2011年06月27日

♯世にも美しい日本語入門

世にも美しい日本語入門藤原正彦/安野光雅

ブックオフで100円で購入。こういう素晴らしい本に出会いしかも100円で買えてしまうところがブックオフの素晴らしさであり、作家にとっては悲劇である。

ともかくこの本は素晴らしい。藤原正彦氏についてはここでは何度も紹介しているので特に記さないが、安野光雅氏は藤原正彦氏の小学校時代の図工の先生だったそうで、後年は画家、絵本作家として世界的にも高い評価を受けているそうだ。
やはり安野氏に小学生時代に教わったことのある編集者がこの本を企画した。

何しろ藤原氏は、日本文化というものを誰よりも愛し、そして次代に正しく継承していけるのかを深く憂いている数学者である。数学者と画家がいかに日本文化、殊に「日本語」が世界に類稀(たぐいまれ)な美しさと、精細で奥深い表現力を持った言語であるかを様々な角度で語り合った本だ。

日本語は大変に難しい言語だ。文字としても、「漢字」「ひらがな」「カタカナ」と3種類ある。当然、欧米はアルファベットだけだ。語彙としても、例えば「好き」という意味をもつ言葉は、愛、恋、恋焦がれる、慕(した)う、想いを寄せる、ときめく、惚れる、身を焦がす、などなど、なんと多くの表現方法があることか!!
その意味では、どうして英語が世界共通語になったのか、どうして日本語ではダメなのか(蓮舫のようだ)が分かる。日本語は難しすぎるのだ。

難しくも奥深い日本語の表現力、そして美しさは、この言葉を使う人間に美しき情緒を生むという。全くその通りだ。思考はその国の言語で行われるからだ。

しかしそのためには、美しき日本語に触れないと、美しく繊細な情緒は育たないという。故に二人は、日本文学に触れよという。しかも漢詩や文語など、古典の名作を読むべきであると。

また、昔の童謡や小学生唱歌の重要性も訴えている。これら昔の歌は、北原白秋や野口雨情など当代きっての詩人が作詞しているものが多い。ある意味では、美しき日本語の表現力の結晶が、童謡にあるといっていい。

確かに本書の中で紹介されている唱歌を聴くと、懐かしさに目頭が熱くなる。なぜなのだろう。きっと歌詞の中にまたメロディの中に、日本人のアイデンティティに訴えかける何かがあるのだろう。
冬景色
さ霧(ぎり)消ゆる湊江(みなとえ)の
舟に白し 朝の霜
ただ水鳥の声はして
いまだ覚(さ)めず 岸の家

烏(からす)啼(な)きて木に高く
人は畑(はた)に麦を踏む
げに小春日(こはるび)ののどけしや
かえり咲(ざき)の花も見ゆ

嵐(あらし)吹きて雲は落ち
時雨(しぐれ)降りて日は暮れぬ
若(も)し燈火(ともしび)の漏(も)れ来ずば
それと分かじ 野辺(のべ)の里 


ゴンドラの唄
いのち短し 恋せよ乙女 紅き唇 褪(あ)せぬまに
熱き血潮の 冷えぬまに 明日の月日の ないものを

いのち短し 恋せよ乙女 いざ手をとりて かの舟に
いざ燃ゆる頬を 君が頬に ここには誰も 来ぬものを

いのち短し 恋せよ乙女 波に漂う 舟のように
君が柔手(やわて)をわが肩に ここには人目の ないものを

いのち短し 恋せよ乙女 黒髪の色 褪(あ)せぬまに
心の炎 消えぬ間に 今日は再び 来ぬものを



takosuzuki at 11:17│Comments(0)TrackBack(0)clip!LIBRARY-BOOK 

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