づけていたという調査結果に焦点を当て、この件が裁判官ではなく陪審員によって決定された事が重要な理由だと示唆した。陪審員は、グーグルがこの2つを結びつける事に正当なビジネス上の理由があるとは考えなかったのかもしれない、と彼は書いている。つまり、グーグルがアンドロイドを開発するための報酬を得るためには、それが最善で最も効率的な方法だとなる。

同社の広報担当者は私にそう語った。おそらく、これはグーグルが異議申し立てをするときに使う議論だろう。

ウィルソン・ホワイト行政・公共政策担当副社長はプラットフォーマーの取材に対し、「この裁判で明らかになったのは、アップルとアップストア、アンドロイドデバイスやゲーム機のアプリストアとの激しい競争だ」と述べた。「我々はアンドロイドのビジネスモデルを守り続け、ユーザー、パートナー、そしてより広範なエコシステムに深くコミットし続ける」。

では、これはデジタル経済にとって何を意味するのか?

まだ何もない。1月には、両者は裁判後の準備書面を提出し、潜在的な救済策について議論を始める。グーグル側の準備書面には、同社が控訴を予定している根拠がある程度示されている筈だ。この裁判に詳しい関係筋によると、同社が注目すると予想される点のひとつはこうだ: エピック社がアップル社を競争相手から除外した事だ。反トラスト法訴訟では、市場の定義がほぼ全てであり、グーグルがアプリ配信でアップルと競合していると控訴裁判所を説得できれば、この評決を覆せるかもしれないのだ。

しかし、仮にこの判決が支持された場合は?

エピックは、開発者が自社の内部アプリストアや課金システムをアプリに組み込む自由度を高める一方で、その一方でグーグルが持って行く収入を可能な限り減らす事を求めている。一方、グーグルは......そうではない。

エピックは損害賠償請求訴訟を起こさなかったが、このような契約は同社にとって大きな利益となるだろう。同社のティム・スウィーニー最高経営責任者は、裁判のある時点で、グーグルにパーセンテージを提示しなくてもよくなった結果、同社の売上が 「数十億ドル」 増える可能性があることを示唆した(予想通り、エピックはブログ記事で判決を歓迎した)。

グーグルにとって今後の結果は、裁判官がどのような救済策を決定するかにかかっている。ホリスターの記事によると、エピックがフォートナイトに独自の課金システムを導入しようとし、プレイストアから追放され、訴訟の火種となった経緯を受けて、グーグルではゲーム開発大手の最大100%が追随する可能性があると懸念したという。これは、エピックの専門家が同社がプレイストアから得ている見積もっていた営業利益120億ドルに深く食い込むことは間違いない。

なお、市場は判決をほぼ完全に無視した。グーグルの株価は、判決が発表されてから1%ポイント未満しか下落しなかった。おそらく、投資家たちはエピックが訴えても敗訴するだろうと考えているし、どんな救済策が提示されたとしても、最終的にはグーグルがアプリストアを通じて現在流れている収益のかなりの割合を獲得し続けることができると考えているからだろう。顧客を別のアプリストアや課金システムに押し付けるのは不便であり、開発者にとって最も抵抗の少ない道は、たとえ収益のかなりの部分を犠牲にするにせよ、グーグル独自のシステムを使用する事だと留意せねばなるまい。

1つの良い結果は、グーグルの収益シェアが十分に下がり、より多くの中小規模の開発者がビジネスを成功させ、成長させる道を作る事かもしれない。グーグルの取得率がエピックを妨げてはいないが、グーグルが1ドルあたり30セントを取得する世界では構築出来ないビジネスがあるのも確かだからだ。

これはiOSでもアンドロイドでも同じことだ。アメリカではアップルが勝訴したかもしれないが、欧州では来年、サードパーティーのアプリストアと課金システムが法的要件となる。韓国では既に必須となっている。そして、そのような規制がさらに増えることは間違いない。

デジタルアプリの経済的な未来がどうであれ、グーグルとアップルはそこに引きずり込まれ、足蹴にされ、悲鳴を上げなければならないのは、もはや明らかだ。だが、そうである必要は無い。

「グーグルとアップルはどちらも開発者を敵視している。彼らは我々の収益源を攻撃し、彼らのプロダクトと競争できないようにしようとしています」 とスウィーニーは今日のホリスターのインタビューで語った。「彼らは、開発者を排除し、サードパーティの開発者を不利にする、これらの大規模な自己優先スキームを構築している。非常に近視眼的だと思う。アップルとグーグルも含め、どんなテック企業でも、開発者を素晴らしいパートナーと見なしてサポートし、力を与え、財政的に邪魔をしないよう出来る限りの事をした方が、長期的には遥かに良いと思える」。

Discordでこの記事について話そう:このリンクをクリックすると、次の週に参加可能となる。

(文中敬称略)

何故、オサマ・ビン・ラディンの「アメリカへの手紙」がガザ戦争中にトレンド化したのか?←中東のアル・モニターの論考



11月16日付けの記事を拙訳してみます。

ガザ戦争中にビン・ラディンの 「アメリカへの手紙」 がトレンド化しているのはなぜか?(Why is bin Laden’s ‘letter to America’ trending during Gaza war?)

The controversial 2002 letter explains the al-Qaeda leader and 9/11 mastermind’s reasons for attacking the United States.(物議を醸している2002年の書簡では、アルカイダの指導者であり、米中枢同時テロの黒幕であるアルカーイダがアメリカを攻撃する理由を説明している)

November 16, 2023

アルカイダの指導者オサマ・ビン・ラディンが2002年に書いた手紙が再び浮上し、TikTok、そしてXでトレンド入りし、イスラエルとハマスの戦争を背景にした反ユダヤ的で憎悪に満ちたメッセージを流した。

ガーディアンが公開した文章の翻訳が再浮上した後、15日にソーシャルメディアプラットフォームのTikTokに、アメリカ人の殺害を正当化する手紙に言及した多数の動画が掲載された。

書簡の中で、ビン・ラディンはアルカイダのテロ攻撃を正当化し、アメリカのイスラエル支援と世界中のイスラム教徒の抑圧が暴力を許していると主張している。一部のユーザーはビン・ラディンのメッセージに同意し、ガザでのイスラエルの戦争を拒否することに結びつけた。

■何が起こったか:

英国のガーディアン紙は、2002年に英国のイスラム教徒によって流布されたビン・ラディンの 「アメリカ国民への手紙」 の英訳を掲載した。

書簡の中で、ビンラディンはアメリカに暴力を振るう理由を説明した。本文の多くは、アメリカによるイスラエル支援に焦点を当てている。ビン・ラディンは 「ユダヤ人にパレスチナに対する歴史的権利があるという捏造された嘘」 に言及し、これに異議を唱える人々は反ユダヤ主義であると主張した。

「パレスチナの人々は純粋なアラブ人であり、本来のセム人である。ムスリムこそ、モーゼの相続者であり、真の律法の相続者である。」とビン・ラディンは書いた。

1957年に裕福なサウジアラビアの家庭に生まれたビン・ラディンは、2011年のパキスタンでのアメリカ軍の襲撃で殺害されるまで、テロ組織アルカイダを率いていた。ビン・ラディンは、アメリカで2977人が死亡した2001年9月11日の攻撃の首謀者だった。アルカイダは、ビン・ラディンの指導下で数多くのテロ攻撃を行い、何千人もの民間人を殺害した。その中には、1998年のケニアとタンザニアのアメリカ大使館爆破事件、2002年のチュニジアのグリバのシナゴーグ爆破事件、2005年のヨルダンのホテル爆破事件、2003年の米国のイラク侵攻後のイラクの民間人に対する多数の攻撃などがあった。

ビン・ラディンはさらに、アメリカがチェチェンのイスラム教徒に対する 「ロシアの残虐行為」 と、紛争中のカシミールのイスラム教徒に対する 「インドの弾圧」 を支持し、中東の石油資産を 「盗んだ」 と非難し、サダム・フセイン政権下のイラクに対する米国の制裁を非難した。地域世界の親西洋政府がイスラム教徒を服従させ、イスラム法の確立を阻止し、 「ユダヤ人に降伏した」 と付け加えた。

ビン・ラディンは、この地域におけるアメリカの政策はアルカイダのテロを正当化すると主張した。

「アメリカ国民は自らの自由意志で政府を選ぶ人たちだ。...また、アメリカ軍はアメリカ国民の一部です。ユダヤ人が私たちと戦うのを恥知らずに助けているのは、正にそうした人達なのだ」 と彼は書いた。



※過去24時間で、 (少なくとも) 何千ものTikTokが投稿され、人々はビンラディンが米国を攻撃した理由を説明した悪名高い 「アメリカへの手紙」 を読んだ事を共有の形で明らかにしている。

TikTokには、あらゆる年齢、人種、民族、背景の人々が参加している。彼らの多くは、手紙を読んで啓蒙されたと言い、地政学的な問題を再び同じように見る事は無かろう。ユーザーの多くは―そして私も何度も見てきましたが―、しばしばテロとレッテルを貼られるものが、敵対勢力に対する正当な抵抗の形であり得ることについて、彼らの見方を再評価させられたと語っている。これはTikTokに限った事では無い。他のソーシャルメディアプラットフォームにも同様の動画が投稿されているからだ。ガーディアンは 「アメリカへの手紙」 のコピーを投稿していたが、これらのTikTokがバイラルになると、ガーディアンはそれを削除した。そのため、この手紙への関心が高まり、これは真実を黙らせようとするメディアとそれを支配する権力の一部であると主張するTikTokユーザーの陰謀に繋がっているのだ。

TikTokユーザーの中には、この手紙を読んでビンラディンを擁護する人もいた。あるユーザーは「この書簡を読むと、中枢同時テロの行動と、アメリカとその国民に対して行われたこれらの行為は、すべて他国を失望させる政府の構築にすぎなかったことが明らかになる」と述べていた。Xに投稿された動画によると、別の人はビン・ラディンについて 「彼は正しかった」 と述べた。

ガーディアンは15日、 「完全な文脈なしにソーシャルメディアで広く共有された」 として、この書簡をウェブサイトから削除した。声明で、代わりにこの書簡に関する2002年の元記事を読者にリンク付けした。

■反応:

反応:中国資本のプラットフォームTikTokの一部のユーザーがビンラディンを称賛したことで、ソーシャルメディア上ではイスラム教徒とユダヤ教徒の両方のユーザーを含む幅広い非難につながった。


※ビンラディンは占領下で育った悲劇的なアンチヒーローではなかった。彼は有力一族の億万長者の開発者の息子で、モロッコからインドネシアまでイスラム教徒の生活を破壊する殺人組織を見つけただけで、世界中を飛び回って育った。それが 「コンテキスト」 だ。

この書簡は 「反ユダヤ主義的」 と表現されており、タイムズ紙も15日の記事でこのように報じている。


※こんなことをTweetするなんて我ながら信じられないが、オサマ・ビン・ラディンは社会正義の活動家ではなかった。2000人以上の無実の人を殺すことは 「根拠がない」 。「外に出て草むしりでもしなよ」。

■なぜ重要なのか:

ビン・ラディンの手紙は、イスラエルとハマスの戦争をめぐってアメリカと世界が大きく分裂していた時期に広まった。イスラエルとパレスチナの双方を支持する抗議行動が全国で多数起きている。ごく最近では、10月のパレスチナ人を支持する大規模な集会に続いて、15日のイスラエルのための行進のために数万人がワシントンに集まった。

アメリカ当局は、イスラエルとハマスの戦争が始まって以来、ユダヤ人、アラブ人、イスラム教徒に対する敵対行為が増加していると報告している。

■知っておいて欲しい事:

アメリカ国務省は2月、イランを拠点とするエジプト人サイフ・アル・アデルがアルカイダの指導者になったと発表した。ビン・ラディンの後継者アイマン・アル・ザワヒリは昨年、アフガニスタンでアメリカ軍の無人機攻撃で死亡した。




ニューヨーク・タイムズでは「昨年440億ドルで買収後、Twitterを『X』としてリブランディングするのは、イーロン・マスク氏が同社を改革するギャンブルの最新版だ」と解説 #Twitter終了



ニューヨーク・タイムズの報道を拙訳してみます(2025年7月24日午後12時5分投稿)。

Why Elon Musk Bid Twitter Goodbye(イーロン・マスクがTwitterに別れを告げた理由とは)

Rebranding the social network as X marks the billionaire’s latest gamble to reinvent the company, after buying it last year for $44 billion.(昨年440億ドルで買収後、『X』としてリブランディングするのは、この億万長者が同社を改革する上での最新のギャンブルである)

By Andrew Ross Sorkin, Ravi Mattu, Bernhard Warner, Sarah Kessler, Michael J. de la Merced, Lauren Hirsch and Ephrat Livni

July 24, 2023Updated 12:05 p.m. ET

■ツイッターは飛び去った

さようなら、青い鳥: 一夜にして、Twitterはサンフランシスコ本社に投影された長年のロゴを様式化されたシンボルに置き換え、「X」として再ブランディングを開始した。

この動きは、イーロン・マスクが長年の目標である "あらゆるアプリ "を作る上で、ソーシャルネットワークを重要な一部にしたいという野心を強調するものだ。一方、それはまた、彼が昨年440億ドルを支払って以来苦戦しているビジネスを改革するための危険な賭けでもある。

「ライト。カメラ。X!"と同社のリンダ・ヤカリーノCEOは書き、ソーシャルネットワークが新しいブランディングを展開し始めた事を明らかにした。かつてTwitterの共同設立者であるビズ・ストーンが「ラリー・T・バード」と名付け、最も有名なインターネット・ロゴのひとつとなり、同社が最も認識しやすい資産であると説明していた、様式化された鳥は姿を消した。

同プラットフォームのアバウトページはまだ更新されていないが、ヤカリーノ氏は同社の野望を説明する一連のツイートで繰り返しXに言及している。Xがより完全に社内に浸透することを期待したい: マスク氏は、週末に従業員に送った社内メッセージをツイッターから送る最後のものだと説明し、投稿はツイートではなく「X」と呼ぶべきだとユーザーに語りかけた。

マスク氏は、Xの意味するところに長い間魅了されていた。彼の2番目の起業はX.comで、最終的にPayPalとなった。(作家のウォルター・アイザックソンは、近々出版されるマスク氏の伝記の中で、この件に関する興味深い断片を紹介している)。マスク氏はスペースXとテスラの最初の車種の名前に「X」を取り入れたし、最近では新しいA.I.スタートアップを「xAI」と命名した。

この動きに万人が賛同している訳では無いが、一部の広告業界の幹部は、ユーザーがこのプラットフォームに固執するかどうかがより重要だと語った。フィナンシャル・タイムズ紙によると、ヤカリーノ氏は日曜日にマーケティング担当者に対し、xAIとの協業も含めた同社の最新の変化について説明したという。(この刷新は、マスク氏が広告主を喜ばせないユーザーの閲覧制限を課した後、彼女が会社でどれだけの権限を行使しているのかについての疑問を投げかけるかもしれない)。

これはブランディング以上のものだ。Twitterはマスク氏の下で苦戦を強いられており、サブスクリプションに依存するピボットでは広告収入の50%減、キャッシュフローのマイナス、メタのスレッドからの新たな脅威を補うことはできていない。

億万長者は、中国のWeChatのように、ユーザーがオンラインでできることすべてのプラットフォームとして機能するスーパーアプリを作ることを夢見てきた。しかし、サードパーティのデータが示すように、ユーザー数は減少しており、マスク氏が生まれ変わったXを軌道に乗せるのにどれだけの走力があるのかは定かではない。

ベラルーシのルカシェンコ大統領がモスクワの病院に緊急入院したという話について #ルカシェンコ #ウクライナ戦争



インドのWIONというサイトが手堅くまとめているので拙訳してみます(2023年5月29日午前12時15分投稿)

Belarus President Lukashenko rushed to hospital after meeting with Putin: Report(ベラルーシのルカシェンコ大統領、プーチン大統領との会談後に救急搬送)

Moscow, RussiaEdited By: Nishtha BadgamiaUpdated: May 29, 2023, 12:15 AM IST

ベラルーシの反体制運動指導者であるヴァレリー・ツェプカロは、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が ロシアのウラジミール・プーチン大統領と面会した後、「緊急に」 モスクワの病院に搬送され、重体に陥っていると述べた。ツェプカロによると、ルカシェンコはプーチンとの会談後、モスクワの中央臨床病院に搬送されたという。

■何が分かっているのか?

「更なる確認を経ての参考情報予備情報によると、ルカシェンコはプーチンとの非公開会談の後、モスクワの中央臨床病院に緊急搬送された。現在、彼はそこで治療を受けている」 とツェプカロはTwitterに投稿した。

また、ベラルーシ大統領は 「自身の危篤状態に対処するため」 一流の専門家の管理下にあると述べ、血液浄化処置が行われた一方、ルカシェンコの病状は 「搬送不可能」 とみなされていると付け加えた。



更なる確認を経ての参考情報によると、#Lukashenkoは#Putinとの非公開会談後、モスクワの中央臨床病院に緊急搬送された。現在そこで治療を受けている。彼の危篤状態に対処するため、一流の専門家が動員された。血液浄化処置が行われたが、ルカシェンコの病状は搬送不可能と判断された。ベラルーシの独裁者を救うための組織的な取り組みは、クレムリンの毒殺関与疑惑に関する憶測を払拭する事を目的としていた。

回復するかどうかにかかわらず、医師は再発の可能性について注意を促している。我々は、ベラルーシ共和国のベラルーシ民主フォーラムの代表として、西側諸国の指導者に対し、移行期間を確保するために実施すべき 「選挙」 イニシアティブ及びその他の措置を議論するための戦略的会合を数日中に招集することを切に求める。我々は、既存の技術が、クレムリンからの直接的な干渉を受けることなく、世界人権宣言に従ってベラルーシに於いて公正かつ透明な選挙を実施するために十分であると断固として主張する。そうする事により、すべてのベラルーシ人と国際社会全体の目に見える正当な機関を確立する。このような重大な時期での選挙実施は、将来のベラルーシの法と秩序の回復に役立つだけでなく、欧州連合と世界の国境の情勢を安定させるための基礎を築く事になる。
ツェプカロは元大統領候補であり、元駐米大使でもあるが、 「ベラルーシの独裁者を救うための組織的な取り組みは、クレムリンの毒殺関与疑惑に関する憶測を払拭する事を目的としている」 と述べた。

■ベラルーシ指導者の健康に関する噂

ルカシェンコの健康状態に関する噂は以前から出回っていた。

これに先立つ5月9日、ルカシェンコはモスクワでの戦勝記念日のパレードの直後にロシアを離れた。ロシアのプーチン大統領との昼食も欠席した。報道によると、ロシア訪問中のルカシェンコ大統領は明らかに疲れている様子で、右手に包帯を巻いていたという。

ルカシェンコが最後に公の場に姿を現したのは、モスクワから帰国して数時間後に参加したベラルーシ独自の戦勝記念日 (5月9日) の祝典中に首都ミンスクで献花した時だった。

彼は後に公の場に姿を現し、噂を一蹴した。「私は死なない。君達はこれから長い間、私と苦闘しなければならないだろう」 。

68歳のルカシェンコはプーチンにとって最も親しい同盟者の一人だ。メディアの報道によると、ルカシェンコは今月初め、健康問題に関する会議で、アデノウイルス(一般的な風邪のウイルス)に感染していると、声を荒げて話したという。

「もし誰かが私が死ぬと思っているのなら、落ち着いて」 とルカシェンコは言い、回復には3日しかかからず、忙しくてすぐに休むことができなかったと付け加えた。

■ヴァレリー・ツェプカロとは?

ツェプカロはベラルーシのシリコンバレー、ハイテクノロジーパークの元責任者で、2020年の大統領選に出馬しようとしていたが、登録を禁じられた。なお、妻のヴェロニカ・ツェプカロは、2020年のベラルーシ大統領選挙を前に、歴史的な反対運動を主導した3人の女性のうちの一人である。

国営通信社ベルタによると、ツェプカロは4月に厳重警備の刑務所で17年の刑を言い渡された。また、3年前にベラルーシを脱出し、現在はラトビアに拠点を置いており、ベラルーシ難民や政治的抑圧の女性被害者を支援していると伝えられている。

※通信社電に加筆

(文中敬称略)

「ViceとBuzzFeedは本当の価値を持たないオーディエンスや規模の追求を、新しいトリックで維持しようとしていた」との辛辣レポートを拙訳してみる #メディア


inews.co.ukというサイトの記事です(2023年5月7日午前6時投稿・同日午後4時12分更新)。

Inside Vice Media’s meltdown: Panic over losing Gen Z, an air of excess and unpaid invoices(Vice Mediaのメルトダウンの内幕: Z世代を失うことへのパニック、過剰な空気と未払い請求書)

Insiders say the atmosphere at Vice Media was ‘chaotic’ as digital media phenomenon facing bankruptcy struggled to pay freelancers(内部関係者によると、倒産に直面しているデジタルメディア業界がフリーランサーへの支払いに苦労しているため、Vice Mediaの雰囲気は 「混沌としていた」という)

May 7, 2023 6:00 am(Updated 4:12 pm)

そこは流行のデジタル新興企業であり、セックスとドラッグのサブカルチャーの最前線からのレポートで57億ドルと評価されていた。

だが、かつてディズニーやルパート・マードックを眩惑した世界的ブランドがフリーランサーへの支払いさえできなくなり、 「大きすぎて潰せない」 というモットーが 「完全な混沌」 に繋がってしまった事を内部の関係者が暴露し、崩壊へと向かっていた。

スタッフにとって最後の頼みの綱は、前CEOのナンシー・デュバックが扇動した、Z世代の若者の支持を維持する方法を見つけるための一連の 「パニック」 会議だった。それは、Viceの創業者であるシェーン・スミスがZ世代を巻き込む魔法の霊薬を発見したと主張していた初期の様相とは大きく異なっていた。

Viceが資産の買い手を探しているという先週の報道に、元従業員は驚かなかった。

「完全に混沌とした状態になった」 と主張する人もいた。「人々は、どうしてお金がないのかと尋ねていた。フリーランサーに支払う事すら出来なかった」。

1994年にモントリオールでパンク雑誌として創刊された『Vice』は、北朝鮮のような従来のメディアが進出を恐れた危険地帯からのビデオレポートで数百万人の目を引いた。

映画スタジオと広告代理店に手を広げたスミスは、 「古いメディア」 企業を嘲笑し、ディズニーとフォックスから数億ドルの投資を引き出し、アクセス不可能な若者市場へのホットラインを持つとする生意気な起業家に目を奪われた。

しかし、デジタル広告市場が低迷し、TikTokが新世代のソーシャルメディアユーザーを席巻する中、投資家はViceがアクセスを利益に変えられていない事に警戒感を強めた。

ロサンゼルスで38万ドル (プラスチップ) をViceのディナーに使ったというスミスの自慢話は、スタッフの間でうんざりするようなジョークとなり、会社は暗礁に乗り上げた。

関係者は「幹部らは、Viceのブランドは『大きすぎて潰せない』でなければならないと述べた」と話した。「デュバック (2018年にスミスの後を継いでCEOとなり、この3月にViceを去った) は、会社が利益を出す必要があるとメールを送った」 。

「冗長性は常に課題であった。ビジネスは薄氷を踏む状態であるように見えた」。

「Z世代にはどうやって行くのか?」という質問に答えるために、デュバックはViceの関係者でタスクグループを立ち上げた。関係者は「彼女が会社の未来はZ世代にあると言ったのは正しかった。ビジネスの一部はそのオーディエンスに効果的に届いていた」と話した。

「問題はビジネスの管理方法だった。メディアの状況は急速に変化した。ViceはTikTokやInstaとどのように競合するのか? 他ならぬ聴衆はそこに行ってしまった」。

元スタッフは入社したViceメディアに愛着を持って話す。「非常に真面目な公共サービスのジャーナリズムを行っていました。BBCは、若い視聴者をニュースに引き込むためにViceを手本にしなければならなかったと述べた。スタッフを引き抜こうとした」と証言続けた。

Viceニュースは昨年、「Yemen:The Forgotten War」 (イエメン:忘れられた戦争) の報道や老人ホームのスキャンダラスな状況の調査などで多くのエミー賞を受賞した。

若い女性を対象とした同社の人気ウェブサイト 「Refinery 29」 は、救済される資産に含まれる可能性が高い。

「今振り返ってみると、一つ屋根の下に集まった人材の量は驚くべきものがあった」と、ある元スタッフは語る。若いチームにとっては無茶な道のりだったと認めている。

「そこで働いていると確かに過剰な空気があった。20代の社会生活の延長のように感じられた(そう、ハイな気分が沢山あった)」。

デュバックは#MeToo事件後、女性スタッフによる性的不正疑惑で明るみに出た 「ブロ・カルチャー」 を払拭するための措置を講じた事で知られている。

Viceメディアの盛衰は「貪欲を描いた寓話、太陽に近づきすぎたメディア企業のイカロス風の物語」とスタッフは付け加えた。

しかし、より 「大げさ」 ではないViceは、持続可能なビジネスとして登場する可能性がある、と彼らは考えている。

プライベート・エクイティ (PE) のフォートレス・インベストメント・グループを筆頭とする複数の金融機関が、バイスの3億ポンドの救済に合意に近づいていると報じられた。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、Viceは来週連邦破産法11条の適用を申請する可能性があり、フォートレスが買収を希望しているという。

Viceのメインの貸し手の動きは、ジェームズ・マードックを含む投資家の保有株を一掃するだろう。

共同創業者のジョナ・ペレッティがビジネスを財政的に持続可能にすることが出来ないと認め、BuzzFeed Newsが廃刊すると報じられた後で、Viceの苦境が続いた。

コンサルタント会社のエンダース・アナライジズのテクノロジー業界専門家であるジョセフ・ティーズデールは、 「フェースブックがアルゴリズムを変更後、誰も無料オンラインジャーナリズムのビジネスモデルを成功させられなかった。Web 2.0世代の時代の終わりだ」とする。

「誰もが不思議な救世主を探していた。デジタルナポレオン。それまでのメディアのくよくよばかりしている人達とは違って新しい世界を手に入れたと思える新たなるザッカーバーグなのだと」。

ニューヨーク大学でジャーナリズムを教え、メディアコンサルタントを務めるジェフ・ジャービス教授は、フェースブックがニュースに背を向け、バイラリティが話題性を失ったことで、ウェブ2.0企業は孤立したと指摘する。

彼は私に「ViceとBuzzFeedは1つのスキルを世に示した。我々は自分たちのコンテンツをバイラルにする方法を知っているし、皆さんのもバイラルにする事も出来るというのがそれだ。だが、巨大な概念実証が添付された広告代理店に過ぎなかった」と言った。

新著「The Gutenberg Parenthesis」でデジタルメディアの未来を描くジャービスは、こう結論づける。 「ViceとBuzzFeedは、新しいメディアでは無い。彼らは旧メディアの最後のあがきであり、旧態依然としたやり方、つまり本当の価値を持たないオーディエンスや規模の追求を、新しいトリックで維持しようとしていたのだ」

「未来は会話の技術への回帰にある。人々は、自分たちの地域コミュニティについて話してくれる小規模なウェブサイト、ニッチなニュースレター、特別な関心のある定期購読を支援しようとお金を払うだろう」。

英国の新しいデジタル・マーケット・ユニットは、グーグルとフェイスブックがそのプラットフォーム上のニュースコンテンツに対して出版社に「公正な価格」を支払うことを保証する権限を持つが、ウェブ2.0の救世主にはなり得ないだろう。ティースデールはこう警告する。 「フェースブックは既にニュースを格下げしている。広告主が怖がるし、政治的にもリスクがある。フェースブックにしたら、このカテゴリーから撤退して、この問題を無効にすれば良いのだ」。

Viceメディアはコメントを拒否した。今週発表された声明によると、同社は 「戦略的選択肢と計画の包括的な評価に取り組んでいる」 という。Viceの取締役会は 「会社にとって最善の道を見つけることに集中している」 。

(文中敬称略)

拙訳終わり。「ViceとBuzzFeedは、新しいメディアでは無い。彼らは旧メディアの最後のあがきであり、旧態依然としたやり方、つまり本当の価値を持たないオーディエンスや規模の追求を、新しいトリックで維持しようとしていたのだ」か。終わってみれば、真新しさが無かった、でしょうか。

ジャービス教授の新著を貼っておきますね。

グーグルBard:皆さんが知っておくべき全てとは #ChatGPT #グーグル #Bard



サーチエンジン・ジャーナルの解説記事より拙訳(2023年3月24日付け)。

Google Bard: Everything You Need To Know(グーグルBard:皆さんが知っておくべき全てとは)

Bard is a generative AI chatbot powered by LaMDA. Understanding Bard and how it might integrate with search is essential to anyone in SEO or publishing online.(BardはLaMDAを使った生成AIチャットボットである。Bardを理解し、それがどのように検索と統合されるかを理解する事は、SEOやオンライン出版に携わる人にとって不可欠だ)

Roger Montti


5 hours ago

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グーグルはChatGPTに対抗するBardをリリースしたばかりだが、OpenAIの人工知能 (AI) を利用したチャットボットと比較して、ユーザーに認知されつつある。


Bardという名前のアルゴリズムは存在しないため、 「Bard」 という名前は純粋にマーケティング主導であるが、チャットボットはLaMDAを使用している事がわかっている。


ここでは、Bardについてこれまでにわかっている事と、Bardを強化するアルゴリズムの種類についてのアイデアを提供する可能性のある興味深い研究を紹介する。


■グーグル Bardとは?


Bardは大規模言語モデルLaMDAを利用した実験的なグーグルチャットボットである。


これは、プロンプトを受け入れ、回答や要約の提供、さまざまな形式のコンテンツの作成などのテキストベースのタスクを実行する生成AIである。


Bardはまた、インターネットで見つかった情報を要約したり、より多くの情報を含むウェブサイトを探索するためのリンクを提供したりして、トピックの探索を支援する。


■なぜグーグルはBardをリリースしたのか?


