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2008年03月27日

土井さんのスペースシャトルが帰還

グッドレムは人気のシンガーソングライターだ。BUT、グッドレムはスランプに陥っていた。原稿用紙に向かっても歌詞が出てこないし、楽譜に向かっても、いつものように音符を書くことができない。頭の中では、今までのグッドレムの曲風とは全く異なる、「あなたに、あなたに、謝りたくて…」という曲が流れている。何でこんな歌が流行るのか全くわからない。忘れようとすればするほど、エンドレスで曲が流れる。気が滅入る。こんな状態でグッドレムメロディが作れるのか? 締め切りは刻一刻と迫っている。いざとなれば、過去の経験から身につけたテクニックによって、最低限、安易なメロディを作ることはできるはずだが、質を落とすことはプロとしてしたくなかった。
切羽詰まったグッドレムは、突然、ティッシュ配りのアルバイトをしてみたくなった。時には、人気シンガーソングライターの鎧を脱いで、一般人の視点に立ってみるのも、悪くない。うん、そうだ。悪くはない。
グッドレムは消費者金融の店舗から大量のポケットティッシュを盗み出すと、ティッシュのカバーを「白浜商会」に書き換え、下北沢の駅前で、
「白浜商会を紹介しようかい?」
と言って通行人にティッシュを配った。ティッシュを配るならやっぱり下北沢だろう。ある行為を遂行するには、それにふさわしい土地を選択する必要がある。赤坂や波照間島でティッシュを配ってもしょうがない。だが、下北沢駅前でもティッシュを受け取ってくれる人はあまりいなかった。なかなか世の中は厳しい。グッドレムはシンガーソングライターとしての名声にあぐらをかいていたことを痛感させられた。でも、下北沢駅前で歌っているストリートミュージシャンの演奏を聴くと、自分はあぐらをかくのに充分値する、ということもわかった。グッドレムは下北沢駅前で段ボールの上にあぐらをかくと、ティッシュ配りを続行した。が、あぐらをかいてティッシュを配ろうとしても、通行人は誰も受け取らない。どうやらホームレスと勘違いされているらしい。あぐらをかくのも難しいものだ。そして、重要なことに気づいたのだが、グッドレムはティッシュは配ったのだが、それはアルバイトではない、ということだった。ティッシュは消費者金融から盗んできたものだし、だいだい、誰からもアルバイト代は支払われない。せっかく、一般人の世界を体験したと思ったのに、その体験は中途半端なものだった。
グッドレムの手元には大量のポケットティッシュが残った。これは邪魔だ。グッドレムは下北沢駅前から人通りの少ない路地裏に移動すると、そこにティッシュを捨てようとした。だが、そこには、「無断でゴミ捨てるな」という看板が立っていた。なのでグッドレムは一言断ろうとしたが、人の気配はない。仕方なくグッドレムは大声で、
「捨てますよ」
と叫ぶと、ティッシュを置いてそそくさと立ち去った。だが、そのグッドレムの行動は何と防犯カメラに写っていたのだ。あ〜あ。どうなっても知らないぞ。せめて看板に「断ろうとしましたが無人でした グッドレム」とマジックで書いてから立ち去ればいいものを。ま、ティッシュがゴミかどうかは微妙なところだが。使おうと思えばまだ使えるし。
下北沢から走り去ったグッドレムは、方位磁針も持たずに走り続けた。いつまで走り続ければいいんだろう…。輝いていたあの季節を追いかけて。男グッドレム、46歳。まだまだ頑張るぞ。愛する家族とファンのために、心の底から歌い上げるのだ。
そろそろ居酒屋の赤提灯が灯り始める時刻、グッドレムはしみじみとしみじみした。強烈逆噴射。やはり、オレには歌しかない。
「このことか!」
グッドレムは多摩川の河川敷でキューバ産の葉巻に火を点けると、忘れていたトキメキを思い出したのだった。

