2010年12月11日

 都知事が同性愛者に対して「どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティーで気の毒ですよ」とコメントしたことが報じられた。

石原都知事:同性愛者「やっぱり足りない感じ」(毎日新聞 2010年12月7日 23時08分)


 都知事のこの発言の一番の問題点は、「で、何が足りないと感じるのか。それに対して一行政区の首長として何をしようとしているのか」を語っていないことだと思う。行動の指針や、方向性を示すのがリーダーの仕事である。感想など求めていないし、行動の伴わない発言なら不用意に発するべきではない。これは人権意識の低さというよりも、首長としての意識の低さを露呈してしまった出来事だった。

 「足りない感じ」という発言は、過去に海外でゲイパレードを視察した(あの都知事にその視察プログラムを組んだ人はなかなかだと思う)際の感想を述べたものだと報じられている。どうしてこんな感想を持ったのか、無根拠に推論すると(いいですよね)、お祭り騒ぎをしているゲイを見て、彼は「欠落感を穴埋めするために、享楽的に振舞っているんだろう」と受け取ったのだろう。お祭りにかぎらず、飲み会なんかは、日頃の鬱憤をはらす場として機能する側面があるから、たしかに大騒ぎしている姿をみて、その背景になにかがあると想像するのは、不自然じゃない。ゲイパレードを「こんなふうに派手な格好で騒がなければならないなんて、やっぱり欠落しているんだな」と解釈して、彼の中の偏見をある意味根拠づけたのだろう。

 彼の中の偏見についても、さらに無根拠に推論してしまおう。彼はおそらく「男は妻を娶り子孫を残し、一家の主をなすべきだ」という価値観を持っていて、ゲイはそれに当たらない生き方をしている/しなければならない存在だと捉えているのだろう。本来あるべき男性像になれていないのだから、そのことに不満や悲しみを抱いてしかるべきなのに、むしろ楽天的にその事実を受け入れて享楽的に振舞っている。問題意識さえも直視できずにすり替えざるを得ないとは、かわいそうなことだ。というのが、「気の毒」という発言に通じる発想なんだろう。

 だとすれば、もしゲイパレードの趣旨が「僕たちは男として妻を娶り、子供をつくり、一家の主として役割を全うしたいのに、同性を好きになってしまうんです!でも遺伝的なもので努力ではどうしようもないから認めてください!」みたいなものだったら、きっと深く共感するのだろう。なぜなら彼の価値観に沿う主張になるわけだから。もちろん、そもそも(この無根拠な推論が当たらずも遠からずだとして)この価値観自体がナンセンスである。そんなことをゲイは考えないし、そんなパレードは行われない。彼の価値観に沿っていないから、きっと彼は同性愛者が嫌いなのだろう(違っていたらごめんなさい)。

 ところで、話はまったく変わるけれど、「足りない感じ」という表現自体は、僕個人としては別の文脈ですっと染み入るものだった。もちろん「あるべき男性に成りきれてない」という足りない感じを持っているわけではないので、そういう話ではなくて、なんていうんだろう「人間だれしも、足りないところがあるんだよ」というようなニュアンスで「そうだよねぇ」と感じるところがあるというか…。
 観念的な話になってしまうけれど、身の回りで起きていることが、自分も含めて、どれもどこか刹那的でハリボテっぽい感覚が、最近とても強い。たとえばコミュニケーションにしても、遊びにしても、大規模な暇つぶしをみんなで演じているような空虚を感じることが、どうも最近多いような気がする。

 と、ここまで書いて、この件に関してはまた今度考えようっと。

(02:49)

2010年08月12日

昨日、伏見憲明さんが水曜日だけマスターをされている、エフメゾにて「どうなる日本のゲイ?!」と題された討論会がありました。
参加したのは、いずれも“サラリーマン”なゲイ5人
のぶくん(ファシリテータ)
みぞくん
ぼせくん
ナオヤくん
と、わたくしタナベ

大きなテーマは、会社員として働く立場として、
いまゲイの置かれた現状と、これからってどうなの?について。
でも、話はいろんなところに飛びながら、3時間ほど語りました。続きを読む

(22:29)

2006年08月20日

先月末からゲイの間で大きな議論を呼んだ「新木場事件2006」について、まとめていきたいとおもいます。まずはこの事件を報じたニュースを以下引用。

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 27日、同性愛者の男性を襲い、現金を奪ったとして、警視庁は東京都内の都立高校生(18)ら少年4人を強盗傷害容疑で逮捕した。

 警察の調べによると、少年らは今月8日午後9時頃、江東区の夢の島総合運動場内の遊歩道で、衣服をつけずに歩いていた板橋区の男性(34)に殴る蹴るの暴行を加え、現金2万1000円を奪うなどした疑い。男性は全身打撲の重傷を負った。

 少年らは「同性愛者なら、被害に遭っても警察に届けないと思った」と供述しており、最初から同性愛者を狙った計画的な犯行。公共の場でのハッテンは公序良俗に反する行為ではあるが、決して暴力や強盗行為を正当化する理由にはならないはずだ。
------------------------------(bjニュース 7月28日