グーグルがBardをリリースしたのは、OpenAIのChatGPTのローンチが大成功を収めた後の事で、技術的に遅れをとっているという認識を生み出した。


ChatGPTは、検索業界を混乱させ、グーグル検索や収益性の高い検索広告ビジネスから力のバランスをシフトさせる可能性を秘めた革命的な技術として認識されていた。


ChatGPTの発表から3週間後の2022年12月21日、ニューヨークタイムズは、グーグルが同社のビジネスモデルに対する脅威への対応を迅速に定義するために 「コードレッド」 を宣言したと報じた。


コードレッド戦略の調整から47日後の2023年2月6日、グーグルはBardのローンチを発表した。


■グーグル Bardの問題点とは?


Bardの発表は、グーグルのチャットボットAIを紹介するためのデモに事実誤認が含まれていたため、驚くべき失敗に終わった。


グーグルのAIの精度の低さは、凱旋のつもりだったものを屈辱的なパイのように形作ってしまった。


その後グーグルの株価は1日で1000億ドルも下落したが、これは迫り来るAI時代を乗り切るグーグルの能力に対する信頼の喪失を反映している。


■グーグル Bardの仕組みとは?


BardはLaMDAの 「軽量」 バージョンを搭載している。


LaMDAは、公開対話とウェブデータからなるデータセットで訓練された大規模な言語モデルである。


関連する研究論文で説明されているトレーニングに関連する2つの重要な要素があり、ここからPDFとしてダウンロードできます。LaMDA:Language Models for Dialog Applications=対話アプリケーション向け言語モデル (要約はこちらを参照) 。


  • A. 安全性:このモデルは、クラウドワーカーによって注釈が付けられたデータを使用してチューニングする事で、一定の安全性を実現する。

  • B. 根拠性:LaMDAは、外部の知識源(検索である情報検索を通じて)を用いて事実に基づいている。


LaMDAの研究論文には次のように書かれている。


「...事実に基づく基礎付けには、モデルが情報検索システム、言語翻訳者、計算機などの外部の知識ソースを参照出来るようにする事が含まれる。


根拠指標を使って事実性を定量化し、このアプローチによって、単にもっともらしく聞こえる応答ではなく、既知のソースに基づいた応答をモデルが生成出来る事が分かった。


グーグルはLaMDAの出力を評価するために3つの指標を使用した。


  1. 分別:答えが意味をなすかどうかの測定。

  2. 特異性:答えが一般的/曖昧または文脈特異的の反対であるかどうかを測定。

  3. 面白さ:この指標は、LaMDAの回答が洞察力に富んでいたり、好奇心を刺激したりするかどうかを測定。


3つの指標は全てクラウドソーシングによって評価者が判断し、そのデータはマシンにフィードバックされて改善され続けた。


LaMDAの研究論文は、クラウドソーシングによるレビューと、検索エンジンで事実確認出来るシステムの機能が有用な手法であったと述べている。


グーグルの研究者は次のように書いている。

「我々は、クラウドアノテーションされたデータが、大幅な追加利益をもたらす効果的なツールである事を発見した。


また、外部API (情報検索システムなど) を呼び出す事で、地際性を大幅に向上させる事が出来る事も判明した。これは、生成された応答に既知のソースに対して参照およびチェック出来るクレームが含まれている範囲として定義される」


■グーグル検索でBardを使う計画について


Bardの将来は現在、検索機能として構想されている。


2月のグーグルの発表は、Bardがどのように実装されるかについての具体性が不十分であった。


重要な詳細は、Bardのブログ発表の終わり近くのたった1つの段落に隠されており、そこでは検索におけるAI機能として説明されていた。


この明確さの欠如は、Bardが検索に統合されるという認識に拍車をかけたが、実際にはそうはならなかった。


グーグルのBardに関する2023年2月の発表では、グーグルはいずれAI機能を検索に組み込む予定であると述べている。

「間も無く、複雑な情報や複数の視点を簡単に消化出来る形式に抽出するAI搭載の機能がSearchに登場する。そのため、ピアノとギターの両方を演奏する人のブログのような追加の視点を求めているのか、それとも初心者として始めるためのステップのような関連するトピックを深く掘り下げているのかといった、全体像を素早く理解し、ウェブからより多くを学ぶ事が出来る。


これらの新しいAI機能は、間もなくグーグル検索でも利用出来るようになる」


Bardが検索していないのは明らかだ。むしろ、検索の機能として意図されたものであり、検索に代わるものではない。


■検索機能とは?


機能としては、グーグルのナレッジパネルのようなものがあり、注目すべき人、場所、物に関する知識情報を提供する。


グーグルの機能についての「検索のしくみ」Webページでは、次のように説明されている。

「グーグルの検索機能は、適切な情報を適切なタイミングで、検索に最も役立つ形式で確実に提供する。


ウェブページの場合もあれば、地図や地元の店の在庫といった現実世界の情報の場合もある」


グーグルの社内会議 (CNBCが報じた) では、従業員がBardを検索に使用する事に疑問を呈した。


ある従業員は、ChatGPTやBardのような大規模な言語モデルは事実に基づいた情報源ではないと指摘した。


グーグル社員は次のように尋ねた。

「何故最初の大きなアプリケーションは、真の情報を見つける事が中心である検索であるべきだと考えるのか」

これに対し、グーグルBardの製品責任者であるジャック・クラウチク氏は、こう答えている。

「はっきりさせておきたいのは、Bardは検索ではないという事である」

同じ社内イベントで、グーグルのエリザベス・リード検索エンジニアリング担当副社長も、Bardは検索ではないと繰り返し述べた。

「Bardは検索とは全く別...」


自信を持って言えるのは、Bardはグーグル検索の新しいバージョンではないという特徴である。


■Bardはトピックを探索するためのインタラクティブな方法


グーグルによるBardの発表は、Bardが検索ではない事をかなり明確に示していた。つまり、検索画面では回答へのリンクが表示されるが、Bardはユーザーが知識を調査するのに役立つ。


発表では次のように説明されている。


「グーグルといえば、『ピアノには鍵盤が幾つあるか』というような、事実に基づく即答を求めてくる事がよくある。


しかし、「ピアノやギターの方が学びやすいのか、それぞれにどれくらいの練習が必要なのか」のように、より深い洞察と理解を求めてグーグルに頼る人が増えている。


このようなトピックについて学ぶ事は、本当に知る必要がある事を理解するために多くの努力を必要とする可能性があり、人々はしばしば多様な意見や視点を探求したいと思う」

Bardは、トピックに関する知識にアクセスするための対話的な方法と考えると役立つ場合がある。


■Bard Samples Web情報


大規模言語モデルの問題は、回答を模倣する事であり、事実誤認に繋がる可能性がある。


LaMDAを作成した研究者は、モデルのサイズを大きくするようなアプローチは、より多くの事実情報を得るのに役立つと述べている。


しかし、このアプローチは、事実が時間の経過とともに絶えず変化している分野では失敗し、研究者はこれを 「時間的一般化問題」 と呼んでいる。


タイムリーな情報という意味での新鮮さは、静的言語モデルでは訓練できない。


LaMDAが追求した解決策は、情報検索システムへの問い合わせであった。情報検索システムは検索エンジンなので、LaMDAは検索結果をチェックする。


LaMDAのこの機能はBardの機能のようだ。


グーグルBardの発表では以下のように説明されている。

Bardは、世界の知識の広さと、我々の大きな言語モデルの力、知性、創造性を結びつけようとしている。


ウェブからの情報を利用して、新鮮で高品質な応答を提供する」


(サイトより引用=ナレッジ・グラフからデータにアクセスしたか。ノー、なれっじグラフへのアクセスはしていない。ナレッジ・グラフはグーグルが所有管理するプライオリティ・データセットだ。公に利用出来ない。だが、グーグル検索を通じて現実世界の情報にアクセスして情報を加工するし、検索結果とは一貫して保たせている)


LaMDAと (恐らく拡張によって) Bardは、ツールセット (TS) と呼ばれるもので、これを実現している。


このツールセットはLaMDA研究者の論文で説明されている。

「情報検索システム、計算機、翻訳機を含むツールセット (TS) を作成する。


TSは1つの文字列を入力とし、1つ以上の文字列のリストを出力する。TSの各ツールは文字列を必要とし、文字列のリストを返す。


例えば、電卓は 「135+7721」 を取り、 [ 「7856」 ] を含むリストを出力する。同様に、翻訳者は 「hello in French」 を取り、 [‘Bonjour’] を出力する事が出来る。


最後に、35情報検索システムは「ラファエル・ナダルは何歳であるか?」を取り、出力する事が出来る。


情報検索システムは、オープンウェブからのコンテンツの断片を、対応するURLとともに返す事も出来る。


TSは全てのツールで入力文字列を試行し、計算機、翻訳機、情報検索システムの順に全てのツールからの出力リストを連結して文字列の最終出力リストを生成する。


ツールは、入力(例えば、『ラファエル・ナダルは何歳であるか?』を解析できない)を解析出来ず、したがって最終的な出力リストに寄与しない場合、結果の空のリストを返す。


以下は公開されているウェブからの抜粋によるBardの回答である。



(サイトより引用=クロンカイトは、テレビ・ニュースのパイオニアであり・・・)


■会話型質問応答システム


「Bard」 という名前に言及した研究論文はない。


しかし、LaMDAに関連する科学者を含め、AIに関連する最近の研究はかなり多く、Bardに影響を与える可能性がある。


以下は、グーグルがこれらのアルゴリズムを使用しているとは主張していない。これらの技術がBardで使用されているとは断言できない。


これらの研究論文を知る価値は、何が可能かを知る事にある。


以下は、AIベースの質問応答システムに関連するアルゴリズムである。


LaMDAの著者の一人は、会話情報検索システムのトレーニングデータを作成するプロジェクトに取り組んだ。


2022年の研究論文は、 「Dialog Inpainting:Turning Documents into Dialogs=ダイアログの修復:ドキュメントをダイアログに変換」 でPDFとしてダウンロード出来る (要約はこちら) 。


Bardのようなシステムを訓練する際の問題は、Q&Aデータセット (Redditにある質問と回答で構成されたデータセットのようなもの) がReddit上の人々の振る舞いに限定される事である。


そのような環境に置かれていない人々がどのように振る舞うのか、どのような質問をするのか、そしてそれらの質問に対する正しい答えは何であるのかという事は含まれない。


研究者らは、ウェブページを読むシステムの作成を検討した後、 「ダイアログのインペインター」 を使用して、マシンが読んでいる内容の中の任意の一節によってどのような質問に答えるかを予測した。


ウィキペディアの信頼出来るウェブページにある「空は何色であるか。」という一節は、 「空は青い。


研究者たちはウィキペディアなどのウェブページを使って、質問と回答のデータセットを独自に作成した。彼らはデータセットをWikiDialogとWebDialogと呼んだ。


  • WikiDialogは、Wikipediaのデータから派生した一連の質問と回答だ。

  • WebDialogは、インターネット上のWebページダイアログから派生したデータセットである。


これらの新しいデータセットは、既存のデータセットの1,000倍の大きさである。その重要性は、会話言語モデルにさらなる学習の機会を与える事である。


研究者らは、この新しいデータセットが会話型質問応答システムの40%以上の改善に役立ったと報告した。


研究論文では、このアプローチの成功について次のように説明している。

「重要なのは、ペイントされたデータセットがConvQAシステムのトレーニングデータの強力なソースである事がわかった事である...


標準的な検索とリランカーアーキテクチャの事前トレーニングに使用すると、3つの異なるConvQA検索ベンチマーク(QRECC、OR-QUAC、TREC-CAST)にわたって最新技術を前進させ、標準的な評価指標で最大40%の相対的な向上を実現する...


驚くべき事に、WikiDialogでの事前トレーニングだけで、ドメイン内のConvQAデータを使用せずに、強力なゼロショット検索パフォーマンス (洗練された検索者のパフォーマンスの最大95%) が可能になる事が分かった」


■グーグル BardがWikiDialogとWebDialogのデータセットを使ってトレーニングされた可能性は?


グーグルが1,000倍以上のデータセットで会話AIのトレーニングを賄うというシナリオは考えにくい。


しかし、グーグルはBardやLaMDAのような稀なケースを除き、その基盤となる技術について詳細なコメントをしない事が多く、確実な事は不明である。


■ソースにリンクする大きな言語モデル


グーグルは最近、大規模な言語モデルに情報源を引用させる方法に関する興味深い研究論文を発表した。論文の最初のバージョンは2022年12月に発表され、2番目のバージョンは2023年2月に更新された。


この技術は2022年12月現在、実験段階と呼ばれている。


論文のPDFはここからダウンロード出来る:Attributed Question Answering:Evaluation and Modeling for Attributed Large Language Models =属性付き質問応答: 属性付き大規模言語モデルの評価とモデリング(グーグル abstractはこちら) 。


研究論文では、この技術の目的について次のように述べている。


「大規模言語モデル (LLM) は、直接的な監督を殆ど、あるいはまったく必要とせずに、印象的な結果を示している。


更に、LLMが情報探索シナリオで潜在的な可能性を持つという証拠が増えている。


この設定では、生成するテキストの属性を指定するLLMの機能が重要になる可能性が高いと考えられる。


ここでは、属性付きLLMの開発における重要な第一歩として、属性付きQAを定式化し、研究する。


タスクのための再現可能な評価フレームワークを提案し、広範なアーキテクチャのセットをベンチマークする。


ヒューマンアノテーションをゴールドスタンダードとし,相関自動メトリックが開発に適している事を示す。


我々の実験的研究では、2つの重要な質問(帰属をどう測定するか。そして、現在の最先端の方法は帰属に対してどの程度の効果があるのか?)に具体的な回答を与え、3つ目(帰属意識を持ったLLMを構築するにはどうすればよいか。)に対処する方法について幾つかのヒントを与えている」


この種の大規模言語モデルは、理論的には応答が何かに基づいている事を保証するサポート文書で応答出来るシステムを訓練する事が出来る。


研究論文では次のように説明されている。

「これらの質問を調査するために、我々は属性付き質問応答 (QA) を提案する。この定式化では、モデル/システムへの入力は質問であり、出力は(回答、帰属)ペアである。ここで、answerは回答文字列であり、attributionは例えば段落の固定コーパスへのポインタである。


返された帰属は、答えの裏付けとなる証拠を与えるべきである」


この技術は特に質問に答えるタスク用である。


目標はより良い答えを生み出す事であり、グーグルがBardに求めるものである事は理解出来る。


  • 帰属によって、ユーザと開発者は回答の 「信頼性とニュアンス」 を評価する事が出来る。

  • 帰属は、ソースが提供されるため、開発者が回答の質を迅速にレビュー出来るようにする。


興味深いのは、人間の評価者と強く相関するAutoAISという新しい技術だ。


つまり、この技術は人間の評価者の作業を自動化し、 (Bardのような) 大きな言語モデルによって与えられた回答を評価するプロセスをスケールする事が出来る。


研究者らは以下を共有している。

「人間による評価はシステム評価のゴールドスタンダードであると考えているが、AutoAISはシステムレベルでの人間の判断とよく相関しており、人間による評価が不可能な開発指標として、あるいはノイズの多いトレーニング信号としてさえ有望である事が分かった。

この技術は実験的なものだし、恐らく使用されていない。だが、これはグーグルが信頼出来る回答を生み出すために模索している方向性の1つを示している。

■ファクトアリティの応答の編集に関する研究論文


最後に、コーネル大学で開発された注目すべき技術がある (これも2022年末に開発された) 。この技術は、大規模な言語モデルが出力するものの出所を特定する別の方法を探求するもので、回答を編集して自分自身を修正する事も出来る。


コーネル大学は、スタンフォード大学と同様に、検索やその他の分野に関連する技術のライセンスを受けており、年間数百万ドルの収入を得ている。


大学の研究についていく事は、何が可能で何が最先端なのかを示してくれるので良い。


論文のPDFはRARR:Researching and Revising What Language Models Say, Using Language Models=言語モデルを使って、言語モデルが何を言っているのかを調査・修正=からダウンロード出来る (要約はこちら) 。


要約では技術について次のように説明している。

「言語モデル (LM) は、今では数回の学習、質問への回答、推論、対話などの多くのタスクで優れている。


ただし、サポートされていないコンテンツや誤解を招くコンテンツが生成される事がある。


殆どのLMには、外部証拠に帰属するための組み込みメカニズムがないため、ユーザーは自分の出力が信頼出来るかどうかを簡単に判断出来ない。


最近の生成モデルの強力な利点を全て保持しながら帰属を可能にするために、1) 任意のテキスト生成モデルの出力の帰属を自動的に見つけ、2) サポートされていないコンテンツを修正するために出力を事後編集し、元の出力を可能な限り保持するシステムであるRARR (Retrofit Attribution using Research and Revision=リサーチとリビジョンを使用した遡及帰属) を提案する。


... RARRは属性を大幅に改善し、そうでなければ、以前に調査された編集モデルよりも遙かに大きく元の入力を保持する事が分かった。


更に、RARRの実装には、少数のトレーニング例、大規模な言語モデル、標準的なWeb検索のみが必要である」


■グーグル Bardにアクセスするには?


グーグルは現在、Bardをテストする新規ユーザーを募集しており、現在は実験的なものとされている。グーグルはBardへのアクセスをここから提供する。




(サイトより引用=Bardは実験である。必ずしも正しくない。Bardは不適切だったり不正確な反応をするかもしれない。疑わしい場合は『グーグル・イット』ボタンを使ってBardの反応をチェック頂きたい。皆様のフィードバックにより、性能は向上する。どうか反応を格付けし、安全で無かったり攻撃的かもしれない場合はフラグをお建て頂きたい)


グーグルは、Bardは検索していないと公言しており、AIの黎明期に不安を感じている人々を安心させる筈だ。


我々は、恐らくこの10年で見た事のないような転換点にいる。


Bardを理解する事は、可能な事の限界と達成出来る事の将来を知るのに役立つため、ウェブ上で公開したり、SEOを実践したりする人にとって有益である。



拙訳終わり。長かった〜w。現状、検索手段と位置付けてないのが興味深い。

マサチューセッツ工科大経済学部によるChatGPTの生産性効果に関する実験的証拠についてという未査読共同論文 #ChatGPT

先ほどの記事の関連です。元の実験論文はアメリカ・マサチューセッツ工科大経済学部の共同執筆によるもので、査読は受けていないとの事。15Pほどなので訳してみました。

Experimental Evidence on the Productivity Effects of Generative Artificial Intelligence(生成型人工知能の生産性効果に関する実験的証拠について)

Shakked Noy MIT Whitney Zhang MIT 

March 2, 2023 Working Paper (not peer reviewed)


我々は、人工知能の生成技術である支援チャットボット「ChatGPT」の生産性への影響を、中級レベルの専門的な執筆作業の文脈で検証してみた。事前に登録されたオンライン実験では、444人の大学教育を受けた専門家に、職業に特化したインセンティブ付きの文章作成タスクを割り当て、その半数をランダムにChatGPTに公開した。


結果は、ChatGPTが実質的に平均生産性を向上させる事を示している。所要時間は0.8 秒減少した一方、出力品質は0.4秒増加する。ChatGPTは能力の低い労働者により多くの利益をもたらす事で生産性の分布を圧縮するため、労働者間の不平等は減少する。ChatGPTは補完するのではなく、作業者の努力をほぼ代替する。


作業者のスキルを向上させ、アイデアの生成と編集に向けてタスクを再構築し、ラフな下書きをしなくて良い。ChatGPTの利用は、仕事の満足度と自己効力感を高め、自動化技術に対する懸念と興奮の両方を高める。


※我々は、Emergent Venturesの助成金、George and Obie Shultz Fund、および助成金No.1745302に基づく全米科学財団大学院研究フェローシップからの財政的支援に感謝する。この論文に記載されている研究は、MITの実験対象としての人間の使用に関する委員会によって承認され、AEA RCT Registry (AEARCTR-0010882) に事前登録された。ダロン・アセモグルに感謝の意を表したい。


Nikhil Agarwal、David Autor、Lucas Barros、Talia Benheim、Amy Finkelstein、John Horton、SimonJäger、Ailidh Leslie、Jackson Mejia、Ilan Noy、Liora Noy、Emily Partridge、Charlie Rafkin、Aakaash Rao、Nina Roussille、Chris Roth、Frank Schilbach、Benjamin Schoefer、Lexi Schubert、Advik Shreekumar、Shine Wu、およびMIT Labor Lunchの参加者に有益なコメントを頂いたり会話を行った。


1.はじめに


近年のジェネレーティブ人工知能の進歩は、生産市場や労働市場に広く影響を与える可能性がある。ChatGPTやDALL-Eのような新しい生成AIシステムは、大量の訓練データから新しいテキストや視覚的な出力を作成するように促す事ができ、殆どの自動化技術の歴史的な例とは質的に異なっている。


それまでの自動化の波は、主としてコンピュータに簡単にコード化してプログラム出来る明示的な一連のステップからなる(Autor and Dorn, 2013年;Autor, 2015年の記事)タスクに影響を与えていた。創造的でコード化が困難なタスク (文章作成や画像生成など) は、ほぼ自動化を避けていた。このパターンは、現在生成AIシステムを支えているディープラーニング技術の出現によって変化する可能性があると研究者らは指摘した。


強力な生成AI技術の出現は、多くの古典的な疑問を新たな文脈で再導入する。自動化技術は定義上、人間の代わりに特定のタスクを実行する。しかし、より広い意味では、人間を特定の職業から完全に追い出したり、既存の人間の労働者を補完して生産性を高めたりする可能性がある。(Acemoglu and Restrepo、2020年;Boustan et al、2022年;Kanazawaほか)。自動化技術が人間の労働者をほぼ置き換えている限り、失業を増加させるかもしれない一方、総生産性への影響は小さいか、存在しない可能性がある。


主に労働者からの収入を資本の所有者(Acemoglu and Restrepo、2018年)に再分配する役割を果たしている。自動化が既存の労働者を補完する限りに於いては、生産性と賃金を上げ、価格を下げる事により、労働者、資本所有者、消費者に同時に利益をもたらす事が可能だ(Kleinberg et al., 2018年;Hoffman他、2018年;Agrawal et al., 2019年)。


例えば、ChatGPTのような強力な生成的ライティングツールは、助成金申請書やプレスリリースの作成を直接自動化する事により、担当執筆者やマーケティング担当者など特定のライターを完全に置き換える事が出来よう。その結果、文章の質は上がらないかもしれないが、人手を省いた結果賃金コスト削減が可能だ。また、ChatGPTのようなツールは、例えば、助成金申請者やマーケティング担当者の生産性を大幅に向上させる事が出来る。例えば、アイデアを最初のラフに変換するような、比較的ルーティンで時間のかかる執筆作業のサブコンポーネントを自動化させられる。この場合、こうしたサービスに対する需要が拡大し、雇用と賃金が増加し、企業の生産性が向上し、消費者はより安価な製品を購入出来る。また、労働者間の不平等にも影響が及ぶ可能性がある。低能力の労働者がChatGPTによってより多く助けられれば不平等は減少し、高能力の労働者が新しい技術を活用するのに必要なスキルを身につければ不平等は増加するかもしれない。


生成AIシステムは、こうしたうちどれをもたらすのだろうか。その答えは、ジェネレーティブAIシステムが既存のタスクにおける労働者の生産性にどのような影響を与えるか、という多くの疑問にかかっている。労働者の努力を代替したり、労働者のスキルを補完したりする事で、生産性に大きな影響を与えるか。能力の低い労働者と高い労働者、または異なるスキルプロファイルを持つ労働者に異なる影響を与えるか。労働者の仕事の楽しみ(Schwabe and Castellacci, 2020年)に影響を与えるか、などである。


本論文では、こうした質問に答えるための最初の一歩を踏み出す(1)。オンライン実験では、444人の経験豊富な大卒の専門家を採用し、それぞれに2つの職業に特化したインセンティブ付きの執筆タスクを完了させる。我々が頼りにする職業はマーケティング担当者であり、ライター、コンサルタント、データアナリスト、人事担当者、およびマネージャーを付与する。プレスリリース、短いレポート、分析計画、デリケートな電子メールの作成などのタスクは、こうした職業で実行される実際のタスクに似たように設計された20分から30分の割り当てで構成されている。実際、参加者の大半は、以前に同様のタスクを完了した事を報告し、割り当てられたタスクを日常業務の現実的な表現として評価している。参加者は、質の高い仕事を生み出すために、多額のボーナス支給という形で強力なインセンティブに直面する。


品質は、同じ職業で働く経験豊富な専門家 (盲検) によって評価される。評価者は、アウトプットを作業環境で遭遇したかのように扱うよう求められ、アウトプットを慎重に採点するよう奨励される。評価者は、全体的なグレードに加えて、文章の品質、コンテンツの品質、およびオリジナリティに対して個別のグレードを割り当てる。出力された各ピースは、3つであり、論文内の評価者間の平均相関関係は0.44であった。


ランダムに選ばれた50%の参加者 (参加グループ) は、最初のタスクと2番目のタスクの間にChatGPTにサインアップするよう指示され、その使用方法を説明され、有用であれば2番目のタスクで使用する事が許可されると告げられる。


代わりに、コントロールグループはLaTeXエディタOverleafにサインアップするように指示される。これにより、個人内および個人間の変動の組み合わせを使用してChatGPTの因果効果を推定する事が可能であり、最初のタスクのパフォーマンスは、不平等分析を可能にするベースライン能力の尺度として機能する。


参加者のアウトプットを収集し、総所要時間、タスクのさまざまなサブコンポーネントにかかった時間、仕事の満足度、自己効力感、自動化についての信念を引き出す。また、各参加者がタスクを実行している間、1分ごとに各参加者の出力のスナップショットを取得し、タスクでアクティブな時間の客観的な尺度を構築し、非参加グループと処理前のタスクでのChatGPTの使用を検出する。


実験計画の完全な説明、関連する調査アンケートのコピー、および中心的な対策を検証し、主な結果を拡張する追加の図は、オンライン付録に含まれている。サンプルに関する記述統計および残高と選択的消耗試験を表1に示す。脱落率は非参加グループで5%、参加グループで10%である。バランステストによると、13の処理前の特徴のうち、参加グループと非参加グループでは、2つの特徴 (雇用状況と人事担当者である事) に対してのみ僅かな有意差が認められた。事前処理タスクのパフォーマンスをコントロールする部分的な個人内デザインにより、選択的消耗が結果に与える影響は排除される筈である。また、主要な結果に対するLee (2009)の境界と、我々の結果をコントロールするバージョンも報告する。これは我々の結果が選択的消耗に対して非常に堅牢である事を確認するものである。


2. 結果


2.1 ChatGPTの利用状況


参加グループでは、治療を受けた参加者の92%がChatGPTへの登録に成功し(2)、81%が2番目のタスクでChatGPTを使用する事を選択しており、自己評価による平均有用性スコアは5点満点中4.4点である。


処理前に、被験者の約70%がChatGPTについて聞いた事があり、30%が以前に使用していた。自己申告による客観的な測定では、非参加グループの10-20%しか使用されていない。

つまり、2番目のタスクでは、参加グループと非参加グループの間に、実験的に誘発された使用率の差が少なくとも60ポイントある事を意味する。一部のコントロール参加者がこのツールを使用しているという事実は、ChatGPTの使用が生産性に与える影響について、我々の推定値が下限を示しているとなる。


2.2 生産性


生産性は、1分間あたりの収益として測定される。図1は、実験的介入がこの結果を劇的に増加させる事を示している。参加グループでは、治療後の作業にかかる時間が、非参加グループの平均27分に対して10分 (37%) 短縮された (p=0.000) 。参加グループの評価者の平均グレードは、0.45標準偏差 (p=0.000) 上昇し、全体のグレードと、執筆の質、内容の質、オリジナリティに関する特定のグレードでは、ほぼ同様の上昇となる。


図1のパネル (c) と (d) は、こうした効果が時間またはグレード分布の特定のポケットに限定されない事を示す。時間分布全体が左にシフトし (作業が速くなる) 、グレード分布全体が右にシフトする (品質が高くなる) 。個々の労働者レベルでは、図2は、最初のタスクで低い評価を受けた処理労働者は、グレードの増加と使用時間の減少の両方を経験し、高い評価を受けた労働者は、使用時間を大幅に短縮しながら、グレードレベルを維持する事を示している。


こうした結果は、2つの主要なインセンティブスキーム全体でほぼ同じで、回答者の80%をカバーするものとなった。1つは、回答者が提出ごとに受け取るポイントごとに1ドルを支払う 「線形」 スキーム (それぞれ1~7ポイントのスケールで評価される) 、もう1つは、回答者が6または7のグレードを取得した事で追加で3ドルを支払い、高品質な成果を生み出すための追加のインセンティブを与える 「凸」 スキームである。


図1:処理が生産性に及ぼす影響



※注:パネル (a) および (b) は、参加グループと非参加グループに分けて、第1および第2の課題における自己申告による所要時間と平均成績の平均値 (およびそれらの平均値の95%信頼区間) をプロットする。アクティブな時間の客観的な尺度では、結果は非常に似ているように見える。補足資料を参照。パネルはまた、結果変数 (タスク2とタスクの間の結果の個人内差) の個人評価者レベルのOLS回帰から、処理ダミー、評価者固定効果、インセンティブアーム固定効果、職業*タスクオーダー固定効果、作業者レベルでのクラスタリング。治療効果係数と標準誤差は、関連するインセンティブ群の結果の治療前標準偏差で割る事によって正規化される。パネル (c) - (d) は、2番目のタスクの参加グループ対非参加グループのアウトカム分布の生のグラフを表示する。


2つの補助的な介入により、更に詳しく調べる事が可能だ。参加者の20%が参加する1つの群では、参加グループと非参加グループの参加者に、各タスクに15分正確に費やす事を要求している。これにより、参加グループと非参加グループの努力は固定され、成績に差があっても、ChatGPTへのアクセスが生産能力に及ぼす純粋な効果として解釈出来る。この群では、処理によって成績が0.39標準偏差(p = 0.13)増加したが、その推定は不正確で、処理前の結果を得た(オンライン付録図A.7参照)。


処理グループの30%を含む別の群では、2番目のタスクを完了した後、回答者に最初のタスクの出力が表示され、必要に応じてChatGPTを使用して編集または置換する機会が与えられる。23%が回答をChatGPTの出力に置き換える事を選択し、25%がChatGPTを元の応答を編集するために使用しており、参加者がChatGPTを時間を節約する便利な方法に加えて出力品質を向上させる方法として見ている事を示唆している。


