谷口高司:タマシギ♂のいきいき日記

鳥と自然と善福寺池…僕だっていろいろ考えているんだぃとこっそり思ってる絵描きの日記

2009年10月

台湾野鳥図鑑より

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1991年に刊行された「台湾野鳥図鑑」の、チメドリ亜科のページの一部です。


台湾は、日本のお隣の国ですから、同じ種の鳥がたくさんすんでいます。でも、生物の分布上、旧北区に属する日本本土と違って、台湾は東洋区に入り、また、島の成り立ちもだいぶ違うので、日本では見られない種類の鳥もたくさんいます。


それらの中で、代表的なのが、ヒタキ科チメドリ亜科の小鳥たちです。


日本では最近、ガビチョウ類やソウシチョウなどの外来種が、猛烈に増えて問題視されていますが、あれがチメドリ亜科の鳥です。もともと日本列島にはほとんどいなかったグループですが、東南アジアを中心に、たくさんの種類がすんでいます。


台湾には16種がいて、そのうちキンバネホイビイなど5種が固有種とされています。


さて、図鑑の話ですが、チメドリの図版はご覧のとおり、一種につき一コマか二コマしか描かれていません。雌雄同色ということもありますが、飛翔図も幼鳥の図も無く、寂しい限りです。


別に私がサボっていたわけではありません。この図鑑を制作した当時は、まだバードウオッチャーが少なくて、野鳥に関する情報量がたいへんに少なかったからなのです。特に、日本では見られない種類については不足していて、日本領だった頃の、戦前の古めかしい文献に頼るしかなかったのです。チメドリ亜科はそんな立場の鳥の代表でした。


台湾まで行って、写真や標本を調べ、小鳥屋をまわり、そして可能な限り山へ分け入って観察したのですが、薮の奥に住む種類が多く、全部を見ることは叶いませんでした。この寂しい図版がせいいっぱいだったのです。


この図鑑が世に出てから、台湾のバードウオッチャーは爆発的に増えました。それとともに野鳥に関する情報量も溢れるほどに増えたのです。それらを使った、特定の鳥や地域の保全のための運動が盛んにおこり、いまや台湾は野鳥保護の先進国となりました。図鑑に対する要求も、比べものにならないほど高くなっています。


バードライフ図鑑の仕事が終わったら、私は台湾野鳥図鑑の増補改定に真っ先に取り組みたいと思っています。


寂しいチメドリ亜科のページを見るたびに、その思いを強くしているのです。

ナメクジ

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またかわいいガにあえないかなと、夜の散歩を試みましたが、残念ながらガには会えず、ナメクジに会ってしまいました。


長男が中学生の時、ボーイスカウトの活動で、夏休みにドイツのスカウトのお宅にホームステイ
させていただいたことがありました。


帰国していろんな土産話をしてくれた中に、ドイツには大きなナメクジがそこいらじゅうにいて、気持ち悪かったというのがありました。しかもドイツ人はナメクジに塩をかけないで、いきなり熱湯をかけちゃうというのです。


ところ変われば…と言いますが、ナメクジくんにしてみたら、どっちもごめんだね、と言うでしょうか。


ナメクジは、貝殻を退化させて身軽になったカタツムリなのです。気持ち悪がらないで、じっと見ていると、カタツムリと同じ顔をした、なんとも可愛い生き物です。

タマナキンウワバ

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義母のところに届け物をしてきて、とたのまれて、夕食後に歩いて出かけました。帰りに長男が働いているスーパーの灯りに、ガを発見。


ヤガ科キンウワバ亜科のガは、かっこよさでは、ガの中では一番人気のグループでしょう。三角翼の深い色合い、前翅の中央に燦然とかがやく銀のマーク、飛び方も直線的で素早く、いかにもヤガと言う感じで、イケメンという表現がぴったりです。


似た種類が多く、その場ではよく判らなかったのですが、帰ってから調べて、たぶんタマナキンウワバだろうということにしました。タマナはキャベツのことですから、畑の害虫で、普通種です。


この仲間には他にも、前翅がベタっと金箔を貼りつけたように光るキクキンウワバや、銀紋の無いウリキンウワバなど、たくさんの種類がいます。夕方から夜に、マリーゴールドの花壇で待っていると、入れ替わり立ち替わりいろんな種類のキンウワバが、蜜を求めて飛んできます。