淫夢が悪夢に…「夢の島」ゲイご難!高校生らが裸の男性袋だたき

夢の島公園や総合運動場のこんもりした木々の茂みは“忍び愛”に最適!?
夢の島でまたもゲイ襲撃!! 東京都江東区に住む都立高生(18)ら少年4人が、アルバイト男性(34)を袋だたきにして現金を奪った強盗傷害容疑で、警視庁に逮捕されたことが27日わかった。現場の「夢の島総合運動場」などは、ゲイ男性が出会いを求める“ハッテンバ”としても知られる。男性は自己アピールのため全裸でクルージング中に襲われた。4人は「ゲイなら警察に届けないと思った」と供述。遊ぶカネ目当ての余罪があるとみて追及している。

“ゲイ狩り”で逮捕された4人は、都立高3年、無職、それに私立高3年2人の17〜18歳で、江東区の中学の同級生だった遊び仲間。
城東署の調べによると8日午後9時すぎ、同区の夢の島総合運動場の遊歩道で、板橋区に住むアルバイト店員の男性(34)に殴る蹴るなどの暴行を加え、2万1000円を奪った疑い。男性は全身打撲の重傷。
男性は被害に遭った時、靴は履いているものの一糸まとわぬ全裸で、夜の公園内を巡り歩いていたのだ。なぜか…。
実は、同運動場と道路を挟んだ「夢の島公園」は知る人ぞ知るゲイ男性のハッテンバ。駒沢公園(世田谷区)など都内の数あるハッテンバの中でも“過激さ”で知られ、別の意味の“夢の島”なのだ。
捜査関係者は「昼夜を問わず、同性愛者が各地から集まって来る。全裸で肌を焼いている男性の姿が、すぐわきを走るJR京葉線の車窓から見えるほど。事件当夜も裸で歩いていたのは、被害男性だけではないだろう」と話す。
「見た目はふつうの青年」(同)という男性。同署に「相手を探すために、服を脱いでいた」と説明したという。公園までは当然服を着て来たが、「相手募集中」という意思表示のためにパンツまで脱ぎ、財布などと一緒にリュックに入れて背負っていた。
4人組は男性を襲った直後、約400メートルほど離れた同運動場内で千葉県浦安市のトラック運転手の男性(56)も襲い、2週間のけがを負わせた。アルバイト男性の110番通報で駆け付けたパトカーのサイレンが聞こえたためカネを奪わず逃走したが、間もなく同運動場内で捜査員に取り押さえられた。
運転手男性は服を着ていたが「15年ほど前から出会いを求めて夢の島に通っている」というベテランだった。
調べに対し4人は「遊ぶカネが欲しくてやった。同性愛者なら被害に遭っても(同性愛を隠そうとして)警察に届けないと思った」と供述。バイクで現場に繰り出しては“獲物”を物色していたようだ。
同運動場や公園では先月以降、複数の同様被害があるといい、同署が4人の余罪などを調べている。
★平成12年には強盗殺人
6年前には殺人も−。夢の島総合運動場から夢の島公園を抜けて隣接する「夢の島緑道公園」では、平成12年2月10日に無職男性(33)が撲殺され、所持金8000円が奪われる事件があった。強盗殺人容疑で逮捕された当時中3と高1の少年と無職男(25)の3人は、やはり「同性愛者なら警察に届けないと思った」と供述した。城東署は「あの事件以降、夢の島一帯で同性愛者が狙われる事件はなかった。ただ、被害の届けがないだけで、実態としては起きていた可能性はある。地元の不良少年の間では『同性愛者を狙えば簡単』というのは共通認識のようだ」と話している。今回、被害者が警察に通報したことで模倣犯は減るか…。

------------------------------(サンスポ 7月28日 ネット掲載終了)

 2006年7月28日、この事件についてのニュースを時事通信社が報道し(すでにネット掲載終了につき記事本文掲載できず)、Yahoo!やmixiで配信されたことにより、事件が広く明らかになりました。
 とくにmixiでは、日記にユーザーがコメントする機能により、300件強のコメントが付けられました。そのことが、今回の事件に対する議論がmixi上で行われたことのきっかけでもあります。

 mixi上での反応については、すでにニュースの掲載が終了してしまったため、どんなコメントが集まったのかを改めて確認することは出来ませんが、ストレートの反応は「なんで全裸で公園にいたんだ」「全裸でどこに金をもっていたんだ」といった興味本位のものをはじめ、「公園を全裸で歩いているのも犯罪だから同罪」といったコメントがあったようです(シンポジウムやmixi上の日記でもこのように語られていました)。また一方で「頭の悪いバカ高校生」と高校生側の行動を批判するコメントもなかったわけではなく、いくつか見られました(これは僕の記憶するところ)。
 ゲイ側の反応がどうだったのか、ということについても同じで、ニュースについたコメントを参照できないのですが、この、ニュースについての一連のコメントに対してブルさんこと斎藤靖紀さんが、このような記事を発信しました(リンクはサイトウブログ、mixi上も同内容記事)。これによれば、ゲイ内部にも被害者に否定的なコメントが見受けられたとのことです。