2.3 生産性の不平等


非参加グループは持続的な生産性の不平等を示し、最初のタスクで良いスコアを出した参加者は、2番目のタスクでも良いスコアを出す傾向がある。図2のパネル (a) が示すように、コントロール参加者の最初のタスクの平均グレードと2番目のタスクの平均グレードの間には0.49の相関関係がある。


処理グループでは、最初の不等式は治療によって半分消去され、第一課題と第二課題の成績の相関はわずか0.25 (傾きの差のp値=0.004) である。


この不平等の減少は、図に示されるように、最初のラウンドで低いスコアを獲得した参加者がChatGPTアクセスからより多くの利益を得るという事実によって推進されている。x軸の左端では、処理ラインと非参加ラインの間のギャップがはるかに大きくなっている。


2.4 人間と機械の補完性


ChatGPTは2つの方法で労働者の生産性を向上させる事が出来る。一方では、労働者が直接提出する満足出来る品質のアウトプットを迅速に生産し、作業に費やす時間を短縮する事で、労働者の努力を代替する事が出来る。その一方で、人間とChatGPTが協力して作業する事で、作業者のスキルを補完出来る可能性もある。例えば、ChatGPTがブレーンストーミングのプロセスを支援する場合や、素案を素早く作成して人間がその草案を編集して改善する場合などである。我々の実験では、補完性ストーリーの証拠は2つの形式で得られる可能性がある。 (a) 治療群の参加者が、ChatGPTの出力を編集するのにかなりの時間を費やしたり、より高い成績を得る事を期待してChatGPTを繰り返し促したりする事を観察出来る可能性がある事、 (b) 治療群の参加者の論文がChatGPTの生の出力よりも高い成績を得る事を観察でき、人間の入力が価値を付加する事を示唆している。


こうした証拠はいずれも観察されておらず、ChatGPTが主に作業者の労力を代替する事によって生産性を向上させている事を示唆するものである。治療を受けた参加者の68%がChatGPTの初期出力を編集せずに提出したと報告しており、治療を受けた参加者の平均は最初に大量のテキスト (おそらくChatGPTから) が貼り付けられているのを確認してから3分間だけ、タスクでアクティブになる。また、参加者がChatGPTテキストを貼り付けた後にアクティブになっている時間と、最終的に取得されるグレードとの間に相関関係はなく、処理された回答者は、評価者に付与する未加工のChatGPT出力よりも高い平均グレードを取得しない。つまり、人間の編集によってChatGPT出力が改善されているという証拠は見つからない。これは、参加者に強い金銭的インセンティブが与えられている場合でも、凸型インセンティブ群では当てはまる。


図2:初期グレード分布全体でのグレードと時間への影響


※注:この図は、回答者のタスク2グレード (パネル (a) ) とタスク2のタスク1グレードに費やした時間 (パネル (b) ) の散布図、等間隔のビニング応答を、参加グループと非参加グループ別に表示している。勾配は、ワーカーレベルの回帰によって計算された。


2.5 タスク構造


前述の説明で示唆されているように、ChatGPTは書き込みタスクの構造を大幅に変更する。図3のパネルAは、治療の前に、参加者が約25%の時間をブレインストーミングに費やし、50%が下書きを書き、25%が編集に費やしている事を示している。治療後、下書きの執筆時間の割合は半分以下になり、編集時間の割合は2倍以上になる。


2.6 スキル需要


仮にChatGPTが、他のスキルに比べて作文やコミュニケーションのスキルが低い人にとって特に有用なのであれば、利用可能な職業の選択肢を広げ、アイデアを効果的に紙に書くのに苦労している強力なアイデア生成スキルを持つ個人の収入を増やす事によって、労働市場に大きな影響を与える可能性がある。


この仮説について幾つかの検証を行う。人の相対的な文章作成能力の2つの尺度を構築する。まず、実験の最初に、参加者にコミュニケーション (文章と会話) 、問題解決、創造性のスキルを1から3までランク付けしてもらう。第二に、評価者は総合的な評価を与えるだけでなく、文章の質、内容の質、オリジナリティなどに基づいて個々のアウトプットを個別に評価する。その人の最初の課題の総合スコアと書き方のスコアとの間には別の尺度がある。


同様に、ChatGPTの個人レベルの利点の2つの尺度を構築する。まず、実験の最後に、治療グループの参加者に、仕事でChatGPTにアクセスするために毎月幾ら支払うかを尋ねる。次に、各治療参加者の成績が最初の課題から2番目の課題までどれだけ上がるかを測定する。前述の仮説の明確な証拠は見つからない。図3のパネルBは、ChatGPTに支払う平均的な意思は、我々の文章作成スキルの両方の測定値の3分位全体でフラットである事を示している:回答者は、文章作成スキルに関係なく、ChatGPTの毎月のサブスクリプションに対して月給の約0.5%を支払う意思がある。ChatGPTによる成績の向上は、相対的なライティングスキルの両方の尺度でほぼ横ばいである:比較的ライティングスキルが低い人は、異常に大きな成績の向上を経験する事が無かった。


図3:タスク構造とスキル需要への影響



※注:パネル (A) は、3つの独立したタスクコンポーネントでの自己申告による時間配分を示している。治療後の作業。パネル (B) は、他のスキルに比べて文章作成スキルが低い被回答者にとって、ChatGPTは大きなメリットがない事を示している。具体的には、左側の欄では、回答者は自己評価によるスキルランキングでソートされており、調査開始時には、コミュニケーションスキル、問題解決スキル、創造性スキルがランク付けされている。コミュニケーションを1位にランク付けした人は、2位と3位にランク付けした人と同様に、 「良い」 コミュニケーターと定義される。右側の列では、参加者が成績順に並べ替えられている。評価者は各論文に、文章の質、内容の質、オリジナリティのスコアという個別の総合点を与える。我々は 「良い人」 と定義した。平均書き込みスコアが全体のスコアを上回っている場合はcommunicators、 (回答者の約30%) 、両者が等しい場合は 「Medium」 (50%) 、全体が書き込みスコアを上回っている場合は 「Bad」 (20%) となる。一番上の行の結果は、参加者が自分の仕事でChatGPTにアクセスするために幾ら支払う意思があるかを示すものである (仮想的に引き出されたもの) 。下の行では、結果は最初のタスクと2番目のタスクの間の参加者の成績の向上である (全ての場所で、処理された参加者に制限する) 。


2.7 仕事の満足度と自己効力感


ChatGPTへのアクセスは仕事の満足度に影響を与える可能性がある。例えば、退屈な作業や煩わしい作業を自動化したり、より早く終わらせたりする事で、参加者をより幸せにする事ができる。あるいは、作業の中で最も楽しい部分を素早く自動化する事で、経験をあまり楽しめなくする可能性もある。同様に、参加者の能力を向上させる複雑で強力なツールに参加者がアクセスできるようにする事で自己効力感を高める事も、参加者に余計なものを感じさせる事で自己効力感を低下させる事もできる。それぞれのタスクの後に、参加者がそのタスクをどれだけ楽しんだかについての質問で仕事の満足度を測定し、タスクを完了している間にどの程度のスキル/効果を感じたかについての質問で自己効力感を測定する (どちらも1~10のリッカート尺度) 。


図4のパネル (a) は、ChatGPTが仕事の満足度を実質的に約0.40標準偏差 (p=0.000) 増加させる事を示している。パネルBは、参加者が次のような事実にもかかわらず、軽度かつ不正確に自己効力感を0.20標準偏差 (p=0.060) 増加させる事を示している。


殆どの場合、自分の代わりに努力させようとして使っている。参加者からの定性的なフィードバック (調査の最後にあるオープンテキストボックス) は、多くの人がこのツールの発見と使用を楽しんでいる事を示唆している。


2.8 自動化に対する信念


処理を受けた被験者の多くは、実験参加前にChatGPTを聞いた事がなかった (30%) か、使用した事がなかった (70%) 。したがって、ほとんどの人は基本的に初めてこの技術に出会い、タスクを書く上での有用性についての特訓を受ける。未来の自動化の波についての彼らの信念は、この出会いによってどのような影響を受けるのだろうか。


回答者が2番目のタスクを完了した後、3つの信念 (それぞれ1~10のスケール) を導き出す:自分の職業の労働者がAIに置き換えられる事をどれだけ心配しているか;AIが職業上の労働者の生産性を向上させるという楽観的な見方;そして、全体的にどのようにAIの将来の進歩について楽観的または悲観的に感じている。


こうした結果に対する処理の効果は、図4のパネル (c) に示されている。自動化への懸念は0.26標準偏差増加し (p=0.006) 、興奮は0.39増加し (p=0.000) 、正味の楽観度は約0.20増加する (p=0.037) 。


図4:主観的結果への影響



※注:パネル (a) と (b) は、治療群と対照群における治療前後の仕事の満足度と自己効力感(元は1から10の尺度で誘発され、平均0と標準偏差1に正規化される)を示すものである。ドットは平均値、エラーバーは平均値の95%信頼区間である。また、図1のように指定された回帰の処理効果の係数も表示される。パネル (c) は、治療群と対照群における自動化に関する信念を横断的に比較したもので、全て1~10段階で評価されている;第1問は「あなたの職業の労働者がAIに取って代わられる事をどれだけ心配しているか?」、第2問は「AIによって職場の労働者の生産性が向上する可能性について、どの程度楽観視しているだろうか」、第3問は「AIの今後の進化による影響をどう感じているか(1=非常に悲観的、10=非常に楽観的)」である。


2.9 2週間の追跡調査


参加者にとってのChatGPTの価値を示す1つの指標は、実験後もそれを使い続けるかどうかである。その後、参加者が実際の仕事でChatGPTを使用しているかどうかを追跡するために、最初の調査の完了から2週間後に再調査した。このフォローアップは、これまでに招待された423人の回答者のうち82%が回答しており、治療状況による回答率の差を示す証拠はない。


過去1週間に仕事でChatGPTを使用した事があるのは、前参加グループの被験者では33%であったのに対し、非参加グループでは18%であった。我々の主要な実験に参加したときに以前ChatGPTを使用していなかった労働者に限定すると、現在、処理を受けた労働者の26%と対照労働者の9%が仕事でChatGPTを使用している (差0.048のp値) 。ユーザーの平均有用性スコアは3.65/5.00で、こちらの主な実験よりも幾分低くなっているが、これは恐らく現実世界のタスクがより長く複雑であるためである。従業員への推薦状の作成、顧客サービスのリクエストへの対応、ブレインストーミング、検索エンジンのリクエスト、メールの下書きなど、報告するタスクの範囲は広い。


仕事でChatGPTを使用していない回答者の殆どは、これはチャットボットが文章の重要な部分を形成するコンテキスト固有の知識を欠いているためだと報告している。例えば、回答者は自分たちの文章が 「顧客に合わせて非常に具体的に作られており、リアルタイムの情報を含んでいる」 とか、 「 (彼らの) 会社の製品に固有の (そして) 」 などと報告している。


こうしたコメントは、我々の実験の重要な (そして固有の) 限界を指摘するものである。それは、比較的小規模で自己完結型のタスクが含まれており、タスクプロンプトで規定している以上のコンテキスト固有の知識が不足している事である。だが、ChatGPTが多くの中級レベルの専門的な執筆作業の生産性を向上させる事が可能だという我々の中核的な結果は、多くの回答者が実際の仕事でChatGPTを使用する事を選択しているという事実によって裏付けられている。また、治療群が対照群よりもChatGPTを使用する可能性が実質的に高いという事実は、ChatGPTの実際の職業活動への普及がまだ非常に初期段階であり、技術に関する知識や経験が不足しているために多くの人が使用していない事を示唆するものである。


追跡調査での仕事に対する全体的な満足度には、前者の参加者と非参加者の間に差はない。とはいえ、回答者の多くが仕事でChatGPTを使い始めたのはここ1、2週間の事であり、ChatGPTへのアクセスが全体的な仕事の満足度に影響するまでには更に時間がかかるかもしれない。


3.ディスカッション


中間レベルの専門的な執筆作業を行う大卒の専門家は、ChatGPTへのアクセスを与えられると、生産性が大幅に向上する。ジェネレーティブ・ライティング・ツールは、低能力労働者の出力品質を向上させながら、労働時間を短縮し、高能力労働者の品質基準を維持しながら、大幅に高速化する事を可能にする。集計レベルでは、ChatGPTは実質的に生産性分布を圧縮し、不平等を減らす。また、既に多くの労働者が実際の仕事で使用している。実験的な証拠によると、ChatGPTは労働者のスキルを補完するのではなく、労働者の努力の代わりになる事が多く、労働者の需要の減少を引き起こす可能性があり、資本所有者が労働者を犠牲にして利益を得る事で、分配に悪影響を及ぼす事が示唆されている。


この実験には、列挙する価値のある幾つかの重要な限界がある。第一に、タスクは比較的短く、自己完結型であり、状況に応じた知識の次元が欠けているため、ChatGPTの有用性の推定値が膨らむ可能性がある。仕事の満足度と自己効力感の結果も同様に限られており、2週間後の実際の仕事の満足度では、治療群と対照群の間に差がない事からも明らかなように、労働者の仕事全体に対する感情ではなく、小さな仕事の楽しみを反映している。次に、実験はその性質上、選択された職業に対するChatGPTの直接的かつ即時的な効果のみを捉える。労働市場や生産システムがChatGPTのような技術の出現に適応するにつれて、多くの間接的、強化的、または相殺的な 「一般均衡」 効果が生じるだろう。ChatGPTの効果は、職業、タスク、スキルレベルによっても異なる可能性が高い。


ChatGPTとその後継者が労働市場にどのような影響を与えるかは、時間と将来の研究によってのみ完全に明らかになるだろう。現時点では、私たちが提供した証拠は、生成AI技術が労働者に顕著な影響を与える事を示唆しており、既に始まっていると言えよう。


参考文献


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そして、「ロボットと仕事:アメリカの労働市場からの証拠」 Journal of Political Economy, 2020, 128 (6) , 2188–2244。


Agrawal, Ajay, Joshua S Gans, and Avi Goldfarb, 「人工知能:予測の自動化による曖昧な労働市場への影響」 Journal of Economic Perspectives, 2019, 33 (2) , 31–50。

著者、David, 「なぜ今でも多くの仕事があるのか?ワークプレイスオートメーションの歴史と未来、」 Journal of Economic Perspectives, 2015, 29 (3) , 3–30 and David Dorn,“The Growth of Low-Skill Service Jobs and the Polarization of the US Labor Market,”American Economic Review, 2013, 103 (5) , 1553–1597。

Boustan, Leah Platt, Jiwon Choi, and David Clingsmith, 「組立ライン後の自動化:コンピュータ化された工作機械、米国における雇用と生産性」 NBER Working Paper, 2022。


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Kanazawa, Kyogo, Daiji Kawaguchi, Hitoshi Shigeoka, and Yasutora Watanabe, 「AI・スキル・生産性:タクシードライバーの事例」 NBER Working Paper, 2022。


Kleinberg, Jon, Himabindu Lakkaraju, Jure Leskovec, Jens Ludwig, and Sendhil Mullainathan,“Human Decisions and Machine Predictions,”Quarterly Journal of Economics, 2018, 133 (1) , 237–293。


Lee, David S, 「トレーニング、賃金、サンプルの選択:治療効果の鋭い境界の推定、」 The Review of Economic Studies, 2009, 76 (3) , 1071–1102。


Schwabe, Henrik and Fulvio Castellacci, 「自動化、労働者のスキルと仕事の満足度、」 Plos one, 2020, 15 (11) , e 0242929。


表1:記述統計とバランステスト


非参加グループ

参加グループ



N

Mean

SD

N

Mean

SD

Difference

構成


年収(ドル)

215

71,808

47,648

197

76,267

51,271

4,458

在職年数

228

10.63

9.28

212

10.07

8.48

-0.564

雇用

220

0.9

0.29

207

0.96

0.2

0.052**

大卒

229

1

0.07

215

1

0.07

0









職業


人事プロフェッショナル

229

0.06

0.24

215

0.11

0.31

0.046*

コンサルタント

229

0.13

0.33

215

0.11

0.32

-0.015

データ・アナリスト

229

0.11

0.32

215

0.11

0.31

-0.007

助成金書類作成者

229

0.16

0.36

215

0.17

0.38

0.015

マネージャー

229

0.42

0.5

215

0.41

0.49

-0.014

マーケッター

229

0.12

0.32

215

0.09

0.29

-0.025









最初のタスクのパフォーマンス


タスク 1 の所要時間 (分)

221

26.22

13.2

209

26.59

15.43

0.374

グレード タスク 1 (1-7)

228

3.72

1.34

208

3.89

1.31

0.172

職務満足度タスク 1 (1-10)

228

2.54

212

212

6.34

2.36

0.019

自己効力感タスク 1 (1-10)

228

6.89

2.11

212

6.91

2.14

0.02

※注:この表は、サンプルの記述的特性の平均と標準偏差を、治療群と対照群に分けてプロットしたものである。右側の列は、治療と対照の平均の差を示している(有意水準:※10%、※5%、※1%)。



(1)機械学習の予測タスクへの応用は研究されているが、生成タスクへの応用は研究されていない。

(2)我々の調査は、ChatGPTがほぼ常にアップしていたアメリカ東部標準時間午後5時の後にのみほとんどアクティブになり、非常に高いサインアップ率となった。それにもかかわらず、治療を受けた回答者の約8%は、登録を妨げる特異な技術上の困難に直面した。


(文中敬称略)


拙訳終わり。論文の翻訳は殆どやった事が無いので、ご専門家の叱咤をお待ちするところです。論文には、日本の研究者の名前が見られます。どこの研究機関に御所属か存じませんが、こういう方面にご興味をお持ちのメディア関係者はコンタクトをお取りになられては如何でしょうか。

国際報道研究所「プーチンのウクライナに対する戦争はメディアに対する戦争でもある」 #ウクライナ戦争



国際報道研究所(International Press Institute=IPI) というサイトが、ウクライナ戦争はロシアのメディアに対する戦争でもあるとの問題提起を、様々なデータを踏まえながら解説しています。以下、拙訳(2023年2月14日付け)。

IPI data: Putin’s war against Ukraine is also a war against the media(IPIデータ:プーチンのウクライナに対する戦争はメディアに対する戦争でもある)

Press release: IPI documents more than 900 attacks on journalists and media in Russia and Ukraine since start of Russia's full-scale invasion(プレスリリース:ロシアによる本格的な侵攻開始以降、ロシアとウクライナで900件以上のジャーナリストやメディアに対する攻撃があったことをIPIが記録)

Feb 14, 2023

国際報道研究所は、プーチンによる全面的な侵略戦争が始まってから、ロシアとウクライナにおける物理的な攻撃、検閲、嫌がらせ、逮捕、その他の報道の自由に対する侵害の900件以上の事例を記録してきた。

こうした攻撃の大部分はロシア軍やロシア当局によるものであり、プーチンのウクライナに対する戦争が報道機関に対する戦争でもある事を浮き彫りにしている。

IPIのデータによると、ウクライナのジャーナリストはこの戦争による肉体的な残虐行為のほぼ全面的な被害者である一方、ロシアのメディアは深刻な法的嫌がらせや抑圧に直面している。ウクライナでは少なくとも10人のジャーナリストが職務中に殺害された。IPIによると、他にも100件以上の物理的攻撃やジャーナリストの安全を脅かす脅迫がウクライナで確認されており、戦争を取材していた数十人のジャーナリストがロシアの砲火や砲撃を受けた。一方でIPIは、ロシアでの開戦以来600件以上の報道の自由が侵害されていることを記録している。内訳を見ると、ジャーナリストが逮捕され刑事訴追された160件や、戦争に関する報道を理由にニュースサイトが閉鎖された187件も含まれている。

2022年2月24日のロシアによるウクライナへの全面侵攻以来、IPIは両国におけるメディアの自由の侵害やジャーナリストへの脅迫を組織的に監視してきた。私たちの公開データベースであるIPIウクライナ戦争報道自由トラッカーでは、ウクライナ戦争を取材するジャーナリストに対する物理的攻撃やその他の攻撃、検閲行為を記録してきた。そこには、ジャーナリストの逮捕や刑事告発、抑圧的なニューメディア法、情報へのアクセスの制限などがある。

■データからの主な発見

• 本格的な侵攻開始以降、ロシアとウクライナでジャーナリストやメディアに対する違法行為や脅迫が910件発生した。
• これらの脅威の80%はロシア軍または当局によるものである。他の10%のケースでは、犯人は不明だが、これにはロシア系と疑われるサイバー攻撃も含まれる。
• ウクライナでは少なくとも10人のジャーナリストが戦争取材中に殺された。
• 戦争関連の報道のためにロシアで160人のジャーナリストが逮捕され、刑事訴追された。
• ロシアでは、戦争に関するニュースを掲載したとして187件のウェブサイトがブロックされた。

IPI_Tracker_Attacks-by-Country-and-Source-of-incident
(サイトより引用)
■ウクライナ

• ウクライナでは、IPIは開戦以来300件の報道の自由に対する脅迫や侵害を記録しているが、殆どがロシア軍による物理的、言語的、またはオンライン攻撃である。
• これには、100件を超える物理的な攻撃やジャーナリストの安全に対する脅威が含まれており、戦争を取材していた数十人のジャーナリストがロシアの砲撃や砲撃の脅威にさらされていた。
• 30人以上のジャーナリストがこのような攻撃で負傷した。
• IPIのトラッカーは、ウクライナで12人のジャーナリストが死亡した事を記録しており、そのうち10人が取材中に殺害されたことが確認されている。
• また、ウクライナのメディアインフラに対する30件近い攻撃や、ウクライナの報道機関に対する数十件のサイバー攻撃を記録している。
 
■ロシア

• ロシアでは、本格的な侵攻が始まって以来、IPIは610件の違法行為を記録している。これらのほとんどは、メディアが仕事をするのを禁止する検閲と規制の行為や、ジャーナリストに対する逮捕と刑事告発である。
• 少なくとも187件のニュースサイトが戦争報道を理由にブロックされた。
• ロシアの民間および軍当局は、メディアに対して少なくとも121件の出版禁止、削除および強制削除命令、罰金、その他の行政罰を科している。
• 少なくとも160件の事件で、ジャーナリストは戦争に関連した事件でロシア当局に拘束、逮捕、起訴されている。大半が、抗議やデモを取材していたジャーナリストの逮捕である。

■戦争がメディアに与えた打撃

IPIのフレーン・マロエビッチ事務局長は、「我々のデータから、このウクライナへの侵略戦争で、メディアが明らかにロシア軍と当局の標的になっている事が確認された。残虐行為と計り知れない人的被害が増加する中、プーチンのウクライナに対する侵略戦争は、この地域のジャーナリストや独立メディアに特に大きな損害を与えている」と述べた。

「こうした攻撃に関して我々が収集したデータは、両国におけるメディアに対するプーチンの戦争の性質、範囲、そして残虐性と、この戦争について独立して報道し続ける多くのジャーナリストが直面するリスクを示している。IPIのグローバルネットワークは、ウクライナの勇敢な同僚たちとロシアの独立メディアコミュニティを支持し、彼らのコミュニティのため、そして世界中の人々のために、ロシアの戦争の恐怖を報道し、記録しようとしている」。

■メディアへの警鐘

IPIウクライナ戦争報道自由トラッカーにアクセスしてデータを調べ、最新情報を確認頂きたい。上記のデータは、IPIが2月10日時点で収集した最新の情報を反映したものである。

(文中敬称略)

拙訳終わり。

アメリカの戦争研究所(ISW)による、ロシア軍攻勢に関する2月11日時点の評価 #ウクライナ戦争


アメリカの戦争研究所(Institute for the Study of War=ISW)による、ロシア軍攻勢に関する2月11日時点の評価が配信されていたので拙訳してみます。マップはサイトからの引用です。


Russian Offensive Campaign Assessment, February 11, 2023(アメリカの戦争研究所(ISW)による、ロシア軍攻勢に関する2月5日時点の評価 #ウクライナ戦争)


Feb 11, 2023 - Press ISW


Riley Bailey, Kateryna Stepanenko, Grace Mappes, Angela Howard, and Frederick W. Kagan


February 11, 9 pm ET


ロシアのウクライナ侵攻に関するISWのインタラクティブマップはこちらを参照されたい。このマップは、このレポートに存在する静止画マップ共々毎日更新する。

ウクライナ軍当局者や戦争を支持するロシア民族主義者の声は、ロシア軍の現状においてロシアがドネツク州で大規模な全面攻撃を行う能力を軽視している。ウクライナ主要軍事情報局 (GUR) のアンドリー・チェルニャーク代表は、ロシアには2022年のロシア侵攻記念日に合わせて2月24日に大規模な攻撃作戦を開始するために必要な資源がないと述べた[1]。 チェルニャークは、ロシアが今後数週間でウクライナ東部で攻撃を強化する準備をしており、現在ウクライナの防衛の弱点を探していると指摘した。ISWは以前、ロシア軍がスヴァトーヴ-クレミンナ線の主導権を取り戻したが、攻勢はまだ完全な軌道に乗っていないと評価した[2]。 ウクライナ東部軍集団報道官のセルヒー・チェレバティ大佐は、ロシア指導部がルハンスク州とドネツク州の行政境界の奪取を命じた事にも言及し、バフムートでのロシア軍の粉砕作戦は、ロシアが迅速かつ強力な攻撃作戦を実施出来ない事の 「象徴」 であると述べた [3]。


ロシアの軍事ブロガーたちは、ロシア政府が大規模な攻撃を実行するとの見通しに意気消沈しているように感じられる。ドネツク人民共和国 (DNR) のアレクサンドル・ホダコフスキー司令官は、ロシア軍が大規模な攻撃を行うために戦闘力を蓄積するのではなく、小規模な粉砕前進に限られた資源を浪費している理由を疑問視した[4]。 別の軍事ブロガーは、ホダコフスキーの懸念を増幅させ、ロシアの大統領府関係者がロシアの攻撃に対して達成不可能な期待を作り出していると非難した[5]。


ドネツク州ヴフレダル周辺で報告されたロシア軍の大攻勢と戦術的失敗は、ロシア軍が決定的な攻撃作戦を開始する事が出来るというロシアの超国家主義者コミュニティの信念をさらに弱めた可能性が高い。ロシア政府系の著名な軍事ブロガーは、ロシア軍がヴフレダル攻略のための攻勢の最初の数日間に迅速な前進に失敗し、ウクライナ軍の急速な予備兵力の同地域への移動により、ロシア軍は1月末までに主導権を失ったと主張した[6]。 軍事ブロガーは、ウクライナ軍がヴフレダル地区でロシアの機械化部隊の無秩序な縦隊を破壊している様子を撮影したバイラル映像を受け、ロシアによるヴフレダル攻略の攻勢は最高潮に達した可能性が高いと評価した[7]。 ロシアの軍事ブロガーは映像をとらえて、ロシア軍司令部がウクライナでの戦争を通してロシア軍を苦しめたのと同じ失敗を繰り返していると批判し、ある著名な軍事ブロガーはこのような事件はロシア軍がドネツク戦線全体で攻撃を行う事が出来ない事を示していると主張した[8]。


バフムート地区での限定的だが重要なロシアの前進と、ウクライナの他の場所での意味のある前進の欠如との間の格差は、ロシア軍が伝統的な機械化機動戦によって急速な前進を確保出来ないという軍事ブロガーとウクライナの観測を裏付けるものかもしれない。ISWが観察したロシアの戦術の限られた映像によれば、ロシア軍司令部は、都市侵入戦術を用いた小規模な編成でバフムート地域に最精鋭部隊を展開している[9]。 こうした戦術は、バフムート地域に於けるロシアの戦術的な著しい前進をもたらし、ウクライナ軍がバフムートからの撤退を選択すれば作戦利益をもたらす事が出来るようである。ドネツク州の他の場所やスヴァトヴェ-クレミンナ線沿いのロシアの攻撃作戦は、これまでのところ作戦上の重要性を伴わない僅かな前進にとどまっている。ISW は、バフムートの作戦とは別の地域で、ロシア軍が、精鋭ではなく、通常の機動小銃、 海軍歩兵、および戦車部隊による、より伝統的な機械化機動戦の戦術に従事している事を示唆す る限られた映像を観察した[10]。。これまでに観察されたすべての編成は、戦争の初期段階で戦闘不能となり、動員 された人員で再構成された可能性が非常に高い。ロシア軍は、ISW が予測したように、召集後の短期間で効果的な機械化攻勢作戦を実施するための動員 人員の準備ができなかったようである[11]。適切な車両、弾薬、その他の資材の不足が、これまでのロシアの機械化機動戦術の非効果性に寄与し ていると思われる。ロシア軍は、バフムートで使用している戦術が密集した都市環境に適している事、またロシア軍がウクライナ東部で同様の方法で大規模な攻勢を行うために必要な精鋭部隊の数を欠いている事から、バフムート地域からより広い地域へアプローチを拡大する事は出来ないと思われる。将来のロシア軍機械化攻勢作戦の見通しに関する ISW の評価は、前線全体にわたるロシア軍の戦術を描いた利用可能な映像が限られているため、信頼度が低いものとなっている。


ロシア政府がワグネル・グループの金融家エフゲニー・プリゴジンと彼の傭兵を脇に追いやり続ける中、本人はロシアでの影響力挽回を試みている。2月10日、プリゴジンはロシア政府系の著名な軍事ブロガー、セミヨン・ペゴフ (通称ワルゴンゾ) とのインタビューで、下落しているワグネル派傭兵の評判の改善を試みた。プリゴジンは、ワグネルの論争に関する一連の質問、例えば、徴兵された囚人の多くの死傷者と効果のなさ、脱走兵の処刑、徴兵された軍隊が消耗品として扱われている事や、プリゴジンによるロシア国防省 (MoD) への厳しい批判と彼の政治的野心と思われるもの、ウクライナを 「非ナチ化」 するために戦ったにもかかわらず 「第三帝国の象徴」 を付けたワグネルの傭兵などの質問に回答した[12]。 プリゴジンは、ワグネルが刑務所での採用を中止したのは、不特定の機関 (恐らくロシア国防省) との採用を許可する協定が失効したからである事を特に認めた。プリゴジンは、ロシアの通常軍を批判した事はないと虚偽の否定をし、ロシア軍司令部とロシア軍部隊との間の不十分なコミュニケーションや、広く批判されている専門化の取り組みに関して、ロシアの軍事ブロガーの間で一般的に表明されている不満に似ていると、自身の批判を不正確ながら示した。プリゴジンは政治的野心を否定し、長年の敵であるサンクトペテルブルクのベグロフ知事を攻撃した。


