2010年04月21日
♯白き瓶―小説 長塚節
藤沢 周平先日ブックオフに行った際、先に読んだ「早春」とこの「白き瓶」二冊の藤沢作品を買ったのだが、「早春」を読むと偶然にもその中にこの「白き瓶」のことが書かれていた。
そもそも、「長塚節」なる作家を知っている人はどれくらいいるのだろうか?
この人のことを知っているという人がいたら、文学的にかなりマニアックな人だろう。長塚節は明治時代の歌人であり、作家だ。正岡子規の正当な後継者と言われていたのそうで、その意味では今流行の「坂の上の雲」の時代だ。
私がこの人のことを知ったのは、高校一年生の時。当時、大好きだった憧れの先輩(もちろん女性です)から、読んでみてと頂いたのがこの人の代表作「土」だった。むろん当時はそんなこと知る由もなく、文庫本にしては珍しくハードケースに入っており、開いてみると小さな字がビッシリと並んでいる。文体も昔の言葉であり、内容に至っては山形の山村の農家の生活の様子が淡々と書かれていた。
確か、1/3程度で挫折した。
以来、私の中では「長塚節」は一種のトラウマとなっていた。
ブックオフでこの表題「白き瓶―小説 長塚節」を見たとき、大好きな藤沢周平によって描かれた長塚節なら最後まで読めるはずだと喜んだ。
ところが、やはり長塚節は手強い。もともと歌人である長塚を描こうとすれば当然、その歌も随所に出てくる。この歌がよく分からない。そして、長塚の人となりを表すその私信もほとんどカタカナであり候文になっている。これもまた読みづらい。
それでも、ナントカカントカ、半分程度まで読み進めてきたところで、なんと私にとっては二度目の災難となる、本が家内の手によって洗濯機の藻屑と化してしまった!!
もちろんそれは入浴中に本を読み、出る際に風呂場の入り口にある洗濯機のところに本をポンと置いてしまった私が悪い。
読み終えたところまでの内容を忘れぬうちに、また買いに行かなくては。
※忘れぬために感想を。
長塚は正岡子規にその才能を見出されたたが、その後程なくして正岡は逝去する。正岡直系の弟子として、長塚は伊藤左千夫とともに「ホトトギス」を継承する。
この伊藤左千夫がまた曲者で、まあどうして芸術家と言うのはかくも根性曲がりなのだろう。人とは衝突を繰り返す。要するに人の作品を認められない。自分の才能やその作品はさて置いても、人の作品はボロクソに貶す、そのため人はどんどん離れていく。伊藤左千夫の良いところを正しく理解している長塚さえも、その毒舌に度々傷つけられ、次第に遠ざかっていく。
そして―。洗濯機へ。