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2008年03月13日

大リーグオープン戦で岩村乱闘

「人間辛抱だ」
もはや定説ではあるが、ハッカビーの辛抱も限界に達していた。いったいいつまで辛抱すればいいのか。辛抱を続けて良かったことはあったのか。辛抱を放棄して快楽の追求に走る方が人間として自然な姿ではないか。
どうも、定説というのも、いろいろ疑って考える余地はありそうだ。だって、先日、とある繁華街の隠れ家に酒を呑みに行ったハッカビー、「この先に隠れ家あります」の看板を見つけて腰を抜かした。看板があったら隠れ家じゃないだろう? まるで過激派がアパートの表札に「アジト」と書いているようなものじゃないか。理解不能である。不思議である。不満である。不安定である。不要である。不健康である。不道徳である。不連続である。不在である。不器用である。不協和音である。不透明である。不定愁訴である。
だいたいにおいて、ボクシングのテレビ中継ならすぐに試合を始めればいいものを、過去の試合のビデオを延々と見せられた挙げ句、ついうとうとと居眠りを始めた頃に試合が始まって、気がついたら肝心のノックアウトシーンを見逃した、となれば、テレビ局に腹を立てるべきか、スポンサーに腹を立てるべきか、自分自身に腹を立てるべきか、もう訳がわからない。で、ボクシングの代わりに大相撲中継を見ようとすると、受信料を徴収しているくせに何と国会中継を放送していたりするのだ。
それで、ハッカビーは、駅の売店でスポーツ新聞を購入した。見出しは「熱愛発覚! ドアラ」である。当然、「東京スポーツ」だと思って買った新聞は、何と「中日スポーツ」だった。おいおい。
ハッカビーは一切の辛抱を止めることにした。ハッカビーの決意は固い。が、身に染みついた辛抱の癖はなかなか抜けなかった。カレー屋に行ったハッカビーは、いつものように、
「カツカレー、トンカツ抜きで」
と注文してしまうのだった。体のことを考えて、揚げ物は辛抱しているのだ。
「え!? 普通のカレーでよろしいですか?」
「普通のカレーじゃない! カツカレーだ」
「かしこまりました。カツカレーでございますね」
「トンカツは抜いてくれ」
「すると…、普通のカレーになってしまいますが」
「だから普通のカレーじゃなくてカツカレーだと言っているだろう」
「お客様、当店ではカツカレーにはトンカツを入れることになっておりますが…。どういうことでしょうか?」
「だから、トンカツを入れないでカツカレーを出せばいいんだ!」
「仰っていることがよくわかりませんが、普通のカレーですね」
「カツカレーだと何度も言っているだろう! カツカレーにトンカツを入れないことくらい何でもないだろう!」
「カツカレーにはトンカツを入れることになっているのですが…。」
「バカ! 全く、マニュアル通りにしかできないのか!」
「それではエビフライカレーはいかがでしょう?」
「何を寝ぼけたことを言っているんだ! 俺はカツカレーを食うんだ」
「それではカツカレーをお出ししますので、トンカツはお残しください」
「何を考えているんだ? 皿の上にトンカツがあったら辛抱できないだろう!」
「え、あの…、お客様…、どうしたら…」
カレー屋のアルバイト店員はついに泣き出してしまった。
「このことか!」
ハッカビーは、辛抱を止めることに辛抱した挙げ句、「辛抱の品格」という本を書いて、ベストセラー作家となったのだった。

