評価の定まっていない現代の写真、写真家、写真集について 最新の情報を提供していくインターネットマガジン
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写真家としての目的は、ドキュメンタリーとフィクションの境界線を確保することと、島人たちを不思議な時間の無い空間で包み込む事です。写真は現実を変化させて、魔法のような眺めで人や人生を映します。


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夜、絡みあった草木や静かな水面の上を歩いていると、虫たちの声が暗闇の中に響き、月明かりが水面と肌を灰色に染める。


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満ち潮そのものがデルタ地帯の命です。満ち引きの間隔が島々の生活を刻みます。時に島人はポプラやヤナギを伐採し、時に川端で草を収穫します。


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 (C)Alejandro Chaskielberg, courtesy of Michael Hoppen Contemporary



新しい作品を見ること、発見することに関する私の欲求は飽くことをしりません。ですから(私がキュレーションを手がける)「ブライトン・フォト・ビエンナーレ2010」での出展者選考の際、(写真家の)マルセロ・ブロツキーが言った「若いアルゼンチンのフォトグラファーに会うべきだ」という提案に飛びつくことにしました。

そこでアレハンドロ・チャスキエルベルグのポートフォリオをみる機会を得ることができました。そして彼の写真の3点目を見るころには、彼が類まれな才能を持った新しいアーティストであると確信したのです。彼の作品はこれまでまったく見たことのないイメージでした。ここまで完成度の高い作品をつくりだす新人フォトグラファーにはいままでほとんど出会ったことがありません。

彼の作品は、南米にあるパラナ川の三角州の川岸で暮らしている田舎のコミュニティーの人々の生活を、写真を通して記録したものです。しかしそれ以上のものが彼の写真には表現されています。すべて満月の夜に撮られた作品は、フラッシュライトや月光、たいまつを見事に操り、ポーズをとった被写体とそれらの要素とが縫い目のないほど完ぺきに融合しているのです。チャスキエルベルグは作品の主題と方法論をとてもうまく組み合わせているため、テーマとスタイルとが一体化しています。双方の間にある壁がうまく取り外されているのです。

彼の作品をはじめて見たとき、すでに充実した一年間を撮影に費やせていたようでしたが、このプロジェクトの可能性を完全に引きだすためにはもう少し突きつめて写真を撮る必要があると私は強く思いました。そう彼に伝えると、彼は再びパラナ川のエリアに戻り、2009年中頃から2010年中頃までの間、作品の探究と制作を続けたのです。

入念なリサーチとリハーサルによって撮られた作品群。背景にある満月はきわめて重要な構成要素となっていて、完ぺきな撮影のチャンスは三晩しかありませんでした。被写体となった仕事熱心な森林労働者たちは、いつもは夜の九時までには寝てしまっています。したがって彼らを説得して遅くまで起きていてもらい、長い露出時間で写真を撮るために何分もの間じっと同じポーズをとっていてもらわなければなりませんでした。チャスキエルベルグがこのコミュニティーにとどまり続けたのには明らかな理由がありました。被写体として参加したすべての人々が彼のプロジェクトについて知っていて、とても協力的だったからです。彼の写真集の表紙作品はとても特別なもので、被写体となったパラグアイ人の季節労働者がはじめて見た彼自身の写真なのです。

ドキュメンタリーとしてのこれらの作品には格別の価値があります。たとえ私たちが被写体についてなにも知らず、どこで写真が撮られたかさえもわからない状況だったとしても、これらのイメージを楽しむことができるでしょう。

今回の作品の鍵となる要素は、以前チャスキエルベルグが映画業界のフォトグラフィー・ディレクターだったことにあると私は思っています。人工的なライティングの準備や場面設定、写真の構図などを決める際の精密さが、このプロジェクトのとても重要な部分となっているからです。

このすばらしい作品群はすべての要件を満たしています。アートであり、革新的なスタイルで繊細なコミュニティーの人々を撮ったものです。また、アルゼンチンに台頭する新しい写真文化を人々が発見する一手にもなるでしょう。(マーティン・パー)


リコーフォトギャラリー/RING CUBE
会期2012年1月18日~2月5日





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2手舎は写真集などを扱うオンライン書店です。

 

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