「大変なお仕事ですね」「人の暗い話ばっかり聞いて、疲れるでしょう」とよく言われます。「こんなことを一生懸命やっていたら病気になるので、ほどほどにした方がいい」とまで言われたこともあります。
 やっぱり、カウンセラーって疲れる仕事だと思われますか?

 そう思われるのは、多分カウンセリングに対する誤解があるからでしょう。人の暗くて重い話をただ聴いてあげるのがカウンセリングだという誤解です。どんな話も「受容」しなければならず、我慢するのがカウンセラーの仕事だと思われているのでは。
 そもそも、淋しかったり辛かったり、思い通りにならない自分に苛立ったり、誰かに対する恨みを拭い去れなかったりといった感情は、ネガティブで問題だととらえられがちですが、カウンセラーはそうは思っていないのです。

 自分を変えようと思ったら、苦しみから目を逸らさず真正面から向き合わなければなりません。それはとてもしんどい心の作業です。お金と時間を費やしてカウンセリングに来てくださり、真剣に取り組まれる姿には本当に頭が下がります。だから、一緒にしっかり苦しんで悩むようにしています。
 その時、カウンセラーは、自分の心の中で何が起こっているかを常に意識しています。それができないと知らず知らずのうちにクライエントさんの感情に巻き込まれたり、逆にカウンセラーがクライエントさんを取り込んでしまったりする恐れがあるからです。だから、瞬間瞬間の自分の感情に気づく訓練を受けています。
 
 でも、カウンセリングは「感情」だけのものではなく、「科学」でもあります。心理学や心理療法の理論は、数多くの症例から発見され体系化されたもので、机上の空論ではありません。
 私たちは、異様に体の調子が悪いとガンかもしれないとビクビクしますが、医者は身体について隅々まで把握されているから、そんなに慌てません。同じように、カウンセラーは「心」についての知識があるので、クライエントさん本人より、何が起こっているのか、発達のどのあたりで躓いているのか、どういうことが課題なのかなどについて、ある程度は見通しが立ちます。だから、一緒に暗いトンネルの中でうずくまることができるのです。どんな心理的アプローチが役に立つかについても、常に考えながら進めます。

 それから、カウンセラーは決して我慢ばかりもしていません。クライエントさんのためと思えば、少々痛いことも言います。クライエントさんも「いい人」から脱却して「灰汁(あく)」が出せるようになると、すごく力強くなられます。カウンセリングは、クライエントさんとカウンセラーのアクティブな協働作業です。
 そんな試行錯誤の連続ですが、クライエントさんの変化は、思わぬところからやってくることが多いです。何だかわからないけどフッと楽になったとか、気づいたら今までできなかったことをしていたとか、タイムリーに意味ある出来事が起こるとか。不思議です。 

 カウンセラーは疲れないと言ったらウソになります。
 でも、クライエントさんとともにしみじみといい時間を過ごさせてもらって、むしろ感動をいただくことがしばしばです。深い心の世界をともに旅するというのは日常では味わえない、本当に特別な体験です。とても喜びに満ちた仕事です。 
 クライエントさんに十分に寄り添えるよう、もっと力を付けたいです。そのための一番の研究対象は、やっぱり自分自身かなと思います。


                           心理面接室TAO 藤坂圭子
                           HP:http://tao-okayama.com