2015年06月09日

日用品としての飯盒

   一昔前は、キャンプといえば飯盒でしたし、また飯盒くらいしかご飯炊けるアウトドア用の鍋もなかったのですが、今では専用のライスクッカーなどもありますし、飯盒はあまり使われなくなっている様です。しかし、その割には廃れてる事なく飯盒が売られているのは、根強い人気があるのではなく、キャンプ=飯盒といったステレオタイプなイメージの強さからではないか、と思います。
   しかし、その飯盒はキャンプでしか使えないものなのか、といえば、決してそんな事はなく、自分などは好き好んで飯盒を日用品として愛用しています。むしろ、キャンプ用、非常用と固定観念で捉えず、日常的に使う事で、それらの状況でも上手に使えるんじゃないか、と思う次第です。(→飯盒の考察

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手元に残る飯盒使用の最古の写真
4合炊きの兵式飯盒でなく、3合炊きの物を使っている
1990年代半ば頃まで、様々な飯盒が売られてました


■飯盒という言葉の意味
   飯盒という言葉を辞書で調べると、大抵の場合は「底が深くてふたのある、携帯用の炊飯具。主にアルミニウム製。軍隊用に作られたが、現在、登山・キャンプ などに使用」といった事が書いてあります。大半の人の認識もその様なもので、飯盒=ご飯炊く=キャンプ、という図式で認識しています。しかし、飯盒という 言葉自体に炊具としての意味はありません。飯はともかく、盒という字はあまり聞き慣れない文字ですが、意味は「蓋つきの容器」です。飯盒以外に、香を入れる「香盒」といった言葉に使われています。つまり、飯盒とは、「ご飯を入れる蓋つきの容器」という意味です。
   飯盒の元になったのは、ヨーロッパの軍隊で使われていたMess tinですが、messはもとは古期フランス語で「食卓に(乱雑に)置かれた食べ物」、tinはブリキ製の缶、つまり「食べ物を入れる缶」という意味です。 ヨーロッパの軍隊においても、メスティンで炊事をするという発想がなかったのです。
   日本で炊爨可能な飯盒が開発されたのは、明治31年の事だそうですが、それ以前の飯盒は炊爨不可のものでした。それじゃ不便だったのか、飯も炊けた方が便利なのにと思ったのか、ともかくメスティン=飯盒で飯を炊くという発想で今様の飯盒を開発したのは、日本の発案だった様です。その後、昭和14年にロ号飯盒にモデルチェンジして、それが今の兵式飯盒となって残りました。
   この項のまとめとしては、飯盒は元々は食器であった事、それを炊爨可能にしたのは日本陸軍であった事、それでもたまにしか飯盒炊爨はやらなかったらしいのだけど、先の大戦でやたら使う機会が増えて、そのまま戦後、日本のアウトドア界に常識的ステレオタイプ的に定着した、という事です。

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日本の飯盒の装備のされ方
最近、ベルト通しの金具が省略されてるタイプがありますが
それがないと、こんな感じで背嚢に付けられません


■非常時が常時に
   飯盒は軍隊が開発したものであるから、兵隊は自分で飯盒で飯を炊いた、という認識をしていたのですが、よくよく資料を調べてみると、平時にあっては聯隊の炊事から飯上げして食器に食事を盛ってましたし、日常的な演習時には飯盒に飯とオカズを詰めて弁当とする、という具合で、普段から飯盒炊爨していた訳では 無い様です。一応は炊爨の教育や演習はやった様ですが、それは大きな演習に限られていた様です。
   では戦時においてはどうだったかというと、可能な限り大隊単位で合同炊飯を行って前線へ温熱給食し、いよいよ会戦となると各自で飯盒炊爨したようです。 そして、ドンパチ始まったら、もう飯どころでなくなったー、みたいな感じの様でした。つまり、飯盒を使って飯を作るというのは、戦時の極めて限られたシーンだけだった、という訳です。もっとも、これは記録に残る範囲の話しで、日常的には様々な活用をしていた事は想像に難くありません。
   そんな限られた用法の飯盒が、戦後日本のキャンプ用品の定番となったのは、先の大戦で兵站がメチャクチャになって、イヤでも飯盒使って銘々炊事をせねばならなかった事や、戦後の物不足で戦地から持ち帰った飯盒が炊事用具で活躍した、みたいな背景があったからではないかと思います。つまり、必要に迫られて、 止むに止まらず、使うハメになった結果、飯盒の使い勝手に慣れて、生活に、そしてアウトドアに普及していった、という様な感じです。
   自分にしてからが、最初から生活用品として飯盒を使ってましたし、しかもそれはまさに「必要に迫れて」感が強かったのです。極論すれば、蓋つきの鍋であれば、大抵のものは飯を炊けるのですが(例えば土鍋とか)、それでも敢えて飯盒だったのは、親父がキャンプで飯盒使ってた事、別に薪でなくても使える事、そうした事を覚えていて、むしろ飯盒以外の選択肢の方を知らなかったくらいだったからです。
   してみると、家庭は言うに及ばず、アウトドアでも飯盒が使われる事が少なくなった今、自分みたいに親から飯盒使う事を伝えられなかった世代にとっては、飯盒は過去の遺物、風変わりな物、非常時の物に、またイメージを変えて行ったのでしょう。