さて、このガを写そうとしてレンズを向けると、じっとしていたはずが、シャッターを押そうとした途端動きだしました。自動焦点でピントを合わす時に、光か電波が当てられるのを感じるのでしょうか。よく、そういうことがあります。ヒトには無い能力を持っているのかもしれませんね。


グンカンドリ

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初めてグンカンドリの仲間を見たのは、遠い昔の大学3年の時でした。


当時、水産経済学のゼミに潜り込んでいて、まだ始まって間もなかったハマチの養殖について調べていました。まあ、少しでも生きものに関係有りそうなゼミを選んで、これまた生きもの関連のテーマをいただいて、少しでも楽しく論文をでっちあげるのが、生物同好会の伝統(そうでない方、ごめんなさい)でしたから、高玉猿先輩がいたゼミに入っただけなんですが。


色々文献を漁って、あるていどの予備知識を得てから、先生の紹介で沼津でハマチ養殖を試みている卒業生の方の、生け簀を尋ねました。よく日焼けした、実直そうな先輩は、小舟で湾内の筏に設置した生け簀に案内して下さいました。


東京からわざわざ後輩が来たというので、張り切って塩辛声で、事細かに解説して下さり、半分くらいしか理解できていないアホな後輩は、揺れる筏の上で、必死にメモをとっていました。


その時奴が現われたのです。


筏の上空を舞うトビのなかに、シルエットの違うのがいるのに気がついてしまいました。グンカンドリだ!と心のなかで叫んだとたん、頭の中からハマチが消えました。当時は、一生に一度あえるかどうかという珍鳥だったのです。でも、目の前で一生懸命説明している先輩を差し置いて、グンカンドリを見ている訳には行きません。メモ帳と先輩の顔と、交互に目を走らせながら、隙を見て上空をちらっと見上げるという手を使って、グンカンドリを追ったのです。


でも相手は鳥、どこへ行ってしまうか分かりません。ついつい上を見上げる回数が増えて、先輩に感付かれてしまいました。


妙にそわそわしはじめた後輩に、好人物の先輩はこう言いました。


「しょんべんなら、そこからしていいよ。」


結局、双眼鏡もなく、種類は確かめられませんでした。あの時、遠慮しないでグンカンドリ見せて、とお願いすればよかったのにと、グンカンドリを描く度に思い出します。

富士山が見えました

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台風一過の秋晴れで、久しぶりに真っ白な富士山が良く見えます。


鳥の季節的な移動もそろそろ落ち着こうとする時期です。公園を通過する夏鳥のすがたも、めっきり少なくなり、かわりに冬鳥のジョウビタキが現れ、カモの数もふえてきました。


真っ白い富士山は、確実にやってくる冬の予告です。
部屋から、日本一の富士山を望めるとは、なんて幸せなことでしょう。


今日も一日、図鑑の絵と取り組まなければなりません。日本一の図鑑の制作に取り組めるとは、なんて幸せなこと…と思いましょう。


猛禽めんこ・奇鳥めんこ

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ベクトルの皆さんのお力で、鳥めんこは完成目前です。


強そうなワシタカを、世界から20種選んだ「猛禽めんこ」と、奇怪な鳥20種そろえた「奇鳥めんこ」の2種類を作っています。絵柄も、ちょっと昔風なチープ感を出してみました。


これは裏側です。子供時代、めんこの裏は理解不能でした。いろいろ印刷してあったけれど、何かに用いた覚えがありません。教室に来て下さるBさんから、昔のめんこを集めた本をお借りして調べた結果、めんこ屋さんが子供達がいろんな遊び方ができるように、サービスで付けたものだと分かったので、ジャンケンとサイコロを入れてみました。


同世代のオトコどもは、めんこを作ってると言うと、異常に興味を示すので、11月7日からの、ジャパンバードフェスティバルで、こっそりめんこ大会でもやってみようかと思います。皆さん、コレクターズアイテムとして、たくさん買ってくださいね。

海鳥識別ハンドブック

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私は特に好きな鳥というのは有りませんが、苦手なグループは有ります。外洋の鳥、いわゆる海鳥がそれです。


何しろ、ひどく船酔いするので、そちらが気になって、細かい識別どころではなくなってしまうのです。どうも、最初の体験がいけなかったようです。


初めて船から鳥を観察したのは、1966年3月でした。雪の北海道での探鳥旅行の帰り、釧路から品川まで、客を乗せる貨物船、大雪山丸に乗せてもらって帰って来たのですが、その時が大時化で、半端な揺れ方ではなかったのです。先輩の高玉猿さんが、時化で船倉で荷崩れが起きたらこの船はやばいという、乗組員の立ち話を聞き付けて来て、よせばいいのに披露してくれたものですから、余計船酔いがひどくなったものです。


