時をかける少女『ウォーターボーイズ』に抱いた郷愁

2022年12月01日

『聲の形』は、えらいものを見てしまった感

本作は京アニの代表作のひとつ。
めちゃくちゃ繊細でビビった。

妻は「触れたくない世界」と言ったくらい(笑)

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小学6年生のクラス。石田将也はクラス・ヒエラルキーの頂点に立つ男子。ちょい不良のイケてる3人組で行動し、さらにクラスのかわいい女子とグループが形成されているのもあり勝ちだ。

そんな中、聾啞者の西宮硝子がクラスメートに加わり、波風が立つ。最初は何かと構っていた女子たちも疲れてくるし、将也も美人の硝子が気になるだけに、ちょっかいがついエキサイト。高額な補聴器をいくつも投げ捨てたりして、ついに母親からいじめのクレームが入り、クラス会となる。「誰か心当たりは?」という自ら言葉に手を上げようか躊躇しているところで男性の担任が「石田(将也)、なぜ黙っている!」と怒鳴り、事態は最悪に。グループの仲は破壊され、将也はいじめの対象へと転落してしまうのだった

高校生になって物語は再開。もう大変です!
主人公将也、ヒロイン硝子ともに、自殺願望を持ち続けて不安定。硝子の妹西宮結弦はしっかりしているようで不登校。小動物の死体をニコンで撮り続けているが、それは硝子を自殺欲から遠ざけるためだったと後に知れる。

中学時代の友人が徐々に集まってくるが、それぞれ難しい。以前将也と共に硝子をいじめていた植野はどうしても硝子を受け入れられない。誰にでもやさしい川合には、将也が「お前は自分がかわいいだけ」とまあまあ正しいことを言ってしまう。小学生時に手話を学んで硝子に近づきながら、クラスがもめると逃げ出した佐原は、今回もまた揉めると投げ出してしまう。
そして、夏休みの花火大会の夜。物語は突然クライマックスへと向かうのだ。

テーマはいじめの苦しさと克服、そして、声で伝えることの難しさだろうか。
決して浅い世界ではない。リアルでキャラも実在感がる。しかし、あまりにも繊細だ。
そして、何が厳しいって、これに多くの若者が共感できてしまうことだろう

僕だってこういう経験が全くないわけではない。
いじめではないが、高校生時にクラスの中で誰とも馴染めずにいたことがある。
そりゃもちろん、あんまりいい思い出ではない。
・・・が、それがまたいい経験になったのである。

クラスの目立たないやつらと初めてちょっと親しくなって、彼らの心中を知れた。
その経験がなければ、本作の中の、将也と永束君の友情に涙したりもできなかったろう。

それから、まあ、自由な時間も増えるか、と思ってたね。
ちょうど友達って時間食うな、と感じていたところで、そこからぐっと孤独主義になった。
あっ、それが今まで続いているのか(笑)
確かに、その後親しい友達がほとんどいないな。

でも、中学生時は知らず、高校生にもなれば、友達がいないのもまあいいか、と思える強さが欲しい。バイトとか、別のところで作ってもいいしね。
そういう「強さ」の方を語らず、徹底して弱い方に寄り添っていく本作は、一方でもちろん「いじめなんかで死ぬな」「(転居などしなくても)じっくりと時間を掛けて脱出できるよ」という前向きなメッセージを持っているのことも間違いない。
しかし、あまりにも繊細で、これに多くが共感する世代のひ弱さに、正直暗澹となる。65点



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時をかける少女『ウォーターボーイズ』に抱いた郷愁