リスク多発時代の損害保険

3月1日の最高裁判決が世の中を少し明るくしたように思います。

認知症の91歳の男性が愛知県大府市のJR共和駅で電車にはねられ死亡しました。JR東海は列車遅延等の損害賠償請求をその男性の妻と長男に求めました。

最高裁判所は、「家族に監督義務があるかどうかは生活の状況などを総合的に考慮すべきだ」という初めての判断を示し、今回のケースでは監督義務はなかったとして家族の損害賠償責任を認めない判決を言い渡しました。

確かに、民法では法的な責任を問えない人が他人に損害を与えた場合、監督する立場の人が代わりに損害賠償責任を負うという規定があります。しかし、認知症の人や精神的な障害のある人について、妻や長男だからといって、無条件に監督義務を負うものではないと言うことです。

同居しているかどうかや、日常の関わり度合い、財産管理への関与、介護の実態などをもとに監督義務を負うべきかどうか考慮すべきだと指摘しました。

今回のケースでは、妻は当時85歳で妻自身も介護の必要な状況であったうえに、長男は離れて暮らし、月に3回程度しか実家を訪ねていなかったことなどから、「認知症の男性を監督することはできなかった」として損害賠償責任は認められないと結論づけました。

ただ、今回のケースは監督できなかったのであり、常に認知症は監督できないということではありません。
ケースによっては、総合的に考慮した結果、法定の監督義務者に準ずべき者として法律上の損害賠償責任を負う可能性も当然あります。

そこで、役立つのが損害保険です。日常生活における損害賠償責任保険として「個人賠償保険」があります。
この保険の話でよく話題になるのが「自転車事故」です。ネットで検索すれば、自転車による事故の高額な判例がたくさん出てきます。

自転車に乗った子供がおばあさんと衝突し、おばあさんに大ケガをさせた。その子供の監督義務者の母親に多額の損害賠償が請求されたといった事例がたくさんあります。

そのようなときに使える保険として「個人賠償保険」があります。ただし、その個人賠償保険の被保険者(使える人)は「同居の親族および別居の未婚の子」とまでというが多いのです。つまり、離れて暮らす家族は別居の未婚の子以外は被保険者になれません。

大手損保のなかには、離れて暮らす家族も補償されるように対象を拡大した損保会社もあるようですが、全ての損保会社がそうなった分けではありません。しかしながら、今回のケースで妻がこの保険に加入してたら、使えた可能性が高いと思います。妻や長男は何年も苦しまないで済んだと思います。

「個人賠償保険」はリスク多発時代をカバーする損害保険の一つです。
「個人賠償保険」は日常生活における損害賠償事故に備える保険です。

今後、高齢者だけの世帯がますます増えるなか、離れて暮らす家族の賠償事故への対応が重要になります。
離れた家族も被保険者になれる「個人賠償責任保険」に加入するか、離れた家族を被保険者とする「個人賠償責任保険」に加入することをお勧めします。

なお、保険会社や保険種類によって内容が異なる場合があります。ご加入を検討される場合は保険会社もしくは代理店に相談のうえ対処して下さい。

名南リスクマネジメント 田中 秀敏