2018年05月18日

『ニコラン プロトタイプ』についての制作意図

ご機嫌うるわしゅう。らんぴです。

最近お知らせ以外にまともな記事書いてないなーと思い、制作も報告できるほど進んでないし何書こうかと考えたときに、自分の作品語りをしてみようかと。
「好きだな」と思ったゲームについての裏話とかあると、嬉しくなりません?逆に出しただけで何もないと、さらーっと流れていってしまうような気がして。
作品についてのまとめを自分で書くことで、振り返りになるというか、一つの作品に対していい区切りになる気がするので、これから作品を出すごとに書いていきたいです。


ニコランでは、序盤に問いを提示して答えに向かっていくという形をとっていません。答えがわかって初めて、何を問われていたのか、問いの手かがりを手にいれることができます。
プレイヤーには気づかれなかった裏テーマだけでなく、プレイヤーには気づかれなかった天文ネタが多く存在します。(気づかれなかった時点で力不足を隠せない……)
というわけで、これまでの反省も含めて作者なりの考察をここに記すことで、「ニコラン プロトタイプ」の一区切りとしたいと思います。


何でブログに載せるかというと、とにかくプレイしてほしいのといろいろ感じてほしいからです。
はい、ダウンロード先(露骨に)→ニコラン プロトタイプ(ふりーむサイトへ)


1.制作背景
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サクビブとニコランをリリースしてから、もう半年近く経つんですね。
『ニコラン プロトタイプ』は、大学の研究制作として作られた作品です。
この作品のはじまりは、らんぴがもともと天文が好きなこともあって、「星に関する面白い作品を作れたら、星に興味を持ってくれる人がいっぱいできるだろうなー」と思っていたことでした。 脳内では朝6時半から連続アニメで細く長く続けていく図が広がっていましたよ。当初は星座の神話になぞらえて多くの星座がわちゃわちゃ登場するストーリーでした。
思っただけでしばらく実行していなかったのですが、大学で卒業制作をするにあたって「今ノベルゲームの勉強してるし研究内容も盛り込めそうじゃね?」となって作られたのがニコランです。

らんぴの卒業研究のテーマは、「西洋絵画に描かれた月とか太陽がどんな意味を持っているか?」でした。キリスト教事典を読み漁ってたのが懐かしい。
実際ニコランには図像学的要素を多く盛り込んでいるのですが、そこらへんの説明には図解が必要なのでここでは割愛。暇なかたは「無原罪の御宿り」とか「三相一体」とかで調べてみてください。


2.「テイビのゲーム制作」からみたニコラン
ほぼ同時進行とはいえ先に『サクラ白書』(今更ですが以下サクビブ) を作っていたこともあって、演出面では少し冒険をしてみました。点滅の演出とか、簡易的なアニメーションとかですね。
サクビブと大きく違うのは、話の長さとグラフィックだと思います。テイビは一人サークルなので建前上の大まかな締め切りはありましたが、絶対的な期限というのは通常ありません。しかし今回は「大学の研究制作発表」という壊せない期限がありました。
 いろいろと制限された状況の中、確実かつ高クオリティに完成させるにはどうするか。その答えが「作品の雰囲気に甘えて、グラフィックをシンプルなものにする!」でした。

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ニコランでは、そのシンプルなグラフィックをカバーするため「スチル風立ち絵」 を使用しました。立ち絵を大きく表示することで、スチルを多く使っているように見せるスチル詐欺 小技です。上の画像は実際スチル向けの加工を施してますけどね。
実はこのグラフィック表示は、あるアニメ作品に影響されたものです。


「コピンクス!ストーリーズ」という、ユーチューブにアップされている全4話の小アニメがあります。全4話といってもこれの本体はアイドルによる情報番組で、アニメの世界観自体はとても面白いのにおまけすぎてストーリー全体が中途半端に提示されてて全体像がいい意味でつかめず、もう更新されないのはもったいない代物です。
この「コピンクス」に多用されているのが、登場人物をアップに移し画面をスライドさせることで、絵自体が動いていなくても場をつなぐことができるという方法です。 
この作品にもうっすらと隕石など天文色があって、主人公コピンクのキャラや宝石の要素もニコランに割と影響しています。あと歌の切ないキラキラ感もね。 
「コピンクス」の方法だと、人物と背景の一体感がより増しているように感じます。ニコランでもこの雰囲気を作りたくて、なるべく立ち絵っぽい絵は使わずにほとんどスチル風の図で乗り切ってみました。

