2006年12月29日

テキサス・バレエ団の「くるみ割り人形」 

くるみ割り 12月19日(火)、テキサスバレエ団(Texas Ballet Theater)のくるみ割り人形を鑑賞してきました。
 場所は、先日、オペラ「セビリアの理髪師」を鑑賞したミュージック・ホール(Music Hall at Fair Park)だったのですが、ここはホール自体があまりに味気ないので、フォートワースのバス・パフォーマンス・ホール(Bass Performance Hall)の公演の方に行けば良かったなとちょっと後悔。

 今年のホリデーシーズンに鑑賞した「くるみ割り〜」は、モスクワバレエ団のものと(こちら)、今回のものの2つだけど、どちらかもう一度というなら、私はテキサスバレエ団の方を選択します。 

 両方ともダンサーの質はトップクラスとは言えませんが、テキサスバレエ団はとてもリッチなようで、舞台美術にも衣装にも惜しみなくお金がかけられていて、雰囲気が良く且つセンスもずっと良い。 「くるみ割り〜」は、雰囲気がとても大切な演目ですからね。

 なんでこんなこと言うかっていうと。
 あまりに可哀想で先日は書けなかったんですが、モスクワバレエ団のダンサー達が履いているシューズ、全部ボロボロで裏が真っ黒だったんです。 
 多くのバレエ団は、シューズがボロボロだと見栄えが悪いし、ダンサーの技術にも影響するってことで、公演用のシューズは数回しか使用していないと思います。 アメリカ随一のバレエ団、ABTでは、1回使い捨てだと聞きました(トップダンサーのものは、その後、劇場でサイン付きで販売されます)。
 だから、私、あんなシューズを履かされれた可哀想なダンサーたちを見たのは初めてで、「外貨獲得」とか、「出稼ぎ」とか、「貧しい」とか、そういう言葉しか頭に浮かばなくて、公演の間中ずーっと悲哀を感じ続けてしまったわけです。 
 ダンサーとしてのポテンシャルのみを言えば、モスクワバレエ団に軍配が上がるのかもしれませんが、あんな哀しい思いをしながら「くるみ割り〜」を観るのは、あれっきりにしたい・・・

 以下、バレエオタク備忘録なので、適当にスルーして下さい。



 アメリカで見た「くるみ割り〜」は、以下の順で合計4公演となりました。

 ペンシルベニア・バレエ団 (バランシン版) 
ニューヨークシティ・バレエ団 ( 同上 )
 モスクワ・バレエ団 ( 不明 )
ぁ.謄サス・バレエ団 (ベン・スティーブンソン版)

 今回のベンさんのバージョンは、バランシン版と同じくイワノフ版を基にしたバージョンですが、マイムが多くバレエらしいダンスがあまり出てこないまま進行する1幕のバージョンとしては、出色の出来だと思います(ただし、2幕はちょっと寂しいので改善の余地アリと思います)。 

・主人公の名前は「クララ」で、アプレテンィス(研修生)のダンサーが踊った。年齢は10代後半くらい? 

・フリッツ(こちらは正規のダンサーだけど年齢は10代後半くらいに見える)が最初からいかにも悪戯っ子として目立っていて、彼を見失うことがない。 誰がフリッツか良く分からず進行するものが多い中、これは素晴らしい!

・クララとフリッツは、それぞれ観客に「自分たちがクララ(フリッツ)です」とアピールするかのごとく短いダンスを踊るのだけど、その踊りが回転技が中心で、全て左回り(2人とも緊張してたけど。笑)。

・子役は5歳くらいの小さな子から10代前半(?)まで幅広い。また、衣装の中に詰め物をしたデブ子も登場して、バラエティ豊か。 デブ子がワガママでちょっと意地悪など、それぞれの性格が細かく設定してあり、それに合わせて様々な振り付けがなせれていて素晴らしい。

・大人の招待客も、年齢や体型が様々でバラエティに富む。 老女どうしの挨拶では、スローモーションのようなのんびりとした動きで笑いをとった。 大人だけで踊るワルツも、グループ分けされて踊り分けされるなど芸が細かい。

