2006年03月27日

知って得する『味』の話 其の六

前回、苦い味・『苦味』と関係する『心(しん)』についてのお話をしました。今回は『甘味』と関係する『脾(ひ)』についてお話します。
『あまぁ〜い』と緩みます
 『甘味』は緊張をゆるめます。仕事が一段楽した時、ブレイクタイムに甘いものを一口取ると、ほっとして心も身体もほぐれますね。甘いものが大好物で、スイーツを想像しただけで、お顔までゆるんでいるあなたも例外なくそうですよね。漢方薬の葛根湯には辛い生薬のほかに、甘いなつめ(大棗・たいそう)が入っています。辛い生薬で温め、甘いものでこわばっている体表をゆるめて発汗しやすくしたり、肩こりを取ったりするために加えているのです。前回お話した『苦味』とは逆に、人は『甘味』には比較的鈍感です。だからついつい大量に取りがちです。また、子供は甘いものが大好きです。『甘味』は『脾(ひ)』に働き、『脾』は後天の精といってエネルギーを生み出すのにとっても重要なので、子供に『甘味』を与えるのは良いことですし、活発な子供が欲しがるのも当然といえます。しかし、そのとき白砂糖の人工的な甘味でなく、果物のような自然の甘味や噛めば噛むほど甘くなる穀物などを与えるのがいいでしょう。『甘味』に属する食べ物には、甘い果物、蜂蜜、砂糖、米、豆類の大豆、赤小豆、ゴマ、トウモロコシ、芋類のサツマイモ、ジャガイモ、山芋(但し、サトイモは辛)、黄色野菜のかぼちゃ、人参、アクのない野菜の白菜、トマト、菌糸体として椎茸などがあります。
『甘味』は『脾』に働き補う
甘味に関係の深い臓腑は『脾』です。『脾』は西洋医学で言う脾臓とは違い、胃、十二指腸、小腸、膵臓などの消化器全般の機能を指しています。卑とは、大事なものをしまっておく器、即ち、栄養源になるお酒をしまっておく酒器で、とっくりのような形をしている膵臓をみて脾と名づけたものと思われます。脾を病み栄養が不足すると異常痩身になったり、逆に甘いものを取りすぎ栄養過多になると脾を破り、肥満や糖尿病になったりします。
また、脾は湿を嫌いますので、暑い夏に水をがぶ飲みして脾がくだびれると夏バテの原因になります。脾は土用によく働きますので、夏バテ防止に甘いウナギの蒲焼を食べるのもここから来ています。ちなみに、立夏の前が春の土用、立秋の前が夏の土用といった具合に、土用は各季節にあり、期間は各18日間です。この期間に体調が悪くなる人は『脾』に原因があるのかもしれません。
最後に、和菓子の職人さんが理想とする甘味は干し柿の甘さだといいます。甘すぎるものを取っている現代。甘味に麻痺して危険です。甘味を取って緊張だけでなく、ベルトの緩んでいるあなた、ちょっと注意してくださいね。