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2008年02月17日

東京マラソン開催

「寝不足の日には床屋に行くな」
何のことかと思うかもしれないが、「風が吹けば桶屋が儲かる」よりも話は簡単だ。
アルモンテはその日、こともあろうに寝不足だったのに床屋に行ってしまった。ボサボサに伸びた髪の毛が気になって熟睡できなかったのだ。それで、カリスマ理容師に流行のヘアスタイルにカットしてもらい、いい気分で顔剃りをしてもらっていたアルモンテは、ついうとうとと眠りに落ちた。気づいた時にはもう遅い。何と自慢のもみあげがカリスマ理容師の手によって(正確に書けば手ではなくカミソリによって)、剃り落とされてしまっていた。あまりのことに、アルモンテは強い憤りを感じたが、同時にカリスマ理容師のオーラも感じていたので、悔しいことにクレームを言うことができなかった。クレームを言えばマジックでもみあげを書かれるに違いない。床屋を出たアルモンテは、肩を落として歩いた。頬に当たる風がやけに冷たい。いや、耳がやけに冷たい。もっと正確に書くと、頬と耳の間が冷たい。ヘアスタイルを整えた後は床屋の近くの「安い早いまずい」の三拍子揃ったラーメン屋で至福のひとときを思い描いていたアルモンテ、しかし、ラーメンを食べる気力もなく、一刻も早く帰宅したのだった。自宅で恐る恐る鏡を見たアルモンテだが、現実は変わらない。自慢のもみあげはもうない。そして余計なことに気づいたのだが、もみあげの長さが左右で微妙に違っているのだ。だぁー。
うん、そうだ。最悪のことが起こった時には、それよりもっと悪い事態を想像して気を取り直すんだ。ん? 「最も悪い」から「最悪」なのか!? まあそんな言葉の問題はどうでもいい。アルモンテは必死に悪い事態を考えた。「ボルボだと思って買った車がボロボだった」、そんなことはあり得ないな、何かダメだな…。「女子大生だと信じて口説いた女が人妻だった」、人妻でも女性は女性だし。オカマよりはましかも…。えーと、えーと…。調子が悪いときには、いい考えが思い浮かばない…。というより、悪い考えが思い浮かばない…。要するにいい考えでなおかつ悪い考えが思い浮かばないのだ。アルモンテはいつもの癖でもみあげをさわった。が、いつもとは全く異なるさわり心地に思わずぎょっとした。ビックリしたぜ、もう。心臓に悪いな。
アルモンテは気がづいた。もみあげは外見上でアルモンテのアイデンティティを決定したのではなかった。それよりも「困った時にさわると落ち着く」という精神的依存の方が大きかったのだ。カリスマ理容師に剃られた時は外見のことしか考えなかったのだが、実は精神的ダメージの方がはるかに大きいのかもしれない。またあのもみあげが伸びるまでの数ヶ月、アルモンテは不安定な精神状態で過ごさなければならない。それを考えるとアルモンテは精神的に不安定になった。
アルモンテは過去の自分のビデオを何度も見直した。確かに、ピンチに陥った時には必ずといっていいほどもみあげに手が伸びていた。これは何としても、もみあげに代わるリラックス法を探さなければならない。アルモンテは代わりに、鼻をほじったり、わき毛を抜いてみたりした。いや、ダメだなこれは…。紳士であるアルモンテ、人前でそんなことができる訳がない。「もみあげをさわる」というのは、他人に不快感を与えずリラックスできる、実に素晴らしい方法だったのだ。素晴らしい方法に代わるさらに素晴らしい方法をすぐに考え出せればそれは素晴らしいのだが、素晴らしい方法は代替が難しいから素晴らしいのであって、よってさらに素晴らしい方法を考え出すのはさらに難しい。
困り果てたアルモンテは、とりあえず薬局に行って、発毛剤、育毛剤の類を合計167,380円ぶん購入した。それから書店に行って、リラックス法に関する書籍を28冊購入した。さらにはカツラ専門店に行って、もみあげ用のカツラはないか、と訪ねたが、店員に笑われただけだった。仕方なく、アルモンテは付けひげをもみあげにつけてみたのだが、どうもしっくりこなかった。
「このことか!」
アルモンテはもみあげが伸びるまでの数ヶ月、悶々としながら不眠症を患い、再び床屋に行く気力が涌いた時にはまたもや寝不足だったのだった。


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2008年02月05日

新大阪府知事橋下氏にSP

ホノサベルはラッチ将軍に聞いた。
「ラッチ将軍、将軍はまさかと思うことがありますか?」
「人生はまさかの連続だろ。そんなことに疑問を感じてどうする」
「確かにその通りでございます」
ホノサベルは一応、納得した。が、それほど強烈な疑問を抱いている訳ではなかった。ラッチ将軍との間の気まずい沈黙に耐えきれず、一応聞いてみただけだった。で、一応、少しの会話は成立したのだが、沈黙を避けるためには、一応、もっと長めの会話が必要だった。で、一応、手元にあった「超簡単! すぐできる英会話入門」のページを開き、一応英語でラッチ将軍に話しかけた。
「Hello, Mr.Racchi. How are you today?」
「お前は何を言っておるのだ?」
ラッチ将軍は英会話が苦手だった。ラッチ将軍の表情が険しくなるのを見て、ホノサベルはさらに気まずくなってしまった。ああ、墓穴。
ホノサベルは何とか状況を打開しようと、手元にあった別の本を開いた。しかし、何とその本は田中康夫の「なんとなく、クリスタル」だったのだ。仕方なく、さらに別の本に手を伸ばすホノサベル。だが、次に手にした本は「画数で選ぶ 赤ちゃんの名付け新事典―男の子・女の子の幸運を呼ぶ名前の付け方」だった。全く、ホノサベルの手元にはまともな本はないのか。ホノサベルは仕方なく、お年玉付き年賀ハガキの当選番号を調べると、何と切手シートが当たった! だがしかし、その年賀状は一昨年のものだったので、当たったと喜んだぶんだけカロリーを消費する結果となった。
長い沈黙の後、ラッチ将軍が口を開いた。
「なぁ、チャドの内戦はどうなった?」
「なかなかここまでは詳しい情報が入らないのですが」
「おい、それでもお前はホノサベルか?」
「ご意見ご要望は備え付けのハガキでお送りください」
「お前は郵政民営化には反対ではなかったのか?」
「でも、ハガキに古紙を配合するのには賛成です」
「もしや、餃子に農薬を配合したのもお前か?」
「チャド情勢も知らないのに何でそんなことがわかるんですか?」
「お前、このラッチの燗を甘く見るなよ」
「『燗』ではなくて『勘』ですよ」
「冬に燗酒、たまんねぇ〜」
「金沢香林坊の『むかで屋』のおでんがまた最高なんですよね」
「バカ! おでんなら北千住の『たどころ』の方が上だ」
「確かに『たどころ』のちくわぶは絶品ですが、大根なら『むかで屋』が上です」
「でも『たどころ』のおでんにはシュークリームが入っているだろう?」
「おでんにそんなモノ入れてどうするんですか?」
「だって、蒲田の『さんすか』ではおでんにラグビーボールが入っているんだぞ」
「まさか!」
「人生はまさかの連続じゃないか」
「このことか!」
ホノサベルは気がつくとラッチ将軍とまともな会話が成立していたことに安堵し、「おでん不毛地帯」と呼ばれるサイパンでおでんを普及させるべく、内舘牧子を起用したCMの制作を「プロダクション・つがる」に依頼したのだった。