ニコランではもちろん実際にスチルも描いていますが、元のグラフィックを簡素にしたからこそ実現できた枚数です。まともに凝ったのは、宝石と汽車とニコラのセーラー部分ぐらいですよ(笑)
でも決して手抜きというわけではなくて、簡素なグラフィックと短いストーリーで作り上げられる独特な雰囲気は、フリーゲームだからこそ表現できる形だと思っています。

 
3.キャラクターについて
さて、ここからは天文ネタ&作品のネタバレ全開になっていきます。プレイ済みのかたか、筆者と同じく「ネタバレなんて読んでもすぐに忘れる!」というめでたい頭脳をお持ちのかたのみ進まれることを推奨します。
以下、天文ネタは青文字表記します。



ねたばーれ





ネタバレ〜










はい。




・アラン(ラン)
高校生。かつて住んでいた南の島に修学旅行で再び訪れたときに、不思議な宇宙世界ミラに迷い込む。南の島は、石垣島あたりを想像していただければいいです。
特徴がないんですよね、彼。無気力でごくごく平凡な男の子です。唯一取り上げるとすれば、ロマンチストなところ。これが物語の引き金でもあります。
ニコランの登場人物のほとんどには、魂のかけらである宝石が設定されています。アランは唯一作品内で明示されており、サファイア。石言葉は「慈愛」「誠実」「心の成長」です。

・ニコラ(ニコ)
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石→トパーズ。石言葉は「誠実」「友情」「潔白」
ミラを冒険するキラキラした少女。 名前自体に深い意味はないのですが、「ニコラ」って男女問わずつけられる名前ですよね(違う?)。特定の誰かではなく、誰の心にもいるかもしれない純粋な心、という意味を込めてつけました。

ニコラの石はトパーズ、アランの石はサファイアですが、サファイアとトパーズという組み合わせには意味があります。星座の話になりますが、はくちょう座のくちばしのところに、アルビレオという二重星があります。真夏のプラネタリウムに行くと必ずといっていいほど解説される星で、天文オタクである宮沢賢治の作中にも登場します。二重星というのは二つの星が密接していて肉眼だと一つの星に見えるもの。アルビレオはその二つの星の色がオレンジと青であることから、トパーズとサファイアというふうに例えられます。いつも隣り合ってる二人、という感じですね。

ニコは現実世界での環境に悩まされ、偶然会ったランと話しているうちに『果てない旅』に憧れを募らせ、姿を消します。

・ティア
thia

石→オリハルコン
アザラシとかアシカの妖精です。しっぽで飛び跳ねるようにして移動するのですぐ疲れます( アザラシもアシカも実際はそんな飛び方しません)割と出番が少なかったのは反省。
オリハルコンは、厳密には宝石でも天然石でもありません。古代文献に記されている伝説の金属です。実在しているかは分からず、検索にかけるとドラクエの記事がいっぱいでてきます。上に挙げた「コピンクス」にも登場する金属です。

「ティア」というのは、ギリシャ神話のメジャーな女神ヘカーテの母親の名前。そして仮説上の小惑星の名前でもあり、ジャイアント・インパクト説で地球と衝突し破壊され、破片が合わさって月となります。この「ジャイアント……説」は信憑性が低いとされていますが、このアザラシが世界を生み出しているということを示唆する意味で「ティア」と名付けています。

さて、こやつ、実はアザラシでもアシカでもないんですね。正体はくじら座の妖精です。
らんぴが初めてくじら座を知ったとき、「見た目アシカやん!」と思ったからティアが生まれました。知らない人はくじら座の星座絵を調べてください。くじらではなく、アザラシかアシカです。
ティアがくじら座の妖精でありかつ世界を創世しているというのは、のちに述べるミラの世界観へ繋がります。

・神さま
いろいろあって神さまが絶滅寸前になった天上界ミラに唯一残る神さまです。神「さま」なのには、変換でそうなっただけで深い意味はありません。ただテイビ作品で「神さま」と出たときは、ニコランの世界観における神様です。 
あまりにも永久の時を過ごしすぎて記憶を持っておらず、自我すらも曖昧な存在です。いろいろ曖昧になりすぎて、この神さまに関しては石はありません。「神さま」がそもそも何なのかについては、サクビブで触れる予定なので保留にしておきます。ただ、この神さまにも物語がありました。
 