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知って得する『味』の話 其の五

『良薬口に苦し』
 『苦味』といえば、「苦い経験」、「苦々しい思い」、「苦虫を噛みつぶしたような顔」とか言葉の表現をみると苦味は一般に良い表現に使われない味のようですね。それもそのはず、苦味は人の味覚において非常に敏感でなんと甘味の約1000倍、つまり1000分の1のほんのわずかな量でも苦味を感じてしまいます。また、年齢が若いほど敏感な傾向があり少し苦味のあるピーマンを嫌う子供が多いのもそのためでしょう。東洋医学で苦味に分類される飲食物は、ビール(ホップ)、レバー、レタス、苦瓜、お茶、コーヒーなど、また新芽のタケノコ、フキノトウ、そしてアクのあるほうれん草、春菊などがあります。そして、『心(しん)』の形の物、たとえばラッキョウ、銀杏、びわなどもこのグループに入ります。苦味の働きには、『乾燥する』働きと『堅くし排泄する』働きがあります。前回述べた『鹹(かん)味』の『潤す』、『柔らかくし下す』働きの反対の働きがあります。このほか苦味には熱を取る働きもあります。
『苦味は熱を冷ます』
 苦味に関係の深い臓腑は『心』です。『心』は夏によく働きます。適当に運動して発汗することが大切です。ここでいう東洋医学的『心』は、西洋医学でいう解剖学上の『心臓』だけを指すのではありません。『心』は血を生じ、情緒の作用・神(人の精神意識と思惟活動を指す)を蔵すると考えられていました。『心』は他の臓腑と違い漢字に体を現す月(にくつき)が唯一ない臓腑です。これは『心』が心臓の象形文字であり、文字にも特別な力(般若心経)があると考えられています。『心』は、陽中の陽の臓腑といわれ、陽気が集まり易い臓腑です。平たく言うとオーバーヒートし易いと言えます。心臓に持病のある人は、陽気の多い夏に発病し易いので気をつけてください。動悸、息切れなど比較的起こりやすいのは熱い夏です。そんな時、ゴーヤなど苦味の物を食べると熱を冷まし身体に良いです。暑さに弱い人は、痩せている人より太っている人ですよね。また、汗っかきでもあります。発汗して冷やしているのでしょうが、心臓に負担があるのは間違いありません。『心』が弱っているのかもしれません。そこで『苦笑い』をしている方、苦味を補ってください。夏にビールが美味いのは、暑いからです。でも、適量を超えるとアルコールの『辛味』が勝ち、熱に変わります。程々にして健康に気をつけ『苦み走った』いい大人でいましょうね。


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知って得する『味』の話 其の四

前回、酸っぱい味・『酸味』とそれに関係する『肝』についてお話しました。陰陽五行説の順番でいくと次は苦い味・『苦味』と『心(しん)』についてのお話になるのですが、季節的に冬に関係の深い、塩辛い味・『鹹(かん)味』と『腎』についてのお話をします。
『鹹(かん)味はミネラル塩』
 『鹹(かん)味』とは、あまり馴染みのない言葉ですね。これは塩辛い味・塩っぱい味のことですが、現在の食塩・純度の高い塩化ナトリウム(NaCl)の味を指すのではなくて自然のミネラル含む塩と考えたほうがよいようです。食べ物ではミネラル塩のほか、味噌、醤油と海のもので脊椎動物(魚類)以外のもの、たとえば貝類、蟹、ナマコ、海草、昆布などです。鹹味の働きには、『潤す』働きと『軟らかくする』働きがあります。前回述べた『酸味』の『潤す』働きより『鹹味』のほうがはるかに強いです。ボディービルダーがコンテスト前に塩分を極力控えるのは筋肉の盛り上がりや区分をはっきりと美しく見せるためで、塩分を取ると筋肉は柔らかくなりキュッとした締りがなくなります。
『鹹(かん)味は腎の燥を補う』
 鹹味に関係の深い臓腑は『腎』です。『腎』は冬によく働きます。ここでいう東洋医学的『腎』は、西洋医学でいう解剖学上の『腎臓』だけを指すのではなくて、腎臓、副腎、膀胱、生殖器、泌尿器の総称ともいうべき概念で、体内の内分泌系の調整や大切なエネルギーと栄養物質を蓄え補う役割も含んでいます。もし冬に『腎』の陽気が弱っていると身体全体が冷えて、冷え症、腰痛、頻尿、むくみなどがおこり、陰気(精気)が不足するとかすみ目や皮膚の乾燥、かゆみ、しびれなどがおこります。寒くなると血圧が高くなるという人も『腎』の弱りの場合が多いです。高血圧に塩は駄目じゃないか!と言われそうですね。高血圧にもいろいろなタイプがあります。また、鹹味はバランスの取れたミネラル塩や醗酵物の塩です。適量取るのには問題はありません。むしろ化学薬品のような塩化ナトリウムを食塩として取ることが問題です。でも、ミネラル塩はいいからといって摂り過ぎはやっぱり駄目ですよ。「過ぎたるは及ばざるが如し」専門家に相談してくださいね。
寒さに弱いという人は『腎』が弱っているのかもしれません。鹹味を補ってください。札幌ラーメンに味噌味が多いのは『腎』を働かせて身体を温め、冬の乾燥にたいして『潤す』からかもしれませんね。ちなみに九州の豚骨ラーメン、沖縄で豚がよく食されるのは豚の涼(牛肉は温)の性質からだと思います。味の相剋の関係からいうと、塩辛すぎたものには甘味を足せば和らぎます。(味噌汁に芋類(甘))。 また、苦いものには鹹味を足せば苦さが薄れます。(ゴーヤ(苦)に塩豚)。甘いものには苦味(和菓子にお茶)。不思議な味の三角関係です。この冬は温かいお味噌汁や味噌仕立てのお鍋で『腎』を補い寒さを乗り切ってください。辛味を加えるといっそう温まりますよ。