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2008年01月26日

福田首相がダボス会議へ

ブリャンスクは藁をつかんだ。過去の経験によって研ぎ澄まされた直感においても、それが藁であることは明白すぎる事実なのであったが、それでも藁をつかまざるを得なかったのだ。あえて藁をつかまないという潔い選択もあったが、その後の悲惨な結末を考慮に入れるとすると、この際、潔さなどどうでもいい、と観念するしかない。「つかむも地獄、つかまぬも地獄」ではあるが、少しでも「地獄で仏」の可能性を信じるしかなかった。
しかし、藁はやっぱり藁だった。一週間後、ブリャンスクは見知らぬ男に突然拉致された。まあ、突然だから「拉致」なのだが。あらかじめ拉致の犯行予告があれば、警察に助けを求めることができる。ここで問題となるのは、果たして警察がブリャンスクのような輩の話を信じるかどうか、なのだけれども。
目隠しをされて車に乗せられたブリャンスクは、無理やり大量の液体を飲まされた。過去の経験によって研ぎ澄まされた直感においても、その液体がアルコールであることは明白すぎる事実なのであったが、それでもアルコールを飲まざるを得なかったのだ。あえてアルコールを飲まないという潔い選択もあったが、その後の悲惨な結末を考慮に入れるとすると、この際、潔さなどどうでもいい、と観念するしかない。「飲むも地獄、飲まぬも地獄」ではあるが、少しでも「地獄で仏」の可能性を信じるしかなかった。しかし、アルコールはやっぱりアルコールだった。結局のところ、アルコールを飲むか飲まないかの選択権はブリャンスクにはなく、無理やり「飲まされた」のだから仕方がない。「下品なほど丈夫」と形容されるブリャンスクの肝臓ではあったが、正気の沙汰とは思えない大量のアルコールにはなす術がなかった。ブリャンスクはあっけなく記憶をなくしてしまった。
気がつくと、ブリャンスクは、再び気を失った。二日酔いであまりにも気持ちが悪かったからだ。実際のところ、「二日」なのか何日だったのか、判然とはしない。
で、再び気がつくと、ブリャンスクは、暗い小屋の中にいた。外から明かりが漏れてくる。どうやら昼間のようだ。ブリャンスクは携帯電話で日時を確認しようとした。しかし、ブリャンスクの携帯電話は「ペピロリパロピローン」と奇妙な電子音を発した後、「ブチッ」と音がして、どのボタンを押しても全く反応しなくなった。故障してしまったらしい。すると、小屋の扉が開き、貫禄のある老人が現れた。
「気がついたか、ブリャンスクよ」
老人は威厳のある声で言った。
「ここは出羽国真川郷花地城だ。ブリャンスクよ、外に出よ」
ブリャンスクは言葉に従い、外に出た。そこは、深い山の中であることははっきりわかった。小屋の外には、薪が積んであり、数十メートル先にはこの世の物とは思えない荘厳な建物があった。
「お前は今まで、一般市民として生きてきたが、実は花地家の血を引く者。これより、第八十四代花地城城主、花地武理安秀朝としてこの地を治めていくことになる。これより、武理安秀朝襲名のための修行を行う。修行中はあらゆる艱難辛苦に耐え、堅忍不抜の心を養わねばならない。襲名披露は三日後だ。厳しい三日間となるが覚悟はよいか?」
ブリャンスクは自分の身に何が起こったのか、さっぱり理解できなかった。いや、こういう状況では、理解しろという方が無理だ。だいたい、城主って何だよ? 何を覚悟すればいいのか? 修行が終われば、殿様として酒池肉林の生活が送れるのだろうか? しかし、メタボリックシンドロームが気になるブリャンスク、さすがにビール飲み放題というわけにもいくまい。でも、藁は藁ではなかったのか。
「では、修行に入る。まずは、どんな状況に追い込まれても、奇跡を信じ続ける強靱な精神を養う。私と共に百回唱えよ。信じろ、信じろ、必ずや奇跡は起こる。信じろ、信じろ、必ずや奇跡は起こる。信じろ、信じろ、必ずや奇跡は起こる…」
「このことか!」
ブリャンスクは老人と共に百回唱えると、奇跡が起こったのだった。

