2018年07月21日

スミザーズ着






プリンスジョージから西へ500km、スミザーズという街に着いた。
この区間、街の規模は少しずつ小さくなっていって、またその距離も離れていった。
僕の生活は少しずつ変わっていった。街ではなくて、なるべく小さな湖を狙って泊まるようになった。大体そういうところは無料で、しかも魚が釣れる。Wi-Fiはもちろん電源も飲料水も手に入らないけど、もっと静かで自由な場所を求めるようになった。
この辺りはまだ盆地で、日中は30℃近くまで気温が上がる。湖に着くとすぐに暑さと疲労でのぼせ上がった体をクールダウン。泳げないから浅瀬でじゃぶじゃぶやって遊ぶ。日が落ちる十時くらいまで竿を降ってからテントに入る。
これがここ最近の生活だった。



スイスから来たジョエルという青年と知り合った。
彼はアラスカからラスベガスを目指して走っていた。逆方向へ向かっていたけど、自分が湖にキャンプすると言ったら彼も付いてきて一緒に泊まった。
160kmも走ってきた彼の夜ご飯は、簡素なヌードルとトルティーヤのみ。それじゃいかんと思って余分に晩飯を作って食わせてやった。
翌朝、前日の夜遅くに釣り上げたレインボートラウトをホイル焼きにして二人で食べた。彼は自分よりも早く出発していった。



ジョエルと出会った同じ場所で、ミネソタ州はミネアポリスからやってきたネイトと出会った。
釣竿と麦わら帽子を積んでいるから只者ではないと思って話しかけてみると、やはりちょっとした変わり者だった。
アラスカを目指す彼とはその日40km程一緒に走って、自分は湖へ、彼はその先のレストエリアにステイすると言って別れた。
ところが縁があって、その二日後に再び会って、更に二日後にここスミザーズで落ち合う約束をした。




僕がこの街のティムホートン(喫茶店)に着くと、待ち伏せしていたかのようにネイトが現れ、そして「この街に最高のキャンププレイスを見つけたぜ。静かで広くて、人が誰もいなくて、フィッシングにも最高だ!」と言った。
僕たちは彼の見つけた秘密基地へ移動して、焚き火をしながらビールを浴びるように飲んだ。ビーフとポークを1.5kgも買ってきて、焚き火と鉄板を使って贅沢に焼きまくった。
それは最高の夜だった。暗くなるまでビールと肉を食べて、暗くなったら火を眺めながらギターを弾いて歌を歌った。



翌日は天気が崩れるということで休息日だ、と言いつつ、僕たちの少し後ろを走ってきているコロラドボーイズという二人組と合流することになっていた。
僕は朝から彼らの為にトラウトを釣り、ネイトは彼らの為にビールを15缶もパックで買ってきた。ところが、コロラドボーイズはウォームシャワー(自転車旅行者の為に泊まる場所を提供するアプリ。登録しているホストとゲストがここでコンタクトを取って、親切な人が家に泊めてくれるという)を使ってこの先30kmの所に泊まるつもりだと言った。
あてを無くした我々はまた、狂ったように肉を焼き、そしてビールを飲み続けた。



今日こそは本当の休息日だ。
二人とも遊び過ぎ、飲み過ぎ食べ過ぎで逆に疲れていた。
雨の降り続く中眠り続け、遅い朝飯を食べたら昼寝して、昼飯を食べたら夜飯の買い出しに出た。
雨は止んだ。ネイトは今頃基地で焚き火を起こしていると思う。僕はチキンを1kg買った。今夜一緒に過ごした後は、再びそれぞれのペースで走り出すだろう。一ヶ月でアンカレッジまで行くという彼のスピードには、たぶん僕は付いていけない。