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知って得する『味』の話 其の三

前回、東洋医学の食養論としての基本である法則についてお話ししました。『味』にはそれぞれ意味があり、身体に作用することをお分かりいただいたでしょうか?今回は『五味』(酸・苦・甘・辛・鹹(かん))それぞれの味と作用について5回に分けて一つずつ、詳しくお話して見ましょう。
『酸味は肝を補う』
疲れたとき、酸っぱいものを摂ると疲れが取れますね。疲れが溜まる状態というのは、体内の老廃物が肝臓での解毒分解処理の能力が低下した状態、つまり肝臓の機能が低下している(虚している)状態です。そんな時、適度に黒酢を飲んだり、酸っぱいものを補うと体の中の糖質代謝を促しエネルギーを発生させる元となるクエン酸回路(TCAサイクル)が活性化し元気になります。また、お酒を飲むとき、酢の物を食べたり、レモンや柑橘系のもので割ったりして飲むと悪酔い防止になります。これはお酒(辛味)の毒消しとしての酸味の働きとして前にも述べましたが、肝臓の解毒機能をアップさせると考えると納得できますよね。でも、酢の摂りすぎは返って肝を傷めます。何でもほどほどが肝心ですから注意してくださいね。
東洋医学で言う『肝』は西洋医学の肝臓だけの臓腑の意味ではありません。ホルモンや内外分泌の調和、造血機能、自己免疫機構の正常化など機能も含めたがものが『肝』の概念です。ここでは、味の話なので簡単にお話します。東洋医学で『肝』に関係の深いとされるものに、『筋』と『目』、『爪』があります。『肝』が弱ると『筋』が引きつります。また、『目』も疲れやすくなります。目に良いとされるブルベリーは酸っぱいですよね。『爪』も艶がなくなったり、薄くはがれ易くなります。情緒的には『肝』の疏泄がうまくいかなくなるとイライラして怒りっぽくなります。怒ってばかりいる人、『肝』に気を付けて下さいね。
この他に『酸味』に分類される食べ物として、ローヤルゼリーや、バラ科の植物のスモモ、りんご、杏、梅、(梨は甘)、柑橘類のみかん、ゆず、レモン、金柑、橙などがあります。
『酸味』にはもう一つ『潤す』という働きがあります。梅やみかんは身体を冷やすという食養生家がいますが、酸は潤す働きの結果、水が集まりその結果冷え易くなるということで、直接冷やす働きはありません。夏に梅酒をよく飲むのは潤す働きと『酸』の疲れを取る働きで夏ばて予防かもしれませんね。さあ、疲れている方、酸っぱいもの食べて元気を出しましょう!!!