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2008年01月20日

大関千代大海が休場

エクランド教授は優秀な数学者である。専門は微分位相幾何学。この言葉を聞いただけで、居眠りを始める輩が世の中に多数いる。微分位相幾何学のあまりの効果に、最近は薬学部に転じて睡眠薬でも開発しようかと思うほどだ。
エクランド教授は毎日毎日、優秀な自分の頭脳と優秀ではない学生の頭脳のギャップに悩まされていた。このままではおかしくなりそうだ。まあ、世間では「微分位相幾何学を研究している」と告白すると、それだけで「ヘンな人」と言われるのだが。自分がヘンならみんなはもっとヘンだ。大した差はないと思われるかもしれないが、せいぜい498対502くらいだろう。でも、大学で偏差値の低い学生に講義するのは学者である以上仕方がない。骨は折れるが、整形外科に行けばいい。
問題なのは、大学の講義以外に、越谷市民教養講座で講師を務めなければならないことだ。これは気が重い。まるで出場停止処分が明けた横綱が土俵に上がる気分だ。もっとも、エクランド教授は横綱になったこともまわしを締めたこともないのだが、おそらくそんな気分である。念のためついでに付け加えておくと、エクランド教授は土俵に上がったこともない。
こういう講座にやってくるおばさんは教養がない。高校生レベルの数学はおろか、小学校3年生の算数すら忘れているのだ。それで、市民講座に出席すれば何でも教えてもらえて教養人になれると思っている。こういうのが最も手に負えない。学生ならば偉そうな口調で講義できるが、越谷市民教養講座にはご高齢の方もやってくるのでそうもいかない。エクランド教授は教養があるので敬語を使うことは何の問題も無いのだが、教壇に立っていつもと違う口調で話すとどうも調子が狂う。学生相手ならば、
「君は勉強不足だな。もう一度『解析学概論』を読み直したまえ」
と言っても何の問題もないのだが(問題がないどころか素晴らしい教育的指導だ)、おばさん相手にこんなことを言ったらたちまちクレームだ。
「わからないから勉強しに来てるのよ! 『勉強したまえ』とは何事? きちんとわかるように教えなさいよ!」
と言われてしまう。普通は「できる者ができない者を叱る」のだが、越谷市民教養講座では「できない者ができる者を叱る」のだ。全く滅茶苦茶である。
「わかるように言ってよ。私、数学できないのよ!」
こう主張するおばさんに限って、細かいお金の計算にはうるさいのだ。スーパーで買い物をした後、購入した品とレシートを見比べて一品ずつ値段を再確認することを怠ることはない。三角関数とドップラー効果の区別もできないのに、100グラム128円の豚肉を283グラム買って、それが閉店間際で3割引となり、さらにそれに5%の消費税が加わるといくらになるのか、たった2秒で計算してしまう。インド人もビックリだ。
しかも、何かを勘違いしているのか、「先生、召し上がらな〜い?」と言って自宅で漬けたタクアンを持ってきたりするおばさんもいる。教室に何ともいえない芳香が漂い、講義どころではない。
その日も越谷市民教養講座の教室には、訳のわからない受講生がたくさん詰めかけている、はずだった。またあの恐怖の時間が始まる。ピタゴラスの定理も知らないおばさんにどうやって微分方程式の説明をすればいいのやら・・・。エクランド教授は緊張しながら教室のドアを開けた。が、何と教室は無人だった。エクランド教授は講義の日を勘違いしていたのだ。ショックのあまり、エクランド教授は、トイレで用を足した後、ズボンのチャックを閉め忘れたのだった。
「このことか!」
エクランド教授は新越谷駅前の八百屋で必死に値切り見事30円引きを勝ち取ったのだが、自分の中に「おばさん」を発見して、その夜は一睡もできなかった。


