「コミケの運営はボランティアではなく企業に任せるべき」

なんて論が少し前にまた目に入ったので、改めてこの件について。

とはいえ、その「最近目に入った話」そのものではなく、

昔自分がこの件を取り上げた時にいただいたご意見とそれへの返答を、

メモと記憶を頼りに書いてみます。

まだブログを始めておらず、

同人サークル「ぐる~ぷ・げし」のWEBサイトの頃、

コミケが企業化しない・できない理由について書いた記事をアップしており、

それへのご意見・質問という形でメールが届いたのです。
(正確に思い出せませんが、2002~2005年の間位くらいだったかと)

で、そのメールと最近目にしたもの、ほぼ主張内容が一緒だったので、

ちょっと取り上げてみようと思い立った次第。

なお、その時のメールの方と最近目にした論者は別人です。

まあ昔から、出ては消えを繰り返しているお話ですしね。

 
※8月23日追記あり

(以下「続きを読む」内で)

さて、私がかつて書いた記事は、当時同人界隈で出回っていた、

「コミケの諸問題、アマチュアで解決できないならプロ(企業)にやらせろ」

という趣旨の意見に対し、以下のような趣旨を返したものでした。

 

・プロ(企業)であろうと今のコミケの問題は解決できると思えない

・仮に準備会を発展させる形で「コミケを運営する会社」ができても、
 人件費をはじめコストが増大するため、コミケ開催だけで収益を出し続けることは難しく、
 継続的に即売会などほかのイベント開催をする必要が出てくるし、
 また参加費やカタログ代などが跳ね上がる。

(元の記事書いた当時は、一般参加から入場料を取ることはシステム的にほぼ不可能だった。
 ちなみに、可能となった今にこれをすると、一般の入場料も上がると思われる)

・別の企業に運営を任す場合、
 わいせつ図画頒布(刑法175条)関係で逮捕される危険を冒してまで、
 開催してくれるイベント運営会社がいるとは思えない。
 可能性があるのはすでに企業系即売会を開いているところだが、
 それらも「コミケを開くノウハウ」はもっていない。

(「同人に関わっていない一般のイベント運営会社に、
 コミケと同レベルの「表現の自由を確保する『覚悟』」
 を持ってやってくれるところがあるとは思えない)

 

実際はもっと細かく書きましたが、概ねこのような主張をしたのです。

で、これに対してきたご意見を要約すると、

「難しいのは分かるが、コミケを企業運営にすれば雇用の創出にもなるので、
 もう少し検討してほしい」

「コミケ自体の企業化が難しいならば、準備会が持っているノウハウを、
 他の企業系即売会かイベント運営会社に文書化するなどして伝え、開催してもらえばよい」

というものでした。

これに対し、大体以下のような感じで返答しました。

 

・一口にコミケのノウハウと言っても、数々の部署ごとに準備することになり膨大な量になる。

・文書化が難しい、または実質不可能なもの、文書だけでは本質が伝わらず、
 実践を通して学ばないと身につかないノウハウもある。(混雑対応や入場列の整理・移動など)

 その場合、ノウハウ継承のため、社員やバイト予定の人たちに数回スタッフを経験してもらうか、
 ある程度経験豊かなコミケスタッフ経験者を、まとまった人数雇う必要がでてくる。
 前者は手間がかかりすぎるし、後者は十分な人数がそれに応じるとは限らない。

 コミケスタッフには、
 ボランティア・アマチュアによる運営であることに意義を見出していたり、
 そのことにプライドを持って参加している方がいるが、
 そのような皆さんが抜けてしまう恐れが強い。

 また、公務員や副業禁止の企業の人も、スタッフ参加できなくなる。

・一般企業の運営になった場合、
 コストに見合った十分な収益が出なければ「即終了」となる可能性が非常に高い。

・コミケは「ボランティアの任意団体」だからこそ、
 赤字ギリギリの自転車操業状態でも継続できていると思われる。

・「コミケにお客様はおらず全員参加者」、
 「参加者は参加形態に寄らず平等」という概念が浸透し、これが運営を円滑にしているが、
 これはスタッフがボランティアだから成立している面が非常に強い。
 平等な立場のボランティアスタッフのやることだから、
 協力したり失敗を大目に見たりしやすいが、これが社員やバイトではどうか?
 少なくとも「何が平等か?」と疑問を持つ者も増えると思われる。

※8月23日追記

うっかり書き忘れたのですが、このメールのやり取りは1回ずつではなく、
2~3回に分かれていました。
で最初のこちらの返答の後、

「参加費が上がることはそんなに悪いことでしょうか?」という質問がありました。

それに対し以下のような回答を。

 

・入場料を取らなかったり、サークル参加費を可能な限り抑えているのは、
「なるべく多くの参加者を受け入れる」という理念に基づくもの。
入場料や参加費の増加は参加のハードルを上げてしまう。
企業は利益の追求が目的となるため、このコミケの理念・方針と相性が悪い。

 

入場料については現在徴収されていますが、それも東京五輪とその後のコロナ禍という、

経済的な危機が続いたためで、それがなければやっていなかった可能性もありますし、
イベントの入場料としては安価に抑えられているかと。

(余談ですがメールのやり取りをした当時は存在しなかった、

 「料金を徴収しやすいシステム」が開発され普及したから、
 やっと可能になったという側面も)
※追記終了

 

当時と今で事情が変わっている部分もありますが、
ようは、「実現が難しい上に企業化すると寿命が縮まるリスクが上がる」

ということで、当時はこれで先法にもご納得いただけたようでした。

ただ「時代がどう変わるかわからないので、可能になる未来はくるかもしれない」

という話もしましたし、それは今も否定はしきれないとは思います。

実際、当時は不可能だった一般からの入場料徴収は実現していますしね。

 

で今回改めて思ったのは、コミケがボランティア運営であることを批判する人の多くは、

「ボランティア主体のアマチュア主催の運営でここまで発展・継続してきたという事実」
を、無視または軽視しているのではないかなと。

「企業化しろ」という前にその辺も考慮していただきたいなあなんて思ったりします。

とはいえ、「ボランティアならではの問題点」があることも否定はできず、

コミケや準備会が無謬の存在だなどというつもりもないのですけどね。

 

◆オマケ

これらはこの件に関連しそうな過去記事ですが参考までに。


「ちょっとしたぼやき」


「プロ・企業だから解決できる…の?」


「2千数百人てすごい数だよね?」