今年の桜はよく雨に見舞われましたが、雨にけぶる桜もまた一興でした。
 桜って、咲き始めたときは白っぽいですが、だんだんと芯の方が紅色になってくるんですね。だから、桜並木も一段と華やかさを増します。でも、それがもうそろそろ終わりだというサインで、やはり昨日の雨で花びらを散らし、地面の隅の方に吹き溜まっています。今朝、手のひらに掬ってみました。柔らかくて優しくて、桜マンマができそうでした。

 そして、落花とともに山が笑い始めました!
 「山笑ふ」は春の季語です。北宋の画家郭熙の「春山澹冶(たんや)にして笑ふが如し」から季語になったということですが、本当によく言ったものです。淡い緑の新芽が一斉に噴き出して、その中にぽわっとピンクの桜が混じったりして、まるで子猫の毛並みのように気持ちよさそうです。見ているこちらも微笑んでしまいます。
 いい季節です。
 ちなみに、夏は「山滴る」、秋は「山装ふ」、冬は「山眠る」と言います。

 でも、「春愁」という言葉もあります。春なのに、いや春だからこそ気分がすぐれない。きっと「心」が季節についていかないのでしょう。クライエントさんの中には、「桜なんか咲かなければいいのに」と言う方もいらっしゃいます。
 そんな時には、いっそ「春愁」に浸ることです。目を覚ましたくない「心」をいたわり、冬の山のようにしっかり「眠る」。自分の「自然」に抗わない。無駄なあがきや動きを止め、じっくりと自分に向き合って傷つきを癒していく。
 冬にも冬の日が差しています。山はきっと眠りながらエネルギーを溜めているのでしょう。そして芽吹きの準備をしています。人もきっとそうなのでしょう。 

 今だから言えますが、実は去年の私も「春愁」どころではない愁いに浸っていました。TAOを開室して間もなく、先の見通しも立たず不安でいっぱいで、桜も山も味わう余裕なんてありませんでした。 
 心掛けたのは、ただタオに従い、自分を調えることでした。まだ十分にできているとは言えませんが、今年は笑えるようになりました。
 「笑う山」を見るにつけ、クライエントさんの「眠り」に深く付き合える自分でありたいなと思います。

                            心理面接室TAO 藤坂圭子
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