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2008年01月16日

桜庭一樹さん直木賞受賞

ファーシルは欺された。
「一粒で二度美味しい」
この言葉に幻惑され、チョコレート味のキャラメルをキャラメル味のチョコレートでコーティングしたお菓子を購入してしまったのだ。ん!? チョコレート味とキャラメル味を楽しめたのだから欺されてはいないか。でも、なんとなくすっきりしない。まるで、残尿感のように。
ファーシルは復讐のため、北習志野空手道場に入門すると、寒稽古で鍛えに鍛えたのだった。が、いくら鍛えた体でも詐欺には弱い。ファーシルはまたまた欺された。「体力勝負!」のキャッチフレーズに誘われ、「あなたが第一発見者! つちのこ探索ツアー」に参加してしまったのだ。
岐阜県内の山中を10日間歩き回ったファーシルは、コルイムスカヤに言った。
「なぁ、こんな所を歩き回っているくらいなら、徳川埋蔵金でも探しに行った方がよかったんじゃないか」
「埋蔵金だって、おそらくこんな山の中にあるんですよ」
「この辺を適当に掘ったら出てくるんじゃないか」
「そんなに簡単に見つかるなら、もうすでに、見つけるべき人が見つけるべき時に見つけるべき場所で見つけていますよ」
「何でそんな夢のない話をするのだ」
「で、そのファーシルさんの夢とは何ですか?」
「バカか、お前は。徳川埋蔵金が見つかればダスキンのハウスクリーニングができる。骨盤の歪みも矯正できる」
「じゃあ何で埋蔵金ではなくてつちのこを探しているんですか?」
「何かの間違いだ。キムチ鍋を作ろうとして『キムチ鍋のつゆ』を買ったはずが、誤って『キムチ漬けの素』を買ってしまったようなものだ」
「だったらレシートを持って一週間以内にサービスカウンターで交換すればいいでしょう」
「そんな恥ずかしいことができるか! 電車の網棚に忘れ物をして、駅員に『何を忘れたんですか?』と聞かれ、『ミルクせんべいです』と言うようなものだろう」
「ファーシルさんはいい歳をしてミルクせんべいなんか買うんですか?」
「例え話だ! バカ者!」
「愛と勇気を忘れるよりはるかにましですがね」
「コルイムスカヤもたまにはいいことを言うじゃないか」
「もっといいことを言いましょうか?」
「何だ?」
「早く山を下りないと奥飛騨山岳警備隊に捜索されてしまいますよ」
「我々が見つけないで誰がつちのこを見つけるんだ! 俺は北習志野空手道場に月謝を三ヶ月ぶん払ったんだぞ」
「ま、その後六ヶ月ぶん滞納していますがね」
「余計なことを言うんじゃない!」
ファーシルはコルイムスカヤとの会話に疲れ、再びつちのこを探し始めた。やれやれ、コルイムスカヤなんかと無駄に無駄な無駄話をするのは、時間と横隔膜の無駄遣いだった。一粒で二度欺された上に、三度目の被害にあうところだったぜ。
「ファーシルさんに付き合わされて、私の方が大損害ですよ」
「このことか!」
ファーシルは山歩きで疲れた体に、チョコレート味のキャラメルをキャラメル味のチョコレートでコーティングしたお菓子で糖分を補給したのだった。


