2019年08月09日

残暑お見舞い

tamesuounokami at 11:15コメント(0)その他  

2019年06月20日

オズの魔法使い/フーアムアイ

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2019年6月(COP







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tamesuounokami at 13:02コメント(0)│ 

2019年06月15日

ネコ講談7/十二匹集合!眠り猫だよニャンバラリ!!

宝永元年と申しますから、徳川五代将軍綱吉の時代。

江戸は芝増上寺の裏手にある古ぼけた長屋で、世間から隠れるようひっそりと暮らしている一人の老人。歳は七十代半ばぐらいでしょうか、頭をツルツルに剃りあげ、黄色くくすんだ肌に胸のあたりまでフサフサと垂れた真っ白な髭。

この老人、真剣で立ち合えば一刀のもとに両の手を切り落とすという小手切りの達人、小田切空鈍と名乗る凄腕の剣術家。

その空鈍の部屋にある箪笥の上で、毛の長い三毛猫がゆったりと寛いで居る。

そこへ「空鈍さんは居るかい?」と入って来たのは、同じ長屋に住む恰幅の良い五十路のおかみ。

「おお、お市さん」

「そろそろ、衣替えの季節になるね。あら、ウメは今日も、好きな所で居眠りかい」

ウメと言うのは、箪笥の上の猫の名前。

「こいつは、いつもの通りじゃわい」

「この長屋に迷い込んで来て、もう十年にも成るかねえ」

「うむ、そのぐらいに成るかのう。最初は畜生など、貪り、瞋り、痴かの三毒深きものだと忌み嫌っておった。ところが、こいつの瞳に、梅の花のウメという文字を見たとき、『一華五葉を開き、結果自然に成る』と言う達磨大師の言葉を思い出しての。この畜生は畜生にあらず、いつかは仏性を顕わすと、こいつにウメと名付け、今に至るまで仏性を顕わすのを待っておるのじゃが」

「空鈍さんは、いつもコムツカシイ事をのたまうね。つまり、飼っていたら情が湧いたって事だろ」

「う、むむ。そ、それで、それがしに何用かの」

「そうそう、アブ玉をこしらえたのよ」

「アブ玉か!それがしの無二の好物じゃ。短冊に切った油揚げを卵でとじたモノじゃが、いや、これがなかなかの美味なのじゃ」

空鈍、これをパクパクっと一気に平らげ「ご馳走さん。お市さん、いつもすまんの」と、手を合わせる。

「何言ってんのよ。相身互い、お互い助け合わなきゃ。ほら、着た切り雀の空鈍さん、洗濯物があったら出してごらん」

と、一張羅なのかボロ切れなのか分からないような着物を持って、井戸端へと出て行く。

「ふうー。お市さんはいつもながら慌ただしいのう。しかし何故、それがしの様なジジイの世話をしてくれるんじゃろう?」

すると箪笥の上から、「ハアー、まったく女心も分からないボクネンジンだねえ。ホントに剣術の極意に達した、偉いセンセなのかい」と声がする。

「いや、それがしは剣術の極意には達しておらん。弟子と立ち合って二度も負けておるし、修行が足らぬと出家をしてみたが、未だ天真の境地には到達しておらぬーーって、ウ、ウメ。お、お主、く、口がきけるのか!」