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知って得する『味』の話 其の二

前回、『唐辛子』の辛味を例に、『五味』についてのプロローグ的なお話をしました。それぞれの味は無意味でなく意味があるということです。興味をもたれたでしょうか?『味』についての今回は、東洋医学の食養論としての基本である法則についてお話します。
五味には身体に働きかける作用があります。例えば『酸』すっぱいものは内臓の熱を収め、脱水に用い下痢を収めるなど、収の働きがあります。これに対し、『辛』辛いものは熱を発散し、小便を出す散の働きがあります。また、『鹹(かん)』塩辛い(ミネラル)ものは堅い物を潤し軟らかくして下す働きがあり、それに対し『苦』苦いものは湿熱を除くため、乾燥し堅くして排泄します。そして、『甘』甘いものは、身体を補い緩める働きがあります。
図1左の図1は五行説「木火土金水」の土王説バージョンで、漢方理論で使う五行説と使い分けなければなりません。専門家でも混同している場合があります。
図2.に臓腑名を入れておきました。味が作用を及ぼす臓腑です(注、西洋医学の臓腑と同一ではありません。)また別の機会に詳しくお話します。
『味付けに失敗しちゃった』さて、身近な役立つ話題に変えましょう。お料理をしていて、味付けに失敗し甘すぎた!辛過ぎた!ってことはよくあることです。そこで図2.が役に立ちます。これは『五味の毒消し』です。前回お話しました、『辛』辛過ぎるものには『酸』すっぱいものを加えると辛さもましになり、毒も消します。『酸』酸っぱ過ぎるものに逆に『辛』辛味を足せばいいわけです。『苦』苦いものには『鹹』塩辛いもの、沖縄のゴーヤチャンプルが苦いゴーヤと塩ブタで料理しますね。『甘』甘すぎたものには、『苦』いもの、甘いチョコの駄目な方もビターなチョコなら食べられますよね。『鹹』塩から過ぎたものには、『甘』甘い物を加えると緩和されます。鯖のヘシコ(『鹹』)を炊き立てのご飯(『甘』)で食べると美味しいですよね。スイカに塩を少し、ぜんざいに少し塩をするのは甘さを増すためにする逆バージョンです。これを覚えるといろいろな料理に応用でき、創作料理も美味しくできます。是非、お試しください
   図2



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2005年10月04日

知って得する『味』の話 其の一

前回、漢方薬にも使う生薬の一つの『紫蘇(しそ)』についてお話しました。今回は、いよいよ秋も本番、『実りの秋』にふさわしく食べ物の『味』について、東洋医学的な見地からお話しましょう。

『唐辛子でお口がヒリヒリ、どうしよう!!』

韓国料理や中華の四川料理などの辛みの効いたご馳走を食べ、運悪く超辛〜い唐辛子に当たって困ったことありませんか?罰ゲームで唐辛子を食べさせられた!!って言う方も中にはおられるかもしれませんね。慌てて、いくら水を飲んでも、氷で口を冷やしてもなかなか辛みのヒリヒリ感は治まりません。そんな時、レモンやお酢など酸味の強いものを口に含むと、意外と早くヒリヒリ感は消失します。韓国冷麺にキムチを入れすぎて辛くなり過ぎたとき、お酢を足すことで辛さが和らぎます。逆に酸っぱすぎるものに辛味を加えると酸っぱさも和らぎます。これは同時に毒消しにもなります。

例えば、最近はやりの焼酎は辛味になりますが、それに酸味のレモンや梅干、酢橘などを入れて飲むのは、焼酎の毒消し、つまり悪酔いしないコツです。(とはいっても、飲みすぎは駄目ですよ)日本酒(辛)のおつまみには、酢の物が良いでしょう。

また、唐辛子を食べると体が温まったり、時には発汗したりしますね。辛味には温める温(おん)の働きや、汗を発散する散(さん)の働きなどがあります。ですから新陳代謝を活発にして良いのですが、身体に炎症性の疾患、例えばアトピー性皮膚炎やイボ痔(内核痔・外核痔)・膵炎などがある場合は炎症傾向を助長し症状を悪化させる場合がありますので、そういう病をお持ちの方は『辛味』には注意が必要です。

