獣の奏者 I 闘蛇編獣の奏者 II 王獣編
エリンという闘蛇衆と霧の民との間に生まれた娘が、両親と死に別れやがて王獣と心を通わせる。
面白かったです。なんとなく日本製のファンタジーはここまできたんだなぁって思いました。創る側も、受け入れる側も。頭が柔軟になってきたんでしょうかね。

以下、もしかしたらネタバレ危険かもしれません。

狭い視野で物事を考えていたエリンが、多くの人との出会いで事の本質に触れていくのが面白かった。規則というのは成り立つためにはなにかしら理由があるんだと思う。
また戒律や法律は、多くの場合、人々に信じられて初めて役に立つ。
この物語は、その戒律に対する信頼性が揺らいできた時代の話。
真王領と大公領。その二つを背負っていくセィミヤとシュナンの二人には好感が持てた。彼らは自分の利益を第一とは考えない。その姿勢が潔くて好き。

逆に現在の体制をひっくり返してしまおうと考える人物もいる。
彼らについては特に悪意を持てない。彼らなりに国のことを考えて行ったことだろうから。ただ、彼らの考えの中には「人民」という意識が抜けていた。でもそれは為政者としてとても大切なことなのだと思う。

そんでもってエリンに大きな影響を与えることになるイアル。
作中で一番好きな人だった。幸せになって欲しいなぁと思う。

この物語の大きな魅力のひとつである王獣。
読んでいて、きっと鷲のような姿をしているのだろうと考えたのだが、イメージするのはなぜかファイナルファンタジーのチョコボ。
あのチョコボがじゃれて日向ぼっこして飛んで餌を食べて…。
リランを抱きしめたくなるエリンの気持ちが分かるなぁと、訳の分からん妄想で悶えてた。もしも王獣がチョコボのような外見だったなら、きっともっともっと作中でも可愛がられているだろうと本気で思ってしまったたぬきだった。