ちょっとのことでイライラしたり、頑張ろうと思う時に頑張れなかったり、人に優しくできなかったり、また同じ間違いを犯してしまったり…。そんな自分は「嫌な自分」で、罪悪感を感じて何とか改めたいとあれこれ考えるのは、とても良心的なことです。
 でも、それがまた新たなストレスを生みます。
 
 どんな自分も自分。いろんな事情の中を精一杯生きていて、今の自分がある。そんなに簡単に変えたり消したりはできません。まず、「嫌な自分」もありのままに受け入れ、許すことが、実は楽になるための近道です。
 
 人間は誰でもどんな感情でも持ち得ます。その感情に白黒つけず、「これが自分の本当の気持ち。今はこんなだけどしかたないね」と、受け入れてねぎらってあげます。そうして初めて肩の力が抜けて、素の自分に戻り、次への一歩が踏み出せます。

 そうせずに、「嫌な自分」を無理やり排除しようとすると、排除された部分が抵抗を起こして、ますますしんどくなったり、その部分が人に投影されて、人間関係がうまくいかなくなったりします。

 そうは言っても、それは一人でするのはとても難しいことで、そばにいて受け入れてくれる存在が必要です。ユングは、それを「コンテイナー」(魂の容器)と言いました。私も、カウンセリングでは良質なコンテイナーでありたいと思っています。
 
 私たちは、「良識」や「社会的規範」に従って生きていて、つい「心」を置き去りにして「頭」で物事を運ぼうとします。「頭でっかち」になりすぎてしまうと、「心」の深いところが反乱を起こします。それがさまざまな悩みであったり、病気であったり、事故であったりします。
 逆に言うと、それらのトラブルは、「自分らしさを大切にしなさいよ」という、メッセージ・人生からの贈り物かもしれません。だから大切に付き合うことが必要です。
 自分の本当の気持ちや体が求めていることに従うこと、つまり「タオ」に委ねることが、人生の充実には不可欠なのだと思います。
 こんなことが、先日のTAOエンカウンターでも語り合われました。 

                         心理面接室TAO  藤坂 圭子