その時は、沢山海鳥が出たのですが、二昼夜の間、ゲエゲエやりながらだったので、あまり覚えていません。コアホウ・エトロフウミスズメ・トウゾクカモメなどが出ていたのは覚えていますが。


房総沖から、菜の花で黄色く染まった陸が見えた時は、不覚にも涙が出ました。それ以来、海鳥は苦手です。


でも、今度の図鑑のためには見ない訳に行かないので、八丈島や三宅島には、船に乗って行きますが、港に着くまで、不安です。小さな漁船に乗って海鳥を観に行くツアーがありますが、誘われても絶対行きません。


そんな私に、最近、トラベルミンに匹敵する味方が現われました。


文一総合出版のハンドブックシリーズの一つ、箕輪義隆さんの海鳥識別ハンドブックです。ポケットに入れて、気楽に持ち歩けるし、結構目からウロコものの情報が載っているので、愛用しております。英語で書かれた分厚い図鑑を、甲板中持ち歩かなくていいのは、船酔いにも良い影響が有るようです。


もっとも今年は色々あって、5月の佐渡航路しか乗っていません。揺れない船だったら乗りたいな。

ヨウシュヤマゴボウの実

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ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)が、濃い紫色の実をたくさんつけています。

美味しそうにも見えますが、毒があるので、絶対口に入れてはいけません。昔、原産地のアメリカでは、ワインの色付けに使われたそうですが、今はもちろんそんなことはしていません。まあ、色は赤ワインに似ていますから、使いたくなった気持はわかりますが。


こんな植物にも、ちゃんと花言葉というものがあるそうで、ヨウシュヤマゴボウのそれは「純情」です。子供が、この実の汁をインクにして、手紙遊びをしたりするので、それが花言葉のもとになったのかしら。


できたプレートはこんなです。

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描き終えた図版は、切り抜いてレイアウトして台紙に貼り込みます。


じつはこれが一番楽しみな作業だったのですが、出版社側の意向で、その道のプロにレイアウトをまかせることにしたので、鳥には素人のデザイナーさんが間違えないように、順番にベタベタはるだけです。楽ですが、自分で図鑑を完成させる楽しみがなくなってしまいました。


さすがにプロがレイアウトした見本を見せていただくと、私のささやかな楽しみなど、口にしてはいけないなと思います。

バードライフ鳥類図鑑・こんなに描くのです

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もたついていたバードライフ鳥類図鑑制作作業も、いよいよお尻に火がつきました。


今夜の著者会議で、出版社側から最終的なスタイルが提示され、あとはひたすら描く(書く)しかない、というところまで来てしまったのです。夏休みの宿題は、常に最後の三日間で勝負してきた我々著者グループとしても、挑むべき宿題の山はあまりにも高く険しく、今までさぼってきたツケの大きさに打ちひしがれる思いでありました。


これは、バードライフ図鑑の、ページ割された掲載種リストの最初のページです。


各種ごとに、描くコマが記号で記されています。成鳥のオス・メス、幼鳥・若鳥、それぞれの飛翔図の上面と下面、種によっては、年齢差や個体変異までズラっと描かなければなりません。現代の鳥類識別図鑑には、そこまで要求されるのです。


見開き毎に4種前後をあてると、図版は200プレートを越します。1991年に描いた「台湾野鳥図鑑」では、458種、1258コマを108プレートに収めました。当時はよくこんなに描いたものだとおもいましたが、今見ると、一種一コマなんてものもあって、なんだか牧歌的な感じさえします。今回の図鑑は一種あたりのコマ数は、格段に増えて、少ない種で4こま、最も多い種では21コマも描かなければなりません。


今のところ、一応全部描き上げたプレートは、全体の一割ほどしかありません。それもこれから、鬼のようなベテランウオッチャーたちで構成された、検討委員会の厳しい検閲を受けると、全部ボツになりかねません。恐ろしいことです。


リストは、描き上げたコマの記号を赤丸でかこってあります。全部のコマを描き終わった種は、種名を赤丸で囲みます。全部の種を描き終えたプレートは、ナンバーを赤丸で囲みます。


「倦まず弛まずコツコツと…」をモットーに、リストの赤丸を、一つずつ増やしていこうと思います。完成まで元気でいなければ!





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