ここから100kmも西へ進むと、いよいよカシアーハイウェイに入る。ようやく進路を北に向けるのだ。
アップダウンの激しい山間部で、およそ1000km先まで街がない。たぶん200kmにひとつくらい店がある。その間無料でWi-Fiに接続できるのは、僅か二ヶ所だけだと聞いた。
食料はなんとかなるにしても、水分はすぐに無くなるだろう。僕は昨日街でウォーターフィルターを購入した。これで川や湖から飲料水を確保できる。というか、これがないとリアルに死ぬんじゃないかと思う。




誰もが言う。カシアーハイウェイには熊が沢山いるよ、気をつけてねと。
しばらく更新や連絡ができない可能性があるけど、死んだわけじゃないと思うのでご安心ください。
この難所を抜ける為にここまで準備と経験を積んできたのだと、今は思う。







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2018年07月13日

プリンスジョージ着






カナダに来てからから一ヶ月半、ようやくプリンスジョージという大きな街に着いた。
バンクーバーから最短距離でここまで来ると800kmらしい。早い人なら一週間か二週間で来れてしまうという事実に気付いて驚愕した。
だというのに、僕のサイクルコンピュータの走行距離は昨日で2000kmを越えた。一体どれだけ遠回りしてんだ。そして、ちんたらやっているんだ。




マクブライドの街でポテトチップスとチョコレートを食べまくって完全回復した後、La Salle Lake という小さな湖に着いた。
レクレーションサイトと言われるフリーのキャンプ場、というか公園にテントを張って湖でスプーンを投げた。僅か二投目で魚がチェイスしてくるのが見えて、釣れると確信した。
その後カナダで初めて釣り上げた魚は、30cmくらいの美しいレインボートラウト(ニジマス)だった。




この場所で、この先も大事にしたいと思えるような出会いがあった。
ライアンとヨークはどう見てもヒッピーみたいな風貌で、肩までかかった長髪に、顔はもじゃもじゃのヒゲに覆われている。ライアンのダディは欧米人にしては小柄で、真っ白な髪に彼もまた白いヒゲを蓄えている。
不思議な三人組だった。いろいろ説明すると長くなるから割愛するけど、とにかく自由で、そして不完全で、それ故に強い絆で結ばれているようなパーティーだった。
僕はすぐにこの場所とこの人達が好きになって、例によって連泊を決めたのだ。




次の日は移動日和の好天で、故に水温が上がって魚は渋かったけど、オタマジャクシ達と共に泳いだり、フローティングフィッシングというのを考案してやってみたり、ビール飲んだり、木陰で本を読んだりして過ごした。
夜は釣った魚を焼いて食べる。僕がカナダという国に求めていたものは、紛れもなくこんな一日だった。




フランスから自転車で来ている老夫婦とすれ違った。
アラスカから旅を初めて南米へ向かっていた。オーストラリア、ニュージーランドを経て日本でフィニッシュするという。北海道でチーズの作り方を学ぶんだと言っていた。
本当に信じられないような人々がいる。過酷な旅をすることに、年齢も性別も関係ない。ただそこに喜びを見出だそうとする人達だけが旅をする。そして、実際に会う人達は皆、驚くぐらいに生き生きしていて楽しそうなのだ。




ここプリンスジョージの街で手に入れたいものがいくつかあったから、休憩がてら二泊している。
再びポテトチップスとチョコレートとフルーツと酒を過剰摂取して、多分明日には出発できると思う。
買う気はなかったのだけど、何故かここでクーラーボックスを購入した。どうやって積載するのかは、明日の朝いろいろ試行錯誤するつもりだ。
僕の自転車はいよいよ気が狂ったみたいになってきたけど、たぶん僕はまだ狂っていない。もう一ヶ月くらいすると、いい感じに発狂するかもしれない。







