食玩日記とレビ-認知症なアーちゃんと生きる日々 : 2011年04月

2011年04月

2011年04月23日15:33

カテゴリ: アーちゃんの介護日記

『アーちゃんに会社帰りに会いに行く』

４月１６日　土曜日

土曜日会社帰りに　バスを途中下車して
調子の悪いアーちゃんを訪ねた

ここでは入所の全員を午後８時に就寝させる　
次のオムツ交換は午後１１時だそうだ
『眠たくない』　といって不安そうに
パジャマ姿で鞄を持ち　今にも外出しそうな
品の良いおばあちゃんがいる

ヘルパー君たちが　徘徊にならないように
うまく自室へ誘導する・・・でもまたすぐ出てくる
コレの繰り返しが何回も続く　その人がtantanに言った

『私　何処にいるの？　解らなくて怖いのよ　どうしたらいいの私？』

認知症になると　何度説明してもすぐに忘れるから
自分が何処に居るのか・なぜここにいるのかさえもわからなくなる
存在理由のない気持ちの悪さ・・・これってすごい恐怖だと思う

どうしてあげればいいのか　わからない
どうすれば　気持ちが落ち着き
精神状態に折り合いがつくのか・・・わからない

これがもし自分だったら・・・と思うとやりきれない
自分ではどうにも処理できない焦燥感や虚無感に
押し寄せてくる不安は　パニック障害なtantanには良く理解できる

パジャマ姿の品の良いおばあちゃんは　長い時間
ヘルパーさんと２人で施設のアチコチを訪ね歩いた

アーちゃんは・・・というとやはり
『にいさんがおりました　にいさんが来ました』
と御伽噺のように繰り返していた　状態はあまり変わっていない

tantanの顔を見ても　興味がないようにあまり喜ばなくなったが
しばらく一緒に居ると落ち着いて　会話が出来るようになってくる

『こんな時は早く寝よう　アーちゃん　寝るのが一番よ』

思わず口から出る言葉だけれど　過去に何度同じ事を言っただろうか？
夕刻からアーちゃんの状態は悪くなることが多く　そんな時は
早く寝かせてやるに限った

自室のベッドへ連れていくと　アーちゃんが引きちぎった紙オムツの残骸が
防水パッドの上に散らばっていた

調子のよくない時　アーちゃんは無意識のうちに
紙オムツを引きちぎってボロボロにしてしまう

ここでは拘束服は使用しないし　オムツも結構薄手を使用しているが
今の精神状態では少し無理があるかな・・・と感じたので
次の水曜日には　家で使用していたオムツカバーを持って来ようと思った

2011年04月17日18:17

カテゴリ: アーちゃんの介護日記

『アーちゃんと最低の花見』

４月１３日　水曜日

このところ調子が良くないアーちゃんを
今日は花見に連れて行こうと思い
日差しが暖かな午後から訪ねて行った

昼食を終えて　いつものソファに座っていたアーちゃんは
同じように　淡々と物語を語っているように見えた

『にいさんが来て　にいさんが来て・・・笑って笑って』
今日は泣いている兄さんではなさそうなのが救い

『なんで兄さん笑っているの』と聞くと
『切符を買ったけれど　可笑しくて可笑しくて』
『切符？』　『そう切符を兄さんが買ってきたのです　それで笑って　笑って』
まるで脈絡の無い言葉の連続　

何の切符？と訪ねると　『野球の切符です　そして可笑しくて笑ったのです』
と言いながら　さもおかしそうに顔をクシャクシャにして　アーちゃんは甲高く笑った

リビングのテレビでは　野球が放映されていた
コレを見て　野球の切符に結びついたのだろうが
なぜこんなふうに落ち着きがなくなったのだろう

実は　主人の母が訪ねて来てくれたその夜　施設の男子ヘルパー君から
アーちゃんが車椅子からすべり落ちたという電話があった
体調に変化はなさそうなので　このまま様子を見ます・・
と言う事で　tantanは翌朝　出社を遅らせて施設をのぞいた

