メトトレキサート(MTX)はRAの診療において多くのリウマチ医がまず始めに使用する薬剤とされ(ACR2002ガイドライン)、アンカードラッグとされています。
しかし、実際にどのように使用するかについてのガイドラインはほとんど出ていませんでした。最近2つのMTXの使用方法の推奨が出ており、ともにほぼ同じ内容です。
ひとつはフランスのリウマチ学会から、文献的レビューと専門家の意見から出した8つの推奨(Joint Bone Spine 2006;73:388-395)であり、もうひとつは17カ国751人のリウマチ医の集まりから、文献的レビューと専門家の意見から出した推奨(Ann Rheum Dis 2009;68:1086-109)です。
その内容は、日本でのMTX使用法と大きくかけ離れています。あらためて日本人はMTXに対して特殊な人種であり今までの使用方法が妥当なのか、それとも以下のような推奨に準じて治療を行うべきか、早急に検証する必要がありそうです。もし日本人も以下で推奨されている使用方法が妥当であるならば、MTXが保険適応になってから約10年、RA患者さんにもたらした不利益は多大なものになるわけで、リウマチ医は真剣に考える必要があると思います。

『関節リウマチに対するMTXの使い方、8つの推奨』
(Joint Bone Spine 2006;73:388-395)

(1) MTX投与開始量は、10mg/W未満であるべきではない。疾患活動性と患者背景を考慮して決定すべきである。

MTXの治療効果は容量依存性であることが報告されている。一番初めに行われたMTXとプラセボを用いた試験では、7.5mg/Wという開始容量では不十分であり、6W後には66-97%で増量が必要であった【1】【2】。10mg/m2/W(12.5-20mg/W)の開始量は、5mg/m2/W(5-7.5mg/W)よりも効果的であり、その安全性に違いは認められなかった【3】。以上より、MTXの開始容量は最低でも10mg/Wを推奨する。
患者さんの体重や合併症によって投与量は調整すべきである。普通、中程度~高度の腎障害を認める場合、10mg/W以下の投与が必要である。二つのPharmacokinetic studyからMTXのクリアランスはクレアチニンクリアランスと相関する。クレアチニンクリアランスが45ml/min以下では、血中のMTX濃度は30-60%高くなる。Meta-analysisから、中等度(<60ml/min)の腎障害がある場合、MTXによる副作用(主に肺、肝臓)が増加することがわかっている。薬剤性肝障害の既往など他の合併症でも10mg/W以下にする必要があるかもしれない。
何人かの専門家からは、体重によって開始容量を調整する必要があると強調された。ただしそれを裏付ける研究はなかった。

(2) MTXが効果不十分であった場合、副作用などを考慮しながら、6W間隔で20mg/Wまで増量すべきである。

ひとつのRCTから、15mg/W以上の投与にてさらなるMTXの効果が認められることがわかっている。MTX15-20mg/Wで効果不十分であった54名を、15mg/W(筋注)と最大45mg/W(DAS28を見ながら4Wごとに増量、筋注)で比較した。2群間で差は認めなかった【7】。ひとつのプラセボを対象としたRCTでは、MTXの投与量を、5、10、20mg/m2とした。最大25-35mg/Wの投与量となったが、その3人に1人が副作用にてMTXが中止され、この群は途中で中止された【3】。
経口投与は、筋注投与に比べ、MTXのbioavailabilityは0.64-0.85になる。この事実より、推奨は、最大20mg/Wまでの増量とした。
過去の推奨と同様に、過体重の場合、20mg/W以上の投与もありうる。また6週間後との増量を推奨する。

(3) まずは、MTXは経口にて投与すべきである。

コンプライアンス不良であったり、効果不十分であったり、消化器症状が認められる場合、筋注または皮下投与も考慮されるべきである。

(4) 抗TNF阻害薬を併用中に、MTX投与量の変更が有効かどうかを示すエビデンスは現時点では存在しない。

TNF阻害薬併用中のMTXの有効性及び安全性に関して、インフリキシマブでは7.5-16mg/W、エタネルセプトでは14.5-18.5mg/W、アダリムマブでは17-20mg/Wの投与にて報告されている。ひとつのuncontrolled studyでは、3mg/kgのインフリキシマブの投与でも効果不十分であった22名のRAに対して、MTXを平均9.9mg/Wから15mg/Wまで増量して16W以内に36.4%で効果を認めたという報告がある。

(5) MTX開始前には、血液検査、血清トランスアミナーゼ、血清Cr、胸部レントゲン検査を行う。

くわえて、B/C型肝炎に対する血清学検査、血清アルブミン値も勧められる。呼吸器疾患や呼吸器症状がある場合、DLco含む肺機能検査も勧められる。

(6) MTX投与中は血清トランスアミナーゼ、血清クレアチニン値、血液検査をモニタニングする

モニタニングははじめの3ヶ月は少なくとも月に一回は、その後は4-12週おきにすべきである。

(7) 葉酸補給を日常的に行ってもよい。

最低葉酸5mgを週に1回、MTXの投与からあけて行うのが適切である。
Folic acidかfolinic acidか、その量、投与スケジュールについて、MTXに対する、効果、安全性について不明である。したがって、シンプルな投与方法を推奨した。