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2018年07月07日

マクブライド着






ここにひとつ「DUTCH CRUNCH」と書かれた袋がある。
袋の中身は何を隠そう、ただのポテトチップスである。



カナダに来てからいろいろな食べ物を食べてきたけど、これが一番美味いということだけはわかった。
いろいろなポテチがある。よく見るのはドリトスとかプリングルスとか、日本でもお馴染みのポテチ。チージーズというスコーンみたいなやつ。これはコンパクトで腹持ちがいいから補給食として重宝する。そしてオールドダッチ、、、
オールドダッチフーズというのは日本でいうところのカルビーみたいな大手食品メーカーで、その社名と同じ商品がポテチになっている。これがシンプルでとても美味い。
その中でもこのダッチクランチというやつはちょっと高い。二袋セット購入で$6だと、、、?しかし、やはり美味いものは美味い。買ってしまう。
僕は日本でカルビーの「堅あげポテト」を愛していた。季節限定でいろんな味が出てくるから、ついつい買ってしまう。ビールによく合う。そして僕が見つけたカナダ版の堅あげポテト、それこそがこのダッチクランチなのである。



チョコレート系もいろいろ試している。
ネスレのキットカットはどこでも売っている。あとオレオ。ネスレは日本の会社かと思っていたけど、スイスに本社を置く世界最大の食品メーカーらしい。ネスレジャパンはグループの中でも特に頑張っていて、独自にいろいろな商品を開発したりしている、らしい。
「キットカットの抹茶味は日本でしか売ってないから、海外に行くならお土産に持っていくといいよ。みんな喜ぶよ」と、バンクーバーで知り合った日本人の旅人が言っていた。
キットカットも美味いけど、僕はカナダ版「ダース」を求めている。今のところ「これだ!」というものにはまだ出会っていない。道のりは長い。




さて、なんでこんなことを書いているのかというと、要するに暇なのである。
今日と明日は雨で移動できない。というか移動できるけど、面倒臭いから動きたくない。それに、ちょっと疲れた。
ジャスパーから200km程西に進んで、マクブライドという小さな街にいる。本当に小さな小さな街。
ジャスパーでのんびりし過ぎた反動で、いかんいかん、遊びに来たわけじゃない、ここから先は戦いじゃあ!と意気込んで出発、真面目に二日間も走ったらすぐに嫌になって、その二日間の反動で更なるだらしない生活に戻った。
冷えたビールが飲みたくてCORONAの6本パックを購入。昨夜は贅沢に牛肉を鉄板で焼いて食べた。
今日と明日は天気が悪い予報だったからこのキャンプ場に三泊決めて、魚釣りにでも出掛けようと思っていた。
今日、小さな釣具屋さんで店のおばちゃんに相談すると、この辺りの川じゃ小さいのしか釣れないよ!とのことだった。お客さんで来ていた兄さんからいろいろ情報を頂いた。僕がこの先泊まる予定のキャンプ場には湖があって、そこはなかなかグッドプレイスらしい。しかもトリプルフック、返しがついていてもオーケーだとのこと。
知らなかったけど、この区域の湖に関してはシングル、バーブレスの制限はないらしい。改めてレギュレーションを読んでみると、確かに「all stream」と書いてある。流れのないところではその制限がないということなのか。
本当にややこしい。一体いつになったら魚が釣れるのだろう?




釣具屋さんでスプーンを数種類購入後、近くの釣り場をチェックした。一旦キャンプ場に戻って虫除けスプレーを持って来よう思っていたら雨が降ってきた。仕方ないからビールを飲んで昼寝した。雨はやがて嵐になって、大粒の雹が降った。気付いたら四時間も寝ていた。
本当に、だらしないなぁと思う。この地で知り合ったあの人や、あの人や、あの人達は今日も走り続けているのかもしれない。そう思うとどうにも留まっていられないような気持ちになって、僕はまたビールの蓋を開けてしまう。




フレーザー川が滔々と流れている。
バンクーバーからずっと続くこの川にも、10月には鮭が遡上してくる。
村田基さんが釣った巨大なホワイトスタージオンという鮫もこの川に入ってくるという。
僕の髭はますます伸びて、いよいよだらしなくなるばかりだ。










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