2014年03月24日

#夢見通りの人々

夢見通りの人々宮本輝

1986年に刊行された小説。10章の短編で構成されており、それぞれが主人公の違う独立した話として、大阪某地の商店街に住む人々を描いている。

登場人物は、まず第一章で紹介される善良なる小市民で詩の好きな独身会社員・里見春太。肩書きを欲しがるパチンコ屋の強欲社長、タバコ屋のおばあちゃん、守銭奴の時計屋の夫婦と盗癖のあるその息子、女のことしか頭にない極道の肉屋の兄弟、春太が想いを寄せるパーマ屋に勤める光子、若い男が大好きなスナックのママ、ゲイだが博覧強記な時計屋等々。

本書では特に決まった主役はいないが、これらのキャストの中では、善良なる小市民・里見春太がもっとも癖がなく、いわゆる“いい人”なので、とても印象的だし、人生という生き馬の目を抜く戦いの中で、どう生きていくかを考えさせる。人がいいだけでは、抜け目のない奴にいいようにやられてしまう、ということだ。

まあ、揃いも揃って、個性的なキャラクターが入れ替わりながら、物語を紡いでいく。それぞれ、小説ゆえに特異なストーリーだが、いずれも人生を考えさせる。一話一話完結なので、とても読みやすく、気軽に読める。

環境というのは、手ごわい敵です。環境なんか、簡単に変えられそうな気がするんやけど、とんでもない。そうすんなりとは変わってくれへん。環境が人間を変えます。人間も環境を変えられるんやけど、これには途轍もない力と努力が必要です。
(p168)
とはいえ、環境に左右されない自分を確立していくことが大事。難しいけどね。

takosuzuki at 21:49│Comments(0)TrackBack(0)clip!LIBRARY-BOOK | 宮本輝

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