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2008年01月07日

高校ラグビー東福岡初優勝

「これは、エラーなのだろうか?」
カルダーノは、定置網に引っかかったコアラのぬいぐるみを見て首をかしげた。が、何とコアラのぬいぐるみには盗聴器が仕掛けられていたのだ。カルダーノがこのワナに気づくにはまだしばらく時間がかかる。カルダーノはSサイズのシルクのパンツをコアラのぬいぐるみにはかせると、「カルタゴ」というニックネームをつけて一日3回エサを与えて可愛がったのだった。
ところで、誰が何と言おうと、靖国神社に強制参拝したロビンソン氏は、受信機に耳を当て、「バンビーノ」の盗聴器から送られてくる会話を聞いていた。念のために断っておくと「バンビーノ」とはコアラのぬいぐるみのことである。全く同じぬいぐるみをカルダーノは「カルタゴ」と呼んでいるのだ。「バンビーノ」なのか、「カルタゴ」なのか。全くもってややこしい。ロビンソン氏の立場では(これを「民主主義的攘夷論」という)「バンビーノ」が正しい名前であり、カルダーノの立場では(これを「南国楽園的隔世遺伝論」という)「カルタゴ」が正しい名前なのだ。どちらが正しいかを決められるのは神しかおらず、ゆえに、「バンビーノ」が正しいと思ったあなたは神です。インシャラー。
さて、盗聴器から聞こえてくる会話に話を戻そう。いや、戻そうといっても話はまだ始まっていなかった。ではもうしばらく待ってもらおうか。
その日、カルダーノは郊外の大型ショッピングセンターに行くか、市街地中心部の歴史ある商店街に行くか迷っていた。だって、大型ショッピングセンターには高橋さんというきれいな店員さんがいるし、商店街の薬局では薬を買うと店番のおばあさん(名前を知ろうとは思わない)が必ずおまけのポケットティッシュを付けてくれるのだ。But, you can fly.
どうしたんだい、カルダーノ? いつもの繊細さと磊落さはどこにいった? だからこれが、ラブソングさ。トンネルを抜ければ、雪はない。
「いつもの温もりをください」
「お支払いは現金でよろしいですか?」
「この小さな胸で、痛みを受け止められるだろうか?」
「その瞳は、何を問いかけているのでしょうか?」
「パンクロックというのは単なる音楽ではなくて、いわゆるひとつの人生そのものなんだ」
「重い責任を背負ってきたんですね」
「次のライブの日程は決まったかい?」
「ちょっと無理しすぎだったかもしれませんよ」
「この呼吸を、この鼓動を、感じることができるか?」
「あなたが私の人生に影響を及ぼしたのと同義で、私もあなたの人生に影響を及ぼした、の、で、しょうか?」
「つまるところ、君を見つけたことで、自分が見つかったんだ」
カルダーノ、お前自身の手でなければ、愛をつかむことはできないのだよ。甘い声にだまされてはいけないのだ。だって、出口はまだ見つからないんだろう? あの街に行っても何も変わらないさ。携帯電話からだって110番はできるし。
ここで、話は「バンビーノ」(あるいは「カルタゴ」)に仕掛けられた盗聴器に戻るのだが、この会話を受信機で盗聴していたロビンソン氏は、何とキャンペーン期間中だった。だからあなたを想って歌っていたのだ。だが、残念なことに、ロビンソン氏は極度に緊張していた上に、本質的な部分において音痴なのであった。
「このことか!」
カルダーノは恵比寿の高級焼肉店で特上カルビ38人前を平らげると、各テレビ局からギャル曽根の対抗馬としてスカウトされ、年末年始に合計196時間テレビ出演してにっこり微笑んだ。


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2007年12月31日

大晦日から元旦にかけて荒れた天気

日本のテレビカメラが初めて、ベネズエラでUFOの撮影に成功した夜、時差の関係で東京は昼だった。で、ミッチェルはランチを食べに阿佐ヶ谷の「食堂あさかぜ」に入った。ここでのランチタイムはミッチェルにとってとても重要なひととき。だからわざわざ新小岩のオフィスから電車に乗って阿佐ヶ谷までやってくるのだ。「新小岩でもランチは食べられるぢゃないか」と思ったあなたは甘い。全然わかっていない。日本の文化を軽んじている。地震に備えて家具の固定をしないタイプ。何と財布の中に弐千円札がある。神嘗祭と新嘗祭が区別できない。夏になってもスタッドレスタイヤのままで走っている。キリンビールもアサヒビールもたいした違いはないと思っている。体温が37.0度で会社や学校を休む。「熱帯」と聞くと意味無く楽園を想像する。動物園に行くと象よりライオンの方をじっくりと見てしまう。温泉に行ったらのぼせるまで湯につからないと納得しない。美術館に行って気に入った絵がないと「入館料を返せ」と言って係員を困らせる。新聞では社説より連載小説を好む。トイレットペーパーは紙の無駄遣いだがウォッシュレットは水の無駄遣いだと考える。高校生になるまでサンタクロースの存在を信じていた。「もしもピアノが弾けたなら」と空想する。松島、天橋立、宮島には興味があるが偕楽園、兼六園、後楽園には興味がない。飛行機がなぜ空を飛ぶのか疑問である。普段は右利きだがパニックになると左手を多用する癖がある。「ポイントカード、今なら無料でお作りしますが」と言われるとついついポイントカードを作ってしまう。他人には言えない秘密がある。「そんなの関係ぇねぇ!」と思っている。「問題の所在」と「研究の目的」の違いが感じられない。港町の夜風に哀愁を感じる。基本的に年中無休である。犬には必ず吠えられる。トラブルになると情熱を燃やす。パキスタン情勢が混乱する。そこに泥沼が存在していることが明確になっているにもかかわらず泥沼にはまる。好きになってしまったものは仕方がない。無料より高いモノは無い。原油価格が高騰しても感覚が麻痺している。国境の長いトンネルを抜けると雪国である。快速より各駅停車の方が空いているだろうと思ってわざわざ各駅停車に乗ると意外と混んでいる。福井への行き方がわからないのに越前ガニを食べる夢を語る。「Kスタ宮城」のことを未だに「フルスタ宮城」と言ってしまう。「最高ですか?」と問われても答えに詰まる。大々的に行われた世論調査の結果は無視して構わない。「ポスト」と聞くと「郵政民営化」より「モダン」を思い浮かべる。饅頭や団子が食べ放題ならお寺で修行してもよい。「たま出版」の韮沢さんに親近感を覚える。「生産力ナショナリズム」のイデオロギーへとつながる高度経済成長期の支配的言説でもある。強く主張されたので何も言い返せなかったが、実を言うと納得していない。曖昧にしか理解できていないことに対して厳密な説明を求められ、正直に「わかりません」と言うのは格好悪いので何とかしようと思うが、所詮曖昧な理解では何とかできるはずもなく、途方に暮れる。「めいだい」と聞くと、明治大学でも名古屋大学でもなく、「命題」が思い浮かぶ。差し込む光とすきま風が濡れた頬に痛く染みる。五月雨を集めると最上川は早い。靴下に穴が空いている。上空5,000mに寒気が流れ込む。「賄賂」という言葉に心ときめく。使ったことのない機能を積極的に使おうとする冒険心に欠けている。声にならない思いが聞こえる。自分で自分の首を絞めていることを自覚することに対して環境決定論を持ち出す。プロ野球選手の著書はほとんどゴーストライターが書いている。美味しいモノはコレステロールが高い。「頑張ったってしょうがない」とつぶやく。荒唐無稽に命をかける。期限付きとはいえ安定賃金制が導入される。可能性は不可能性になるが、不可能性は可能性にはならない。すでに三年間放置されているが、来年もまた放置される。本当にKY。
「このことか!」
ミッチェルは浴衣で年越し花火大会を見に行くと、風邪を引いて正月休みを寝込んで過ごしたのだった。