アーちゃんは別段かわりなく過ごしていたので　そのまま日が過ぎているが
以前　家にいた頃ショートステイ先で転倒して頭を打った時と同じような
精神状態だと感じた　車椅子から落ちた時　頭を打ったのかなぁ？

身内のtantanに　敬語で話するようになった時が危ない

その旨を施設側に話すと　『１週間に一度の医師検診にも異常がないので
このまま少し様子をみましょう　施設を変わった事が不安なのかもしれないし』
との事だった　ホントに大丈夫かなぁ？

外出もＯＫという事で　予定通り桜を見に連れて出たが
道の起伏が大きいのとアーちゃんのこの精神状態では
目的地である明石公園までは　とてもではないが無理だと判断して
近くの児童公園に連れて行った

でもアーちゃんは　桜などほとんど上の空で
『兄さんがきました　それで入りました　兄さんが来ました　笑いました』
と　まるで童話の本を読んでいるように喋り続けた

『桜が綺麗だね』　と言うと　見るものが　すべて兄さんという
こだわりに結びついてしまい　『兄さんが桜の花が綺麗だと言いました』
と鸚鵡返しのように答える
　
『公園の傍の家人たちはいいね　居ながらにして花見できるヨ』　と言うと
『あそこに兄さんと住んでいました　兄さんが入ってきました　そして・・・』
と言うと大袈裟な表情を作り　『≪なんでや！≫と兄さんが言い　怒って怒って」
と一人芝居のように喋る事をやめない
そしてそれは永遠に続きそうだったので　早々に引き上げてきた

オヤツを食べる頃には少し落ち着いて　居眠りしていたけれど
アーちゃん　ホント　大丈夫かな？　tantanと一緒にいる事は
わかっているみたいだけれど　気持ちは　にいさんオンリーである

明日の木曜日　会社の帰りにでも　もう一度様子を見に来よう

2011年04月12日11:50

カテゴリ: アーちゃんの介護日記

『アーちゃんと２３　２３　２３　２３』

４月６日　水曜日

今日は特養に入所して初めての支払日である
事務処理して2階に上がると
お昼ご飯が終わったアーちゃんはうつろな目で
『２・３　２・３　２・３　２・３・・・』
と呪文のように繰り返していた

２３　２３と繰り返しながら　回らない口で何やら言いながら
しきりに頷いているが　tantanには何をいいたいのか
よく分からず不思議に思うばかり

そして　又　２３　２３　２３・・・と
アーちゃんは淡々と繰り返すのである

どうなったん？アーちゃん？　傍の若い男子ヘルパー君が言った
『夜中に目が醒めた時などに　何かを喋り続けている事が時々あります』

そう言われて　ふと家に居た頃のアーちゃんを思い出す
幻覚を見て　誰かと喋っているかのように虚ろな表情で
アーちゃんは喋り続けていた　その言葉のほとんどが妄想

辛かったあの頃・・・でもそれを覚えているのはtantanだけで
肝心のアーちゃんは　苦しくも辛くも　何とも無かったように覚えていない

車椅子からソファに移動させてやると　アーちゃんは幾分落ち着いた
勿論　tantanの事もチャンとわかってくれているが
『２３２３２３２３・・・２３』と言うのをやめない

ソファの横に座って　アーちゃんの手を握る
そして聞いた　『何よ　その２・３って？』
アーちゃんは続けて言った
『ないてないてないて・・なぁ』

そこでわかったワ！　アーちゃん何が言いたかったのか
２３と言う数ではなくて　アーちゃんは
【兄さん兄さん兄さん】　と言っていたのだ
イントネーションが淡々としていたので
【兄さん】と言っているのがわからなかった

昨夏　亡くなったアーちゃんの実兄が
傍にいてしきりに泣いている幻覚を見たようだ

最近忘れていたが　家に居た頃　何回聞いただろうか
泣いているアーちゃんの兄さんの話を

妄想世界から引き戻すように言った
『今日のオヤツは何かな？キッチンへ見に行こうヨ』
その言葉だけでアーちゃんは今の今まで浸っていた
妄想界から現実界へ戻ってくる　そこでtantanは言う