ウメを見ると、長い尻尾をパタパタと揺らしている。

「オタンチンだねえ。あたしゃ十年も生きてんだよ、喋れても可笑しかないだろう」

「うむー、猫は十年生きれば人の言葉を話すというがーーしかし、それがしは確かにオタンチンじゃ。だから、空けで鈍いという意味で空鈍と名乗っておる」

「センセ、あたしが喋れんのは、センセが授けた無住心剣だよ」

無住心剣と言うのは、心法、心の修練を第一とする剣術。

「それがしはただ、暇つぶしに剣術の技でも仕込んでみようかと、ちょいと戯れただけじゃ」

「このスットコドッコイ。十年近くも暇つぶしに付き合わされりゃ、いやでも霊力が付くってもんさ」

「それにしても、ウメ。お主は口が悪いのう」

「カーッ、まったくセンセはスカタンのコンコンチキだね。干からびたマクワウリみたいな顔から、四六時中屁理屈ばかり聞かされりゃ、誰だって口が悪くなるさ!」

「うぬぬ。何も言えんわい」


ある晩のこと、増上寺近くの愛宕山の方から「ギャッ、ギャギャーッ」と、神経が逆立つような猫の喚き声。

愛宕山の周りは寺院がひしめき合い、その中のある寺の墓場で起きている、言葉にするにも悍ましい無惨な光景。

地面に置いた提灯の灯りに浮かび上がる頬のこけた浪人者。その浪人が、縄に括られた猫を生きたまま切り刻んでいる。

猫の喚き声は、殺されてたまるかと言う抵抗の叫びだったのです。

浪人の名は原木斗角、歳は三十を越え、備中岡山は鴨方生まれの学者崩れ。性格に問題があってか国を追われ、今はこの寺の寺男として雑用をこなしている。

「へへへ。血塗れになった畜生どもの死ぬ間際の必死な叫び声、いつ聞いても背骨がゾクゾクする」

原木斗角、猫の死骸を墓地裏の茂みに埋めると、何食わぬ顔で寝ぐらへと戻って行く。


翌日、空鈍が愛宕山へと散歩に出かけたところ、向こうから駆けてくる原木斗角と肩がドンッとぶつかった。

「あー、これは、失礼仕りました。寺の用事で急いでいたものですから」

こけた頬をニンマリと歪め、頭を下げる原木斗角。

「いや、それがしもボーっとしておった。こちらこそ、すまぬの」

すると、「え、そちらが悪いんですか。それじゃあ、きちんと謝って貰えませんか」と態度が変わり「もし用事に遅れたら、どう始末をつけてくれるんですか。拙者は痛い目にあったんです。奉行所に恐れながらと訴えてもいいんですよ」と絡んできた。

「そう、大袈裟にしなくてもよいじゃろう」

「いいえ、キチッと話をつけましょう」

「急いどるんじゃなかったのかの」

空鈍、原木斗角に妖しい気配を感じ、

「それにしてもお主、血の臭いがするのう」

「な、何を言われるんです。い、いい加減なことを仰らないで下さい」

「いやいや、お主の体に染み付いておるのか、プンプン臭うわ。何を、どのくらい殺した」

隠し事を突かれたと焦った原木斗角、いきなり本性をあらわし、

「このジジイ!いい加減にしやがれ!」

と、腰に差していた脇差を抜いて斬りかかって来た。ところが空鈍慌てもせず、切っ先をフワッとかわすと、手にしていた杖でビシッと小手を打つ。

「ギャッ」

手首を抑えて、その場にしゃがみ込む原木斗角。

「ジ、ジジイ、奉行所に訴えてやるから覚えとけよ」

「おお、かまわぬ、かまわぬ。それがしは増上寺裏のボロ長屋に住む小田切空鈍じゃ」

すぐに原木斗角は奉行所へ訴えましたが、武士は喧嘩両成敗でしょうと軽く遇らわれる。

気が収まらない原木斗角、寺の用事もほっといて空鈍の長屋を突き止め、木戸の外から伺うと、路地で寛いでいるウメの姿が目に入った。そこへ、お市に声をかけられ、ウメの事を尋ね、飼い主が小田切空鈍だと知ると、ニヤリとほくそ笑み、お市に頭を下げ帰っていった。

お市は空鈍が帰ってくると、この事を話しました。

空鈍、さてはあの学者崩れかと、当たりをつける。

「奴は何しに来たんじゃろうの、ウメ」

「さあてね。奴が覗いてたのは、最初っから気づいてたけどさ。センセ、何かあったのかい?」

「うむ、奴とちょっとした揉め事があっての」

「ふうん。奴には猫の怨みが纏わり付いてたねえ。もしかしたら、センセに復讐するため、あたしを拐かすつもりじゃないのかい」

「ウメ、大丈夫か?」

「あったりまえさ、あたしゃ強いからねえ」


それからしばらくして、ウメの姿が長屋から消えた。

「空鈍さん、ここ二、三日ウメの姿が見えないね」

「うむ。いつもなら散歩に出ても、次の日には帰って来たのにのう」

「何かあったのかね、心配だね」

「ううむ……」ーーやはり、奴が拐かしたか。

空鈍、居ても立っても居られず、夕闇迫る町中をウメを探しに出る。

その夜更け、月明かりに浮かぶ寺の墓場で、藁袋の口を開けウメを取り出す原木斗角。

「あー、可哀想な三毛猫ちゃん。飼い主の助けもなく、このまま殺されちゃうんだねえ」

歪んだ唇を、より一層歪めながらニヤリと笑う。

ところがウメ、「えっ、誰が殺されるんだって?」と、原木斗角を見返す。

「うわっ!しゃ、喋りやがった」

「ヒョウタクレだねえ。あんたをおびき出すため、ワザと捕まったんだよ」

「ね、猫が喋るとは。こいつはイイ、どんな悲鳴をあげるか、ゾクゾクしてきた」

「あんた、殺した後は美味しく頂くのかい?」

「猫なんか不味くて食えるか」

「それじゃあ、ただ責め殺すだけかい」

「あー、ただ責め殺すだけですけど、何か?」

ウメを小馬鹿にする、原木斗角。

「この世に生まれてきた以上、みんな死にたい命なんて無いんだよ。だけどさ、食べなきゃ、こちらが死んじまう。食べて生きる力にする。それを、痛め苦しめ殺すだけだって!」