唐辛子を例に取り『辛味』についてお話しましたが、東洋医学では、食べ物や生薬の味を酸(すっぱい)・苦(にがい)・甘(あまい)・辛(からい)・鹹(かん・しょっぱい)の『五味』にわけそれぞれその味の持つ働きについて論じています。それぞれの味にはそれぞれの決まった働きがあります。スイカ(甘味)に食塩(鹹味)をつけて食べるとより甘さが増すのは、よくご存知だと思います。これにもちゃんとした理屈・理論があるのです。この理論をマスターすれば、料理の味付けに失敗した時のリカバリーや、素材をより美味しくいただくのに役立つほか、健康維持や増進、病気のときの食事なんかに応用し大変便利です。

養生論はもちろん、漢方薬も五味は重要な要素です。最近の漢方薬ブームで似非漢方家が『この漢方薬は従来の苦味をなくして飲み易くしました。』などといっていますが、これは漢方理論の根本を無視した全くナンセンスな話です。『味』は漢方薬の命ともいえる薬効における最も重要なファクターで、『味』を変えてしまえばそれは全く違うものになってしまっていることになります。
これから6回に分けてそれぞれの『味』について連載していきますのでお楽しみに。

いまだ、病まざるを治す!『養生法』 其の6

前回、春の養生法を食の面からお話しました。さて、夏も終り、いわゆる『夏ばて』の出る頃ですし、身体が弱っていると、食あたりで蕁麻疹や食中毒、食欲不振と身体の不調を訴える人も少なくありません。そこで、今回は身近な食品で漢方薬にも生薬として使われる『紫蘇(しそ)』についてお話します。

夏ばて予防に紫蘇ジュースをご家庭で作って飲んでおられる方も多いと思います。紫蘇には大変便利で有用な働きが沢山あります。
紫蘇には肉や魚の生臭さを消すばかりでなく、食欲を亢進させる効果もあります。

「生魚に加えれば魚毒をころす」とさえいわれるほどです。実際、海産物が原因で出た蕁麻疹には香蘇散(こうそさん)といって紫蘇を使った漢方薬が良く効きます。ちなみに、豚肉や牛肉など陸のものでの蕁麻疹には葛根湯加石膏証(かっこんとうかせっこう)が多く良く効きます。
 
また、紫蘇は「気を下し、胸に水毒を使えているのをなおす」といわれるように、精神安定作用があります。神経症、不眠、喘息、風邪などのときに用います。これについては前回にも触れましたね。
 
もともと紫蘇は昔、紫蘇の種子からしそ油を搾りそれを燃やして明かりとして使用していました。当時、えごまのえ油よりも明るさ輝きが断然すぐれていたからです。また、しそ油には細菌類の繁殖を抑える制菌作用があり、しょう油などの防腐剤として用いられています。また、しそ油に含まれているリノール酸には、動脈硬化を防ぐ作用があるといわれています。
 
『本草綱目』では、紫蘇の葉は「辛温無毒」と記載され「辛味があって体を温める作用があり、皮膚をゆるめ、表に発散させる。風寒を散らせ、気をめぐらせて、胃腸をくつろげ、痰を消し、肺をよくし、血をやわらげて腹部を温める。痛みを止め、咳を安定させ胎児を落ち着かせ、魚や蟹の毒を解毒し、蛇や犬にかまれた傷を治す」としています。
 
漢方では発汗、解熱、鎮咳、鎮静、利尿などの作用を利用して、感冒、気管支炎、喘息、神経症などに応用しています。紫蘇の入った漢方薬もたくさんあり、前出の香蘇散、半夏厚朴湯など20種類近くあります。
紫蘇の収穫時期は6月〜9月です。お寿司やお刺身についてくる紫蘇は単なる飾りではありません。ちゃんとした意味・役割があります。この時期に紫蘇を上手に使って、夏ばて解消、健康増進につなげてください。