『アーちゃん　田舎の兄さんはもう居ないよ』
『そらそうや　死んだってアンタ言っていたやない？』
すっかりもとに返ったアーちゃん

桜を見に行こうと思って予定していたが今日はやめた
来週　暖かければ明石川あたりまで車椅子を押して行ってみよう

2011年04月02日15:14

カテゴリ: アーちゃんの介護日記

『アーちゃん　支離滅裂　①』

３月３０日　水曜日

アーちゃんを訪ねるバスの中で携帯電話が鳴った
tantanの叔母からの電話で　今お墓参りに行く途中で
帰りに　アーちゃんの施設へ寄りたいと言う連絡だった

良い機会だからと思って　春休み中のtantanの息子を呼び出した
アーちゃんは孫の【マー君】と　息子の【ヨッサン】を混同している
今日もまた　そう思っているのである

もう何年も会っていないtantanの従兄弟が運転する車に乗って
叔母は午後も遅くやって来たが　アーちゃんは来訪の喜びで興奮して
支離滅裂な事ばかりいうものだから　叔母はそんなに長くはいなかった

アーちゃんは叔母の顔を見て随分喜んだ　そしていきなり失礼な事を言った
『アンタ　肥えたなぁ・・・』『えっ？変わらないわよ　ワタシ』
『肥えた！このへんがパンパンになってるやん！』　

と指先で頬骨をツンツンした　いささかムッとする叔母　話題を変えるように

『お姉さん　いくつになった？』　『５２歳ヤン！』

違うやろ～　と訂正すると　『そう？　６２歳やったかな』
叔母は　『１分で１０歳年取ったね』　なんて冗談を言っているが
アーちゃんは　『ホンマ　誰でも年取るの早い』　とマジで答える　

次にアーちゃんは　tantanの従兄弟（アーちゃんの甥）を見て言う　
『大きくなったヤン！』　と言いながら
シゲシゲ見つめていたかと思うと突然言った
『しかしアンタ！父親に全然似てないな』　

従兄弟は亡くなった叔父とそっくりである
誰かと勘違いしているのかしらん？と思っていると
アーちゃんは続けて　まるで反対の事を言った

『アンタ　父さんにそっくりや　鼻から上が瓜二つや！昔から』
かと思うとまたまた　『全然似てへんなぁ　アンタ』とか言って

もう　支離滅裂

叔母はそれを無視して　久しぶりに会ったtantanの息子に
『大きくなったねェ　立派な好男子になったね』　と話題を振った

それを聞いていたアーちゃんは咄嗟に
『何言うてるの！この子は何もしない子や！アカンのヨ！』

オイオイ！アーちゃん　それはないやろ！　と言いかけたtantanを
振り払うように　息子を指差して今度は真逆を言った

『この子はホンマええ子やで　嫁さんがさっきそこにいたやろ？』
全員が無言で　目が点・・・・・

『アーちゃん　あのね　マー君は大学生　まだ嫁さんはいないヨ』
と言うと　アーちゃんはとうとう怒り出して声を荒げる

『いたヤン！　アンタ何いうとんの！　今まで横で立っていたやろ！』
そして　【アホちぅか！】と言わんばかりにtantanを睨んだ

『この子はねぇ～！嫁さんと伊丹にいるんよ！』

アーちゃんは孫と息子を取り違えているのだろうが
弟君は伊丹にはいない　群馬である

そしてアーちゃんの　てんやわんやな暴走が止らなくなり
その後　何を言っているのか　よくわからない事を　
ひとりで　ドンドン喋り続けた

なんでこうなるの？？
叔母が来るまで普通やったのに
穏やかに　午後のひと時を楽しんでいたのに

帰り際　叔母が言った
『あ～なると　ほんと楽よね　私もそうなりたいわ』

恍惚の人・・・たしか小説に　そんなのあったよなぁ

食玩日記とレビ-認知症なアーちゃんと生きる日々

2011年04月

『アーちゃんに会社帰りに会いに行く』

『アーちゃんと最低の花見』

『アーちゃんと２３ ２３ ２３ ２３』

『アーちゃん 支離滅裂 ①』

tantan

『アーちゃんと２３　２３　２３　２３』

『アーちゃん　支離滅裂　①』