そしてここから、以下のような問題について、議論が起こりました。
・コメントに多くあったように、被害者も同罪なのか。
・被害者の落ち度はないのか(=完全擁護のみでよいのか)。
・被害者に対してゲイコミュニティはどう反応すべきか。
・今回の事件はどう捉えるべきか。
・事件に対してゲイコミュニティ・ゲイメディアはどう反応すべきか。
・今回の事件と、他の問題(性の自戒等)は、どう議論されるべきか。
・mixiでのコメントはどれほどメディアとしての影響力と公共性があるのか。
・mixi上での発信について発信者はどのような意識下に行うべきか。

 また、mixi上での議論を受けて、8月9日には新宿2丁目のコミュニティスペース「akta」で今回の事件についてのシンポジウムが開催されました。シンポジウムの内容については、後日aktaホームページと合同で特集サイトが組まれるとのことです。

 議論の内容については、自分の考えとともに、次の記事以降で振り返りたいと思います。今回は事実関係の整理ですので、まちがっている部分がありましたら、ご指摘ください。

(14:57)

2006年08月14日

 本日、伏見憲明・公式サイトで、このblogが紹介されました。まだなにも書いてないんですけど…。ご紹介いただいたおかげで、まっさらなblogなのに、一日で500アクセスくらいあったりして、ちょっとびっくりです。
 
 いままでmixiを、なんとなくなにも考えずに日記を書く場に使っていたのですが、新木場ホモ狩り事件(mixi上でもこう呼んでいたので、とりあえずこの呼び方をします)の記事がちょっとした論争になり、こういうものは会員制のSNS(といっても、もはやユルユルではあるけれど)ではなく、blogみたいなものでやって、いろんな意見がつながった状態でオープンになっていたほうがいいなぁと思いました。

 新木場ホモ狩り事件については、mixiでひととおりの議論がありました(リンクはmixiに飛びます)。さらにシンポジウムも開催されました。そこでは考え方の違いや、考えるべきトピックが明らかになったので、まずはそういうものを僕なりにまとめておきたいと思います。意見を主張したいというのではなくて、話を整理して、またなにか考えたくなったら書いて、コメントなりトラックバックなりで意見を集める、そんな作業ができたらいいなぁと思います。
 なんにせよ、あまり鼻息荒くしていると、僕はすぐに飽きてしまうので、せいぜいのんびりやっていきたいと思います。

(23:20)

2006年08月13日

89a66166.jpgレインボー祭り恒例の花火。二丁目に上がる花火を、みんなどんな気持ちで見るんでしょう。


(21:33)
39b855f1.jpg風船が空を舞い、花火が空を照らし、二丁目の宵は暮れていきました。


(21:10)
015ad6b3.jpgサントリーがスポンサーについていたのか、どこも売っているのはプレミアムモルツでした。
みんなお酒片手にショウ(このときは肉之小路ニクヨさん)とイケメンを見ています。宴もたけなわですね〜。


(20:01)
5a436980.jpgショウがはじまりました


(18:37)
ea90cc23.jpg神輿じゃなくて酒なんですが。まぁ飲み屋街の神様はお酒ってとこですね。


(17:40)
057491fe.jpg人が沢山。まだ17:30です。これからどんどん人がふえます


(17:33)
710f6680.jpg二丁目の半分がお祭りでできています。


(17:10)
 改めてblogをはじめることにしました。
 これまで、mixiの日記でなんでも書いていましたが、とある出来事をきっかけにblogみたいにオープンにものを書く場所も必要だろうな、と思ったので。
 このblog自体は3年くらい前に設置したもので、blogを始めるのは2度目ですが、最初に始めたころと、今とではまたblogの意味が変わったなぁと思いました。mixiがあって、blogがあって、その両者が上手に棲み分けをしているのが、おもしろいなぁと思う昨今です。

 昨日は「東京レズビアン&ゲイパレード2006」でした。直前になって嵐のような大雨が降り出して、今年こそ開催は無理なのでは、と思ったら、パレードがスタートするころになったら雨も止み、毎年毎年パレードの奇跡はすごいなぁと思いました(昨年も、直前に曇り始め、パレードが終わったとたん大雨が降り出したという奇跡がありました)。
 なんとなくゲイの暦的に、パレードと、今日行われる「東京レインボー祭り」(新宿2丁目のお祭り)が、一年のなかで一番ヤマだと思うので、blogを始めるのにもいいタイミングかなぁと思いました。

 手始めに、今日は携帯から「東京レインボー祭り中継」を行います。これは、たしか2004年にもやった企画です。レインボー祭りに来れない!という方、どうぞお楽しみに。

(14:45)