1971年に開催されたパリ青年ビエンナーレに参加した中平卓馬は、日本から写真を持ち込むのではなく、パリで撮影した写真をその日の内に現像・プリントし壁面に展示するという実験的なインスタレーション「Circulation: Date, Place, Events サーキュレーション―日付、場所、行為」を行った。中平の写真は日に日に増殖を続け床にまで広がり、結果的に主催者とのいざこざの末、中平自身が会期中に写真を剥がし撤去に至ったという伝説的なエピソードが残されている。
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つい今月の22日まで銀座BLDギャラリーで同名の展示が開催されていたばかりだし、またOSIRISから刊行された同名写真集なども当時のインスタレーションを印刷物という別のあり方で再検証しようという試みでもある。
そんななか、ふと手にした古本がこれだ。
「パリ ボナパルト街」 海老坂武著 晶文社 1975年
本書はフランス文学者でもあり翻訳者でもある海老坂武が1972年前後のパリ滞在中に綴った日記のようなものである。実は表紙と見返しに中平卓馬の写真が使われているのだ(装丁は平野甲賀)。年代から考えておそらく「Circulation: Date, Place, Events」のために中平がパリで撮影した写真のものではないだろうか、と思っていたらやはりそうだった。
「パリ ボナパルト街」 海老坂武著 晶文社 1975年 見返し部分
古本屋で働いている関係上、日々たくさんの古書に目を通す。そうすると本のデザインや装丁で使用されている写真もどうしても気になってくるもので、ついつい誰の写真なのかチェックしてしまう癖がつくようになってしまった。
だからどうしたと言われればそれまでなのだが......なぜか見つけた瞬間に紹介したくてむずむずする今日この頃なのです。
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