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とあるキャンプ光景
各自1個ずつ飯盒持って来てます

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飯盒は食器だ、という事ですが
明らかに炊事道具として認識してる光景
出来たご飯やオカズは、別の食器に移して食べてます


■飯盒を何で使ってるのか
   自分の中に残る飯盒の一番古い記憶は、小学校低学年の頃、家族で琵琶湖にキャンプに行った時、親父が缶入りの固形燃料と薪を使って飯盒で飯を炊いていた、 というものです。天気の時は薪で炊き、雨の時は固形燃料で炊いていました(一体何泊したのか記憶にないのですが。。)。つまり、この時、「飯盒はご飯を炊くものだ」「固形燃料でもご飯は炊けるのだ」という認識をしたのだと思います。これは画期的な記憶として自分の中に残りました。
   その後、長い間飯盒を使う機会は無かったのですが(林間学校などで使ったかもしれませんが、記憶がありません)、その次に飯盒が登場するのが、18歳で上京してからです。とにかく炊飯器も冷蔵庫もない生活で、さりとて外食では金掛かって仕方ないので、飯盒で飯を炊いてました。その飯盒は、こっちで手に入れ たのか、実家から送った荷物に入ってたのか、記憶が定かではありません。ともかく、クソ真面目に毎回4合米を入れて、小さい台所のガスコンロで飯を炊いていました。
   もちろん、炊き方などは分りませんし、ネットもない時代ですから、目見当です。飯盒の蓋を使った米の計り方も知らなかったので、計量カップを使っていたと 思います。火加減などもよく分らないので、強火で炊いて、吹き零れてガスコンロはベタベタになるわ、底が焦げて後始末が大変だわ、いくら若いからといって 4合も一気に食えないわ、飯炊いてる間は台所から離れられないわで、とにかく飯を炊くのは大変、というイメージが先行してました。なので、まかない付きの バイトに移ってからは、まったく見向きもしなくなりました。
   その後、サバイバルゲームの仲間とキャンプに行く様になり、またまた飯盒を使う機会が出来たのですが、それでも使うのはキャンプの時だけでした。もっと も、上手に炊きたい、吹き零れや焦げを作らない様に炊きたい、キャンプ用のバーナーはストーブを使いたい、といった理由で、練習かねがね自宅で飯盒を「楽しんで」使う機会が増えました。
   そしてある時テレビで、ニューギニアで遺骨収集をしている元日本兵の人が、飯盒で炊事をしながら「これは熱伝導が良くて料理に便利なんだ」と言っているの を見て、飯盒というのがアウトドア用ではなく、普段から使ってる人がいるんだ、という認識を改めて持ったのでした。
   以来、飯盒は非常に身近なものになりました。これまでに自宅では使っていたのですが、それは炊飯器がない貧乏の為とか、キャンプの予行演習とか、いわば緊急時の方便として使っていたものが、日用品として使う様になったのです。これが自分が飯盒を使っている理由と経緯です。

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実は、こういった使い方はあまりしてません
焚き火でご飯を炊くのは、相当高度な技術なんですよ

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ほとんどは、こんな感じでウチで使ってます
この飯盒の分量くらいが
ちょうど飽きる前に食べ切れて良いんですよねぇ


