今年の第140回直木賞を受賞した『利休にたずねよ』を読みました。
作者の山本兼一さんは、昭和31年の京都市生まれ。同志社大学卒業後、出版社勤務、フリーランスのライターを経て作家に。2002年、「戦国秘録 白鷹伝」でデビュー。短編時代小説賞や松本清張賞などを受賞し、2005年、2008年の2度にわたり直木賞の候補になるも惜しくも受賞を逃しています。しかし今回、念願の初受賞となりました。では簡単にアラスジです。
卓越した審美眼を持ち、刀の抜き身のごとき鋭さを感じさせる若者が恋に落ちた。堺の魚屋(ととや)の息子・千与四郎。後に茶の湯を大成した男・千利休である。
女のものと思われる「緑釉の香合」を肌身離さず持つ利休は、己の美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、気に入られ、天下一の茶頭に昇り詰めていく。利休は一茶人にとどまらず、秀吉の参謀としてその力を如何なく発揮。秀吉の天下取りを強力に後押しした。しかし、その鋭さゆえに、やがて対立。秀吉に嫌われ、切腹を命ぜられる。
鋭い審美眼を持ち茶人として天下一となった千利休、茶の湯だけに限らず、政治にも深く関与した彼。図らずも時の権力者秀吉と対峙し、一歩も引かず切腹して果てた異彩な人生観、その彼の「茶の湯」の本質に本書は迫ります。その鍵となるのは、「緑釉の香合」、それは、高麗の姫君の形見で、彼女こそ彼が生涯愛し続けた女性でした。そして、彼の「侘び茶」の本質は、その「美」の探究にこそあったのです。






作者の山本兼一さんは、昭和31年の京都市生まれ。同志社大学卒業後、出版社勤務、フリーランスのライターを経て作家に。2002年、「戦国秘録 白鷹伝」でデビュー。短編時代小説賞や松本清張賞などを受賞し、2005年、2008年の2度にわたり直木賞の候補になるも惜しくも受賞を逃しています。しかし今回、念願の初受賞となりました。では簡単にアラスジです。
卓越した審美眼を持ち、刀の抜き身のごとき鋭さを感じさせる若者が恋に落ちた。堺の魚屋(ととや)の息子・千与四郎。後に茶の湯を大成した男・千利休である。女のものと思われる「緑釉の香合」を肌身離さず持つ利休は、己の美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、気に入られ、天下一の茶頭に昇り詰めていく。利休は一茶人にとどまらず、秀吉の参謀としてその力を如何なく発揮。秀吉の天下取りを強力に後押しした。しかし、その鋭さゆえに、やがて対立。秀吉に嫌われ、切腹を命ぜられる。
鋭い審美眼を持ち茶人として天下一となった千利休、茶の湯だけに限らず、政治にも深く関与した彼。図らずも時の権力者秀吉と対峙し、一歩も引かず切腹して果てた異彩な人生観、その彼の「茶の湯」の本質に本書は迫ります。その鍵となるのは、「緑釉の香合」、それは、高麗の姫君の形見で、彼女こそ彼が生涯愛し続けた女性でした。そして、彼の「侘び茶」の本質は、その「美」の探究にこそあったのです。






一見すると、「侘び」「寂び」と「恋愛」は結びつかないものと思うのですが、本書はそれを上手く結びつけています。それというのも、利休の周りを彩る歴史人物を、通説的な、いかにもステレオタイプで描いており、それが利休の心の機微に目を行きやすくしています。
なお、小説の形態が、利休の切腹から時代を遡る形で編まれた連作短編集のようになっているので、メリハリがよく飽きさせません。最近の直木賞受賞作はこういう形式が多いのか、137回の受賞作「吉原手引草」も談話形式で、本書もそれによく似た構成となっています。
その結果、利休の茶の湯の本質の「謎解き」の楽しみを持ち、ミステリー小説のような印象も受けます。それと同時に、利休に関係したそれぞれの人物の視点から書かれた短編になっていることで、それぞれの人物の利休の評価、更には、互いの影響具合などが読みとれます。そのへんは、いかにも直木賞らしい作風ともいえるでしょう。
特に、秀吉との関係は、破局から蜜月の時代に遡る形になるため、なぜ利休が死ななければならなかったのか、そして互いに評価しあっていたことがよく解ります。利休の死については様々な諸説があるなか、作者の解釈にも頷ける部分が多々ありました。
その2人の関係は「恋愛」にも似たもので、利休が生涯密かに愛し続けたた女性がいたことに、秀吉が横恋慕をした、と換言できるかもしれません。それはまた利休側からみても、然りなのでしょう。
直木賞というとミステリー小説に与えられる賞というイメージがあったのですが、本書は、既述したようにミステリーというよりも本格的な歴史時代小説となっています。久しぶりに寝食を忘れて一気に読みましたよ。「侘び」のなかに込められた“エロティシズム”がなんとも切なく、心震える一冊でした。
なお、小説の形態が、利休の切腹から時代を遡る形で編まれた連作短編集のようになっているので、メリハリがよく飽きさせません。最近の直木賞受賞作はこういう形式が多いのか、137回の受賞作「吉原手引草」も談話形式で、本書もそれによく似た構成となっています。
その結果、利休の茶の湯の本質の「謎解き」の楽しみを持ち、ミステリー小説のような印象も受けます。それと同時に、利休に関係したそれぞれの人物の視点から書かれた短編になっていることで、それぞれの人物の利休の評価、更には、互いの影響具合などが読みとれます。そのへんは、いかにも直木賞らしい作風ともいえるでしょう。
特に、秀吉との関係は、破局から蜜月の時代に遡る形になるため、なぜ利休が死ななければならなかったのか、そして互いに評価しあっていたことがよく解ります。利休の死については様々な諸説があるなか、作者の解釈にも頷ける部分が多々ありました。
その2人の関係は「恋愛」にも似たもので、利休が生涯密かに愛し続けたた女性がいたことに、秀吉が横恋慕をした、と換言できるかもしれません。それはまた利休側からみても、然りなのでしょう。
直木賞というとミステリー小説に与えられる賞というイメージがあったのですが、本書は、既述したようにミステリーというよりも本格的な歴史時代小説となっています。久しぶりに寝食を忘れて一気に読みましたよ。「侘び」のなかに込められた“エロティシズム”がなんとも切なく、心震える一冊でした。