いまだ、病まざるを治す!『養生法』 其の5

前回、冬の寒さ対策を食養生の面からお話しました。

『三寒四温』・・・春が近づいてきます。今回は春の養生法を食の面からお話しましょう。

春は発陳(はつちん)、芽吹くもの、香りのする葉野菜を食べましょう
 
以前にもお話しましたが、春の3ヶ月(2.3.4月)を発陳(はつちん)と言います。

冬の間かくれていたすべてのものが、芽を出し活動的になり始める時期です。天地の生気が発動し、人体の陽気も多くなる時期です。ですから、その陽気を徐々にのびやかに発散することが大切となります。この時期はフキノトウやタラの芽など芽吹いてくる旬のものを積極的にとりましょう。少し苦味がありますが、苦味が冬の間にこもった身体の中の内熱を冷ましてくれます。

冬の閉蔵(へいぞう)の時期に根菜類を主体として保存食的なものを食べています。また汗をかくことが少なく、内熱がこもります。この熱をうまくさばくことが初春の食養生のポイントです。葉野菜もこの時期から積極的にとるようにします。葉っぱはその形状からも発散をするイメージがありませんか?特に紫蘇など香菜類、つまり香りのする葉野菜をとると効果が増します。芳香性が気をのびやかに発散する方向に働くからです。

この春の気に逆らって、静かに沈んだ状態や家にこもったままでいると病気になります。木の芽の時期になると神経痛や皮膚病、あるいは身体がだるい、のぼせる、眠れないなどという方、また、ちょっと鬱(うつ)ぽくなるんだっという方は適当に運動して陽気を発動して、香味野菜を積極的にとれば直ります。夏に冷え性で困るという方も春に運動しないで陽気を沈めたままだからです。そんな人も春から適当に運動するといいでしょう。

丹波は山の幸に恵まれたところです。お天気のよい日はピクニック気分で山へ山菜摘みに出かけてはどうですか?春の息吹が心と身体をリフレッシュしてくれますよ。申し添えますが、熊にはくれぐれも気をつけてくださいね。

2005年09月04日

生活に身近な食養生 3

前回は『玄米』の薬的効果と害についてお話しました。

適切に取ると体に大変よいものでも、取り過ぎると害を及ぼす食べ物はこのほかにも色々あります。何でも”ほどほど”にバランスよく・『中庸』が大切だということですね。

それにしても、今年の夏は暑いですね。この記録的な暑さはまだまだ続くようです。

今回は食養生も含め、この暑さを乗り切るための東洋医学の考え方をお話します。

水分補給は大切、でも冷やしすぎはだめ

熱中症のニュースが連日のように報道されます。炎天下での運動や労働は極力避けるべきですが、今年のような高温が続くと部屋の中にいても暑さで体温調節中枢が狂ってしまい熱中症になることがあります。そこで重要になるのが水分補給です。ただ沢山水を飲んだらいいというものではありません。また摂取する飲料水の温度も重要になってきます。

子供の頃、のどをカラカラにさせ、冷えた麦茶に氷を入れて何杯もおかわりをして飲み干す。でも、のどの渇きは一向に取れず、終いにお腹がチャプチャプ、といった経験はありませんか? 冷たい飲み物で水分を補給しようとすると、胃の平滑筋が寒冷刺激で縮かんで水分を速やかに吸収できなくなります。水分は胃の中に滞り、『胃内停水』という状態になります。発汗により濃くなった血管内の血は水分が補給されないままなので、お腹は水でいっぱいなのにのどはまだ渇いている、という状態になります。この『胃内停水』は胃痛や腹痛、食欲不振の原因になるだけでなく、回転性のめまいや偏頭痛(例えばカキ氷を一度に食べたときのキィーンとした頭痛も胃の平滑筋の寒冷刺激によるもの)、はきけを起すこともあります。『胃内停水』は)夏バテの最大の要因のひとつです。この状態で大汗をかきそのままクーラーなどで冷やされると夏
風邪を引きます。下痢などの症状を伴う治りにくい風邪です。