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2007年12月28日

宇宙人新庄が離婚

そんなことが起こるとは思ってもいなかったのだが、起こってしまったモノは仕方がない。ノルベルトはゆっくりと立ち上がると、ちょっと怒った顔をして、瓶ビールの空き缶を踏みつぶした。「瓶なのになぜ空き缶なのか?」とあなたは疑問に思うかもしれないが、この疑問が後に重大な意味を帯びてくるのである。
とはいえ、せっかく遠い南の島にやって来たというのに、ノルベルトは上野駅にいるような気分だった。この島にはパンダはいないし、新幹線の地下ホームもない。何なのだ、これは? しまったと思ったときにはもう遅い。まだ間に合うならば「しまった」などとは思わないはずだから。でもね、世の中にはどうしようもないこともあるのだよ。
「何で海水パンツを持ってこなかったんだろう?」
「買おうとしたって売っていなかったじゃないですか」
「小○よしおさんが仕事用に買い占めたんですかね」
いくらノルベルトといえども浜辺でヌードになる勇気はない。ノルベルトは静かに夕陽を眺めながら、遠い昔の恋人の面影を思い出し、はらりと涙を流すのであった。
「ノルベルトさん、どうしました?」
パチョレックが聞いた。
「いや、ちょっとコンタクトレンズの調子が悪いんだ」
「ノルベルトさんが涙を流すなんて信じられません。たとえコンタクトレンズのせいだとしても」
「どこかの宗教団体に圧力でもかけられたのか?」
「だって、イルミネーションは一斉点灯だって言ったでしょう」
「そうやって人の時間を止めやがって!」
「常に地球は回っております」
「そうやって人の腕時計を止めやがって!」
「電池が切れただけでしょう」
「切れる前に替えておけ!」
「キレテナ〜イ」
「思春期に、おおおぉ〜♪ 壊れ、かけの、クロック♪」
「クロックぢゃなくてシュワッチですよ」
「それを言うならウォッチだろう」
夕陽が海を染め上げる。ノルベルトは意を決して海に向かって叫んだ。が、その叫び声は言葉にならなかった。ああ、青春…。
「なぁ、あれは不当判決じゃないか」
「漢字能力検定協会の陰謀ですよ」
「このアレルギーは治らないな」
「すると、ガスボンベを常時携帯するということですね」
「突然インタビューされても、事前に聞かされていた質問とは違うからな」
「来シーズンのJ1昇格はちょっと厳しいです」
「一年を振り返るにはまだ早い!」
南の島、浜辺の夜。ノルベルトの視線の先には、スターダスト。
「ノルベルトさんに一番似合わないシチュエーションですね」
「おい、パチョレック! それはどういう意味だ!」
だが、ノルベルトは微笑んでいた。夜風がやけに心地よい。今宵はやはり、ハルシオン。
「このことか!」
ノルベルトは島で唯一のコンビニで便箋と封筒を買うと、パチョレックの名前で磯野貴理にファンレターを書いたのだった。


tamakakeshinchan at 18:55|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)