ロシア政府は、プリゴジンから刑務所での徴兵権を奪い、情報空間に於ける本人の影響力を狙う事で、そのカリスマ性を薄めようとしている。ワルゴンゾのインタビューに加えて、ワグネルとプリゴジンをメディアで取り上げる事を控えるよう明確に要求した、ウクライナでの戦争を報道するための規則の概要をまとめた文書を、ワグネル系の軍事ブロガーが入手したからである[13]。 この文書はまた、報道関係者や軍事ブロガーに対し、ワグネルと関係があるとされるウクライナに於けるロシア合同軍副司令官セルゲイ・スロヴィキン陸軍大将を称賛する事を控えるよう求めている[14]。 この軍事ブロガーは、この文書の真偽について確信が持てないと述べているが、ロシア国防省とロシア政府はISWが以前に観察していたように、既にワグネルとプリゴジンに言及する事を意図的に避けていた[15]。


プリゴジンは、ウクライナ戦争に対するロシア政府の非現実的な目標を過小評価する事で、論争から注意をそらそうとした可能性が高い。プリゴジンは、ロシア軍がドネツク州の行政境界線に到達するには最大2年、東からドニプロ川に進撃するには3年かかると予測した。プリゴジンは、ロシア政府が英仏海峡に到達するためには、ロシア社会を抜本的に軍事化する必要があると付け加えた。それは、NATOを破壊するというロシアの目的を誇張するか、あるいは海峡沿岸への迅速な電撃戦を行う事を目的とした冷戦時代のソ連の戦争計画に言及するかのいずれかであろう。プリゴジンは、ロシア軍司令部がドネツク州で大規模な攻勢を維持し、ロシア国防省との相対的な名声を再確立する能力があるという、ロシア情報空間内の現在の懸念に貢献しようとした可能性が高い。ワルゴンゾのインタビュー自体は、恐らくプリゴジンに対するロシア政府の待ち伏せであり、ワグネル論争に世間の注目を集める事を目的としていた。プリゴジンはこのインタビューを自分の名声を高めるチャンスと考えたのだろうが、逆に終始守勢に立たされた。


プリゴジンのロシア政府の軍事作戦に対する批判は、かつてのロシアの過激派イゴール・ガーキンの修辞的アプローチに似ている。ガーキンは以前、2014年にクリミアとドンバスで代理武装組織を率いてロシア政府を支援していたが、2014年7月にスロヴィャンスクを明け渡した後、ロシア政府から影響力を剥奪された。ガーキンはロシア政府とロシア軍司令部を辛辣に批判するようになり、ロシアの過激な民族主義者の間での名声を回復しようと努めた。プリゴジンの、ロシアの攻撃の見通しについての何時もとは違うニヒリズム的な予測は、ガーキンの予測をよく反映している。プリゴジンもまた、並行する軍事力を活用して政治的影響力を得る能力を失いつつある、辛辣な熱狂者に変わりつつある可能性がある[16]。 一方、現在のロシアの攻撃が急速に失速すれば、通常型ロシア軍のスターは再び衰え、プリゴジンが意義と機会を取り戻す道が再び開かれるかもしれない。


ロシア軍は2月10日から11日にかけて一晩中、ウクライナ南部を空爆、ミサイル攻撃、空からと海上からのドローン攻撃で標的とした。ウクライナ当局は、ウクライナ軍がロシアの無人機24機のうち20機とKh-101ミサイルを一晩で迎撃したと報告した[17]。 ロシア軍は主にザポリッジャ、ミコライウ、ドニプロ、クリュリィ・リハ、フメリニツキーの各都市のエネルギーインフラを攻撃した[18]。 ジオロケーション映像には、ロシア軍がオデーサ州 (黒海沿岸のオデーサ市の南28 km) のザトカ道路・鉄道橋を海軍の無人機で攻撃した事が記録されており、ロシア軍が海軍ドローンを運用した初の事例となった[19]。 映像は橋が深刻な損傷を受けた可能性を示唆しているが、実際の損傷の程度は現在のところ不明である。ロシア軍はスネークアイランドへの空爆も行っており、ナタリヤ・フメニュク南方軍共同調整報道センター長は、ロシア軍がウクライナ南部での攻撃行動を忘れていない事を示すためにこれらの空爆を行ったと示唆した[20]。 ISWは、ロシア軍は現在、ウクライナ南部を全面的に攻撃して脅かす能力を欠いていると評価し続けている。ウクライナ作戦司令部南部は、ロシア軍がモルドバとの国境地帯でパニックを誘発しようとしていると述べた[21]。


■重要なポイント


  • ウクライナ軍当局者や戦争を支持するロシア民族主義者の声は、ロシア軍の現状においてロシアがドネツク州で大規模な全面攻撃を行う能力を軽視している。

  • ドネツク州ヴフレダル周辺で報告されたロシア軍の最高潮と戦術的失敗は、ロシア軍が決定的な軍事的努力を開始する事が出来るというロシアの超国家主義者コミュニティの信念をさらに弱めた可能性が高い。

  • バフムート地域に於ける限定的だが重要なロシア軍の前進と、ウクライナの他の地域に於ける意味のある前進の欠如との間の格差は、ロシア軍が伝統的な機械化機動戦によって迅速な前進を確保する事が出来ないという軍事ブロガーとウクライナの見解を支持するかもしれない。

  • ロシア政府が彼と彼の傭兵を脇に追いやり続ける中、ワグネル・グループの金融家エフゲニー・プリゴジンはロシアでの影響力低下を救おうとしている。

  • ロシア軍は2月10日から11日にかけて一晩中、ウクライナ南部を空爆、ミサイル攻撃、空からのドローン攻撃、海上からのドローン攻撃で標的とした。

  • ロシア軍はスヴァトーヴとクレミンナ付近で攻勢作戦を続けた。

  • ロシア軍は引き続きドネツク州での攻撃作戦を優先している。

  • ロシア占領当局は、占領下のザポリージャ州の北にあるカホフカ貯水池を排水している可能性が高い。

  • ワグネルグループの投資家エフゲニー・プリゴジンは、ワグネルグループとロシア国防省 (MoD) との間の協定が失効したため、ワグネルグループがロシアの刑務所内での人員募集を停止した事を確認した。



(サイトより引用)

ロシアの戦争犯罪について詳細に報道しないのは、西側メディアで頻繁に取り上げられているし、我々が評価・予測している軍事作戦に直接影響を与えないからである。ただし、我々は、このような犯罪活動がウクライナの軍隊及び住民、特にウクライナの都市部に於ける戦闘に及ぼす影響について評価し、発表し続ける。我々は、発表書に記載されていないにもかかわらず、このようなロシアによる武力紛争法、ジュネーブ条約及び人道に対する違反を非難して止まない。


  • ロシアの主な取り組み:東部ウクライナ (2つの下位の主な取り組みで構成)

  • ロシア従属の主な努力#1:ルハンスク州の残りを占領し、ハルキウ州東部に西進してドネツク州北部を包囲

  • ロシア従属国の主な努力#2:ドネツク州全体を占領

  • ロシア支援の取り組み-南軸

  • ロシアの動員と戦力化の取り組み

  • ロシア占領地域での活動


※ロシアの主な取り組み:東部ウクライナ


※ロシア下位の主な取り組み#1-ルハンスク州(ロシアの目的:ルハンスク州の残りを占領し、ハルキウ州東部とドネツク州北部への攻撃作戦を継続)


ISWは、現在のロシアの最も可能性の高い行動方針 (MLCOA) がルハンスク州で差し迫った攻撃的努力であると評価し続けており、したがって毎日のキャンペーン評価の構造を調整している。我々は、もはや東ハルキウと西ルハンスク州地域をウクライナの反攻の一部として含まず、この地域を東ウクライナに於けるロシアの主要な取り組みの従属的な部分として評価する。ロシアの主要な努力の一環としてのルハンスク州の評価は、将来、ウクライナの反攻行動がここや他の戦域で継続される可能性を排除するものではない。ISWはウクライナの反攻作戦が発生した際に報告する。


様々な報道によると、ロシア軍は2月11日、ロシア軍の進軍に関する主張が対立する中、スヴァトーヴ北西で攻撃作戦を継続した。ロシアの軍事ブロガーは、フリャニキフカ (スヴァトーヴの北西53キロ) 付近で戦闘が続いており、ロシア軍がドヴォリチナ (スヴァトーヴの北西55キロ) の支配権を確立したと主張した[22]。 ロシア国防省 (MoD) は、ロシア軍が2月10日にドヴォリチネ (スヴァトーヴの北西53 km) を完全に占領したと主張しており、この軍事ブロガーが二つの入植地を混同した可能性がある[23]。 別の著名な軍事ブロガーは、ロシア軍がドヴォリチネを捕らえたかどうかを評価するのは時期尚早であると主張したが、別の軍事ブロガーは、この軍事ブロガーはドヴォリチネをDvorichnaと間違えた可能性が高いと指摘した[24]。 ISWは、ロシア軍がドヴォリチネにいるという視覚的な確認も、ロシア軍がドヴォリチナに近づいたという確認も行っていない。ロシアの軍事ブロガーも、ロシア軍がステルマヒフカ (スヴァトーヴの西15 km) への攻撃を行ったが失敗したと主張している[25]。


ロシア軍は2月11日もクレミンナ地区で攻勢作戦を続けた。ウクライナ参謀本部は、ウクライナ軍がクレミンナ、シェピラブ (クレミンナの南8キロ) 、ビロホリフカ (クレミンナの南12キロ) 付近でロシア軍の攻撃を撃退したと発表した[26]。 また、ロシア軍がクレミンナ地域の部隊の集団化を強化しているとも発表した[27]。 2月10日に公開された映像によると、クレミンナ地区の第98近衛空挺師団のロシア兵が映っているという[28]。 2月10日に公表された位置情報の映像は、ロシア軍がシェピーラブの西で僅かな前進を確保した可能性が高い事を示している[29]。 ロシアの軍事ブロガーは、ロシア軍がディブロワ (クレムニナの南西5 km) からザリシュネ (クレムニナの西17 km) の方向に攻撃を行ったと主張した[30]。


(サイトより引用)


※ロシア下位の主な取り組み#2:ドネツク州(ロシアの目的:ドンバスにあるロシアの代理人の主張する領土であるドネツク州の全域を占領)


ロシア軍は引き続きドネツク州での攻撃作戦を優先している。ウクライナ軍のヴァレリー・ザルジヌイ最高司令官は2月11日、マーク・ミリー米統合参謀本部議長に対し、ロシア軍は毎日ドネツク市方面で最大50回の攻撃を行い、バフムート周辺でも常時攻撃を行っていると述べた[31]。 ザルジヌイは、ヴフレダルとマリンカ周辺で激しい戦闘が続いており、ウクライナ軍はドネツク州で以前に失った位置を取り戻せたと述べた[32]。 ザルジヌイは、効果的な大砲が前線のこれらの地域に於ける戦場での成功の鍵であると付け加え、これには武器と弾薬の両方が必要であると指摘した[33]。


ロシア軍は2月11日もバフムート周辺で攻勢作戦を続けた。ウクライナ東部軍集団の報道官セルヒー・チェレバティ大佐は、過去24時間にバフムート地域でロシア軍とウクライナ軍の間で39回の戦闘があったと述べた[34]。 ウクライナ参謀本部は、ウクライナ軍がバフムート、クラスナ・ホラ (バフムートの北6キロ) 、イヴァニフスク (バフムートの西6キロ) 付近でロシア軍の攻撃を撃退したと報告した[35]。 2月11日に公開された位置情報付きの映像には、クラスナ・ホラの東部を自由に歩くロシア軍の姿が映っており、ウクライナ軍が入植地から撤退した事を示している可能性が高い[36]。 ロシアの軍事ブロガーは、ロシア軍がクラスナ・ホラのウクライナ軍を包囲し、ワグネルグループの戦闘員が現在パラスコヴィフカの南東部 (バフムートの北7キロ) に陣取っていると主張した[37]。 別のロシアの軍事ブロガーも、ワグネルグループの分子がフェドリフカ (バフムートの北18キロ) の方向で襲撃を行ったと主張した[38]。 2月11日に投稿された位置情報の映像は、ワグネルグループの戦闘員がバフムートの北東郊外で僅かな前進を確保した可能性が高い事を示している[39]。 ロシアの軍事ブロガーは、ロシア軍がバフムート東郊で攻撃を行ったと主張した[40]。 2月11日に公開されたジオロケーション映像には、イヴァニフスク西方の高速道路T 0504に沿ってシヴェルスキー・ドネツ運河に架かる橋が破壊されている様子が映っており、ロシアの情報筋は、ウクライナ軍がバフムートからの撤退条件を決めるために橋を破壊したと主張した[41]。 ウクライナ軍は橋を破壊した可能性は低く、引き続きバフムートを防衛するため、重要な地上通信線 (GLOC) を維持するつもりである可能性が高い。ドネツク人民共和国 (DNR) 人民民兵は、第1軍団のDNR第132旅団がトレツク (バフムートの南西23 km) の方向に不特定の前進をしたと主張した[42]。


ロシアの軍事ブロガーらのこれまでの主張とは異なり、ロシア軍が今後数週間のうちにシヴェルスクを占領するための協調的な取り組みを開始する可能性は極めて低い。最近、著名なロシアの軍事ブロガーは、ワグネルグループがソレダル (シヴェルクの南20 km) の北へ進軍している事や、ルハンスク州ビロホリフカ (シヴェルクの北東13 km) を占領したとするロシアの主張に対し、ロシア軍がシヴェルクを包囲する補完的な取り組みを開始していると示唆した[43]。 ISWは、ロシア軍がこの占領地を走行するには、北、東、南からシヴェルスクの方向へ、はるかに協調した取り組みを開始する必要があると評価した[44]。 ISWは、ワグネルグループのソレダル北方での攻撃作戦がここ数日で弱まった事を観察しており、これらの作戦は、シヴェルスクを指向するのではなく、バフムートを包囲するロシアの全体的な取り組みのためのものであった事を示唆している。ロシアの軍事ブロガーたちも、ビロホリフカの捕獲に関するロシア側の主張が虚偽である事が判明したため、ロシアがシヴェルスクを攻撃した事には言及していない[45]。


ロシア軍は2月11日もドネツク市西部郊外で攻勢作戦を続けた。ウクライナ参謀本部は、ウクライナ軍がパラスコヴィウカ (アヴディウカの南西36キロ) 付近でロシア軍の攻撃を撃退したと報告した[46]。 ロシアの軍事ブロガーは、ロシア軍がクラスノホリフカ (アヴディフカの南西21km) とアヴディフカ自体の近くで攻撃を行ったと主張した[47]。


ロシア軍は2月11日もドネツク州西部で攻勢作戦を継続したという。ロシアの軍事ブロガーは、ヴフレダルの南と南東のダーチャ地区 (ドネツク市の南西30 km) で激しい戦闘が続いていると主張している[48]。 2月11日に公表された位置情報付きの映像は、ヴフレダル付近でのロシアのサーモバリック砲による攻撃の余波を示している[49]。 サーモバリック砲システムは軍の地区レベルの資産であり、ロシア軍がヴフレダル周辺での作戦を優先している事を示唆している可能性がある。ロシアの軍事ブロガーも、ロシア軍がプレチスティフカ (ドネツク市の南西35 km) に向けて地上攻撃を行ったと主張している[50]。


(サイトより引用)


※サポートする取り組み:南軸(ロシアの目的:ウクライナの攻撃に備えて前線の位置を維持し、後方地域を確保)


2月11日、ロシア軍はウクライナ南部で確認された地上攻撃を行っていない。 [51]。 ザポリージャ州占領担当官ウラジミール・ロゴフは、ウクライナ軍がザポリージャ州の前線に沿って破壊工作と偵察活動を強化したと主張した[52]。 ロゴフはまた、ウクライナ軍が将来の反攻の可能性に備えている事に引き続き懸念を表明した。


ロシア軍は占領下のザポリージャ州北部のカホフカ貯水池を排水している可能性が高い。NPRは、ロシア軍が11月11日にヘルソン州の西岸 (右岸) からの撤退の際にダム橋を爆破した直後、カホフカ貯水池の水門を意図的に開放したと報じた [53]。 NPRは、カホフカ貯水池の水位が2022年12月1日の16.1メートルから2月6日には14.1メートルに低下したと報じた。ザポリージャ州軍事政権は、カホフカ貯水池の水位は制御不能なまでに低下しており、水位が13.2 mを下回った場合に原子炉冷却システム用の貯水池から水を引くザポリッジャ原子力発電所 (ZNPP) の能力の安全を脅かすと報告した[54]。 国際原子力機関 (IAEA) のラファエル・グロッシ事務局長は、この声明を裏付け、現在の水位はZNPPにとって脅威ではないが、水位が下がり続ければZNPPの安全を脅かす可能性があると指摘した[55]。


(サイトより引用)


ウクライナ当局は、ロシア軍が東部 (左岸) のヘルソン州に人員を蓄積し続けていると報告した。ヘルソン州のセルヒー・クラン軍事行政顧問は、ロシア軍は法執行活動を支援するために人員を導入し続けており、攻撃の準備をしていないと述べた[56]。 ISWは、ウクライナ南部、特に東岸のヘルソン州のロシア軍は、全面攻勢を試みるのに必要な兵力の集中が不足していると引き続き評価している。


(サイトより引用)


※動員と戦力化の取り組み(ロシアの目的:総動員を行わずに戦闘力を拡大)


ワグネルグループの投資家エフゲニー・プリゴジンは2月11日、ワグネルグループがロシアの刑務所内での募集を停止したのは、ワグネルと恐らくロシア国防省 (MoD) との間の取り決めが失効したためである事を認めた[57]。 プリゴジンは、管轄外の不特定の軍分遣隊 (恐らくロシアの通常兵器部隊を指す) は、囚人の募集活動を継続すると述べた[58]。 ワグネルグループと提携しているロシアの軍事ブロガーも、ロシア国防省がロシアの刑務所内で人員を採用する取り組みを強化していると主張している[59]。 2月11日、英国MoDは、ロシアMoDとワグネルグループとの間の対立の激化が、刑務所の募集に関するワグネルグループMoD協定が終了した主な要因である可能性が高いと評価した[60]。 ISWが以前に報告したように、ロシア国防省はワグネルグループ軍の戦場での有効性を低下させる措置を継続しているため、プリゴジンの影響力と魅力は今後も低下し続けるだろう[61]。


ロシア軍司令部は、動員された兵士をドネツク人民共和国 (DNR) の部隊に統合しようとしており、その部隊は2014年から半独立的に活動しているため、ロシア非正規軍間の緊張が高まっている [62]。 タタールスタンからの動員された兵士の親族は、タタールスタン州知事に対し、DNR司令官が動員された兵士を虐待し、大砲の餌のように使っているにもかかわらず、ロシア軍司令部は親族の部隊を戦闘に復帰させたがっているとの訴えを発表した[63]。 ロシア国防省は、職員自身の苦情を受けて、2月8日に部隊を前線から移送した[64]。 カリーニングラード州の動員された兵士は、DNR指揮官が事前の準備なしに地上攻撃を行うために彼らを送ろうとしたとカリーニングラード州の知事に訴えた[65][66]。 トゥヴァン共和国のウラジスラフ・ホバリグ 代表は2月8日、ISWが2月6日に報告したように、ロシア国防省はトゥヴァンに動員された兵士のグループを前線から移送する事に同意したと述べた。


ロシア当局は2月10日、オムスク市の軍の新兵募集センターに対する放火未遂事件について、故意の財産の破壊または損害に関する法律に基づき、オムスク住民に対する刑事訴訟を開始した[67]。 ロシア当局は通常、同様の行為に対してテロリズムの罪を課す。2月10日、ロシアの活動家団体は、ロシア当局がカザン在住者をスタヴロポリ地方の軍登録・入隊事務所に対するテロ攻撃を計画したという容疑で12月19日に拘束した後、ロシア連邦監視局 (Rosfinmonitoring) の 「テロリストおよび過激派」 登録簿に追加したと主張した[68]。


※ロシア占領地域での活動(ロシアの目的:行政管理と併合地域を統合する;ウクライナの民間人をロシアの社会文化、経済、軍事、統治システムに強制的に統合)


2月11日、ロシアのマラト・フスヌリン副首相は、占領下のウクライナの社会経済発展について、ヘルソンおよびザポリージャ州占領当局と協議した [69]。 ヘルソン州のウラジーミル・サルド占領行政長官とザポリージャ州のエフゲニー・バリツキー占領行政長官は、占領当局がインフラおよび工業企業の集中的な建設とヘルソン州農産業複合体の再生に注力する計画であると主張した[70]。 サルドは、ヘルソン州を離れた地主は、不特定の日までに戻って働かなければならず、さもなければ占領当局が土地を再分配すると主張した[71]。


ルハンスク州のセルヒー・ハイダイ長官は2月11日、ルハンスク州シュチャスティア付近のシュチャスティアとスタロビルスクを結ぶ鉄道の一部区間で、ウクライナのパルチザンが自動鉄道制御所を破壊したと主張した[72]。 この攻撃は、ロシア軍がロシア占領下のルハンスク州の後方地域内に兵力、装備、物資を移送する能力を妨げる可能性がある。

ベラルーシに於ける重要な活動 (ISWは、2023年初頭にロシアまたはベラルーシがウクライナ北部を攻撃する可能性は極めて低いと評価しており、更新のこのセクションを再構成した。そのような攻撃に対するカウンター指標は含まれなくなる。


ISWは、ベラルーシで毎日観測されるロシアとベラルーシの軍事活動を引き続き報告するが、これらはロシアとベラルーシの軍がベラルーシからのウクライナへの差し迫った攻撃を準備している事を示す指標ではない。ISWは、ロシアまたはベラルーシがウクライナ北部への攻撃を準備しているという明白な指標を確認した場合、この文章とその評価を修正する)


報告すべき重要なものは無い。


おことわり:ISWはいかなる情報源からも機密資料を受け取っておらず、公開されている情報のみを使用しており、これらの発表書の基礎として、市販の衛星画像やその他の地理空間データだけでなく、ロシア、ウクライナ、欧米の発表書やソーシャルメディアを広く利用している。使用されている全てのソースへの参照は、各更新プログラムの文末に記載した。


[1] https://gur.gov dot ua/content/okupatsiini-viiska-namahaiutsia-znaity-slabki-mistsia-v-oboroni-ukrainy.html; https://www.kyivpost dot com/post/12038

[2] https://understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign-ass...

[3] https://armyinform dot com.ua/2023/02/11/za-mynulu-dobu-poblyzu-bahmuta-znyshheno-276-okupantiv-sergij-cherevatyj/

[4] https://t.me/aleksandr_skif/2579

[5] https://t.me/russ_orientalist/13529

[6] https://t.me/rybar/43515 ; https://t.me/rybar/43516

[7] https://t.me/rybar/43515 ; https://t.me/rybar/43516

[8] https://t.me/strelkovii/3925  ; https://www.understandingwar.org/back...

[9] https://www.tiktok.com/@skala_battalion/video/7192718873869798662?_r=1&_t=8ZKrzwrdje9; https://twitter.com/klinger66/status/1618410185248354304 ; https://t.m... ua/2023/01/22/71-yegerska-brygada-dshv-likvidvala-okupantiv-u-rajoni-bahmuta/   ; . https://twitter.com/fdov21/status/1617251122489475072?s=20&t=nXvpiwE68k4...

https://twitter.com/SerDer_Daniels/status/1620815459175256064 

https://twitter.com/SerDer_Daniels/status/1620803776448978944 

https://twitter.com/klinger66/status/1620810915326332929  ;

[10] https://twitter.com/UAWeapons/status/1623649601717772288; https://twitt...

https://twitter.com/GirkinGirkin/status/1624095202578247698 

https://twitter.com/Arvelleg1/status/1624097564025823232  ; https://t...

https://twitter.com/RALee85/status/1622901317520818178  ; https://twi...

[11] https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign... https://understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign-ass...

[12] https://dzen dot ru/video/watch/63e67fbd7270fb396dc1e99d?share_to=telegram

[13] https://t.me/grey_zone/17154; https://t.me/grey_zone/17155; https://t.me/Taynaya_kantselyariya/5936

[14] https://www.nytimes.com/2022/12/23/world/europe/belarus-ukraine-invasion...

[15] https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign...

[16] https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign...

[17] https://www.facebook.com/GeneralStaff.ua/posts/pfbid06WktXitLHYhSzkPGsuQ... https://suspilne dot media/382193-ukraina-dolae-naslidki-raketnoi-ataki-rf-ssa-ne-zaperecuvatimut-proti-peredaci-zsu-vinisuvaciv-353-den-vijni-onlajn/

[18] https://www.facebook.com/watch/?v=6407926955905701; https://suspilne dot media/382193-ukraina-dolae-naslidki-raketnoi-ataki-rf-ssa-ne-zaperecuvatimut-proti-peredaci-zsu-vinisuvaciv-353-den-vijni-onlajn/; https://t.me/kommunist/15736; https://t.me/boris_rozhin/77762; https://t.me/rybar/43509 ; https://t.me/boris_rozhin/77784; https://t.me/rybar/43517 ; https://t.me/boris_rozhin/77782; https://t.me/zoda_gov_ua/16616; https... https://t.me/voenkorKotenok/45137

[19] https://twitter.com/J_JHelin/status/1624420777914167300; https://twitte... https://twitter.com/GloOouD/status/1624151811333533697

[20] https://armyinform.com dot ua/2023/02/11/okupanty-atakuvaly-ostriv-zmiyinyj-shhob-pereviryty-nashu-gotovnist-do-oborony-nataliya-gumenyuk/

[21] https://twitter.com/GloOouD/status/1624151811333533697

[22] https://t.me/wargonzo/10823

[23] https://t.me/mod_russia/24085

[24] https://t.me/strelkovii/3935 ; https://t.me/strelkovii/3937 ; https:...

[25] https://t.me/wargonzo/10823

[26] https://www.facebook.com/GeneralStaff.ua/posts/pfbid02H2oZyNJ8tQ3mLEksv9...

[27] https://www.facebook.com/GeneralStaff.ua/posts/pfbid034D5j3DHs6Xx5JfXutm...

[28] https://twitter.com/Danspiun/status/1624142786298580992?s=20&t=Q9XbIN0XK...

[29] https://t.me/cit_backup/1335

https://twitter.com/neonhandrail/status/1623660863109632002

https://twitter.com/Arslon_Xudosi/status/1623651172732096513

[30] https://t.me/wargonzo/10823

[31] https://armyinform dot com.ua/2023/02/11/golovnokomanduvach-zsu-pospilkuvavsya-telefonom-z-golovoyu-obyednanogo-komitetu-nachalnykiv-shtabiv-ssha/

[32] https://armyinform dot com.ua/2023/02/11/golovnokomanduvach-zsu-pospilkuvavsya-telefonom-z-golovoyu-obyednanogo-komitetu-nachalnykiv-shtabiv-ssha/

[33] https://armyinform dot com.ua/2023/02/11/golovnokomanduvach-zsu-pospilkuvavsya-telefonom-z-golovoyu-obyednanogo-komitetu-nachalnykiv-shtabiv-ssha/

[34] https://armyinform dot com.ua/2023/02/11/za-mynulu-dobu-poblyzu-bahmuta-znyshheno-276-okupantiv-sergij-cherevatyj/

[35] https://www.facebook.com/GeneralStaff.ua/posts/pfbid02H2oZyNJ8tQ3mLEksv9...

[36] https://twitter.com/Militarylandnet/status/1624379966115786752?s=20&t=by...

https://t.me/robert_magyar/402

https://twitter.com/auditor_ya/status/1624407988134977537 ; https://tw...

https://twitter.com/Cosmonaut19/status/1624403352108040194

[37] https://t.me/wargonzo/10823 ; https://t.me/rybar/43528

[38] https://t.me/wargonzo/10823

[39] https://twitter.com/Militarylandnet/status/1624352325174190081?s=20&t=by...

[40] https://t.me/wargonzo/10823

[41] https://t.me/rus_bakhmut/15293; https://twitter.com/666_mancer/status/1...

[42] https://t.me/nm_dnr/9874   

[43] https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign...

[44] https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign...

[45] https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign...

[46] https://www.facebook.com/GeneralStaff.ua/posts/pfbid02H2oZyNJ8tQ3mLEksv9...

[47] https://t.me/wargonzo/10823

[48] https://t.me/boris_rozhin/77826

[49] https://twitter.com/klinger66/status/1624359173168193540

https://twitter.com/PStyle0ne1/status/1624354403649028098

[50] https://t.me/wargonzo/10823

[51] https://www.facebook.com/GeneralStaff.ua/posts/pfbid034D5j3DHs6Xx5JfXutm... https://www.facebook.com/GeneralStaff.ua/posts/pfbid034D5j3DHs6Xx5JfXutm...

[52] https://t.me/vrogov/7641

[53] https://www.npr.org/2023/02/10/1155761686/russia-is-draining-a-massive-u...

[54] https://t.me/zoda_gov_ua/16501

[55] https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-145-iaea-director-g...

[56] https://www.facebook.com/sergey.khlan/posts/pfbid0jozRgw33bFaMXwyPXAmzdA...

[57] https://dzen dot ru/video/watch/63e67fbd7270fb396dc1e99d?share_to=telegram

[58] https://dzen dot ru/video/watch/63e67fbd7270fb396dc1e99d?share_to=telegram

[59] https://t.me/grey_zone/17155

[60] https://twitter.com/DefenceHQ/status/1624306543276527616

[61] https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign...

[62] https://www.understandingwar.org/backgrounder/russian-offensive-campaign...