(8) MTXによると考えられる呼吸器症状が出現した場合、投薬を中止し、重症度を評価しなくてはいけない

重症な場合、すぐに入院させるか、呼吸器専門医の助言を得る。


『リウマチ性疾患(関節リウマチ)に対するエビデンスに基づくMTX使用法の推奨』
(Ann Rheum Dis 2009;68:1086-109)

1. MTX開始前には、MTX副作用の危険因子の臨床的評価(アルコール摂取量を含む)、患者教育、AST/ALT、血液検査、アルブミン、クレアチニン、胸部レントゲン検査を行うべきである。HIV、HBV/HCV、空腹時血糖、脂質検査、妊娠反応も考慮する。

2. 経口MTXは10-15mg/Wで開始すべきである。その後臨床効果や副作用をみながら、最高20-30mg/Wまで、2-4Wごとに5mg/Wずつ増量する。十分な効果が得られない場合や、忍容性が悪い場合には非経口投与を考慮すべきである。

異なる容量の経口MTX間を直接比較した3つのRCTの結果から、MTXは容量依存性に、効果及び副作用が認められることが示されている【3】、【5】、【6】。25mg/Wからの開始は15mg/Wからの開始に比較して効果的であったが、消化器毒性がより認められた。12.5-20mg/Wからの開始は5-10mg/Wからの開始に比較して、より効果的であり、副作用の増加を認めなかった。速やかに5mg/月のペースで25-30mg/Wまで増量することは5mg/3ヶ月のペースで増量するのに比較して、効果的であったが、副作用の増加も認められた。

3. 最低でも5mg/Wの葉酸投与が強く勧められる

4. MTX開始、または増量後は、1-1.5ヶ月ごとにAST/ALT、クレアチニン、血液検査を行うべきである。その後は1-3ヶ月ごとに副作用と危険因子に対する臨床評価を診察時に行うべきである

5. AST/ALTが基準値上限の3倍以上に上昇したらMTXは中止すべきである。正常化したら低容量に調整して開始したほうがよいだろう。AST/ALTの異常値が3倍は超えないが持続するようであれば投与量を調整すべきである。MTX中止後も3倍以上の異常が持続するなら診断的検査を考慮すべきである。

6. 安全性の面から、MTXは長期使用に適している。

7. DMARDS未使用な場合、DMARDS併用療法よりもMTX単剤治療のほうがその有効性/安全性のバランスが優れている。MTX単剤で十分な治療効果が得られなかった場合、併用療法のアンカードラッグとして考慮すべきである。

8. MTXはステロイドを減量する目的で(as a steroid-sparing agent)、巨細胞動脈炎、リウマチ性多発筋痛症に投与が勧められる。SLEや皮膚筋炎の場合でも考慮しうる。

9. 待機的な整形外科手術を行う場合、周術期においても、安全に継続できるだろう。

10. 妊娠を予定している男性および女性は、最低3ヶ月使用すべきではない。妊娠中、授乳中も使用すべきではない。



【1】(Arthritis Rheumatism 1985;28:721-30)
P:活動性(腫脹関節6箇所以上など)のある関節リウマチの189名に対して
E:MTX投与群(7.5mg/Wで開始、6W後に主治医判断にて効果なしと判断したときは倍量に増量した、67%が増量した)は
C:プラセボ投与群に比較して
O:18週間後の効果はどうだろうか?
内的妥当性:割り付け方法は明記されていない、割り付けは隠蔽されているかは不明、ブラインド化はたもたれているか不明、ITT解析ではない、追跡率は189/189?
結果:        MTX群           プラセボ群
腫脹関節数      24→17            24→25
圧痛関節数      30→19            32→29
PtVAS(1-5)     3.1→2.3           3.2→2.9

【2】(N Engl J Med 1985;312:818-22)
P:活動性(腫脹関節3箇所以上など)のある関節リウマチの35名に対して
E:MTX→プラセボ投与群(7.5mg/Wで開始、6W後に主治医判断にて効果不十分と判断したときは倍量に増量した。12週目以降はプラセボを内服した。)は
C:プラセボ→MTX投与群(12週目以降はMTXを内服した)に比較して
O:24週間後の効果はどうだろうか?
内的妥当性:割り付け方法は明記されていない、割り付けは隠蔽されているかは不明、ブラインド化はたもたれているか不明、ITT解析ではない、追跡率は35/35?
結果:        MTX群(12W)       プラセボ群(12W)
腫脹関節数      34→20            28→23
圧痛関節数      37→11            36→32
PtVAS(1-5)     2.8→1.2           2.7→2.6

