ビリヤード史上忘れてはならない伝説のスーパーショットがあります。

 舞台は1995年の第21回サンズ・リージェンシーオープン決勝。

エフレン・レイズアール・ストリックランド フィリピンの国民的英雄“生ける伝説”エフレン・レイズと個性的で強烈なキャラクターをもつ、あのストちゃんことアール・ストリックランド。二人の実力は伯仲しトップ中のトップ。今や2人とも殿堂入りを果たしたプレイヤー。

 試合は、13先。共に確実なショットと正確なポジションプレーでマスワリ合戦の様相を呈する。時にスーパーショットをおりまぜ観客を魅了しつつ、試合は大混戦となり、フルセットへともつれこむ。

 動画(YouTubeより)はここから始まります。最終第25ゲーム、番手はレイズ。



 (6)がなければ、本来なら(5)を左下コーナーに狙えばいいのだが、(6)が邪魔をしており(5)を左下コーナーに狙う厚みがない、ここはセーフティ。手球を(6)の陰に隠しツークッションで(5)を反対側の短クッションへ運ぶセーフティ。(5)が(8)へ当たる可能性もあるので、その当たる角度を確認しショット。

 しかし、なんと(5)が(8)に当たってしまい、いわゆる“ヒッカケ”の形で(8)がコーナーに入ってしまう。(5)は左側の短クッションの中央付近に、ほぼ接する形で停止し、手球は(6)の陰に厳しく隠れる。

 これは全然嬉しくないフロック

 本来なら相手に対しての厳しいセーフティの配置になるはずだったが、思わぬアクシデントで(8)が入ってしまい、自分に完璧なセーフティをかける形になってしまった。苦笑いするレイズ。(8)が入ってしまったので、番手は依然レイズのまま。

 このアクシデントに観客は大きくどよめく。

 対戦者のストリックランドも「お手上げ」のポーズ。いや、万歳のポーズか。

 カメラが再びストリックランドにスパン。勝ちを確信し、眼をギョロリとさせホクホクの笑顔。ここでファールをすれば、当然、ストリックランドの勝ちは決定。仮にセーフを取っても、簡単な配置を渡せば同じこと。内心では勝ったと思っていただろう。

 レイズ、絶体絶命のピンチ。大きな試合での決勝戦。そこでレイズが見せたショット。
 俗にいう“ハタオリ”から、見事ツークッションで(5)イン!!

 観衆は立ち上がり大歓声。

 ビデオの解説者も「Oh,no!What a shot!」と絶叫。

 この“N字ショット”で(5)をイレたのも凄いが、次の(6)へも見事ポジションが取れていることが奇跡。

 ストちゃんも目をギョロつかせながら大拍手。

 数秒前まで勝利を確信した余裕の笑みを浮かべていた彼も、レイズのスーパーショットに目がイッてます。この動画だとわかりにくいけど、見せたいなぁ、あの顔。

 レイズは堅実に(6)を入れ、念のためポケットから先ほどフロックで入った(8)を取り出し、(7)から(9)へのギュンと引いてワンクッションでポジション。引きのカーブの軌道も美しい。

 そこでストちゃん、ギブアップの“OK”サイン。レイズの腕を上げ勝利を讃える。

 “人を呪わば穴ふたつ”

 この格言ってストリックランドのためにあると思う…嗚呼。