[63] https://t.me/Govorit_NeMoskva/4322; https://twitter.com/666_mancer/stat...

[64] https://t.me/astrapress/20682; https://vk.com/wall-75289943_87823  

[65] https://t.me/Govorit_NeMoskva/4322

[66]https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Russian%20Operation... https://meduza dot io/news/2023/02/08/mobilizovannyh-iz-tuvy-pozhalovavshihsya-na-izbieniya-voennymi-dnr-perevedut-v-55-yu-brigadu-voennosluzhaschih-etogo-podrazdeleniya-podozrevayut-v-ubiystve-mirnyh-ukraintsev

[67] https://t.me/omsk_ogo/10936

[68] https://t.me/activatica/30506; https://notes.citeam.org/mobilization-fe...

[69] https://t.me/SALDO_VGA/385; https://t.me/BalitskyEV/790; https://t.me/...

[70] https://t.me/SALDO_VGA/385; https://t.me/BalitskyEV/790

[71] https://t.me/SALDO_VGA/385

[72] https://t.me/serhiy_hayday/940

(文中敬称略)

拙訳終わり。次回は19日を予定しています。

東に朝日新聞あれば、西にCNNあり。かつて大きな影響力を有したメディアの迷走を専門サイトが振り返り #メディア



かつて社会的に大きな影響力を持ちながら、インターネット時代に対応出来ず、迷走を重ねるメディア業界。その代表格が日本では朝日新聞、アメリカではCNNとなりましょうか。

かの国のメディア業界情報サイトのエディター&パブリッシャーでは、そんなCNNの2022年を振り返っています。以下、拙訳(2023年1月19日午前12時投稿)。

2022 is a tumultuous year for CNN, with changes to leadership and lineup(リーダーシップとラインナップ変更。CNNにとって激動の1年だった2022年)

A tale of two town halls(2つのタウンホールの話)

Posted Thursday, January 19, 2023 12:00 am 

2022年2月2日、CNNワールドワイド社長のジェフ・ザッカーは、未公表だが合意の上で別のCNN幹部と関係を持っていた事が露見し、辞任した。

6日後、リチャード・J・トーフェルはニュースレター「セカンド・ラフ・ドラフト」で、ザッカーの辞任に関する幾つかの背景を説明した。「アメリカのほぼすべての大企業は、上司とその部下との個人的な関係を禁止する規則を設けている。その理由は、そのような関係では真の同意が得られない可能性から、最も露骨な利益相反の類、こうした状況を切り抜けなければならない他のスタッフへの影響まで、様々だ」とトーフェルは「CNNの文化問題について」と題するコラムに書いている。

「そして、ザッカーの場合は、明らかに完全に合意の上での関係であったにもかかわらず、極端であったかもしれない。タイムライン上の多くの報告によれば、彼はパートナーを重要な仕事に雇い、給料を決め、昇進させ、おそらく彼女の業績を評価していた。恐らく自分の上司、同僚、外部のジャーナリストに対してその関係について嘘をついたのだろう。解雇されるには十分すぎる。また、残念ながら、#MeTooから5年近く経った今でも、目新しさは無い」と論評した。

ザッカーは退任し、1990年代半ばからニュース番組でキャリアを積んだクリス・リヒトが登場する。リヒトは、MSNBCで「モーニング・ジョー」を開発し、プロデュースした事で知られている。CNNワールドワイドの会長兼CEOになる前は、CBSの「スティーブン・コルバートとのレイトショー」でエグゼクティブ・プロデューサー、CBSニュースでは番組担当副社長を務めていた。

そんなリヒトは、38歳で脳出血を起こした。この経験を2011年の著書「私が死にかけたときに学んだこと:マニアックなテレビプロデューサーがいかにブラックベリーを捨てて人生を歩み始めたか」に記している。

2022年5月にCNNの最高責任者に就任。同社にとって変革の時となった。2022年4月8日、AT&Tのワーナーメディア部門とディスカバリー社の430億ドルでの合併が完了し、CNNはワーナー・ブラザース・ディスカバリーの傘下となった。そしてCNNは、他のニュースメディア界を魅了したストリーミング事業CNN+を試行錯誤したばかりだった。そしてリヒトには、幾つかの手ごわい試練が待ち受けていた。

■CNN+が目指した事と、その危険性

CNN+は2022年3月29日に登場した。動画配信サービスは前年夏から開発が進められていた。このネットワークにはオールスターのラインナップがあった。18年間FOXニュースの定番だったクリス・ウォレスが新しいトークショーに起用された。CNNは、NPRのオーディ・コーニッシュにも声をかけた。女優のエヴァ・ロンゴリアは、CNN+の新番組で、メキシコの料理と文化のツアーに視聴者を連れて行く事を計画していた。

CNN+にはスター級の力を持たせ、デビュー前後には莫大な資金を投じて話題を集めた。だが、サブスクリプションは伸び悩んだ。

4月14日、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのデヴィッド・ザスラフは、会社の従業員と共にタウンホールを開き、オプラ・ウィンフリーからの質問に答えた。バラエティのジェニファー・マースブレント・ラングはこの時の模様を「1年後には会社は大きく変わっているだろう」と語るザスラフの言葉を引用して報じた。

その一週間後、わずか32日間の運用の後、CNN+は海の底に沈んだ。多分、その運命は、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーに550億ドルの負債を背負わせた合併によって決まったのだろう。財務の緊縮が迫っていた。「サブスクリプション疲れ」 も要因だったかもしれない。

ニューヨーク・タイムズのジャーナリストであるジョン・コブリン、マイケル・M・グリンバウム、ベンジャミン・マリンによる「CNN+の内部崩壊」という記事によると、常に平均視聴者数は1万人を下回っていた。

記事では「CNN+のほぼ一瞬の崩壊は、ここ数年で最も華々しいメディアの失敗の一つとなり、3億ドルの実験は、レイオフとキャリアの混乱によって突然終了した」と指摘していた。

当然のことながら、CNN+の終焉を後出しジャンケンで指摘する向きは沢山いたし、エディター&パブリッシャーもそうだったでは無いかと非難されるかもしれない。だが、直後のいくつかの観測にはメリットがあった。例えば、CNN+が終了した日、トニ・フィッツジェラルドはForbes.comに、サービス開始間も無い頃、愚かにも 「接続テレビとの契約の締結」を出来ていなかったと指摘する。

「CNN+は当初、ストリーミングサービスで最も人気のあるプラットフォームの1つであるRokuと契約せずにローンチし、Android TVでは利用出来なかった」という。

■第一線でのレポート

ストリーミングはネットワークの未来と思われたかもしれない。一方、CNNでは2022年に過去の専門知識を生かしながら、戦争を取材するという手ごわい挑戦をした。それは複雑で、高くつき、乱雑で、危険でありながら本質的な試みだった。

トーマス・エヴァンズはCNNのロンドン支局長で、欧州、中東、アフリカ、ラテンアメリカの国際ニュース収集担当副社長である。特に紛争、敵対的な状況、自然災害を取材した経験がある。ハリケーン 「カトリーナ」 やイラク戦争、シリア戦争などを取材した。今年は同ネットワークのロシアのウクライナ戦争報道をリードしている。

「我々にはかなりの遺産がある。そこがCNNの素晴らしいところだ。今日の我々の報道を見ていただくと、ニック・ロバートソンがいる。彼はヘルソンに最初に入ったジャーナリストの一人です。彼は第一次湾岸戦争でフィールドエンジニアをしていた」と語る。「彼は第一次湾岸戦争の時に活躍した人物で、フィールドエンジニアからプロデューサー、そして特派員と素晴らしいキャリアを積んできた」と言う。

ウクライナで 「ローテーション」 を組んでいるイングリッド・フォルマネク国際エグゼクティブ・プロデューサーは、第一次湾岸戦争時もプロデューサーを務めた。

つまり、戦争報道に関して言えば、CNNは専門家を雇用している。

「2014年の紛争時、我々はすでにウクライナでの戦争を取材し、100%離れはしなかった。常にそこにチームを置いていた訳では無いが、ストリンガーと地元のジャーナリストとの非常に良いネットワークがあり、リテーナーもいた。ウクライナはかなり確立されたネットワークを持つ場所だった」。

エディター&パブリッシャーではエヴァンズに、戦争が差し迫っていると思われるときに強化するには何が必要かを尋ねた。

「それが起こるまで、我々の多くは本当にプーチンが侵攻してくるとは思っていなかった」と本人は回想した。「だが、ワシントンD.C.の支局からは多くの警告を受けていました。我々の大半は戦争が起こるとは思っていなかったが、無視出来なかった。ウクライナに相当な存在感を示す必要があった。率直に言って、戦争が起これば、その年の最大のニュースになるし、起こらなければ、それもまた大きなニュースになる。ウクライナ侵攻の際、我々は現地に大きな足場を築いた。当時、ウクライナで最大の国際報道機関だったと思う」。

CNNは、毎月のようにニュースチームをウクライナに出入りさせている。戦争報道はトラウマとなり、重荷となり、燃え尽き症候群が懸念される。職員は敵対的環境と状況認識の訓練と応急処置コースで準備される。帰国後はカウンセリングを受けられ、英国軍が開発した外傷後ストレス障害 (PTSD) の特定と治療を支援するプログラムであるトラウマリスク管理 (Trauma Risk Management=TRiM) の利用が推奨されている。

エディター&パブリッシャーが11月にエヴァンズにインタビューした際、クリスティアーヌ・アマンプーアはウクライナでの中継から戻ったばかりだった。シニア国際特派員のサム・キリーとマシュー・チャンスがウクライナに向かった。国際外交担当編集者のニック・ロバートソンは、ロシア軍が撤退したヘルソンの解放を1ヶ月ほど現地で取材していた。CNNはエディター&パブリッシャーに、ヘルソンからのロバートソンの報告のビデオがネット上で160万回以上再生されたと語った。

規模拡大にはロジスティックス上の障害がある。飛行機での移動が出来なかったのだ。ポーランドを経由して陸路でウクライナに入国しなければならない。当初、食料や燃料を入手するのは難しかったが、エヴァンズによると、それ以来、ロジスティックスのラインを確立出来たという。

「しかし、我々にとって大きかったのは、ウクライナの誰もが直面しているのと同じく、電力だった。多くの場合、バックアップ用の発電機やバッテリーで稼働している。ロシアがインフラを空爆しているため、電力は行き当たりばったりだ」とエヴァンズは言う。

もう一つの課題は、戦争の常道である偽情報だが、ソーシャルメディアが問題を増幅させた。エヴァンズは批判的分析がロシアのプロパガンダを否定した例を挙げる。「戦争初期、ロシアはウクライナから戦車が遠ざかっているという一連の写真を公表した。非常に賢い調査プロデューサーに見てもらったところ、全ての写真から、ロシア人がトラックを巨大な円を描いて走り回っているだけだと分かった。そう、 (偽情報は) 我々の報道の大きな部分を占めているし、今後も大きなものになると思う。新味は無いが、これは間違いなくこれまでの紛争の中で最悪のものだ」。

ロシア軍がウクライナに侵攻して9ヶ月が経った。戦争は続く。これは特派員の疲労だけではない;視聴者向けにもできる。エヴァンズはCNNが人に焦点を当てることで世界の注目を集め続けていると述べた。

「激動の最中にイラクにいて、ニューヨークにいる編集者の一人に『グラフィックと数字を使って大急ぎで報じろと言えばやるが、視聴者の目を曇らせてしまう』と言ったのを覚えている。...これらは数字では無いことを視聴者に思い出させ続けなければならない。これらは統計ではない。ただの地図上の赤線で領土を得たり失ったりしているのだ。本当の家族と本当の苦しみを持つ本当の人々であり、その人間性に焦点を当てている」とエヴァンズは述べた。

この戦争を取材していたCNNの国際特派員クラリッサ・ウォードは、その報道で2022年ナショナル・プレス・クラブのフォース・エステート賞を受賞した。

もちろん、ウクライナにいるのはCNNだけではない。エヴァンズはBBC、ITN、スカイニュース、アルジャジーラなど他の放送局の仕事を賞賛しつつ、CNNは報道において最も一貫性があり、より多くのリソースを割き、記者、プロデューサー、ストリンガー、ハンドラー、その他前線から派遣を申し込むニュースのプロからなる 「深いベンチ」 があると語る。

この 「インフラ」 があれば、事態が推移する限りネットワークを維持出来るという。

「私は未来について語れないが、歴史的にみて、(CNNは)他の放送局がやらないようなことに取り組んで来た」 とエヴァンズは言う。「我々は他社よりもずっとイラクにいた。アフガニスタンに20年間いて、今もいる」。

エヴァンズは、メディアにとって 「厳しい時期」 である事を理由に、予算の緊縮を予想している。CNNで「何らかの再構築が行われるだろうが、それが何なのかはまだよく分かっていない。人を不安にさせるのは人間性だと思う。現時点ではまだしばらく様子を見ている段階だと思う」と語っていた。

「だが、ウクライナは優先事項だ」 と断言した。

■人事と番組の変更

戦争や選挙の年に生まれたニュースが溢れているにもかかわらず、CNN+の失敗から立ち直り、視聴者を満足させ、何か新しいものを提供し、ラインナップを作り直し、高額な契約の一部が無駄にならないようにする策を必要としていた。

クリス・ウォレスには日曜朝の番組「クリス・ウォレスと話しているのは誰?」 「スタンリー・トゥッチ 「イタリアを探して」」が与えられ、3シーズン目を稼いだが、12月に打ち切りとなった。

オーディ・コーニッシュはCNNの特派員として残り、ポッドキャストのホストを務める。ドン・レモンは深夜11時からリニューアルされた 「今朝のCNN」 に移り、ケイトリン・コリンズとポピー・ハーロウが共同司会を務めた。

アンカーのジェイク・タッパーは、午後4時と午後5時に 「Jタッパーと共にリード」 を司会していたが、午後9時のプライムタイム枠で、FOXニュースやMSNBCの 「アレックス・ワグナー・トゥナイト」 や 「ハニティ」 と激突した。だが、その後タッパーを中間選挙後の午後遅くの顔に戻し、午後8時から午後10時のプライムタイム枠には 「アンダーソン・クーパー360」 を放映するようにした。

一般市民やメディアの中には、CNNで当時最も長く放送されていた番組 「信頼できる情報源」 で9年間司会を務めたブライアン・ステルターが解雇され、同局が日曜朝の定番番組を完全に打ち切ったという8月中旬のニュースを知り、驚いた者もいた。マスコミの失敗を批判する声が一つ減ってしまった。

ワシントン・ポストのメディア評論家、エリック・ウェンプルは、ステルターの脱退について論説を書き、その責任はクリス・リヒトにあるとし、「長年ステルターを狙ってきたFOXニュースのプロパガンダに屈した」と非難した。

この年の初めに、デイリー・ワイヤーのような保守的なメディアが、非公開のロマンスについて元ネットワークのボスの足を引っ張らなかったこと、クリス・クオモの倫理違反についてもっと全面的に非難しなかったとして、ステルターを解雇するよう求め始めていた。ステルターは、FOXニュースのゴールデンタイムの司会者たちの編集のターゲットになることが多かった。

日曜朝の番組は終了したが、電子ニュースレター
の「信頼できる情報源」はリヒトによるギロチンを生き延びた。シニア・メディア・リポーターのオリヴァー・ダーシーは編集者として留任した。

9月2日、新聞と放送ジャーナリズムで輝かしいキャリアを積み、2020年にCNNに入社したジョン・ハーウッドが、自身のCNNでの最後の日であるとTwitterで公表した。

リヒトの指示による人事異動は、放送中の出演者に限ら無かった。注目すべき新規採用もあったからだ。コンテンツ戦略担当の上級副社長には 「今朝のCBS」 のプロデューサーだったライアン・カドロが起用された。バージニア・モーズリーはCNNのアメリカ国内部門の編集担当副社長に昇進した。

リヒトは個人的な友人であるクリス・マーリンを戦略・事業運営責任者として収益責任者のポストに任命した事で同業他社から批判を浴びた。マーリンは、住宅建設が専門だからだ。

CNBCのアレックス・シャーマンは10月26日、リヒトに近い筋から聞いた話として、CNNは 「政治にあまり執着せず」 、ビジネスやテクノロジー、スポーツなどのニュースに関連するコンテンツを増やして、 「新聞のように記事を扱い、ポリティコのように報道しない」 事を望んでいると報じた。

新ボスの政治的傾向についての憶測もあったが、シャーマンは「出演者の事情に詳しい関係者によると、リヒトは一般に信じられているのとは逆に、アンカーや記者にもっと中道的になるように言っていないという」とリポートした。また、エディター&パブリッシャーがこの記事の取材で話をしたCNNのジャーナリストは、自分達が正しい方向への修正やトーンの調整を求められたとは仄めかしていない。

11月中旬、リヒトはCNNアンカーのアリシン・カメロタが司会を務める、全社を挙げてのタウンホールミーティングを主催した。

その数週間前にはCNNのスタッフにメモを送っていた。最初に入手して公表したのはハリウッド・リポーターだった。メモの中でリヒトは、「世界経済の見通しに対する懸念が広がっており、そのリスクを長期計画に織り込む必要がある。これら全てが、CNNの組織の顕著な変化を意味する。定義上、不穏である。これらの変更は、人、予算、プロジェクトに影響を与えるため、簡単にはいかない」と書いている。

なお、リヒトは会社の 「適正規模化」 において 「戦略的」 である事を誓っている。

「こうした変化が、世界をリードするニュースソースとしての我々の地位に影響を与えるのを許さないし、成長分野への投資を継続する」としている。「このプロセスが終了しても、CNNは世界で最も大きく、最も尊敬されるニュース収集組織であり続けるだろう。我々は、誰よりも多くのリソースを使って、どんなストーリーでも、どこでも、何時でも、カバーし続ける。それも完全にだ」。

12月中旬までに、ロビン・ミードを含むHLNのライブ・ニュース・チーム全員に解雇通知が手渡された。政治アナリストのクリス・シリッツァも同様だ。そしてキャスターで国際特派員のマーティン・サヴィッジは 「リヒトのレイオフ」 の犠牲となった。

米国防総省のバーバラ・スター特派員は20年以上務めた後、自主退社した。エグゼクティブプロデューサーのハビ・モルガドも同様で、12月初めに退社を発表している。

CNNは、よりスリムなニュースメディア会社として新年を迎える。リヒトの新しい方向性が正しい道であったかどうかは、時間と視聴率で分かるだろう。
※グレッチェン・A・ペックはエディター&パブリッシャーの寄稿編集者である。2010年からレポートしており、gretchenapeck@gmail.comでのコメントを歓迎している。

(文中敬称略)

拙訳終わり。CNN+がこけたまでは追いかけていましたが、結構な数の人員を削減していたのですね。その一方で、ウクライナ戦争が重くのしかかっているというのが現状。この様子だと、更なる削減もありそう。

そして、答えが出るかどうかという問題もある。大変ですね。

※御賛同頂けるようであれば、拡散お願いします。後、読者登録も宜しければ。


アメリカの保守系政治評論家ベン・シャピロ氏「イーロン・マスク氏のTwitter買収にレガシー・メディアがパニックになる理由はこれだ」 #Twitter


アメリカのグランド・フォークス・ヘラルドというサイトに、今回のTwitter買収を巡る既存メディアの反応について、興味深いコラムがありましたので拙訳してみます。

Ben Shapiro: Why the legacy media is panicked about Elon Musk's Twitter takeover(ベン・シャピロ氏:イーロン・マスクのツイッター買収にレガシー・メディアがパニックになる理由)
Musk will presumably again allow a thousand flowers to bloom. And the oligopoly can't handle that.(恐らくマスク氏は、再び千の花を咲かせるだろう。そして、寡占状態のレガシーメディアは成す術も無い)
By Ben Shapiro

November 06, 2022 07:00 AM


イーロン・マスク氏がTwitterを買収してから1週間以上が経ったが、レガシー・メディアの世界からは未だに悲痛な叫び声が聞こえてくる。ある意味、これは非常にショッキングだ。億万長者が他の億万長者からソーシャルメディア企業を買収し、言論発信の規制を緩和すると約束した事に、メディアのメンバーが何故これほどまでに憤慨しなければならないのだろうか。ある意味、この憤慨は完全に予測できた。レガシー・メディアの寡占が脅かされているからだ。


マスクのTwitter買収に対するレガシー・メディアと民主党の怒りを理解するには、レガシーメディアの寡占化の歴史を理解する事が重要でだ。1990年代まで、事実上全てのアメリカ人は、3つのネットワーク、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストなど、一握りの主要なレガシーメディアに頼らざるを得なかった。また、多くのアメリカ人が読む地方紙はAP通信、AFP、ロイター、マクラーチーなどの通信社頼みだった。


こうした寡占状態は、市場シェアとシナリオのコントロールの両方を意味した。だが、インターネットの台頭がすべてを変えた。


ビル・クリントン元大統領のモニカ・ルインスキー疑惑をドラッジ・レポートがスクープして以来、メディアのあり方が一変した。それまでも、トークラジオやFoxニュースの台頭など、反対意見の噴出を予感させるものはあった。しかし、インターネットが従来のメディアの支配を完全に打ち砕いた。世の人々は一斉にニュースの内容を多様化させ始めた。レガシーメディアは、人々が実際に読んでいるメディアによって、突然、非難され、事実確認されるようになったのである。


新しいメディアの初期段階では、人々はお気に入りのウェブサイトに直接アクセスしていた。ブックマークに登録し、毎朝クリックしていたのだった。


その後、主要なソーシャルメディアが登場した。そして、ソーシャルメディアは、ニュースの配信メカニズムを再中央集権化した。例えば、10個のサイトをブックマークする代わりに、Twitterで10個のアカウントをフォローしたり、フェースブックのニュースフィードに追加したりするようになったのだ。これは非常に便利だったし、多くの非主流報道機関にとっては、突然何十億もの人の目に留まる好都合となった。千の花が咲いたのだ。


そして、しばらくの間、静止状態が続いた。民主党が政治的支配力を維持していたため、これらのソーシャルメディアサイトは言論の自由の原則を称賛され、サービスを巧みに利用すること(2012年のオバマ陣営のように)は善良で価値があるとみなされた。


ところが、2016年にドナルド・トランプ前大統領が当選すると、レガシー・メディア各社と民主党はパニックに陥った。彼らは自分たちが無敵の選挙連合を築いたと思っていたし、ヒラリー候補が直接対決に負ける筈が無いと思っていた。誰かが責任を負わなければならなかった。答えは明らかだった。ソーシャルメディアによって拡散された右翼の「誤報」と「偽情報」が犯人だったのだ。


レガシー・メディアとその民主党の仲間たちは、今度はフェースブックとTwitterを非難し始めた。その代わりに、ニュースのトラフィックを独占してきたソーシャルメディア・プラットフォームは、左翼のレガシー・メディアの寡占を再確立するために使われるかもしれない、と圧力がかけられた。The Interceptが今週報じたように、国土安全保障省からの圧力さえあった。国土安全保障省は「技術系プラットフォームに影響を与えるための広範な取り組み」を行っているからだ。


レガシー・メディア以外のトラフィックを遮断することで「誤報」に対抗し、レガシー・メディアを振興・発展させるというのだ。そして、サイトへの事実上すべてのニュースのトラフィックがこれらのソーシャルメディアサイトを通して来るようになったので、寡占化が再び進んだのである。


男性は女性ではない、集団マスクは新型コロナ感染に於ける効果的な解決策ではない、ワクチンは感染を止めないから義務化は効果が無い、黒人は人種に基づいて法執行機関に組織的に狙われていない、などといった当たり前のことを言ったために人々は追放された。左派は単に被害者意識を主張する事により、ソーシャルメディアを活用して情報の流れを制限したのだ。


イーロン・マスク氏によるTwitterの買収が脅威となるのは、それ故だ。

マスク氏はおそらく、再び千の花を咲かせるだろう。そして、寡占メディア企業はそれに対して成す術が無いので、マスク氏に対して全面戦争を宣言しているのである。


だが、戦争は上手くいかないだろう。彼はノーと言うだけでよいからだ。我々は、他のソーシャルメディアのボスたちがマスク氏に続き、民主党のレガシー・メディア複合体の命令で隅でうずくまっているのではなく、自分たちの会社を設立するに至った使命を再び見出すことを願うばかりである。


ベン・シャピロは全国メディアチェーンのコラムニストで、グランド・フォークス・ヘラルドに定期掲載している。
拙訳終わり。この方の経歴はウィキペディア日本語版を参照していただくとして、その政治姿勢は兎も角、指摘している内容に既視感を覚えてしまうのはワタクシメだけでしょうか。

※ご賛同いただけるようであれば拡散お願いします。あと、読者登録も宜しければ。


今年のピュリッツァー賞受賞者について #ピュリッツァー賞 #メディア




復帰50周年とかでバタバタしてました。遅まきながら、エディター&パブリッシャーによる今年のピュリッツァー賞受賞について拙訳してみます。


Pulitzer Prize in Public Service Journalism awarded to The Washington Post for Jan. 6 coverage(1月6日の報道でワシントンポストに公共サービスジャーナリズムのピューリッツァー賞が贈られる)

Posted Tuesday, May 10, 2022 9:58 am


ワシントン・ポストは、2021年1月6日の議事堂襲撃を説得力のある語り口で鮮やかに表現し、アメリカ国民に国家の最も暗い日の一つを徹底して冷静に理解させたとして、公共サービスジャーナリズム部門のピューリッツァー賞を受賞した。

また、同部門の最終選考に残ったのは以下の通り。



ミルウォーキー・ジャーナル・センチネル:市内の賃貸住宅で発生した知られざる電気火災の実態と、説明責任が広い範囲で欠如していた事を力強い報道で明らかにした。


ニューヨーク・タイムズ:イラク、シリア、アフガニスタンにおけるアメリカの軍事行動に関する公式発表を検証し、米国が主導する空爆による膨大な民間人の犠牲を明らかにした勇気ある執拗な報道で、この部門にもノミネートされていた(理事会により国際報道部門に移された)。


その他の部門の受賞者、ファイナリストの名前は以下の通り。

■ニュース速報部門

マイアミ・ヘラルド紙のスタッフが、シャンプレン・タワーズ・サウスのマンション崩壊を緊急かつ広範囲に報道し、明快で思いやりのある文章と包括的なニュースおよび説明責任に関する報道を融合させたとして受賞。

また、同部門の最終選考に残ったのは以下の通り。ロサンゼルス・タイムズのスタッフは、映画「Rust」の撮影現場で発生した銃乱射事件について、深い取材に基づく詳報を行い、その日だけでなく、映画産業における労働と安全に関するより大きな考察を展開した。ニューヨーク・タイムズのスタッフは、2021年1月6日のワシントン襲撃事件について、事件の発生時およびその後の状況を積極的かつ詳細に報道した。

■調査報道


フロリダ州セントピーターズバーグのタンパベイ・タイムズのコリー・G・ジョンソン、レベッカ・ウーリントン、イーライ・マーレイ。フロリダ州で唯一のバッテリーリサイクル工場における猛毒の危険性について説得力のある暴露を行い、労働者と周辺住民を適切に保護するべく安全対策を実施させたことが評価された。

また、同部門の最終選考にノミネートされたのはミネアポリスのスター・トリビューンのジェフリー・マイトロットとニコル・ノーフリート。金融サービス会社が全米の弱い立場の事故被害者から和解金を入手し、しばしば裁判官の承認を得て数百万ドルを放棄するよう説得する様子を包括的かつ粘り強く報道し、ワシントンポスト紙のハンナ・ドレイアーとアンドリュー・バ・トランは、FEMAが如何に構造的人種主義や気候変動に向き合わずアメリカの災害被災者の期待を裏切り、政策の見直しが必要とされるかを明らかにし、深くシリーズ報道を展開し、この部門にもノミネートされた。



■解説報道

画期的な天文学・宇宙論研究を促進するために設計されたジェームス・ウェッブ宇宙望遠鏡の複雑な建設過程を明らかにした報道に対して、ニューヨーク州ニューヨークのクアンタ誌のスタッフ、特にナタリー・ウォルチョーバーに贈られた。

この部門の最終選考に残ったのは以下の通り。



フィラデルフィア・インクワイヤラー:スタッフが、説得力のある文章と写真で、フィラデルフィア市における銃乱射事件の複雑な根源に取り組み、その影響を最も受ける人々やコミュニティに焦点を当てた豊富な報道シリーズを展開。


ウォールストリート・ジャーナル:1921年のタルサ人種虐殺事件を鮮やかに再現し、その永続的影響を明らかにする記事を世に問い、富と財産の破壊がいかに将来の世代にとって負担となるかを記述した。


■地域報道

シカゴ市が長年にわたって行ってきた建築・火災安全に関する条例の施行に失敗し、無法な家主が重大な違反を犯し、何十人もの不必要な死者を出したことを痛烈に検証した、イリノイ州シカゴ市のベター・ガバメント・アソシエーションのマディソン・ホプキンスとシカゴ・トリビューンのセシリア・レイエスに贈られた。

また、この部門の最終候補としては、インディアナポリス・スター紙のトニー・クック、ジョニー・マグダレノ、ミシェル・ペンバートンは、インディアナ州の「レッドフラッグ」銃刀法を批判的に検証し、警察や検察が法律を理解し執行出来なかった多くの事例を明らかにした記事がノミネートされた。また、パームビーチ・ポスト紙のルル・ラマダン、プロパブリカのアッシュ・グ、マヤ・ミラー、ナディア・サズマンは、インタラクティブとグラフィックを含む総合的な調査でフロリダ州のさとうきび収穫期の大気の環境の危険性を明らかにして大きな改革を促した。


■全米報道



ニューヨーク・タイムズのスタッフが、警察による死者が発生した交通取り締まりの不穏なパターンを数値化し、何百人もの死が避けられたかもしれない事と、警官が通常どのように処罰を免れているかを示した意欲的なプロジェクトに対して贈られた。

この部門の最終選考に残ったのは、以下の通り。



マーシャル・プロジェクト所属のイーライ・ヘイガーとナショナル・パブリック・ラジオのジョセフ・シャピロ(寄稿者)は、里子に出される筈の社会保障給付金を全米の地方行政機関がどのようにして密かに盗んでいるかを暴露した力強い報道を行った。また、ワシントン・ポストのスタッフは環境人種主義に関する包括的シリーズで、アメリカの有色人種のコミュニティがどれだけ汚い空気や汚染水、甘いあるいは全くない環境保護から数十年にわたって不釣り合いに苦しんできたかを明らかにした。共に最終候補となった。