・ふたご座の少年
 石→アレキサンドライト。石言葉は「秘めた思い」
神さまではありませんが、神さまと同じように永久の時を過ごし続けている魂。ただ「希望を持つことで自我を保って」います。物語を書いたり絵を描いたりしているのも、希望を保つための彼のやり方です。
彼についても、サクビブシリーズの結末に触れてしまうので深くは語れません。サクビブ体験版をプレイされたかたはびっくりしたでしょう。 ニコランは時系列ではサクビブのあとになります。なぜ彼にこんな切ない結末を背負わせたのか、作者ながらひどいよと嘆いています。
サクビブを知らない方には、彼は「ふたご座の少年」ですとだけ。

ふたご座くんとニコラって、存在的には割と似てるんですよね。そして彼はニコラにある人の面影を重ねてたりします。
 

4.世界観
ニコランは、想像通りに出来事が起きる宇宙世界ミラを舞台としています。実はまだリリースしてないのに軽くネタバレになるんですが、サクビブとニコランは「違う世界を舞台」としておきながら「世界観は共通」しています。
空をイメージしてみてください。私たちがいる日本が、ランのいた現実世界です。雲が、神さまがかつてたくさんいた天上界。そのさらに上、宇宙の部分である上位世界が、この話の舞台ミラです。ミラを内閣とする例えもできますが、夢がないのでやめておきます。
サクビブも、現実世界である地上部分でのお話です。
ただニコランでランのいた場所を沖縄ではなく「南の島」としているのは、サクビブや私たちがいる現実と同じ世界であるかは分からないよ?ということです。 つまりニコランとサクビブは同じ地球ではなく、地球と火星の話かもしれないよ?でも同じ宇宙の下だよ!ということです。

ちなみに南の島(南の空)がミラと現実世界をつなぐ場所になっているのは、南半球の夜空は歴史の浅い星座がたくさんあるからです。古い星座には神話がありますが、南半球は新しいのでほとんどありません。そして「けんびきょう座」「じょうぎ座」など、現実的な星座が多いのも特徴。
作中で幼少ランが言っているとおり、石垣島などでは南半球でしか見られない星座が少しだけ見えるそうです。つまり南の島は、現実と神話世界をつなぐ架け橋というわけです。

そして「ミラ」という名前ですが、これはくじら座の心臓部分にある星の名前なんですね。つまりティアの心臓部分にミラという世界があるんですよ!
ミラは脈動変光星といって、自分の力で膨張、収縮して光の強さを変えます。通常の星は明るさは変わりません。
本作の不思議世界ミラも、神さまの世界ではありますが決して不変ではなく、膨張や収縮を繰り返しています。


5.ストーリー 
ここからは作品のおおまかな流れをつまみながら、表テーマについて書きます。

物語の始まりは、人物二人が天の川について語るシーンから。ニコラとアランは夢でこのシーンを見たことで、自分たちはここで出会って語り合っていたと思い込んでいましたが、終盤でこの二人はニコラとアランには無関係の全くの別人であることが明かされます。
 ただ、この二人は決して抽象的な二人ではなく特定の人物二人です。一人については確定していますが、もう一人については作者としても「彼か彼かな〜」って感じ。上記の世界観の話をふまえた上で今後のテイビ作品をプレイしていただければ分かるようになります。
(まだリリースしてない作品のことについて語るのはちょっと心苦しいですが)

 突然ミラに迷い込んだアランはニコラとティアに出会い、ふたご座の少年のもとへ行き、神さまから世界の正体を軽く知らされます。
途中出てくる汽車は、完全に銀河鉄道の夜のオマージュですね。

さて、現実世界に戻ったランはことの真相に気づきます。
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この南の島に住んでいた子供時代、ランは家出少女だったニコに出会います。実はニコは純粋すぎたために現実の汚れに傷つきやすく、有り金を使って船なりなんなり駆使してとても思い切った壮大な家出をしています。
会話をする中で、ロマンチストなランはニコに「果てない冒険」という夢を提案し、ニコの背中を押してしまいます。そのままニコは果てない旅に出て、姿を消します。

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 果てない旅に出たニコは幸せだったのだろうか?ニコは自分の人生に納得していたのだろうか?成長したランは悩みますが、「僕が笑っていればきっと君も嬉しいよね」という希望を持ち、前を向きます。