■飯盒を使うスキル、便利と不便
   自分が飯盒でご飯を炊く上で神経を使うのは、「吹き零れを少なくする事」「飯盒の底を焦がさない事」「炊飯器なみの出来映え」この3つです。吹き零れが多いと、ガスコンロがベタベタに汚れて後始末が大変である事。飯盒の底を焦がして炭化させると、後始末が大変なだけでなく、飯盒自体を傷つけて長持ちさせられない事。そして美味い飯が食いたいからです。
   炊飯器なら、この辺りは全部機械がいい感じにやってくれるのですが、飯盒みたいなアナログかつクラシックな道具では、自分のスキルを磨くより他ありません。実のところ、吹き零れや底の炭化は、炊く量を2合にすればおおよそ解決出来ました。むしろ、1人で4合も食えない訳でして、2合で使っても良いんだと知った時は、目からウロコが落ちる思いでした。
   不便なのは、飯盒で料理する時、取っ手が飯盒掛ける釣り手しかないので、持つ時に不便である事。もちろん、軍手は必須です。あと、底が深いので煮物には良いのですが、中身をかき混ぜねばならない炒め物は、かき混ぜるのが結構大変です。
   飯盒は食器だった、という事を述べたのですが、食器としては兵式飯盒は底が深すぎて、非常に食べにくい。特に箸でご飯を食べるのは結構手間で、かつあまり行儀良い食べ方にならない。そんな訳で、昔の兵隊さんも箸以外にスプーンやフォークも持ってたみたいですが、まぁ、こうした不便は知恵なり工夫なり辛抱なりでカバーするよりありません。
   飯盒は飯を炊く以外にも使えるのですが、その中でもインスタントラーメン煮るのに非常に利便性を感じます。普通の鍋なら麺を横に寝かせる格好になるのです が、飯盒の場合、立てた状態で入れる事になります。しかし、底が深いので麺が鍋から飛び出す事もなく、いい感じに煮れます。同様の理由で、レトルト食品を 温めるにも非常に適しています。いや、むしろ一般的な鍋でやるより飯盒の方が向いているんじゃないでしょうか。立てたまま入れるんで、出す時もレトルトの 端っこ持って出せるんで、便利です。

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炒め物も出来ますwww
ただし、かき回すのがちょっと大変ですが
飯盒半分くらいの量がベターです

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飯盒でラーメン作れるんですか!っていう人がいますけど
普通に作れますよwww
ただ、このままだと少し食べ難いですけどね〜

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蓋は把っ手がないので、料理するにはチト難しい
アウトドア用の鍋つかみは必須です
あと、油ひかないと焦げてこびり付きます
(油ひいても蓋は焦げる事があります)


■日用品としての飯盒
   自分が飯盒を日用品として使う様になった頃には、もう炊飯器も冷蔵庫もありましたし、フライパンなどの鍋釜類もそれなりにあったのですが、それでも飯盒が 潜り込む余地があったのは、その使い勝手でした。飯盒というのは、ご存知の通り、他の鍋に比べると底面積が狭くて背が高い造りになっています。いわゆる寸胴の小さい版だと思えばよろしい。これは汁物を作るのに適していたのです。
   また、兵式飯盒の形は、冷蔵庫にしまう時にあまり場所を取らない、という利点もあります。一般家庭の鍋だと、横に広い形をしているので、冷蔵庫では場所を取ってしまう事が多いのです。その点では、飯盒はスペースを有効活用出来ます。自分は一人暮らしなので、冷蔵庫もそれほど大きいものではないのですが、それだけに省スペースが出来る飯盒は重宝でした。
   また、飯盒はそのまま火に掛けれます。まぁ、もとより炊爨可能なのですから当たり前なのですが、作り置いたオカズを入れて冷蔵庫で保存して、そのままガスコンロに置いて温めれるのは、これは結構便利です。自分はオカズを一気に大量に作って、それを連食するのですが、大抵の場合は大きなフライパンで料理して、そのあと飯盒に移し替えて保存します。つまり、フードコンテナとして活用する事が多いのです。
   こうしてみると、自分は飯盒をご飯炊いたり料理したりといった用途よりも、保存容器として活用する方が多いです。まぁ、普段は炊飯器もありますし、どう あっても飯盒でなければご飯炊けないって訳でもないからです。しかし、飯盒にオカズ入れてる時でも飯盒でご飯炊きたくなる時もあるので、一時期、飯盒2個運用していた事もありました。
   飯盒というと、今の人はキャンプ用品という認識な訳ですが、こんな具合で日用品としても使えますし、他のアウトドア用品、特にソロキャンプ用の用品に比べたら、日用品としての利用価値は大いにあります。もし、キャンプ用に飯盒をお持ちでしたら、押し入れにしまいっぱなしにしないで、是非普段から使ってみて欲しいものです。

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ご覧の通り、冷蔵庫の中でとても納まりが良いです
普通の鍋1つのスペースで、飯盒が2個置けます

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ウチの家ではありふれた光景です
この飯盒、かれこれ10年使っているんですよねぇ



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