先ごろ“ポケット”からの引退を表明したミスターのプレーを紹介したいと思います。

俺ごときがミスターのプレーを解説するのも、本当におこがましいのですが、紹介させてください。この映像は今から10年近く前のものだと思います。ちょうど俺がビリヤードを本格的に再開したころで、「まだ奥村選手、頑張ってるんだ」と再認識し励みになったものです。

Excellent Billiardでの奥村選手コスモが企画したエキジビジョンで、フィリピンのトップ2・レイズとルアットを呼び、コスモ所属の奥村・高橋両選手と戦わせた試合ではないかと推測されます。対戦相手はレイズかルアットのどちらかでしょう。



取り出しの(1)ボール、(8)に当てポジションを作ります。問題は(6)(9)のトラブル、これを(4)ボールを入れながら崩しに行くミスター。クラスターを上手く処理するも手球がクッションにタッチしてしまいます。これを我慢し(5)をスローで入れ繋ぐ。(6)から(7)のポジションで思いのほか厚く出てしまい、(7)から(8)へのポジションは弾くか、捻りで回すか難しいところです。ここでミスターは長年の愛棒リチャード・ブラックの特性を生かした捻りをメインにした柔らかい押しを選択します。

惜しくも(9)ボールに当たりポジションミスしてしまいますが、(8)ボールをサイドバンクで入れ、手球も(9)ボールへポジションしランアウト達成、見事な“ウラマス”です。

ミスターにしてはダシミスもありますが、これぞ熟練の技といった感じでリカバリーしました。最後の3球が、これぞミスターの真骨頂といった繊細な手球の動きをしています。結果的にミスだったのですが、(7)から(8)へのダシはキューの特性を知り尽くした選択です。
ややもするとプレーが遅いと揶揄されるミスターですが、個人的にそう感じたことはありません。IPT予選ジャパンオープンの予選とミスターを拝見する機会が多かったのですが、スロープレーというほどでもなかったです。今は粋の良い若手が出てきて、彼らのプレースタイルと比べれば遅いのでしょうが、やはり考えるところではジックリ考えるミスターの姿勢は参考になります。

俺個人は、プレーが速い方だとあるプロに言われたのですが、俺の場合はプレッシャーから逃れたいから、早く撞いてしまうきらいがあります。本当に早くて強い人の足元にも及びません。そういう意味でミスターの姿勢とルーチンはすごく参考になるわけです。

俺はこう考えます。人をコンピューターに例えるならば、頭の演算能力は一定であり、データ(知識)が多ければ多いほど、処理に時間が掛かるものだと思います。知識がある人はフローチャートがより複雑になるのでしょう。スロープレーに思えるのはそういうことだと思います。

俺の場合は、プレッシャーに負けてフローチャートを無理矢理単純化している気がします。恐さを覚えたがゆえ、頭の中で考えるべきところを省いてしまっているのでしょう。

まあ、そんなときのショットはきまって後悔するのですがね…嗚呼。