■国際報道

イラク、シリア、アフガニスタンにおける米軍の空爆による膨大な民間人の犠牲を明らかにし、公式発表に異議を唱えた勇気ある執拗な報道に対して、ニューヨーク・タイムズのスタッフに贈られた(同じくノミネートされていた公共サービス部門から理事会により移された)。

この部門の最終選考に残ったのは以下の通り。



ニューヨーク・タイムズ:アフガニスタン政府の突然の崩壊とタリバンの復活を、記者だけでなくアフガニスタン人の経験も交えて臨場感豊かに報道


ニューヨーク・タイムズ:ハイチ大統領暗殺の驚くべき調査により、政府、治安部隊、ビジネスエリート全体に広がる腐敗を明らかにし、殺人の動機と思われるものを明らかにした


ウォール・ストリート・ジャーナル:ヤロスラフ・トロフィモフとスタッフが、アメリカのアフガニスタンからの撤退について深く掘り下げた記事を執筆。 また、タリバンの帰還前に行われた独占インタビューなど、アメリカのアフガニスタン撤退に関する記事を深く掘り下げ、アフガンで何が起き、次に何が起きるのかに新しい光を投げかけた。

■特集報道

9.11から20年、ある家族が失ったものを取り戻す様子を淡々と描き、著者の個人的な物語への関わりと、悲しみの長い道のりを明らかにする繊細な報道とを見事に融合させた、ジ・アトランティックののジェニファー・セニアーに贈られた。

また、同部門の最終選考には、WPLNのメリバ・ナイト(寄稿者)とニューヨークのプロパブリカのケン・アームストロングによる、存在しない罪で逮捕されたテネシー州の11人の黒人児童について、進取の気性と共感力に富んだ記事が残った。



■解説報道

カンザスシティ・スター紙のメリンダ・ヘネバーガー氏が、性犯罪者として告発された元刑事の被害者とされる人々のために正義を求める説得力のあるコラムを寄稿し、受賞。

また、同部門の最終選考に残ったのは以下の通り。



ジュリアン・アグオン(フリーランス寄稿者、ジ・アトランティック):気候変動という身近な脅威を、海面上昇と戦う太平洋諸島先住民の余り知られていない物語を通して探求し、悲痛かつ希望を感じさせる啓蒙的なエッセイを発表。

■評論家賞

アートやポピュラーカルチャーにおけるアフリカ系の物語について、学術的かつスタイリッシュな文章で、学術的な批評と非学術的な批評を見事に融合させた功績により、ニューヨークタイムズの特別寄稿評論家、サラミシャ・ティレットに。

また、同部門の最終選考に残ったのは以下の通り。



ジ・アトランティック:ジェンダー規範、フェミニズム、ポピュラーカルチャーに関する問題に明快な洞察力をもたらしたソフィー・ギルバートの作品。


ニューヨーカー:画家、組織、ムーブメントを紹介または再考し、優しい評価と冷静な反論を提供する、分かりやすく熱心な美術評論を行ったピーター・シェルダール。

■エディトリアルライティング

独自の取材によって有権者弾圧の手口を明らかにし、有権者の不正行為が蔓延しているという神話を否定し、賢明な投票改革を主張したキャンペーンを展開したヒューストン・クロニクルのリサ・ファルケンバーグ、マイケル・リンデンベルガー、ジョー・ホリー、ルイス・カラスコに贈られた。

また、同部門の最終選考に残ったのは以下の通り。



ボストン・グローブのアブダラ・フェイヤッド:アメリカ大統領は在任中の犯罪で訴追される可能性があると主張した説得力のある社説シリーズを展開。


タイムズ・ペキユン/ザ・ニュー・オリンズ・アドボケートの社説スタッフ:調査記者が公文書請求を行った事で州の司法長官から訴えられた際、ルイジアナの人々のために透明性と説明責任を要求する社説を掲載。

■図解報道と解説


中国のウイグル人に対する抑圧について、コミックというメディアを使って力強くも親密なストーリーを伝え、この問題をより多くの人々に理解してもらう事を可能にしたとして、ニューヨーク州ニューヨークのInsiderのファミダ・アジムアンソニー・デル・コルジョシュ・アダムズウォルト・ヒッキーに贈られた。

また、同部門の最終選考に残ったのは以下の通り。



ニューヨーカーのゾーイ・シ:シンプルに描かれた人物像、包括的な表現、鋭い観察に基づくオチを用いて、政治の現実とパンデミック中の日常生活を捉え、考察と共感を誘った漫画を作成。


ワシントン・ポストのアン・テルネス:簡潔で重厚な漫画で、幅広い社会・政治テーマを即効性とインパクトをもって取り上げたを作成。

■ニュース速報写真部門

ゲッティ イメージズのウィン・マクナミー、ドリュー・アンゲラー、スペンサー・プラット、サミュエル・コルム、ジョン・チェリーによるアメリカ議事堂襲撃の包括的かつ一貫した魅力的な写真。ロサンゼルスタイムズのマーカス・ヤムによるアメリカのアフガニスタンからの撤退の生々しい緊急画像で、歴史的変化における人的犠牲をとらえた(審査員により、長編写真部門から移動)。

また、この部門のファイナリストにノミネートされたのは、以下の通り。ミャンマーにおける軍事クーデターについて、大きな危険を冒して撮影された印象的な写真。

■特集写真

ロイターのアドナン・アビディ、サナ・イルシャッド・マトゥー、アミット・デイヴ、故ダニッシュ・シディキの4名による、インドにおける新型コロナの犠牲者の写真(審査員により、Breaking News Photographyから移動)。

また、同部門の最終候補として、以下の作品がノミネートされた。



ロイター通信:世界中で撮影された気候変動に関する写真で、極端で危険な自然現象が、人間の生活に対する一般的で広範な脅威であることを効果的に表現。


サンフランシスコ・クロニクルのガブリエル・ルリー:ホームレスで薬物中毒の娘を世話しようとする母親の親密で悲惨な映像を撮影。

■オーディオ・リポート

ニューヨーク州ニューヨークのFuturo Mediaとマサチューセッツ州ボストンのPRXのスタッフとが、30年以上の服役を経て社会復帰を果たした人物を残酷なまでに誠実に描いた「Suvave」で受賞。

また、同部門の最終選考にノミネートされたのは NBCニュースのマイク・ヒクセンボー、アントニア・ヒルトン、リード・チャーリン、ジュリー・シャピロ、フラニー・ケリーの「サウスレイク」。テキサス州のコミュニティにおける反「人種批判理論」運動と全米の学区に波及した現象を洞察力豊かに描いた。ナショナル・パブリック・ラジオのエイダー・ペラルタ、ソロモン・フィセハ、アルサノシ・アダム、ハリマ・アスマニは、東アフリカの複雑な戦争と民主主義への脅威について、説得力があり、分かりやすくて共感出来るストーリーを流した。


(文中敬称略)

拙訳終わり。既存メディアが復権したとの報道がありましたが、新興系もそれなりに頑張ってはいるようです。あと、故人が受賞できるというのは初めて知りました。色々と勉強せんならんなー。まだまだ知らん事が多いわホンマ(苦笑)。

訳していて気づいたのは、「検証」というのがキーワードになっているなと言う事でした。ここは日本でも今後大事にしていきたいですよね。業界の信用にも関わりますから。

徹夜明けで寝ようと思っていたら、 #ソフトバンク が米新聞チェーンのトロンク買収に関心との報道を知る

トロンク買収

ここ数日、夜中に請負仕事をこなしてまして、今日はそろそろ寝ようかなと思っていたところへ、ニュースピックスはん経由で一報を知りました。ソフトバンクが、アメリカの新聞チェーンのトロンクを買収しようとの事だそうで。

米新聞大手買収に関心か

ソフトバンク


と、共同はんは妙に愛想の無い書きようですし、もうちょっとだけ起きて解説してみまひょ。続きを読む

続・森友スキャンダルで英語講座やっちまおう #英語 #籠池

安倍

1年前の3月25日に

森友スキャンダルで英語講座やっちまおう #英語 #籠池

という企画で記事を投稿した事がありました。その第二弾を行いましょう。

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森友スキャンダルで英語講座やっちまおう #英語 #籠池

大阪・豊中市に開校予定だった森友学園の小学校を巡るスキャンダルが、連日のように大きく報じられています。

渦中の籠池氏は、国会の証人喚問を受けた後で外国人特派員協会でも記者会見に応じるなど、精力的に動き回っています。ワタクシメよりも10歳近く年上なのが信じられない程のエネルギッシュさです(って誰も聞いてませんね)。

さて、そうして対外アピールをしている割には、特派員の方々の反応が今一つ。グーグルニュースでAbe schoolで検索しても、こんな感じだからです。スクリーンショット化しますね。

Abe school - Google Search
首相の天敵であるニューヨーク・タイムズと新華社が独自取材で報じている以外は、ロイター通信の記事を転載する社が多い。メディア業界も昨今は不況なのと、今は東京よりも北京に特派員を置きたがる社が多い事が原因のようです。

ともあれ、折角だし(というか、土日は拙ブログのアクセスも悪いしテコ入れの意味で)一連の報道から英語講座やっちゃいましょう。
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米科学系サイト「北朝鮮の核実験は、核ミサイルへのステップへの可能性が」 #北朝鮮 #核実験 #水爆

今回の北朝鮮の核実験について、アメリカの科学系サイトが「核ミサイルへのステップの可能性がある」と解説しています。続きを読む

実は世界規模で起きている飛行機へのレーザー照射 #平岡克朗 #レーザー #普天間

解説のカテゴリーで記事を書くなんて、実に久しぶりだ。

米軍機レーザー照射 56歳男容疑を認める

日本テレビ系(NNN) 12月7日(月)14時25分配信

 沖縄のアメリカ軍普天間基地周辺で、飛行中のアメリカ軍機にレーザー光線を照射したとして、警察は宜野湾市の56歳の男を逮捕した。

 威力業務妨害の疑いで逮捕されたのは、自称会社経営・平岡克朗容疑者。警察によると平岡容疑者は7月1日午後9時過ぎ、普天間基地周辺を飛行中のアメリカ軍のヘリコプターに緑色のレーザー光線を照射して、業務を妨害した疑いがもたれている。

引用終わり。肩書きが他局ではカメラマンとなっていたり、統一されていないのが気がかりではありますが、実はこういうレーザー照射は世界の各地で起きているのです。続きを読む

やれやれ、また軽減税率適用キャンペーンですか? 見苦しいですな日本の新聞界は #新聞 #軽減税率 #ポジショントーク

シルバー・ウィークもひたすら仕事で、ようやく峠を先ほど越した所なのですが、なんとなく虫の予感がしたのでTwitterを検索したら、出るわ出るわ、新聞業界の軽減税率適用キャンペーンに関するネガティブなご意見で、大炎上モードですな。続きを読む

「グーグルの組織再編は、要はマイクロソフトみたいになりたく無いとなりふり構わずって所さ」との冷ややかな見方が #グーグル #マイクロソフト

昨日のグーグルの組織再編と人事は、世間を大いに驚かせましたね。日本でも様々な解説がされていましたが、英国のcampaignlive.co.ukというサイトでは、「要はマイクロソフトみたいになりたくないと、なりふり構ってられないって所さ」との毒舌全開の解説を寄せた人がいました(2015年8月11日付け)。続きを読む

さて、アゴラで後押しされた事もあるし、大阪都構想の住民投票と英国総選挙を比べて見ます(4) #大阪都構想・住民投票 #英国総選挙 #アゴラ

さて、続きです。大失敗をやらかした社の中に、あの有名ブランドがあったという話です。
続きを読む

さて、アゴラで後押しされた事もあるし、大阪都構想の住民投票と英国総選挙を比べて見ます(3) #大阪都構想・住民投票 #英国総選挙 #アゴラ

続きです。

シェークスピア氏はユーガブのオンライン調査が、電話調査と著しく結果が違っていたとは思わないとしています。「業界全体が査問に応じるべきだと思っている。みんな本質的に同じ間違いをしでかしていたんだからね」と、同氏。「我々や同業他社の平均誤差が2%以下だったとしても、間違いに変わりはない。間違った結果を出してしまったのは、いけない事なのだ」

まぁ、当然と言えば当然ですね。

さて、こうしたユーガブとは別に、英国の世論調査会社であるコムレス(ComRes)の社長を務めるキャサリン・ピーコック氏は、BBCに違った説明をしています。続きを読む

さて、アゴラで後押しされた事もあるし、大阪都構想の住民投票と英国総選挙を比べて見ます(2) #大阪都構想・住民投票 #英国総選挙 #アゴラ

さて、ここからは英国の総選挙の詳細について語っていきたいと思います。続きを読む

「ISISが本当に求めている事」アメリカのサイトが、直球勝負な企画を(3) #ISIS #ISIL #イスラム国

ヤバイ! この連載の最後が未訳だった(汗)。theatlantic.comの元記事の続きです。続きを読む

「ISISが本当に求めている事」アメリカのサイトが、直球勝負な企画を(2) #ISIS #ISIL #イスラム国

先ほどの続きです。今度はtheatlantic.comの元記事です。続きを読む

「ISISが本当に求めている事」アメリカのサイトが、直球勝負な企画を(1) #ISIS #ISIL #イスラム国

湯川遙菜氏や後藤健二氏、そしてムアーズ・カサースベ氏の相次ぐ処刑と、それに対する日本を含む全世界の意見が揺れている事は、皆様も御存知でしょう。その根っこにあるのは「こいつら何を考えてるんだ」「一体、何がしたいんだ」となりましょう。

そうした疑問に対し、アメリカのdefenseone.comというサイトが、「ISISが本当に求めている事」(What ISIS Really Wants)という、直球勝負な企画をしています(2015年2月16日付け)。続きを読む

ブランド企業がソーシャル・ビデオを無視するべきでは無い理由とは?

さて、バーバリー3部作のオーラス。

英国で3DのCG視覚効果を制作するフレームストアという会社があります。あの有名な映画「アバター」を手がけた会社と言えば「あぁ、そうなんだ」と仰る向きもあろうかと。

ここのデジタル部門を統括しているマイク・ウッズ氏が「何故、ブランドはソーシャル・ビデオを無視するべきでは無いのか」(Why brands should not ignore social video)と題した寄稿をwallblog.co.ukで行っています(2014年1月28日午後1時11分投稿)。

面白そうなので、紹介します。続きを読む

「ウェブは死んだ」~クリス・アンダーソン氏への、マイケル・ウルフ氏の論考を読んで(1)5

さて、一方のウルフ氏はどうみているのでしょうか?

同氏はロシアの投資家のユーリー・ミルナー氏に注目しています。
ミルナー氏は、既存のベンチャー・キャピタルを切り崩し、フェースブックの株10%を取得しています。投資家にベンチャーキャピタルよりも良い条件を提示するだけでなく、自らが違った世界観を持っていました。

既存のVCはポートフォリオなどを見て、ウェブサイトで成功するのはほんの少しだと予測していました。広いが深くはなく、サイトは単体の自立した財産ではなく、相互に接続する事で依存しているとの理解でした。

ミルナー氏の理解は違っていて、フェースブックをただのウェブサイトではなく、5億人のユーザーにとっての「これまでに無いほど巨大なウェブサイトであり、余りに大きいので最早ウェブサイトではない」(“the largest Web site there has ever been, so large that it is not a Web site at all.”)と見たのだそうです。

ウェブの分析会社であるコンピート(Compete)によると、トップ10のウェブサイトを見るアメリカ人は2001年に31%、2006年には40%、2010年には75%いたそうです。

「理論的には、ほんの僅かな人が数百万人を支配できるし、急成長も出来る。そして強者の支配が好まれるだろう」(“In theory you can have a few very successful individuals controlling hundreds of millions of people. You can become big fast, and that favors the  domination of strong people.”)とミルナー氏は話しています。

ミルナー氏の発言はウェブの起業家というよりは既存のメディア支配者のように聞こえますが、実際そこがポイントなのだと、ウルフ氏は主張します。もし我々がオープン・ウェブから遠のいてしまうとするなら、その理由は、少なくともウェブの千客万来型の集産的理想主義ではなく、既存メディアの全てか無かという言葉に惹かれがちな実業界の支配によるものだろうとしています。

自然と成熟したからなのではなく、理念の競合の結果なのだそうです。つまり、ウェブの倫理やテクノロジーやビジネスモデルが拒絶されてしまった結果によるものだろうと。ウェブの支配は垂直的な統合から来るだろうし、インターネットの使用や状態について、ほんの少ししか考えないトップダウンなメディアが奪還しそうだとウルフ氏は書きます(続く)。

読者数を最大化して、利益も最大化~グーグルのご託宣4

さて、サイトが記録的な伸びをしているものの、儲けに繋がってない新聞社は何をすべきなのか。グーグルの共同創設者、ラリー・ペイジ氏は読者数を最大化して利益も最大化するべきだと説いています。

ガーディアンが報じました(2010年5月19日午前10時48分投稿)。

同社は減退気味の新聞業界にテコ入れを図ろうとしています。そのプランの中には課金システムや購読マネジメントツールも含めています。

ツアイトゲイスト・オイローパの席上で話したペイジ氏は、新聞と雑誌業界は、3つの収益源をオンラインに移行させようと苦闘中だとしました。広告、購読、取引がそれに当たります。

「購読には、かつてない程の可能性を秘めている」("There is more potential in subscription than there has been,")とペイジ氏。 「歴史を振り返るなら、雑誌は3つのモデルがあった。健全なモデルで、これら3つの領域から収益を得ていた」("If you look back in history, magazines have all three models in place... A healthy model is going to have revenue from all those areas.")

ペイジ氏は、書籍には歴史的に広告を載せなかったが、オンライン・グーグルでは「そうした事もやっている。既存の世界では理にかなわなかった事も、そこでは可能なのだ」( "already sort of does that. I think it makes sense in areas where it doesn't make sense in the traditional world.")とも話しています。

コピーや配信にはコストがかからないので、発行元は「無制限の」( 'limitless' )配信を目指すべきだとペイジ氏は話しています。

「もし避けるのが可能なら、制限型のモデルは望むべきではない。概して、一緒に添付される購読モデルの方が良い」("You don't want models that restrict usage if you can avoid it. In general, having a subscription model where things are bundled together [is better]," )としています。

「(幾らかかるかを)考えなくても良いのなら、もっと皆が利用するだろうし、コンテンツプロデューサーにも良い話だ。コンテンツを作る費用は固定されているので、一度コンテンツを作ったら、可能な限り読者数を最大化して稼げる金も最大化しよう」("If they don't have to think [how much they are spending] people will consume more and that has to be good for content producers too. The cost to make content is fixed, so once you make content you want as many people to use it as possible and maximise the amount of money you can make.")。

グーグルのエリック・シュミットCEOは、同社を「競争相手ではなく、プラットフォームだ」("is a platform, not a competitor")と強調しています。ルパート・マードック氏の社も含めて、報道機関とずっと話し合っているのだそうです。

「我々の広告システムや到達度は広範囲なので、課金が出来る購読サービスを作る可能性はある。もし皆さんがお望みならばだ。新聞や雑誌業界の人がコンテンツを所有するべきだと、私はこの上ないほど強く確信している」("Our billing systems and reach is so broad that it should be possible to build subscription services that would allow a paywall, if that is your business choice. We believe very strongly that content is owned by the newspaper people and the magazine people,")。

もっとも、同社は課金チェックアウトシステムに少しばかり疑念が持たれているそうです。

「我々は選択肢を持たせたい…しかし世間では無料を好み、無料の市場がもっと広大だという事実に備えなければならない。課金市場はもっと小さく、もっと特化や特定化されるに違いないが、他の理由のせいでもっと儲かるに違いない」("We want to give them the choice... but we have to be prepared for the fact that people prefer free and the market for free is much larger. The paid market might be smaller, more specialised and more targeted, but more lucrative for other reasons.")

シュミット氏は、これらのシステム構築に、組織的なやり方は無いとしていますが、「グーグルはニュースビジネスに参入しようとは思わない」("Google is not going into the news business".)と繰り返しました。

「ここには強いラインがある。我々は周囲にツールを構築するべきだと確信している」("There's a strong line there. We believe we should be building the tools around that,")。

これまでの長い間、コンテンツを食い物にして、検索サービスで人気付けをして、なおかつ関連広告で儲けているとして、グーグルは新聞業界から非難の的となってきました。

ご託宣は何時も通りですし、課金システム作りにも「止めといた方が良いのでは」と匂わせながら、きっちり作ろうとしている(無論有料で)。しかも、「盗人」呼ばわりしているマードック氏の会社とも話し合いをしているのですから、つくづく商売人だなあと思わざるを得ません。

韓国のスマートフォンと電子リーダー事情3

すいません、Twitter上で「世界の電子出版事情その2として、韓国を紹介します」と予告しました。CNETアジアの記事2010年5月2日午後10時23分)の見出し部分だけを読んで、そう告知したのですが、中身を訳すと、スマートフォンと電子リーダーの話が主体でした。

今回は要点のみを紹介します。

まず、韓国のスマートフォン市場はiPhoneの登場で活況を呈しているのだそうです。過去5年で発売された機種は20以下だったのが、今年の第2四半期だけで15機種出るのだそうです。

ブームになっているようですね。

アップルの機種には、政府の制限がありましたが、ネット上の世論に配慮して変えるまでに至ってます。また、韓国最大の携帯キャリアである
SKT (SK Telecom)は、第1四半期にiPhone3GSを扱うライバルのKT (Korea Telecom)に顧客を数多く持っていかれました。

iPhone の3GSは5ヶ月で60万台も売れたのだそうです。韓国のスマートフォン市場の規模の小ささを考えるなら、凄い数だと記者は書いています。

SKT側は、アンドロイド搭載機の投入で反撃しましたが、第一四半期はモトローラ・モトロリとLGだけのリリースに終わり、成功しませんでした。第2四半期では10機種リリースすると発表しています。8機種がアンドロイド機で他のOSが2機種。製造元はサムスン、LG、Sky (Pantech) などの国内勢、海外からは
RIM、HTC、Motorola、ソニー・エリクソンなどだそうです。

2010年通
で、全部で50もの携帯新機種を計画しているそうですが、その内、15機種がスマートフォンモデル。200万台を売るつもりだそうです。iPhoneへの必死の反撃と言えましょう。

KTでも第2四半期では対抗して4機種以上のスマートフォン投入を計画していますが、サムスンのような地元企業の協力を得るのに苦労している模様です。アップルのiPhoneの韓国輸入に不平を述べていたからだそうです。

片棒かついどいて、今更何だって所なんでしょう。

また、iPhoneの4Gの問題がKTを悩ませているそうです。KTは3GSの在庫がはけるまではiPhoneの4Gをゆっくりと輸入する積もりなのですが、多くの韓国人が4Gの発売を期待しているので、なかなか上手く行きそうにないのだとか。

一方、電子書籍市場はどうなのか?

記者によると、アップルのiPadは韓国の電子書籍リーダー市場を殺しそうなのだとか。韓国の電子書籍市場は誕生したばかりだからで、サムスンやインターパークやほんなどの僅かな業者が、米国のアマゾンの足取りを追っているだけという状態なのだそうです。

iPadの発表後、韓国人は最近発売された電子リーダーと比較しているそうですが、値段は似ているが、特徴や性能はiPadほどではないとしている。

なお、イスラエルみたいな事を韓国でもやっていました。

KCC (韓国放送通信委員会) は承認無しで、海外旅行や米国へのメールなどによるiPadの輸入を禁じました。これに大しては、
エンドユーザーが(iPadが)ノートブックに影響を与えていないのにと不平を募らせる事になりました。また、KCCがiPadが違法なIT装置として禁じた後で、政治家が公的な会見でiPadを使ったので注目を浴びる珍事も起きました(これは日本でも報じられましたね)。

政治家の一件は、当局にネットユーザーが通報する騒ぎに展開しましたが、結局、KCCは譲歩をさせられたそうです。一人一人の旅行者や消費者が1台ならKCCの認証を得ずに輸入出来る事にしました。

何処も同じ、政治決着って所でしょうか? 偉い人の為に法律はあるんだな~。

既に触れたように、アップルは何もしていない。しかし韓国政府は、消費者の求めで、これらの新しいIT製品の採用の為に多くを変えた。特異なのは、他の装置では過去にこういう事をしなかったのだ。スマートフォン市場はブームになったので、アップルに感謝したい。しかし、電子書籍リーダー市場は厳しい時に直面している。アップルは結構だ。電子書籍ハードウェアの製造業者は心底不満を募らせていると記者は結んでいます

こうして見ると、電子リーダーでは海外でも今ひとつで、国内でも怯えているという構図のようですね。韓国語を使うユーザーの絶対数にもよるのでしょう。スマートフォン市場が電子書籍に与える影響もあると思うのですが、そこらは書いていませんでした。今後、追加情報があれば逐次紹介していきます。

世界の電子出版事情(1)~アラブの場合4

今日から機会を捉えて世界の電子出版情勢を紹介していきたく思います。その第一回目がアラブ。まぁ、イラクからモロッコまでと広い地域なので、一括りにするのはいけないのですが、取りあえず。ザ・メディアラインというHPの記事です(2010年5月3日付け)。青字部分が翻訳。太字に下線を敷いた箇所が強調部分です。

「デジタル書籍、アラブでは冷えたまま」(Digital Books Leave Arabs Cold)

デジタル書籍革命は、今の所アラブ世界に衝撃を与えていない。失敗しているのだ。それは技術的な問題なのか、それとも根が深いのだろうか?

サウジのビン・アブド・アル・アジズ王子は、イスラム文化のプロモートの為に電子書籍をもっと出すべきだと話した。その時の王子は楽観的だっただろうか?

答えは、「恐らくそうだ」だ。 

電子書籍が西側諸国の全てを覆うようになっているのに、アラブ世界では大きな衝撃を作り出すのに失敗している。

政治的な圧力。互換性が無いという技術上の問題。そして、古い紙を愛するという根拠に乏しい習慣が、中東ではハードコピーからデジタル書籍への移動を妨げているのだ。

今週行われたイスラム問題の最高会議で議長を務めたサウジ王家は、王国がイスラムのプロモートの近代的な方法として、デジタル書籍や最新テクノロジーの駆使奨励をするべきだ発言している。

しかし、このテクノロジーに人々が何を求めているかについては、王子の胸中には無かった模様だ。

アラビア語で書かれた電子書籍のオンラインストアであるアラビック・イーブックでデジタルマネージャーを務めるジャラル・アブダラ氏は、最も売れ筋の電子書籍はカルチャーや政治に関するもので、宗教書はランクの底の方だと言う。

彼のウェブサイトの「最も人気のある書籍リスト」では、ここ最近ロマンス小説の「君を愛しすぎて」(
I Love You More than I Should)がリードしているとの事だ。

デジタル書籍で宗教書が他のジャンルに後れをとるのは、アラブ文化へのシフトが理由だとアブダラー氏は言う。

「アラブ世界に新しい文化が出来、人々は違った考えを持つようになった」(“There’s a new culture in the Arab world and people have a different thinking,”)とアブダラー氏はメディア・ラインに言った。「若い人はコンピューターを何時も使っている。キンドルやソニーのリーダーによって、アラブ世界の文化はここ数年で変わるだろう。」(“There are young people who are using the computer all the time. Culture will change in a couple of years in the Arab world with support of readers like Kindle and Sony Reader.”)

レバノンを基盤とするアラビック・イーブックは2001年の操業だ。PDFフォーマットで2500冊の本を揃えている。

キンドルやソニー・リーダー、及びiPadの出現は、人々の読書週間を変え、書籍に革命を起こしそうだ。ユーザーは書籍のテキストを、ハードコピー並みか、それ以下の価格でダウンロード出来る。そして自分たちのリーダーに数百もの書籍を所蔵出来るのだ。消費者にとって、これは運賃や遅れが無い事を意味する。どんな書籍も在庫切れが無く、運ぶに当たって重たくない。

アラブ世界では、インターネットは制限されているし、政府は何時も情報統制を試みているので、この変化は遅くなりそうだ。

アブダラー氏は、これには幾つかの理由があるという。

「アラブ世界では、残念ながら多く読めないと言える。これが第一番目」(“First, I’m sorry to say that in the Arab world they don’t read a lot,”)と同氏。「第二に、アラブ世界の経済状況が、庶民にとって余り良くない。彼らはオンラインで書籍を購入したり、普通に本を買ったりするに当たっても、便利なクレジットカードを持っていないのだ」 (“Second, the economic situation for people in the Arab world is not so good. They don’t have the facilities for credit cards to buy books online, or other books in general.”)

三番目の理由は、アラブの出版社が
出版業界の技術変化に合わせようとするのに苦しんでいるという所にある。

「出版社は、こうしたデジタル出版をサポートしていない」(“The publishers don’t support this kind of digital publishing,” )と彼は認めた。「彼らは電子書籍よりも従来型の紙を好む、古い人々なのだ。ここアラブでの文化は依然として紙が主体であり、我々のセールスも大半がアラブ諸国以外の人々によるものだ」(“They’re old people who prefer traditional paper to the e-book. The culture here in the Arab world is still paper-based, so most of our sales come from Arab people from outside Arab countries.”)

アラビック・イーブックの最大の客はアメリカや欧州、オーストラリアやカナダ地域である。ハードコピーでの(アラビア語の)書籍を殆ど扱っていない地域だ。

進歩したデジタル書籍リーダーが最近アメリカや欧州市場に周防劇を与えているが、アラブ世界にはまだ波及していない。海外でリーダーを購入し、自分の国に持ち帰ろうとする
中東の人々は、何時もアラビア語の書籍をダウンロード出来る訳ではない。というのも、機種の全てで、両方向から読めるソフトウェアを搭載しているとは限らないからだ(アラビア語は、ラテン語などと違って、右から左へと読む)。

電子書籍がアラブ世界に定着していないもう一つの理由は、政治的な肌合いの問題だ。政府が人々に届く情報を監視するのが難しいテクノロジーを警戒しているのだ。

アブダラー氏は、自分が書籍を選んで表示するに当たり、ブロックされないよう注意している事を認めた。

「アラブの電子書籍は人々や宗教や文化に悪影響があるような本を提供しない。我々はとても注意深くしている。他では解決の必要が問題は無い」(“Arabic E-Book doesn’t try to offer books that talk about people or religions or cultures in a bad way. We’re very careful about that and we don’t need to make problems for others,” )と同氏。「我々は何時も安全な側にいようと試みている」(“We are trying to be on the safe side.”)