「あー、拙者の支配欲が満たされるんだよ」

「ハアー、人の皮を被った生ゴミだねえ」

「な、生ゴミだとォ、生ゴミは拙者以外の人間だ!」

「哀れすぎて、何も言えやしないね」

「だったら言うな、化け猫め!」

「人の言葉尻を捉えて、言い返すたちなんだねえ」

「それがどうした、化け猫!」

「あんた、人並みに見下してるけどさ。国を追われ、江戸でも武士としての職にもつけず、この寺のお慈悲で寺男として雇われたんだろう。よく偉そうな口がきけるもんだ」

「拙者の勝手だろう!」

「それじゃあ、あんたをいたぶっても、あたしの勝手だね」

「うるせえ、ど畜生!」

脇差を振るって躍り掛かる原木斗角。ウメ、爪で縄を切り、剣先を躱してフワリと空中に跳び上がる。

「あたしゃ、そこいらの剣術使いより、かなり強いよ」

原木斗角、左へ切り込めば、ウメはヒラリと右へと躱す。右へ切り込めば、ヒラリと左の方へ。「この化け猫め!」と真っ向に切り込めば、頭上をフワリと越え背後へと廻る。何度も切りつける原木斗角の剣先を、ウメは蝶のようにヒラリ、ヒラリと身を躱す。

「ハアッ、ハアッ、ハアッ」

原木斗角、肩で大きく息をつきながら、

「ち、畜生。人間で言えば、ババアのクセに…」

「何だって、今なんつった。誰がババアだ!」

十年生きた猫とはいえ、ウメも女性。ババア発言にブチ切れた。その姿は怒りに震える帝釈天か、さては魔障を滅する光明童子か、原木斗角には猛り狂う虎の如くに見える。

「うわーっ!た、助けてー!」

墓場の中を倒けつ転びつ逃げる原木斗角、終いには石灯籠にドスンとぶつかり、その拍子に石灯籠が崩れ、原木斗角の上に倒れてきた。

グシャッと鈍い音がして、その後から「痛い、痛い」と苦しそうなうめき声。

原木斗角の両手が、石灯籠に潰されている。

「ただ死なせやしないよ」

原木斗角が下敷きになる直前、ウメが足を引っ張ったのです。

「小手切りの達人、空鈍センセ直伝の両手潰しさ。これから生きながら苦しむんだね」

原木斗角、ボロ雑巾のようにひしゃげた両手をぶら下げながら、寺から逃げて行く。


翌朝、寺を探し当てた空鈍、山門を潜りますと本堂の脇の方で、うずくまっているウメを見つける。

「ウメ、大丈夫か!」

「あれ、センセかい。あたしゃ、平気。ただ、ちょいとばかし眠ってただけさ」

空鈍、ホッとして周りを見ますと、ウメの頭上で見事に咲き誇る牡丹の花。

「おお、これは……牡丹の下の眠り猫」

他力一乗。仏菩薩の因縁に、無心にて己れの身を任せる。

無住心剣。生死に捉われない、天真受用な心ーー言葉は違えど、辿り着くところは同じ。

「それがしは言葉に捉われていた。だから、この歳になっても己れが見えず、生きた証も残せておらぬ……」

空鈍、自分の人生を振り返り、寂しく思う。

「センセ、またコムツカシク考えてるねえ。要はさ、何をしたかったんだい?」

「何をしたかったんじゃろう。それがしが医者を目指したのは、病で苦しんでいる人を治したかったからじゃ。剣術を始めたのも、不当な暴力に泣いている人を助けたかったからじゃーーそうだ。それがしは、人を救いたかった。思い出したぞ」

「センセ、それでイイんじゃないのさ」

「今まで虚ろだったのも、これでハッキリとした。今、それがしの心は何のわだかまりも無い。まさに、住する所無くして、しかも其の心を生ずべしーーこれこそ、無住心」

「カーッ、相変わらずコムツカシイねえ」

「ウメ、ありがとう。それがしと出会ってくれて、ありがとう」

「ありがとうなんて、ヒゲがくすぐったいじゃないか。でもさ、センセ流に言えば、仏菩薩のお導きってヤツかね」

それから空鈍、お市と気兼ねのない生活を二年ほど送った後、眠るように亡くなったそうです。


そして現代まで、熊本に伝わる剣術がある。

それは主君を守る剣。我が身を盾に相討ち覚悟の凄まじい剣。その剣術に、空鈍が授けた、三つの形が今でも残る。

人の思いは、未来へ失われず、『十二匹集合!眠り猫だよニャンバラリ‼︎』という一席。
(宝井講談修羅場塾 発表作品)

 




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プロフィール

しいたどる.

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