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ニコランの大きなテーマは、きっと「希望」と「幸せ」だと思います。
少なくとも、サクビブとニコランのテーマは共通して「幸せの在り方」だと思っています。「幸せをもつには希望が必要だ」。たぶんこれは表の表テーマです。物語の一番最後に書かれる「君の幸せには僕のぶんも入ってるんだもんね?」が、この物語で出される最大の答えです。
じゃあこの答えに対して、もともと投げかけられていた問いはなんだったのでしょうか?ニコランでは、序盤に問いを提示して答えに向かっていくという形をとっていません。答えがわかって初めて、問いの手かがりを手にいれることができます。
この「幸せの在り方」の奥深くに何があるかが、この物語の裏テーマにつながると思います。


6.裏テーマへの考察
自分、作者ですし、示すべきものは作品内で表現するのが筋だと思ってますから、ここで真のテーマを明示しようとは思いません。ただ作品の深層部分まで導けなかったのは製作者としての力不足でもありますが、100の読者に真のテーマが伝わるのもわかりやすすぎるなというか。
今までいただいた多くのレビューにあった「抽象的な物語」。その通り、ニコランは「抽象的」のど真ん中を行っています。

そんな抽象的すぎる物語について、真のテーマへの道筋となる作者なりの考察を。


不思議世界で再会したニコラとアラン。そして現実世界のニコとラン。この二人の関係で取り上げるべきなのは、「もう会えない」という点です。作品中ではぼかした言い方をしてますが、勘のいいかたはどういうことかわかりますでしょうか……。
下のシーンは、先ほど挙げたランの「ニコは幸せだったか」という問いについて考えているとき。

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突然筆者の好みが飛び出しますが、筆者は、フィクションで死んだ人と再会して「私は幸せだったよ。安心して」というのがあまり好きじゃありません。なんだかすごく遺された人間のエゴのような気がするんです。だって、本来死んだ人間とはもう話せないんですよ?フィクションだとしても、言わせてそれで安心するのはズルではないですか!
ランのいう通り、ニコラとアランが出会ったのだって、十分ズルです。でも何をどうしたって、死んだ人間には会えないんです。

だから、「ニコラ」「ニコ」であり、「アラン」「ラン」なんです。ミラと現実での二人、特にニコラとニコは、あくまでも別なんです。だからあえて髪色も変えてます。同じ魂だと思うけど、ニコラが「幸せ」といったってニコが幸せだったとは限らないんです。

死んだ人間の声は聞けない。だから遺された人間は、自分たちの中だけで答えを探さなければいけません。


ここまで読んでいただければ、ニコランで投げかけられていた問いはなんだったのか分かると思います。あと一歩。その対象がニコであり、ニコはどんな終わり方をしたのか。 
それさえ気付ければ、なぜニコラは自分の石を見つけることができなかったのかという謎にも考えの幅が広がると思います。
その謎の答えは、作中で何度もはっきりと示されています。


筆者は私情を割と反映させる派です。クリエイターのかたも自身の経験を反映させるかたは多いと思いますし、それが創作だと思います。
私はこの作品で、自分なりの答えを出して示したつもりです。 


7.まとめ
ここまで長々と読んでいただき、本当にありがとうございました。あなたはかなりのもの好きです。
この記事を読んで、もう一度プレイしてみようか、そこまで長文書ける内容ならやってみようか、とか思っていただけたら幸いです。
そしてささやかなお願いですが、感想とか気軽に発信していただけたらと思います。これを読んで「自分が想像してた解釈と違う!」と思われるかもしれません。それでいいんです。解釈の数だけ作品の在り方が増えるんです。「まじか、そんな見方もあったか!」とらんぴが大喜びです。だから当サークルは二次創作大歓迎です!(さすがにニコランではいないだろうけど……) 

 そして何度も書いてますが、制作中のサクビブは作風は違えどニコランと非常に密接した世界観を持っています。読んでいただけたらもっと楽しみが増えると思います。ただ、結末までが果てしなく長くなるけどね!!!

ニコランの制作については、近々のアプデで一区切りとなります。フォントの変更によりMacでのプレイができるかもしれないことと、あるシーンをさらに抽象的に修整します。

最後にちょろっとお知らせですが、サクビブの前にちょろっと短編を制作します。今回のような小難しいことは何もなく、なーんにも考えずただ気軽にやって笑えるラブコメディです。ティラノフェスに参加するつもりです。ちょっとした新しい試みを取り入れる予定ですので、ぜひ!

次の記事はおそらく、自分の画力アップをひたすら自慢する回! 

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プロフィール

tales&Vivid。略してテイビ。ノベルゲームを作る同人サークルです。メンバーはらんぴ一人です。

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