サウジのブロガー、ラシッド・アボウ・アルサムフ氏は、電子書籍はサウジの検閲を回避する大きな可能性があると信じているそうだ。

「多くの有名なサウジの作家が、自国での著書の出版を禁じられている。そしてサウジアラビアの国民はカイロやダマスカス、ベイルートなどに行き、そうした書籍を買って国に持ち帰っているのだ」(“Many famous Saudi authors have their books banned in Saudi Arabia itself, and Saudis must travel to Cairo, Damascus and Beirut to buy them and bring them back to the Kingdom,” とメディア・ラインに語っている。

「サウジの空港税関の職員は、昔は鞄を開けて中身を点検したが、何時も書籍はビデオ屋DVDと並んで恐れられているリストの中に入れられており、一番の標的だった。空港には検閲部屋すらあった。そこでは職員が座って書籍や雑誌のページを切り裂き、禁止されている中身がないかビデオを見ていた。今では、多くの鞄はX線検査をされるだけで、スキャナースクリーンに不審物が映し出されない限り、税関職員が開ける事も稀だ」(“Customs officers at Saudi airports used to open the baggage of all incoming passengers in the past, and books were the top targets, along with video tapes and DVDs, on their list of things to apprehend. There was even a censorship room at the airport, where officials would sit and rip pages out of books and magazines, and view videos for banned content. Nowadays, the baggage of most incoming passengers is just x-rayed, and is rarely opened by custom officers unless they see something suspicious on their scanner screens.”)

「サウジで今後すぐに電子書籍が紙の書籍に変わるとは考えてない」(“I don't think that e-books will replace printed books in Saudi just yet,” )と
アボウ・アルサムフ氏。「サウジの若い世代の中には、電子書籍にはまるだろう。しかし人口の中では少数派だろうと、それでも私考えている」(“Those within the younger generation of Saudis who like to read will probably take to e-books enthusiastically, but I still think they will be small minority of the population.”)

ロンドンを拠点とする
エイ・シャルク・アル・アウサット(A-Sharq Al-Awsat)紙の特集編集長のアビール・ミシュカハス氏も、電子書籍がアラブ世界に与えている衝撃は小さい事を認めた。電子書籍市場の大半が英語というせいだと言う。

という訳で、アラブ人は熱心な書籍読者ではなく、
それがアラビ ア語の電子書籍産業に反映していると彼女(ミシュカハス氏)は言う。

「貴方はインターネットの扱い方やダウンロードのやり方を知っている、限られた数の人の話をしているのです」(“You’re talking about a limited number of people who know how to deal with the Internet and download books,” )と彼女はメディア・ラインに告げたのだった。

ミシュカハス氏は、ここ数年、アラビア語の書籍を著作権を払う事無しに不法にスキャニングし供給しているウェブサイトが大量に出現していると証言した。
しかも大人気だと言う。これらのサイトは、一見アラビア語で書かれた物議を醸しそうな本を部分的な解決手段として供給しているかのようである。

デジタル書籍リーダー革命で、多くが変わるという訳では無さそうだとミシュカハス氏は言う。「アラビア語対応されるまではね。こうした本は英語で書かれているし、電子メディアを扱う方法を知っていて、英語も出来る人は少人数だから。もしアラビア語対応になったら、多くの人が喜んでアラビア語の本を読むと期待している」( “not until it can carry Arabic, because these are English books and it isn’t the majority who can read English and know how to deal with electronic media. If it does carry Arabic, I expect a lot of people will be happy to read books in Arabic.”)

翻訳終わり。なるほど、お金持ちの国のイメージがありますが、検閲が厳しければ、商売としてしんどいでしょうね。お固い話より、俗なロマンスが売れ筋というのは、万国共通なんだなと思ってしまいました。

それと印象的だったのは、ソフトの普及の低さですね。アラビア語に非対応では、PDFでしか無理でしょう。クレジットカードの普及率が低そうというのは、完全に想定外。目から鱗でした。

しかし、じゃあ全く駄目かというと萌芽はありそうな感じです。

こちらはチュニジアで行われた書籍見本市に、同国の大統領が訪れたと報じた記事なのですが、記事の真ん中辺に「
The Head of State and his wife also focused attention on the digital book (e-book) experience which consists in integrating book contents into third-generation digital supports, with a view to encouraging youths to read and making easier their access to key works wherever they may be.」という下りがあります。

「また、国家元首とその夫人はデジタル書籍(e-book)の体験に注意を払った。電子書籍では、書籍のコンテンツと第三世代のデジタルサポートが融合していた。若い世代が読めるよう励まし、どこにいてもアクセスが簡単に出来るようにするのが秘訣だとの見方を示した」
ぐらいの訳になりましょうか。

矢張り、開発している業者がいるようですね。大統領が好意的な評価をしているのも印象的です。

ただ、上記のサウジでもそうですけど、上からの促進政策って、得てして失敗するんですよね。お金があって蕩尽できる分、あさっての方角に行ってしまわないかと心配。民業(電子出版業者)の圧迫という可能性がある気がしてしまいました。海賊版業者が跋扈している当たりは、そうしたお上の政策への対策って構図なのでしょうか。

いずれにせよ、また何か見つけたら報じていきますね。

グーグルCEO演説への反応(2)4

エリック・シュミット氏の先の演説への反応の2つ目です。青字が翻訳部分で、太字に下線を引いた箇所が、私の強調したい部分です。

昨夜、私は空港からこのホテルへの道中、Twitterをチェックし、ワシントンD.C.で行われたアメリカ新聞編集者協会でのエリック・シュミット氏の基調演説に関するTweetのストリーミング中継を追っかけていた。

彼が話した事で面白かったのは、a)彼はグーグルを経営しb)にもかかわらず、より小さな新聞業界の集会で基調演説を勤めたりする。彼はジャーナリストに向かって話すし、私はビジネス関係者やテクノロジー関係者、セールス関係者に向かって話す。多分彼の洞察の幾つかを掴んでると思う!

では、エリック・シュミットは何を言ったのだろうか?

大きそうな物としては

a)    グーグルが開発に力を入れているのは携帯である
b)    クラウドに繋がっている(携帯)電話やパッドなどの機種から稼げる
c)   ニュースの流布には「最新性」(
nowness)や緊急性がある
d)   もし信じてないのなら、ブロゴスフィアに行く必要が編集長にはある
e)    報道業界には何も悪い所は無い。ビジネスモデルに幾つか問題がある
f)    グーグルはニュースビジネスには興味が無い

携帯でリアルタイムでTweetを追いかけていた私にとって、シュミット氏は正しかった。携帯のチェック。クラウドのチェック。「最新性」のチェック。

そして、彼の言わねばならなかった事の残りは何だったろう?

嘘ではない。

しかし。

つけ込んでいる。

だから、私はリアルタイムでフォローしている人からのアップデートを行い、そうして会議でのTweetを追った(Tweetが余りに少ないとする、高いパーセンテージでの不平があった!)。そして私は、程よく情報を得たが、紳士淑女の皆さん、ブロゴスフィアを助けるのに必要だと信じている「編集長」は独りもいませんでしたぞ(今朝、新聞には彼の演説は一行も載っていなかった。編集長が重大でないと思ったのか。締め切りを過ぎていたかもしれないからか?)。

さよう。グーグルはニュースビジネスには入らない。ニュースを金に換えるビジネスに入る。紳士や淑女もビジネスだ。皆さんの壊れたビジネスモデルは、彼の運営するビジネスモデルの一部なのだ。

そして最後に彼は、ニュース産業は健全だがビジネスモデルはそうでないと話した。「ニュース」とは何か、再考する必要性があるという、まさにそのアイデアを私は確信した。昨夜、私がTwitter上で彼の考えを追いかけていたとき、それがニュースだと思っていた。ジャーナリストではなく、編集長でもなく、「コンテンツ」企業でもない。私にとっては、ニュースだったのだ。私の文脈(当日の演説)の中ではそうだったからだ。そして私が欲しいと思っていた形で、必要と思った正にその時、送られて来たからだ。

従って、シュミット氏の言いたい事に加えるならば、我々も編集上の問題やニュースの問題、稼ぐ問題を抱えているのだ。

そして、再考し共存しない限り、事態は悪化していくだろう。

どうしてって? 我々が見て来た変化の基礎にあるのは、この小さな接続エンジンと呼ばれるものなのだ。この接続エンジンこそ、私がインターネットで思い描いて来たものだ。皆がシェアし、取引し、発見し、自分たちで説明する。大昔、新聞は偉大な接続エンジンだった。そこでは発見があり、求人広告が取引媒介であり、編集長への手紙で、我々には新聞で読んだ事について説明したり話し合えた。

アメリカには新聞の読者が、依然として1億人いる。業界は400億ドルの収入を、依然として得ている。しかし、これは3年前の半分の数字なのだ。そう、昨年の27%減に対して、今年は5%落ちそうなのだ!

しかし、昨年より悲観的ではないからといっても、それは何か良い事を感じている訳だからではない。

我々はSTD(性感染症)の時代に生きている。避妊薬は無く、ワクチンがあるだけだ。影響力がある、改革をもたらす、破壊的な変化の時代なのだ。我々が成長する為には、
影響力があり、改革をもたらす、破壊的な思考を、自分たちの組織や心の中に持ち込まねばならないのだ。

では、どうすればよいのだろう? 私はメディア業界が心配だ。というのもメディアの弱体化は、ヘミングウェイと「誰が為に鐘は鳴る」を思い出させるからだ。 ある通信会社で働き、提携する多くのメディア企業が苦闘するのを見て来た我々は、自らのビジネスと、そのやり方を再考せざるを得ない。我々は幾つかの担保となる考えがあるからだ。

促進:まず私が訊ねたいのは、次の事柄だ。皆が自らをマーティング化し、独習するか他の人たちと繋がる事で学ぶという時代にあって、我々はどうやってこの振る舞いを促進したら良いのだろう?

声とユーザー: 第二に、製品とサービスのユーザーだけでなく、声(支持者と荒らし)が有益である世界において、我々はこの情報全てを、どう結合させ展示させ便利にさせていけば良いのか?

再アグリゲーション: 第三に、崩壊と戦う
マーケッターや広告主、小売業者として、我々はビジネスにインパクを与えられるだけの規模や手頃な規模の市場にするよう、どのように集団を再びアグリゲートすれば良いのだろうか? グーグルは驚くべき再アグリゲーションエンジンである。検索と、より小さな範囲のアドセンスを通じて同じ時間に一つの意図を持つ人を共有化して大きな集団へと結びつけている。

その正しい物の見方とテクノロジーとビジネスでの正しい人たちが、将来正しくやっていくと確信している。というのも、我々が理解したものやエリック・シュミット氏が話した事の幾つかが、そこに含まれているからだ。

機動性。

アナログの物すべてがデジタル化されようとしている(テレビのように)。

デジタルの物すべてが携帯になりつつある(iPhoneやiPad)。携帯の大半は、アナログと深くリンクされようとしている(ローカルや小売りの世界で)。

そう、携帯はますます皆さんが今いる所に関わってくるのだ。そこはコミュニティなのだ。周りに誰がいるか? どんな提案があるか? 小売りの評判はどうだろうか? 良き隣人が住んでいるのだろうか?

皆さんのビジネスが「ニュース」や「新聞」や「コンテンツ」に未来を置くのではなく、地域の情報や歴史、市民の声、小売りや商機を促してアグリケートし直すキー・パートナーやリーダーになるよう、再定義をして欲しい。

ローカルであるべきなのだ。コミュニティが問題となろう。皆さんの旧来型の事業は、販売員や記者、コミュニティの他の声同様、小売りとの関係などで、強い資産を持っている。
また、皆さんは信頼あるブランドネームを持っている。そのネームは指導者にも、将来の大きなビジネスで重要なパートナーにもなれる事も可能としているのだ。

大衆は、
自分たちのコミュニティを蛇行するにつれ、良い展示や便利で一体化したリソースなどを必要としている。小売業者は自らを売り込む口上で助けを必要としている。市場関係者は、「意図」に基づくマーケティングを「位置」に基づくマーケティングで補えるよう、人々(顧客)を見つける必要がある。

これは一つのアイデアだ。惨めなアイデアかもしれない。しかし、明日が終わろうとする頃には同調しているだろうし、「全国ニュース」を扱えるのは、2つ乃至3つの新聞業界でしかないという現実感を反映している。そして、「ニュース」は、かつてのそれではないのだ。

皆さんが予想する際、私が皆さんであれば行うであろう10項目を並べたい:

1)    統合失調的なモデルを運営せよ: アンディ・グローブは偏執狂だけが生き残ると発言している。私は、統合失調症者だけが反映すると確信している。現在のビジネスは1億人の読者の為にあるが、400億ドルであるモデルを運営して欲しい。衰えはしているが、巨大なビジネスであり、重要だ。その時皆さんが出来る事は、新しい人たちに古き良き物へのアクセスをさせる事だ。ゆめゆめ古いやり方で考えや目安を与えないで頂きたい。

2)    テクノロジーと折り合う: 我々は魔法の時代にいる。ソフトウェアのプログラマーや、ハードウェアの設計者、アプリケーションの開発者、技術者の多くが未来の鍵を握っている。皆さんは彼らと折り合い、鍵を作らねばならない (彼らを雇うか、提携するかだろう)。しかし、最も重要なのは、グーグルリーダーのようなRSSリーダーを使うべき事であろう。そしてフェースブックを始め、Twitterや
Four SquareGowallaなどでアカウントを取るべき事であろう。そこで携帯や地域の交流がどのようなものであるかを理解出来るだろう。そうして、自分たちの20世紀の組織に助言者を取り込んで欲しい。毎月、彼らに飲み物か食べ物を買って上げ、傾聴してほしい。彼らは皆さんを驚かせるだろう。

3)    速く動け: 昔は、スピードが殺されると言っていた。今日では、スピードの無さが殺されている。未来への起動は、部分的には技術産業による迅速な反復と試作に負っている。どうか加速して欲しい。この業界は1000日以内に大きく変わるだろう。今直ぐに行け。早く行け。

4)
    Blurと折り合え:編集長の元に行き、戯言でない、恐れに基づかない、気障でない正直な会話をしてみよう。この宗教と国家の代物(新聞の事を指す)は、全ての面で大変素晴らしいのだが、大地が水面下に沈みつつある時に、どう重要なのだろう? 皆様お二人はコミュニティに奉仕しなければならない。そしてコミュニティとは市民や商人、読者である。そこでの人々は、変てこか、良くわからないものあれば何にでも寄って来るだろう。皆さんを読み、対話する人々は馬鹿ではない。彼らは我々より賢いのだ。

5)    若者を手に入れよ: 新聞事業は、若い人に新聞を取らせるべく魅了する為の努力を重ねているが、才能ある若い人を誘い込むのが十分でないかもしれない。ほら、私は自分のような時代遅れの人間が盛りを過ぎたとは言ってない(店の中の物を見ていってくれ!)。 しかし、我々が利用し、相互に交流し、関連づける方法は、世代によって違う。明日繁栄する事を望んでいる企業は、葬儀業に携わっていない限りは、明日も生きていそうな人たちを得ておかねばならない。 彼らが手にするものの何にでも、そしてより多くの金と責任を、そうした人たちに与えて上げてほしい。年長者の給与に比べ、安いものだ。

6)    展示、組み合わせ、便利さ: ウェブのページではなく、流れの中で。そこでの声や、ユーザーや豊富な情報の世界の中で、どう自分たちのビジネスを展示出来るかを、またどうやって結びつけられるか、混沌としているが素晴らしい世界である皆さんのコミュニティで、どうやったら人々を便利にさせられるだろうか。編集を考えない。コンテンツを考えない。ニュースも考えない。展示する事、結びつける事、便利にする事を考えて欲しい。


7)    皆さんの機種、プラットフォーム、検索・発見戦略を立案して欲しい: ネットワークした世界では、リンクが重大だ。ネットワーク化した世界では、グーグルやアップルのiTunesやフェースブックのような主導的なプラットフォーム~間もなくTwitterも~重大なリアリティを持っている。これらは未来のプラットフォームである。皆さんは魅了させるような戦略を持たねばならない。iPadのような新機種も出た。クローズドなシステムであり、利用者が誰か分からないという事実は、ここでは問題だ。しかし、広告主と大きな取引が出来る。機種戦略とは何か? そして検索とは。そこに尚存在し、重要さを増すだろう。グーグルだけではなく、Twitterやフェースブックその他でもある。恐らく皆さんの検索戦略の代わりに、発見戦略が問われるだろう。

8) 提携について、深く考えよ: 世界は余りに速く動き、どのような会社も単独でやるには、広大すぎて能力的に手に余る。提携は重要だが、我々が生きている世界に於いては、共同作業と呼ばれるものは企業とのそれであり、競争であると知っておこう。色んな事がグレーだ。故に、このリアリティの周りに構築し、パートナーを吟味して選ぼう。プラットフォームでも、テクノロジーでも、コンテンツでも、だ(持っていないコンテンツが多い)。

9)    組織上の設計: 未来は過去の器(新聞の事)にうまくはまらない。多くの組織とインセンティブは、以前に来た人と過去の為に最適化されるのだ。業界に未来も身を置く積もりならば、皆さんは将来もインセンティブある振る舞いをしなければならないし、将来の為に組織的な設計をしなければならない。遅かれ早かれ衰亡する収入源に全てを頼るのであれば、皆さんは腐った肉かほんの少しのミルクしか飲み食い出来なくなるだろう。

10)    人々: 詰まる所、この業界の未来は、皆さんに関するものなのだ。皆さんの上司ではなく、皆さんの奇妙な同僚でもなく、更にはIT業界の狂人その他のいずれもが「理解しない」(“get it”)のだ。

あらゆる会社が、他では「理解出来ない」と信じている、何千もの「理解した」人たちで満たされたワンダーランドなのだ。

従って、私は不思議の国のアリスに最後へ戻っていく。

アリスは彼女の「似たような物」(
“muchness”)について訊ねられる。私は皆さん方一人一人に、皆さんの「似たような物」(“muchness”)について訊ねたいのだが?

そしてアリスは言う。「これは夢なんだわ。ここからどこへ行くか決めなきゃ」( “ This is my dream and I will decide where it goes from here”)。

これは皆さんの業界であり、そして皆さんはここからどこへ行くか決めなきゃ。

どうも有り難う。

(私が見るのを話した人は、スクリプト無しで話し、視覚上の教材無しで6つ乃至7つのテーマを掲示している事を知って欲しい。
したがって、この「スピーチ転写」は、話した事を覚えている私の概要だ。よろしく)

ようやく、完訳。言いたい事は分かるけど、もう少し短く端折れよ~って感じでした。

ちなみにこの方がどんな人か書きます。リシャード・タビクワラ(
Rishad Tobaccowala)さんという方で、ViVaki という会社で戦略兼イノベーション担当主任として働いて来られました。

インドのムンバイで数学の学位を取った後、シカゴ大学のブース・スクール・オブ・ビジネスでMBA(マーケティングと金融)を取得しています。お名前からして、インドの人なんでしょうね。

メディアとデジタル資産とを結びつける仕事が主だったそうです。取引先にはゼニスやメディアベスト、オプチメディアなどがあります(過去にデータの引用先として、このブログで参考にさせて頂いた社の名前も見受けられます。ゼニスとオプチメディアは、今は統合している筈ですが…。統合前に取引していたのかな)。

現在は上記のViVakiの部門会社として
Denuoという会社を設立し、そこのCEOに就任しています。マーケティングの世界で27年間の実績がおありだそうです。

論考自体は面白かったし、今後も覗いて見たいと思います(今回みたいに長いのは流石にもうご免ですが)。Twitterの会員さんでもありますし、皆さんもフォローなさっては如何でしょうか?


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グーグルCEO演説への反応(1)4

さて、懸案だった積み残しの未訳を片付けていきます。エリック・シュミット氏の先の演説への反応です。

題して「新聞業界~オンラインビジネスは、まだ間近でない?」(The Newspaper industry - Online business models in sight yet?)

青字が翻訳箇所。太字に下線を引いているのが、私の強調箇所です。

4月11日にアメリカ新聞編集者協会で行われた演説で、エリック・シュミット氏は新聞業界の信用性と、日々の発行業務で読者に伝えている危険なまでの業務を賞賛した。

しかし、残りの部分では、デジタル世界ではオンライン新聞業界を救うかもしれない幾つかの創造的なビジネスモデルの兆候があると見なしていた。新聞業界が持続する新たな収益源をどう作るかという批判的な質問もあった。フリーミアムや広告モデルのような多くのビジネスモデルが、最近採用されているが、ウォールストリートジャーナルやハーバード・ビジネス・レビュー、トータル・テレコムのような、少数の特化した雑誌や新聞でしか成功していない。

鍵は読者の情報利用方法にあるかもしれない。インターネット以前の世代はデータオーバーロードに関するものだったが、次世代はパーソナライズ化に関するものだ。ユーザーにとして、私は自分のオンラインアグリケーターやソーシャル・サイトが好きな情報を好きな方法で配信して欲しい。その際、最近の自分の好みを広げるような記事があればなと思う。ターゲッティング広告が私の注意を強く引くだろうから、これはビジネスにとって利益の出るモデルだ。

オンライン世界に欠落しているのは、ソーシャルネットワーキングやプロのニュース世代との間に直接的な接続が無い事である。Twitterでは私の友人はNYタイムズからの短信記事のリンクを貼れる。しかしそのリンクを見ると、私はTwitterから記事へと誘導されるのだ。ここで私は、広告主が私の好みと、なぜ記事を面白いと思って読むのを決めたかを知る機会を失った事を知るのである。私がTwitterにいる間、ニュースサイトからコンテンツを引っぱり提示できるのなら、ニュースサイトとTwitterの間で私の好みに的を絞った広告を提示する機会を共有できる事になる(Twitterでは知られているので)のに。

この提案は、技術的にも商業的にも、法的にも対処するべき挑戦である。主要な技術上の挑戦は、Twitterの内部にブラウジング能力を与える事だ。しかし、ニュースの配信元とニュースアグリゲーターとの間でコンテンツと収益を共有する、両者の合意契約が、もっとも難しいハードルになるだろう。ユーザーにプライバシー設定をする機会を与える事で、圧倒してしまうかもしれないと個人的には懸念している。 フェースブックはパーソナライズ化したターゲティング広告で先行する事に成功している。

まだだとは自覚しているが、そう遠くない内にニュースコンテンツのパーソナライズ化は、恐らく複数の方法で(人々を)魅了するだろう。そして、その後に、リーズナブルな広告収入が新聞業界にもたらされるだろう。
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ローカルニュース戦略(その2)5

さて、そうしたハイパーローカル戦略ですが、英国では広告と絡めた試みが行われています。アンチ課金の急先鋒に立つ、ガーディアンのエディンバラとカーディフのサイトで、展開が拡大しているのだそうです。

Journalism.co.ukが報じました(2010年4月26日投稿)。

ガーディアンではアディップリー(
Addiply)というハイパーローカル広告を載せるサービスを導入しています。最近3都市で展開する同社のサイトでこれを載せた「ビートの効いたブログ」(“beatblogs”)を始めました。

このシステムは、低コストで違った規模の消費者に週刊ないし月刊単位で注意を向けさせるもので、リーズという街のサイトで木曜から運用が始まっています。その後、ガーディアンのエディンバラとカーディフのサイトでも始まりました。

発行元は広告主から出稿額の90%貰えます。残る10%がアディップリーとペイパルで折半される仕組みだそうです。

アディップリーの良い点の一つは、皆が自分たちのコミュニティイベントやローカルサービスをプロモート出来る所にある。著名な広告主用ではないし、そういう意図もしていない。地域に於ける、より小さな広告主や、売りたい商品のリストを持ってる人たちの為のものだ」(“One of the things Addiply is good for is for people to be able to promote their own community events and local services. It’s not designed or intended to bring in big name advertisers; it’s more for the smaller advertisers in the community or for people listing individual items for sale,”)とガーディアン・ローカルの立ち上げ担当ディレクターであるサラ・ハーシュレー氏はJournalism.co.ukに先週語っています。

ちなみにリーズでのガーディアンのHPは、こんな感じです。画面右下の
「Noticeboard」(告知版)という箇所の下に「Addiply」の文字が見えますね。つまりNoticeboardとして表示されている箇所に広告が入ります。「広告はこちらへ。週20ポンドでテキスト広告として貴方のビジネスを表示して下さい」Advertise Here Place a text ad for your business on Guardian Leeds from just £20 per weekとあります。まだ始まったばかりだから掲載されてないのですね。

ちなみに、この
アディップリーというサービス、ガーディアンが独自開発したものではなく、リック・ワーグホルンという地域スポーツジャーナリストの方が作ったのだそうです。

日本で言えば、二宮清純さん当たりが広告サイトを作ったような感じなんでしょうか?

しかも、このワーグホルン氏、このシステム以外にも地域サッカーのサイトを作ってました。こちらでは月額1ポンドでテキスト広告を載せるそうです。なかなか商売っ気のある人みたいですね(このシステム、草サッカーやリトルリーグのサイトに応用出来るかも)。

話を
アディップリーに戻します。上記のJournalism.co.ukによると、地域の独立系ブロガーさんが使う事を想定して作られたもののようですね。Javascriptウィジェットをインストールして、価格を設定して、地元で商売をやってる人を待つ。価格はCPMCPA、及び昔ながらの「郵便葉書」居住モデル(原文は"post office card" residency model。DMの一種でしょうか?)などから算出される場合もあるそうです。記事が投稿されたのは昨年11月13日ですが、そうした特性にガーディアンが注目したのでしょう。

ガーディアンでは広告がまだ載っていませんでしたが、他の地域ブログでは実際に載っています。例えばこれ。月額で10ポンドだそうです。ちなみに、上記のガーディアンのリーズ版の価格が週20ポンドでしたから、アクセス数によって変動する仕組みです。CPMやCPAなどの結果なのでしょう。4つ並んだ広告の左上のをクリックすると、保守党の政治家のサイト(選挙が近いようですね)に飛ぶようになっています。

サーチエンジン用に最適化しなくて良いのが売りだそうです。確かに地域限定ブログなら、地元の人しかハナから見ませんよね。そうしたブログなら、地域での訴求力もあるし、載せて損は無いと考える人(上記の政治家みたいな)や企業は出てくるでしょうから、需要も期待出来ます。影響を受けそうなのが既存の紙媒体ですが、ガーディアンみたいに地域サイトに導入すれば幾らか補えるという訳です。よく考えてますね。

ちなみに、アディップリーのサイトを見ると、英国の他にアメリカとフランス、オランダなどで展開しています。価格はこちらに載っています。広告代理店の方はご研究なさるだけの価値があるかと愚考いたしますが、如何でしょうか?

ローカルニュース戦略(その1)4

昨日のマサチューセッツ州の新聞社の課金戦略を訳した後、Twitter経由で、「ハイパーローカル」に関するニュースを知りました。この言葉、日本語に訳すと「超ローカル」ぐらいになりますか。そうした「超ローカル」なニュースを扱う社が高収益を上げているのだそうです(こちらのHPで詳しく述べられています)。

そのハイパーローカルですが、紙媒体でそうした情報を載せながら、オンライン上では載せないコミュニティペーパーが多い事が調査で明らかになりました。

readMediaが報じた(2010年4月22日付)もので、同社は1000人以上のコミュニティペーパーの編集長や記者を対象にした調査を行いました。

その結果、編集長が地域の読者に「大変重要」("very important")と見なしたニュースの90%が、また過去60日に紙媒体に掲載されたニュースの97%が、オンラインでは配信されていない事が分かりました。

コミュニティペーパーの編集長は、大学や軍から届けられた行事予定などの「ホームタウンニュース」("hometown news")を使うようになってきています。

「コミュニティ新聞の編集長は読者を良く知っており、地元の人たちが読みたがっている事に合わせてくる。ホームタウンニュースが、編集長や彼らが奉仕するコミュニティにとって重大事であるのは明らかだ」("Editors at community newspapers know their audiences well, and are very attuned to what local people want to read in the paper. It's clear that hometown news is a big deal to editors and the communities they serve,")とrealMedia社のコリン・マシューズCEOは話しています。

しかし、回答者は明らかにこのようなニュースをオンラインで配信する必要が無いと見ています。ホームタウンニュースをオンラインに配信している新聞社は50%以下です。また、9%がウェブサイト自体を持っていないと答えました。

つまり、ホームタウンニュースは半分以下、重要なハイパーローカルニュースは殆どオンラインに配信していないという事のようです。

回答者は、ハイパーローカルやホームタウンニュースは大手報道機関との差をつける上で重要だとしています。より地域密着にしたいとの事です。コミュニティ紙の読者はホームタウンニュースコンテンツを期待し求めます。そして多くの編集長はコミュニティ・ジャーナリズムにとって不可欠なサービスであり、核となる機能だと感じているそうです。

「オンラインコンテンツにかつて無いほど時間を費やすようになっている一方で、この調査ではオフラインで価値があるコンテンツがオンラインでは存在していない事を示唆している」("While people are spending more time than ever consuming content online, this survey suggests that a lot of the content they value offline doesn't exist on the web,")とマシューズ氏。「ローカルオンラインニュースメディアの勝者は、如何にして需要と折り合いをつけるかで答えを出すだろう。しかし、ウェブのコンテンツを『スクラッピング』するのは簡単でない」("The winners in local online media will figure out how to meet that need, but it's not going to be as easy as 'scraping' content from the web.")