昔、スイカを井戸に冷やして食べました。ひんやりしてとても美味しい温度は16度です。

これが自然の冷たさです。空腹時のアイスやカキ氷、凍らしたお茶はやめましょう。

冷えは『胃内停水』を起すだけでなく病気に対する免疫力も下げてしまいます。

熱中症予防の鍵は梅昆布茶 

速やかに体内に吸収される水分、温度はぬるめのほうがいいでしょう。筋肉は冷やせば縮みますが、暖めれば緩みます。熱いものをとは言いません、冷たいものは少し我慢しましょう。

そして、まだ、東洋医学的こつがあります。それは、五味のうちの鹹(塩辛い)と酸(すっぱい)味です。鹹と酸は体を潤す働きがあります。

そこで、塩昆布と梅干です。塩昆布は汗で失われた塩分やミネラル補給に有効ですし、すっぱい梅は体を潤す働きがあります。この夏は梅昆布茶で熱中症と夏バテの予防をしましょう。このほかに蜂蜜も体を潤す働きがあります。すっぱいレモンと甘い蜂蜜で、お子様には美味しいハニーレモンを作ってあげて下さい。ただし、あまり冷たくしすぎないでね。

生活に身近な食養生 2

前回は、『効あるものには毒がある。』体によいと言われ効果があるものには、反面必ず毒、つまり害があるのでとりすぎに注意し、また、ひとつの有効成分だけでそのものの良し悪しを判断するのはちと早計であることをお話しました。

今回は具体的な身近な食べ物の例を挙げて、東洋医学的に解説してみましょう。

『玄米』は非常に薬効の強い食べ物です。どちらかと言うと食品より薬に近いと言っても良いかもしれません。それほど効果があります。その一例を挙げます。

水俣病をご存知でしょうか。水俣病は、チッソ水俣工場がメチル水銀を含む排水を36年間にわたって水俣湾に流したため、不知火間沿岸で魚介類を食べ続けた人々に発生した大規模な有機水銀中毒事件です。メチル水銀は、脳などの中枢神経を破壊するだけでなく、内臓にも影響します。濃厚汚染により、短期間に死亡した例や母親の胎内で被害を受けた胎児性水俣病も発生しました。

熊本の水俣市で起こったメチル水銀中毒、しかし不知火湾で同じ魚介類を同じように食べたのに水俣病にならなかった人たちがいます。その人たちは玄米を主食として毎日食べていました。玄米には体に有害な重金属(水俣病の場合、メチル水銀)や金属を体外に排泄する働きがあります。そのため玄米を常食とした人たちには発病せず、発病しても軽度で済んだのです。『玄米』のすばらしい”薬的”効果です。

それではそんなすばらしい『玄米』をみんな毎日食べて、健康になればよいと言うことになります。ここで『効あるものには毒がある。』です。金属の体外排泄を促す『玄米』は体に必要なCa(カルシウム)やFe(鉄)も排泄しその結果、骨粗しょう症や貧血の傾向が出たりします。また、玄米は消化が悪く胃を通過するのに約8時間かかります。

ちなみに米は4時間、麦は2時間です。ですから昔の人のようなしっかりした顎でゆっくりと良く咀嚼し甘みを感じて食べなければ胃腸障害を起してしまいます。玄米食は一日二食が原則で、忙しくそして良く噛まずに汁物で流し込む食事をする現代人には常食とするのはあまり向いているとはいえません。『玄米』にはそんな両刃の剣的なところがあります。

しかし、現在の海洋汚染、食物連鎖による重金属の体内蓄積、魚介類を多く食べる私たちには、とても気になるところです。週に1〜2度、家族でゆっくり玄米食というペースが良いでしょう。その時は、海藻類をいつも以上にしっかり採ってくださいね。
そうそう、春菊や菊菜にも排泄効果があります。寄せ鍋に入れるのは先人の経験・知恵ですね。横にはねずにしっかり食べてくださいよ。