リオ・オリンピックが終わって1週間。感動の余韻も薄まり、日常が戻ってきてしまったという感じです。
今回のオリンピックは、そもそも無事に実施できるのかという危惧が先に立ち、特に関心も持っていませんでした。が、連日のメダルラッシュの勢いに私も飲まれ、午前中のライブ放送だけでなく、わざわざ夜中に起きてTVの前に座るという日もあり、自分でも驚きでした。
史上最多の41個のメダル獲得、数々の逆転劇、本当にたくさんの感動をいただきました。メダル獲得の瞬間の選手たちの表情は、何度見ても飽きません。
でも、TVを見ながらちょっとした違和感を感じてもいました。試合の最中から、しばしば応援する家族(特に母親)の姿が映ることです。メダル獲得を伝える報道でも、「家族の絆」が強調され、出身地域や母校の興奮ぶりも何度も流されます。私には選手や競技そのものの尊厳を損なうように感じられます。
ある新聞のコラムでも、日本とアメリカのオリンピック報道の違いが書かれていました。アメリカの報道では、ただ選手たちに焦点が当てられ、家族はめったに出てこないそうです。ああ、やっぱりと思いました。「母性社会日本」がここにも現れています。
「父性」は厳しく切り離す機能、「母性」は優しく包み込む機能です。欧米社会は「父性」が強く個人主義が発達し、日本では「母性」が強く集団主義が発達した、とはよく言われることです。
オリンピックの報道にしても、家族や地域がいかに選手を包み育んできたかという人間模様が関心の的になります。母親と妻のいわゆる「嫁姑の確執」が週刊誌の記事になるということまで。
それが、「グレートマザー」に飲み込まれる日本人の心性、河合隼雄さんの言った「母性社会日本の病理」を連想させます。
けれども、今回の日本勢の躍進は、この「母性社会」の強みを最大限に生かした結果とも言えると思います。奇しくも、活躍が特に目立ったのは団体種目で、個人種目においても「チームジャパン」という言葉が飛び交いました。銀メダルに終わると「申し訳ない」と謝り、帰国したどの選手も「東京に向けて、また応援よろしくお願いします」と口を揃えます。
そもそも、スポーツの世界は母性機能が強いものです。指導や規律が非常に厳しいので、一見父性機能優位ですが、コーチとの「絆」、組織の中での上下関係、集団への帰属意識の強さは、とても母性的と言えます。それに日本人元来の母性とが相まって、日本独特の「体育会系」の気質が出来上がり、実は日本社会全体を覆っています。だから、日本人の長時間労働や過剰な部活動の体質が変わらないのも無理はないのです。
私は正直、この「体育会系」の雰囲気が息苦しくてあまり好きではありません。でも、今回のオリンピックは、「母性社会回帰」によって日本人ならではの輝き方を取り戻したと言わざるを得ないと思います。
ならば、今後日本人はどこへ向かっていったらいいんだろう、ということを考えさせられます。
明治以降目指した「個人主義」も「個性の尊重」も実現せず、かと言って、地域どころか家族の結びつきも希薄になっている今、日本人は何を拠り所にしたらいいのか。もう一度日本人としてのアイデンティティを見直しながら、地に足着いた在り方を探る必要があります。その際、やはり人との「絆」というのは決しておろそかにはできないのだということを、今さらながら再確認したように思います。
心理面接室TAO 藤坂圭子
HP: http://tao-okayama.com
今回のオリンピックは、そもそも無事に実施できるのかという危惧が先に立ち、特に関心も持っていませんでした。が、連日のメダルラッシュの勢いに私も飲まれ、午前中のライブ放送だけでなく、わざわざ夜中に起きてTVの前に座るという日もあり、自分でも驚きでした。
史上最多の41個のメダル獲得、数々の逆転劇、本当にたくさんの感動をいただきました。メダル獲得の瞬間の選手たちの表情は、何度見ても飽きません。
でも、TVを見ながらちょっとした違和感を感じてもいました。試合の最中から、しばしば応援する家族(特に母親)の姿が映ることです。メダル獲得を伝える報道でも、「家族の絆」が強調され、出身地域や母校の興奮ぶりも何度も流されます。私には選手や競技そのものの尊厳を損なうように感じられます。
ある新聞のコラムでも、日本とアメリカのオリンピック報道の違いが書かれていました。アメリカの報道では、ただ選手たちに焦点が当てられ、家族はめったに出てこないそうです。ああ、やっぱりと思いました。「母性社会日本」がここにも現れています。
「父性」は厳しく切り離す機能、「母性」は優しく包み込む機能です。欧米社会は「父性」が強く個人主義が発達し、日本では「母性」が強く集団主義が発達した、とはよく言われることです。
オリンピックの報道にしても、家族や地域がいかに選手を包み育んできたかという人間模様が関心の的になります。母親と妻のいわゆる「嫁姑の確執」が週刊誌の記事になるということまで。
それが、「グレートマザー」に飲み込まれる日本人の心性、河合隼雄さんの言った「母性社会日本の病理」を連想させます。
けれども、今回の日本勢の躍進は、この「母性社会」の強みを最大限に生かした結果とも言えると思います。奇しくも、活躍が特に目立ったのは団体種目で、個人種目においても「チームジャパン」という言葉が飛び交いました。銀メダルに終わると「申し訳ない」と謝り、帰国したどの選手も「東京に向けて、また応援よろしくお願いします」と口を揃えます。
そもそも、スポーツの世界は母性機能が強いものです。指導や規律が非常に厳しいので、一見父性機能優位ですが、コーチとの「絆」、組織の中での上下関係、集団への帰属意識の強さは、とても母性的と言えます。それに日本人元来の母性とが相まって、日本独特の「体育会系」の気質が出来上がり、実は日本社会全体を覆っています。だから、日本人の長時間労働や過剰な部活動の体質が変わらないのも無理はないのです。
私は正直、この「体育会系」の雰囲気が息苦しくてあまり好きではありません。でも、今回のオリンピックは、「母性社会回帰」によって日本人ならではの輝き方を取り戻したと言わざるを得ないと思います。
ならば、今後日本人はどこへ向かっていったらいいんだろう、ということを考えさせられます。
明治以降目指した「個人主義」も「個性の尊重」も実現せず、かと言って、地域どころか家族の結びつきも希薄になっている今、日本人は何を拠り所にしたらいいのか。もう一度日本人としてのアイデンティティを見直しながら、地に足着いた在り方を探る必要があります。その際、やはり人との「絆」というのは決しておろそかにはできないのだということを、今さらながら再確認したように思います。
心理面接室TAO 藤坂圭子
HP: http://tao-okayama.com