・両親からクララへのクリスマスプレゼントは真っ白なトゥシューズで、クララはもらった途端、母親を伴って部屋の隅に行き嬉しそうに履いてみせる。

・ドロッセルマイヤー(属性は不明)は黒い眼帯をしていて、これまで観たどの舞台よりも見事なマジックを披露した。

・パーティーが行われる部屋の出入り口は上手ではなく下手奥に設置してある。

・ドロッセルマイヤーがねずみやねずみキングを呼び寄せ、くるみ割り人形を目覚めさせる(この夜のしかけがドロッセルマイヤーということがこれで分かる)

・ねずみキングは王冠をかぶっただけで他に頭はついておらず、原典の「7つの頭」を連想させるものは一切なし。 

・ねずみキングを倒すのはクララ。 両親からもらったトゥシューズで思いっきりねずみキングを後ろから殴る。 今まで見たクララの中で最も凶暴だ(笑)。 が、このトゥシューズが印象的なので、後で演出の理解に助かる。

・人形の「くるみ割り人形」からねずみと戦う成人の「くるみ割り人形」(王子とは異なる成人ダンサーが演じる)への変身と、成人の「くるみ割り人形」から王子への変身は、それぞれクララのベッドを使った死角で行われる。

・雪の精の場面、コーラスはなし(これは非常に残念)。 が、舞台に近い観客席に舞台と同じように雪を降らせたので、観客は大喜び(でも雪を降らせる装置の音がうるさすぎたのが、ちと残念)。

・王子は雪の女王とパ・ド・ドゥを踊る。 クララは、ごく短い時間、簡単なステップで踊りに加わりもするが、基本的にはずっとうっとりして見ている。

・雪の精の踊りの振り付けは、かなり珍しい。 群舞では「白鳥の湖」や「ジゼル」を彷彿とさせる振り付けが随所に見受けられる(特に「白鳥」は強烈なので一発で分かる)。 クララがうっとりと見ていること、クララへのプレゼントがトゥシューズであったこと等、クララがバレエダンサーに憧れる設定のノイマイヤー版を思い起こさせる。

・2幕は「お菓子の国」の設定。 通常、子役が踊る天使の踊りは無く、10代中頃の女性ダンサーがパティシエの格好をしてケーキなどのお菓子を抱えて踊る。

・王子が金平糖の精に挨拶するとすぐに2人とも居なくなる。 クララは舞台に残って中央の椅子に座り、パティシエ達と踊りを見る(なので、ちょっと舞台が寂しい)。

・お菓子の国でありながら、各国の踊りの設定。 スペイン(女性1人・男性2人)、アラビア(男女のペア)、中国(男性2人)、ロシア(男性1人)。

・中国の踊りは、よくある男女ペアのお茶の踊りではなく、刀と長い棒をそれぞれ持った男性のペアが武術をベースにした踊りを披露。 面白い振り付けなのだけど、男性ダンサーの技術がついていかないための迫力不足は否めず、非常に残念。

・ギゴーニュおばさんの踊りは、「マダム・ボンボニエールとその子供達」なんだけど、子供達がちと大き過ぎるか(やはりこの踊りは、小さな子供達がわらわら出てくるのが可愛いと思う)。 マダムのスカートの前から出てくるのではなく後ろから出てくるのでちょっと味気ない。 マダムのスカートの前が開くと上半身の見えない女性ダンサーがステップを踏んでいて、マダムが恥ずかしがるという趣向は初めて。

・グラン・パ・ド・ドゥは、金平糖の精(Sugar Plum Fairy)と王子が踊る。

・最後はクララの寝室。ただし、奥にはオーガンジーのような幕を隔ててまだお菓子の国が見えている。 目覚めたクララが隣においてあったくるみ割り人形(本物の人形)を抱き上げる。 オーガンジーの向こうで、成人のくるみ割り人形がゆっくり敬礼して幕。



takurere1025 at 05:16│Comments(0)バレエ・ダンス・舞台 

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