【3】(J Rheumatol 1989;16:313-320)
P:活動性(6箇所以上の圧痛関節、3箇所以上の腫脹関節など)のRAの52名に対してMTX(10mg/m2経口+10mg/m2IV)を投与、その12日後に、
E:MTX投与群(5mg/m2(13)、10mg/m2(17)、20mg/m2(6;副作用のみチェック))は
C:プラセボ投与群(16)と比較して
O:18W後のその効果はどうだろうか?
内的妥当性:割り付け方法は明記されていない、割り付けは隠蔽されているかは不明、ブラインド化はたもたれているか不明、ITT解析である、追跡率は52/52
結果:     MTX群(5mg/m2)  MTX群(10mg/m2)  プラセボ群
腫脹関節数     37→27→23      30→23→18    37→28→27
圧痛関節数     62→40→44      62→46→34    74→60→70 
PtVAS(0-100)  65→46→47      60→46→36    69→15→69
(0→12D→18W)
胃炎(%)     31%          41%         13%
吐き気(%)    8%           24%         13%

【4】(Br J Rheumatol 1993;32:751-3)
P:活動性(6箇所以上の圧痛関節、3箇所以上の腫脹関節など)のRA(平均54歳)の10名に対して
E/C:MTXを5mg、10mg、15mg、20mg/Wをランダムに8週ごとに変更しながら投与したときに
O:その効果はどうだろうか?
内的妥当性:割り付け方法は明記されていない、割り付けは隠蔽されているかは不明、ブラインド化はたもたれているか不明、ITT解析である、追跡率は10/10
結果:Ritchie's joint index、ESR、朝のこわばり、pain、CRPのすべてにおいて、MTX5mg/Wから容量依存性に効果が認められた。

【5】(Rheumatol Int 1994;14:33-38)
P:活動性(4箇所以上の圧痛関節、4箇所以上の腫脹関節など)のRAの185名に対して
E:MTX15mg/W開始群(始めはIVで投与、3-4週後には経口で投与、3ヶ月たっても効果不十分であれば、→20→25mg/Wと増量。その後効果十分であれば3ヶ月ごとに減量、12ヵ月後平均投与量16.8mg/W)は
C:MTX25mg/W開始群(12ヵ月後平均投与量19.7mg/W)と比較して
O:12ヵ月後のその効果はどうだろうか?
内的妥当性:割り付け方法は明記されていない、割り付けは隠蔽されているかは不明、ブラインド化はたもたれているか不明、ITT解析でない、追跡率は168/185
結果:            15mg/W開始群       25mg/W開始群
離脱率(合計/副作用/効果不十分;%)
                26/16/3            27/18/5
減量率(副作用/効果十分)    10/10             9/35
肝障害              38               44
消化器症状            17               28

【6】(Ann Rheum Dis 2007;66:1443-1449)CAMERA
P:早期RA(<1年)の299名に対して
E:集中治療群(4週おきに診察、コンピュータの判断で治療変更(50%以上の改善が見られなければ効果不十分など)、最短で30mg/Wとなったのは18W)
C:通常治療群(3ヶ月ごとに診察、リウマチ医の判断で治療変更(腫脹関節6個以上なら効果不十分など)、最短で30mg/Wとなったのは52W)と比較して
共通の治療指針(MTX7.5/Wで開始、効果不十分であれば5mg/Wずつ30mg/Wまで増量、それでも不十分または忍容不能であれば皮下注として、さらに不十分ならシクロスポリン(2.5mg/kg/D→4mg/kg/Dまで徐々に増量)を追加、MTX15mg/Wに減量した)
O:2年間の観察期間中で3ヶ月以上の寛解を維持できたのは?
内的妥当性:割り付け方法は明記されていない、割り付けは隠蔽されているかは不明、ブラインド化はされていない、ITT解析である、追跡率は299/299?
結果:        集中治療群      通常治療群
寛解到達率      50%          37%
骨破壊(median/mean) 0/1.9 0/2.1
MTX平均投与量     16.1mg/W       14.0mg/W

【7】(Arthritis Rheumatism 2004;50:364-371)
P:経口MTX15-20mg/Wを最低2ヶ月以上投与中にもかかわらず活動性(DAS28>3.2)のRA患者(DAS28=5.6)64名に対して、MTX筋注15mg/Wを6週間投与に切り替えた。それでもまだDAS28>3.2であった54名(DAS28=5.18)に対して
E:DAS28>2.5なら毎月45mg/Wまで増量する群は
C:15mg/W筋注を継続する群(Placoboを増量)に比較して
O:22W後のDAS28<3.2を満たす割合はどうだろうか?
内的妥当性:割り付け方法は明記されている、割り付けは隠蔽されているかは不明、ブラインド化はたもたれている?、ITT解析である、追跡率は54/54?
結果:        増量群(27名)      結果群(27名)
DAS28<3.2      1(3.7)          1(3.7)
DAS28>1.2の改善   5(18.5)         5(18.5)
ACR20改善      1             1
EULAR response
Good          0             0
Moderate        7(26)          8(30)
None          20(74)         19(70)
離脱(副作用)     4(1;肝障害)      5(1;肺感染症)