調査の全文は、こちらをご覧下さい(長いので、訳すかどうかちょっと考えます。7Pもあるし)。

ちなみにreadMedia社は、ローカルニュース配信をする組織にプラットフォームを作っている会社だそうです。ニューヨークに本社を置き、創業者の一人は日系人の模様です(デビッド・ホソカワさんという名前でした)。

載せないのは方針としてなのか、それとも人手や手間の問題なのかが気になりますね。いずれにせよ、デジタル配信されないのであれば、さしものグーグルもお手上げって訳ですか。載せないというのも、そういう意味では地方紙の生き残りオプションかもしれませんね。

ピュー・リサーチセンター調査報告~「新たな収益源の問題」5

さて、7部作の3本目。「新たな収益源の問題」についてです。青字部分が訳文で、赤字が筆者の強調です。

厳しい数字を見ると、旧来メ ディアの問題は、読者数の減少というより収入面をどうするかであろう。例えば、ここ数年のテレビやラジオ、紙媒体の収入の下落率は2倍近かったし、読者 (視聴者)離れの率は3倍の時すらあった。 ニュース産業の生き残りというコンセンサスの類いを形成するには、これまでのディスプレイやバナー広告の成長を待つだけではなく、更なる新しい収入モデル を創造せねばなるまい。

議論は多いが、業界が新しいモデルの実験をしているかどうか、また実験が明るい結果を生み出しているとか、はたま た、こうした発明のエネルギーや時間を奪っているかどうか、などについての情報は少ない。

調査では、起きつつある事に対して考えを固めて いるか、一連の質問をした。そこで判明したのは、現在、新たな収益源の開発で、幾つかのかなり凡庸な選択に焦点を合わせているという事だった。そうした混 在は、ニュース産業の経営陣が将来のあり得る可能性としての収益源を模索するに連れて変化している。そして、放送局幹部が予測する将来と、新聞社で報道業 務に携わる人との間には、かなり違いがある。

ニュース産業が現在どのようにして収益を増やそうかとしている事について見ると、大半の会社 では今なお広告業務にこだわっている。第一に取り組んでいるのは「ディスプレイやバナー広告への一層の集中」(“concentrating more on display and banner advertising.”)だった。54%近くの報道機関が、この分野を自らが「最も積極的に」(
“most actively.”)追究している収益の流れとして挙げている。

それほど重要視していないものの、なお大きな事として、第2の 分野として報道機関が収益源として集中しているのは「非報道製品」(
“non-news products.”)であった。全体の38%で、新たな収 益源として最も活発に取り組んでいるものとして、この2つが占めていた。

一方、検索広告は、その流れから消えてしまった。ここ数年、ヤ フーイニシアティブのようなネットワークが、地方の市場検索を進めようとしている報道機関を助ける手段として開発された。しかし、今回の調査では優先順位 は下の方である。地方検索を主要活動領域として挙げているのは、全体の26%であり、報道以外の収入より下の第3位である。

増えつつあ り、紙媒体の中で人気になりつつあるのは、課金出来そうなニッチなニュース製品や、特殊な開発だった。特別にニッチなサイトからの料金が自らの最も積極的 な収益追究だと答えたのは全体の23%だった。新聞社が30%、放送局が17%だった。

この点、コンテンツに料金請求する課金の壁という構想は、 現実というよりはアイデアに留まっているようだ。特に新聞ではそうだ。1~2位の開発領域に課金の壁を挙げている経営陣は僅か9%でしかなかった。こうし た回答は主として新聞社の経営陣からであったが(15%)、ここに於いても、非報道製品や特別なニッチ製品などと同じぐらいに課金の壁を自らの重点的な収 入源の取り組みとして挙げているのは半数に留まった。

なお、他の選択肢として、最近注目を集めているのが、報道機関はアグ リゲーターからもっと金を取ったらどうかというアイデアだ。ルパート・マードック氏がマイクロソフトなどと話し合ったという報道がその類いだ。この分野で 実際に行われている事は極めて少ない。これを主要な2つの活動として挙げた報道機関は僅か5%でしかない。主要な活動部分と位置づけたのは3%、「小さ な」(
“small”)部分だとしたのは7%だった。

また我々は、収入の実験問題を更に調べてみた。それぞれが、 報道機関にどのぐらい重要か詳細な感覚を得ようとしてみたのだ。この収入分野が自分たちのビジネスでの「大きな取り組み」(
“major part”)なのか。小さな分野なのか。構想中だが始めてないのか。既に構想したものの、止めたのか?

このラン キングは似通っているが、詳細は参考になる。これまでの広告に集中すると答えたのはトップ。しかし際立って目立っていない。ディスプレイやバナー広告を 「主要な」(
“major”)取り組みとしたのは3割を少し超える(37%)程度だった。もっとも、数字で見るとアメリカ新聞編集者協会の方が(47%)ラジオ・テレビ デジタルニュース協会(31%)よりも高かったが。現在、「自らの取り組む部分としては小さい」(“small part of our effort.”)と答えた数字は、新聞と放送局で似通っていた。

報道機関の内、報道以外の収入創造を「主要」(
“major,”)としたのは4分の1近い22%。3分の1以上(38%)が「少しずつ」( “small way.”)行動していると答えた。殆ど全社が、少なくとも考 えた事があると答えている。

全国レベルでは、オンライン広告で最も儲かる形態は検索だが、この市場はグー グルのようなアグリゲーターに大きく支配されている。しかし地方の検索は未解決の市場だ。ニュース業務は地方の検索にどれぐらい積極的だろう? 丁度2~ 3年前、この事で多くの社がヤフーやグーグルと開発提携した。今では、そうした取り組みは労の多い割には身入りがすく無さそうだ。 報道機関で主要な活動と答えたのは16%(新聞社が14%、放送局が17%)。 4分の1近く(27%)が取り組みの中では「小さい」(
“small”)としてい る。そして、ここでは新聞社の方がより積極的である(44%。放送局は18%)。報道機関の18%が選択肢として「考慮中」(
“considering” )だ。

もっとも積極的に取り組んでいる収入モデル

もっとも積極的に取り組んでいる収入モデル




注: 質問は2つ以上の収入源を構築中の社を対象とし、「構築中の収入モデルで、2つの内どちらを最も積極的な組織の取り組みとしているか」と質問。回答者は2 つ以上答えるのを許されている。

もしニュース業務で大半がまだ課金していなくても、少なくとも新聞社の経営陣が考えてみたのは明らかだ。 58%近くが自社で課金を選択肢と見据えた事がある。放送局の18%より遥かに多い。大半の報道機関は完全に可能性を除外していない。新聞社・放送局とも 課金の壁を考えて止めたのは11%でしかない。この数字は、今後ないし先々注意を払うべきだろう事を示すものである。同時に、課金へと向かう新聞社は開拓 者としての苦労をする事が予想されるだろう。何人かの経済学者は、いかなる報道機関であれ、集団的にではなく単体で課金した場合、成功するのは遥かに難し くなると忠告している。

購読課金の実験レベル

Level of Experimentation with Fees from Subscription Pay





質 問: ここに皆さんが論究した歳入の流れがある。どうか我々に、いずれかを積極的に取り組んでいるか考慮中であるかどうかについて話して欲しい。

も う一つの購読として、マイクロサイトや特別分野への課金がある。こちらには、より積極的に取り組みつつあるが、十分でない。調査の結果、特別なサイトへ の課金を組織の主要な取り組みとした報道機関は丁度10%だった。もっとも新聞社(16%)の方が放送局(7%)より取り組んでいるよう だ。 報道機関の4分の1(新聞社44%、放送局13%)が特別なサイトへの課金は自社の取り組みとしては小さいと答えている。 そして23%の報道機関で現在考慮中だという(27%が新聞社、21%が放送局)。

マイクロニュースまたはニッチないし特別な ニュース製品への課金実験のレベル

Niche or Micro News Products





質問:
ここに皆さんが論究した歳入 の流れがある。どうか我々に、いずれかを積極的に取り組んでいるか考慮中であるかどうかについて話して欲しい。

そして他のアイデアの一つと して利用者が現在支払っているインターネットのサービスプロバイダー料金に数種類の料金を組み込むというのはどうだろう? 2つの主要活動の一つとして挙 げた報道機関は、たった2%だった。しかも「主要な」(“major” )活動だとした所となると1%だ。しかし、 今後は増えるかもしれない。4分の1以上の社が現在この選択肢を考慮中だと言う。

課金をインターネットプロバイダー料金に 組み込んでもらい収益源とする実験のレベル

Embedded in Fees People Pay to Their Internet Providers





質問: ここに皆さんが論究した歳入 の流れがある。どうか我々に、いずれかを積極的に取り組んでいるか考慮中であるかどうかについて話して欲しい。

更にもう一つ、
インターネット黎明期から潜 在的に成長の可能性があるとされるアイデアがある。ウェブサイトに小売りサイト を作り、そこから「仲介手数料」(“transaction fees.”)を取るというものだ。2つの主要な活動の一つだとしたのは6%だった(そして4%が主要な活動だとした)が、21%が現在やっており、それ と同じレベル(22%)で考慮していた。数字を見ると新聞社の方が高くて26%が実行中。28%が考慮中だった。

オ ンライン小売り活動から仲介手数料を取る実験のレベル

Transaction Fees From Online Retail Activity





質問: ここに皆さんが論究した歳入 の流れがある。どうか我々に、いずれかを積極的に取り組んでいるか考慮中であるかどうかについて話して欲しい。

しかし、大半の報道 機関は、非営利組織の貢献という見込みについては興味が無さそうだ。幾つかの社は議会や州の議会による寄付を選択肢としているようだが、69%近くの報道 機関が考慮した事が無いと答えている(80%が新聞、64%が放送局)。


非営利組織からの寄付と言う実験のレベル
Donations from Nonprofit Institutions





質問: ここに皆さんが論究した歳入 の流れがある。どうか我々に、いずれかを積極的に取り組んでいるか考慮中であるかどうかについて話して欲しい。

調査では、現在の取 り組みを踏まえ
今後の見通しとして、今後3年何が最も重要な収入源となるか、今後の見通しとして、経営陣 に更に訊ねた。 大幅に違う何か異なったものを見通すというより、多くは今の流れが続くと予測している。回答者の60%近くが、広告の幾つかの形態が将来自分たちの第一の 収入源になるだろうとしている。

新聞社の経営陣は、
こうしたオンライン広告の類いの有効性についての疑問がふくれつつあるものの、なおディスプレイ広告を他の 何よりも重視している(31%)。他の17%は検索広告収入のシェアが膨らむと留意している。 しかし、4分の1近くの新聞が現在、むこう3年で最もオン ライン収入で重要となるのは購読だろうとしている。

向こう3年で最も重要な収入源

表






質問: 「オンライン収入に付いて考える際、皆様の組織に於いて向こう3年で最も重要なリソースとなるのは何か?」(どうか1つお選びを)

放送局 の経営陣ほど、購読収入に期待しておらず(11%丁度)、代わりにビデオ広告を最大の収入源と考えている(31%)。次いでディスプレイ広告の成長への期 待(28%)を第一に挙げていた。検索広告としたのは3%に過ぎなかった。

また、アグリゲーターサイトとの提携による収入といった考え が、今後の収益の柱となるとする社はかなり少なかった(新聞社の経営陣が11%、放送局が12%)。まして、ユーザーからの寄付を受託管理する選択肢に大 いに期待する経営陣はほんの僅かだった。

世界各国新聞社のiPad対策について

秒読みとなったiPadですが、こちらのHPによると新聞社側の動きが鈍いようです。

今のところ、アメリカではニューヨーク・タイムズとウォールストリート・ジャーナル、USAトゥデーの3紙だけが公式リリースされただけ。 ちなみに、海外の新聞ではルモンド、イル・メッセージロ(イタリア)、人民日報、ヒンドゥスタン・タイムズ、コンゲルトン・クロニクル(英国)などだそうです。

うむ、世界的に見ても少ないですね。人民日報が乗り出すのか。

USAトゥデーはiPadの公式発売と同時に利用可能にするそうですが、6月4日までは無料なのだとか。その間、有名なマリオット・ホテルの広告を載せて金銭的に賄うそうです。

一方のマリオット・ホテルは、森林資源の保護という名目で、昨年春から宿泊客に新聞を無料提供するのをやめています。トゥデー側によるうと、マリオットが新聞プログラムの一環としてデジタル化を考えており、その一環として同紙のiPad版へ広告を載せるようです。

パソコンの貸し出しサービスを行っているホテルは結構ありますが(今私が泊まっている東横インがそうです)、ひょっとしたらマリオットもiPadの貸し出しサービスを考えているのかもしれませんね。

広告の話では、ウォールストリートジャーナルはビュイックとキャピタルワン(クレジットカード会社)、コカコーラ、アイシェアーズ(為替の会社)、フェデックス、オラクルを掲載する予定だそうです。良い所を揃えてますね。

ニューヨークタイムズはチェース・サファイア(クレジットカード会社)を掲載するそうです。

さて、我等が日本の新聞は…?


マイコミさんの「Apple、iPad用電子書籍拡充に向け自費出版サイトと提携へ - ISBNも自動付与」について4

マイコミジャーナルさんの配信記事が面白いですね。自費出版のサイトがあるというのを、今回はじめて知りましたし、更にアップルが提携したというのも興味深い。

これは、Smashwords CEOのMark Coker氏による登録著者らへのメールで判明したもの。Smashwordsサイト上で当該のアナウンスは現時点で行われていないが、4月3日のiBookstoreオープンまでに手持ちの書籍を公開したい著者は、SmashwordsのPremium Catalog内に3月31日までに登録を済ませるよう通達が行われている。

えらくまた、急な話ですね(苦笑)。旅行とかでメールを読み忘れた人なんか大変だよきっと。

Smashwordsは現在のところ、Barnes & Noble、Kobo、Stanzaといった9種類の配信フォーマットならびにプラットフォームに対してコンテンツ提供を行っている。特にKoboはBlackBerryからPalm、Androidまで、各種のモバイル製品をカバーしている。また今回のiBookstore配信に加え、SmashwordsではSony Reader向けの配信準備も行っているという。

おぉ、ソニー頑張れ! というのはさておくとして、若干、私なりに思った事を補足。

アップル側は、iPadでの展開に際して、出版社側に利用者情報(読者情報)を見せたがっておらず、もめていました。相も変らぬ秘密主義ですが、出版社側にしたら、どんな人が読んでいるのかは把握しておきたいところ。それもあってか、ドイツでのWePadに注目が集まっています。こちらは、情報を共有する方向で進んでいますから。

自費出版の場合、その辺りが商業出版とは違う気がします。作家や漫画家にとって「とにかく読んで」というのが先に立っているでしょうから。まず、誰かの目に留まってほしい。だからこその自費出版。

まして、iPadのように注目されているプラットフォーム上でなら(昨日紹介しましたけど、600万台なんて説があるぐらいですから、台数分のユーザーの目に留まる可能性が、理論的にはある)、余計にそこで目を留めてほしいでしょう。

一方で、アップルの側からしたら、小うるさくないのは大歓迎(笑)な筈ですし「まずは自費出版サイトから始めたらどうですか」という流れを作れば、新人作家(漫画家)の発掘が仕事の柱の一つである既存の出版社にしたら脅威になるでしょうし。だって、「新人作家情報が皆アップルに把握される」形になってしまうのですから。そうしておいて、出版社側に揺さぶりをかける気でいるのではないか? これって深読みのしすぎでしょうか!?

それにしても、日本ではどうなるんだろうなぁ。Twitter読んでると、自費出版を志している漫画家さんの関心度、高いし。

ピュー・プロジェクト・フォァ・エクセレンスの分析原文(3)5

続きです。

※ここから後はOpenIDでログインして下さい。ログイン後、パスワードが必要となります。ただし、私の指定した人だけとなりますので、ご了承を。「是非読みたい」と言う方は、Twitterの私のアカウントにDMを下さるか、FBの方にご連絡を。パスワードをご連絡致します(繋がらない場合は、フェースブックの秘密グループに招待します)。なお、新聞社の現職の方々のお願いは、全てシャットアウトしております。合わせてご了承下さい。

なお、「Don Juan」というフェースブックの秘密グループに入会申請なさったら直ぐに読めます。これまたFBの方にご連絡下さい。 続きを読む

JBPRESSの「新聞の電子化、課金で攻めるFTに不況なし」を読んで4

興味深いけど、長い文ですね。フィナンシャルタ イムズの課金システムって、必ずしも評判が良いとは言えないんですが…勝てば官軍なんでしょうか。

肝は、ここですよね。やっぱり。

問 2001年であれば、それこそ有料モデルのウェブサイトなどほとんど存在しませんでしたから、批判もされたのではありませんか?

グリムショー それはもう(笑)。有料モデルは間違っているとか、インターネットの精神に反しているとか散々批判されましたが、我々は正しいことをやっているという自信がありました。何しろ、FTには素晴らしいジャーナリストがいて、素晴らしいコンテンツを作っています。

経済・経営問題については、世界的にも非常に優れた洞察を 提供しているという自負があります。完全にユニークな記事で、ほかに存在しないのですから、それに課金するのはごく自然なことでした。


ユニークというのは、独自性という意味ですね。何度でも書きますが、特化した 分野ですから。それとブランド。別段グーグルで検索しなくても、今日はFTどんな記事を載せているのかというインセンティブが働く。それって大きい。だからこそ、「今では、FT.comの購読 者数が全世界で12万1000人います。過去1年間でその数は22%増えました。急拡大する購読者の基盤があるわけです。それに加えて190万人の登録 ユーザーがいます。FT.comのトラフィックも伸びていて、新しいビジネスモデルを導入して以降、ページビューは50%以上伸び、現在では月間7000 万ページビューに達しています」2p)と なってるんでしょう。

繰り返しますが、このビジネスモデル、一般紙では無理だと思います。たとえば、同紙が登録に当たって肩書きや業種、権限などを入力させ、ターゲットを絞った広告配信をさせるという手口にしても、土台「登録しても良いかな」と思ってもらわない限り無理。それに、日本だと個人情報の取り扱いで抵触する恐れがあると思えます。

あと3p目に書いてある、マイクロ課金の方法ですけど、これって英国のタイムズ紙が構想している計画に良く似てますね。もっとも、タイムズは個別の記事への少額課金はしない方針だそうですが。6月か7月にはペイパルでの決済も可能にしたいとも話していますが、これは既にeBlogger(グーグルの無料ブログ公開ツール)がサービスとしてやっている。

結構、他社の研究を踏まえて、事を慎重に勧めている節がありますね。HPのデザインも徐々に変えていってると書いていますし(2p)。手堅い会社です。

また、最終的には、オンライン一本で勝負していくのではないか。そんな事を思わせる節がありますね。

グリムショー ええ、残念ながら数字は公表できませんが、オンラインの方が有利なビジネスモ デルであり、紙よりずっと利益率の高いビジネスになり得るとだけは、はっきり言えます。

紙の新聞を出すのは本当に大変なことです。世界各地で印刷し、毎日毎日、卸売業者や小売業者を通じて読者の手元に届けないといけませんから。

それと比べると、オンラインはずっとシンプルです。ひとたび仕組みさえ作ってしまえば、世界中の人にほぼ変わらないコストで商品を届けられます。

本当に低コストだと言っていいでしょう。課金モデルを確立できれば、かなり利益率の高いビジネスを構築できるはずです。

実際、FT.comは数年前から利益を出していて、今ではFT全体の利益にかなり大きな貢献をしています。

数字を明かせないのが残念ですが、過去2~3年、FTが金融危機の真っ只中でも安定した利益を上げられたのは、こうしたビジネスモデルのおかげでした。


ここなんか、もろにそう思わせる。「2010年末までに、紙とオンライン合計の購読料収入が紙の広告収入を上回る見通し」ともあるし、紙媒体広告が駄目になっていってる現状を考えれば、FTこそが真っ先に「ボートを焼く」新聞社になりそうですね。

もう一方のWSJが、今後どうなっていくか。いずれにせよ、経済紙はデジタル世界でも生き残れるでしょう。

インターネットと携帯電話利用者がニュースを社会経験としてどう取り込んでいるか~journalism.orgの分析から(1)5

journalism.orgという組織が、報道の在り方について様々な分析を行っています。これもTwitter経由の情報でした。為になる話が多いのですが、全部訳しきれるか不安です(苦笑)。

どう利用者を取り込んでいくかが、矢張り課題になっているようですね。組織として「一般参加させる事の理解について」(UNDERSTANDING THE PARTICIPATORY NEWS CONSUMER)をテーマとして、延々と特集を組んでいます。

その一つが、今月1日にまとめられた記事。「インターネットと携帯電話のユーザーが、いかにしてニュースを社会経験として取り込んでいるか」(HOW INTERNET AND CELL PHONE USERS HAVE TURNED NEWS INTO A SOCIAL EXPERIENCE)という題名の分析を行っています。以下、長いので2つに分割します。これはその1つ目。

デジタル時代を迎え、ニュースは何処ででも拾えるようになった。アメリカ人は無数の装置から複数のプラットフォームによる複数のフォーマットにアクセスしている。特定の報道機関の特定の技術を使った、これまた特定の記事を読むなんて時代は過ぎ去ったのだ。

アメリカ人の圧倒的多数(92%)が、日常のニュースアクセスの際に複数のプラットフォームを使っている。その中にはテレビの全国放送、地元テレビ、インターネット、地方紙、ラジオ、全国紙などが含まれている。46%のアメリカ人が日常で4種類から6種類のプラットフォーム(つまり上記の全部)と答えており、ひとつしか使わないと答えたのは7%でしかなかった。

インターネットこそが、人々とニュースの関係を変えた中心にいる。10人中6人(59%)がオンラインとオフライン両方でニュースを読んでいると答えている。そして、インターネットが今や人気のニュースプラットフォームの3番目になっている(1番は地元テレビで2番目が全国テレビ放送)。

アメリカ人がニュースを得る過程は、ご都合主義と採取に基づいている。彼らのニュースアクセスは、そういう気持ちになった時か見出しのチェックをする機会の時かである。同時にニュースを集めるのはおわりなき探索とは断言出来ない。例えオンライン上でニュース探索が際限なく出来るとしてでもである。

オンラインでは、多くの人が2つから5つのニュースソースを使っている一方で、65%の人が単体では好みのウェブサイトがないと答えている。21%の人が、当然のように一つのサイトを信頼しているとの事である。

この新しい、複数のメディアプラットフォーム環境の下で、人々とニュースの関係は、よりポータブルに、個人的に、そして一般参加型となって来ている。以下、数字を示そう。

  • ポータブル:携帯電話の持ち主の33%が、ニュースへのアクセスに利用している。
  • 個人化:インターネットユーザーの28%が、HPを自分の興味のあるトピックやソースをカスタマイズ化している。ニュースも含まれている。
  • 一般参加型:インターネットユーザーの37%がニュースの創造に寄与している。フェースブックやTwitterのようなソーシャルメディアを通じてコメントしたり、広めているからだ。

ある意味、人々のニュースの経験とは、特にインターネット上では、電子メールのリンク交換やソーシャルメディアのフィードへの投稿、Tweetによって脚光を浴びせる事などで社会経験の共有化に向かっている。そして論議のスレッドで意味を巡ってやり合うのである。たとえばオンライン上では10人中8人以上がメールでリンクをシェアしているのである。

ニュースプラットフォームでのインターネットの成長は、変化の中で切り離せない部分である。この記事ではニュースの消費行動に影響をもたらす2つの重大な技術上の流れに付いて議論する。

第一に、ソーシャルネットワーキングサイトやブログのようなメディアの出現が、利用者に新鮮な方法でニュースを社会経験としているという事を挙げる。ソーシャルネットワークや、ソーシャルネットワーキングの技術を使ってニュースにフォルターを掛けたり評価してみたり反応してみたりしているのである。

第二に、スマートフォンを通じた携帯の接続性の向上は、一部の熱烈なウォッチャーにとって、ニュースを何時でも何処ででも集める事を可能とした。

これらはピュー・インターネット&アメリカンライフプロジェクトプロジェクト・フォア・エクセレンス・イン・ジャーナリズムの共同研究によって判明した。両者の研究は新しいニュースへの展望を理解する事を億的にしている(続)。

まだボートを焼く時ではない~アンドリーセン氏への反論5

先日のマーク・アンドリーセン氏の発言は各方面で話題となりましたが、ニュースペーパー・デスウォッチで反論がありました。「まだボートを焼く時ではない」というのです。

アンドリーセン氏の主張を要約した後で、ウォッチ側はこう書きます。

アンドリーセン氏の主張は、長期的には落ち目のモデルを捨てるのが理にかなっているというものであるが、利益の出ている印刷事業を放火するのは、現時点では間違った戦略である。部数の下落に思い悩んだ数年後、死に行くビジネスを蘇らそうと絶望的な試みを行った新聞の発行人は、最後にインテリジェントな戦略を受け入れつつある。代わり得る新しいモデルが何とか軌道に乗るまで、彼らは利益の出るビジネスからは何でも絞り出そうとしている。容易ではないだろう。

多くの発行人は、最近3つの部分からなる戦略を受け入れた。

昔からの忠実な読者を頼んで、可能な限り収入をあげるべく、購読料を値上げするべし。
昔からの読者を離れさせる事無く、収益性を維持するする方法で下向きにコスト管理をすべし。
ブランドを保存し、新たな利益を発生させることができる成長市場に投資すべし。

昨年、ニューヨークタイムズの第2四半期の購読収入が広告収入と殆ど同じ額だったと報じられた。積極的な値上げは、実質的な部数減と重なり、購読者を利益のエンジンへと変えた。

他の発行元もこのアプローチを受け入れている。そんな訳で、ここ数年の悲惨な部数減は、自分たちで見るほど破壊的にはなっていない。多くのビジネスでは、昔ながらの、少ないが利益を持たらす利用者がいる。

しかし、成功した長期的なフランチャイズは、さらに進化し続けるだけの技術がある。


新しいメディア・ニュース事業は、印刷部門の収入の約20%に相当する利益を得られる事を実証した。営業経費が約90%も低いからだ。これらの組織は利益を出しているが、印刷事業に比べればずっと少ない額である。

業界の最新収支報告では、大半の発行元は、現在オンライン広告が収入の12%と16%の間だとしている。さらに、事業や取引手数料、或いは高価格広告、および求人広告のような他の経営資源のマネタイズが出来ていない。一旦発行元がオンライン収入が20%の閾値に達すれば、ビジネスと商標を支えられると見なされ、印刷部門を閉鎖出来る。しかしながら、その閾値への到着は漸進的でしかない。発行元が融通の利かないコストを縮小する間にその長所を引き続きしっかりと管理する事ができれば、今までどおり印刷部門で多くを稼げる。

巧妙な綱渡りではある。発行元がコストを余りに削減し過ぎるなら、従来からの紙媒体読者と部数収入が急落するというリスクを負う。また、移動完了までの時間はもはや余り残されていない。

さらに困難なのは3つの箇条書きだ。新聞社の経営陣は、資産管理や創業には熟知しているが、新興市場への明確な投資についてはそうではない。テッククランチのインタビューで、アンドリーセン氏が正に指摘したのは、テクノロジー企業が市場の絶え間ない混乱(今ちょうどマイクロソフトが面しているような状況)に対処することに熟達している事だった。

成功した
テクノロジー企業は、一種の創造的な破壊プロセスを通じこうした挑戦をくぐり抜けてきた。成功した経営陣とは、新たな機会と素早く廃棄する古い生産ラインとを識別することを学ぶエキスパートだ。

しかしながら、テクノロジー企業は、新聞社が持っているような昔ながらのレガシーベースを持つ贅沢が許されていない。ビジネスは最後には支えられなくなるものの、減る一方の日刊紙の読者が、まだ新聞事業での紙媒体の生命をさらに10年長らえさすしれない。発行元が向こう数年、金を生む牛として搾乳したがるとしても、狂気の沙汰ではない。新しい機会を見つけるのが困難な所であり、そこへ投資するにあたっては、必然的に大きな利益を求めたがる株主と直面するし、その為の強靭な胃袋を持たねばならない。

ボートを焼く事は現時点では賢明な戦略ではない。しかし、薪を集め始めるのはよい考えだ。

つまり、今はまだ、その時でないと言う訳です。ただもう遅かれ早かれ、時間の問題と言うニュアンスですね。

マーク・アンドリーセン氏、旧メディアにアドバイス―「生き残りたければ船を焼いて退路を絶て」3

半分訳した所で、日本語版があるのに気付きました。すごく徒労感があります(苦笑)。まずはリンクを張りましょう。ちなみに、ここが原文ワシントンポストにも同じ記事が載っています。

ちなみに、アンドリーセン氏は、記事で紹介されている他にTwitterの起ち上げの際にも投資しています。発言自体は過激ですが、これはIT業界にはありがちな事です。

テクノロジーは日々進歩していく。人はそれに適応しなければならない。メディア企業もこの教訓を早く学ばねならない。コンテンツがデジタル化されて消費者に届けられる限りにおいてメディア企業もIT企業たらざるをえないのだ。

ここの一節には、特に頷けました。絶えざる自己変革こそ、ITに限らず企業存続の道です(個人もそうかもしれない)。ただ、新聞自体が印刷と不即不離であり(鉛を拾う時代からコンピューター化した事はありましたが)、基本的には誕生以来ビジネスモデルは変わっていない事を考えると、言うは易しかなとの思いが抜けきれません。特に日本の新聞の場合、それこそマーケティングのいろはのいから知ってもらう段階から始めなければならないだろうと思えます。

ちなみに、大学で歴史を学んだ人間から言わせてもらうと、コルテスが征服したのはメキシコではなく、アステカ帝国。アンドリーセン氏の言う、今日のメキシコ領域を全部征服したのは、コルテス以後の時代です。アステカ帝国側は、一旦はコルテス撃退に成功するものの、スペイン側の近代的な軍事戦術に対抗するだけの新戦術を遂に編み出せず(この辺は新聞業界に通ずるものがある)、旧大陸からもたらされたマラリアの流行で社会的にガタガタになった所へ、リベンジを期したコルテスに征服されてしまいます。

そのコルテスも、結局は不遇のうちに故郷のスペインで生涯を終えます。今日のメキシコが、北に接するアメリカほどには発展しなかった事も考えるなら、アンドリーセン氏のアナロジーは中々象徴的なのかも、と思えて来まう。ひょっとしたら、メディア業界はこの先、誰も得をしないままに終わってしまうのかも知れません。