今年は格別に、「あっ」という間に年が暮れます。コロナコロナと騒いでいるうちに、時間が頭上をすり抜けていくようでした。本来なら東京オリンピック・パラリンピックで賑わい、好景気も呼び込んだであろう2020年は、まれにみる閉塞の時代になりました。
コロナ上陸の今年の初めは、こんな生活が今年いっぱいも続くとは思いもしませんでした。神経質なくらいの手洗い、消毒、マスク、外出自粛が当たり前になりました。楽しみを奪われ、数々の予定変更に翻弄され、毎日の感染者数の推移に気を取られながら、今年も終わりを迎えます。
コロナは私たちの心理のいろいろな面を浮き彫りにしました。
「コロナうつ」「コロナ不安」「コロナ離婚」「コロナ自殺」…、さまざまなコロナ現象が出現し、TAOでもお話をうかがっています。
確かにコロナがなければこんなにしんどくならなかったでしょうけれど、コロナによって新しく起こった問題ではありません。もともとあった内面の不安や家族の不和が、コロナによって増幅されたようです。だから、これをチャンスととらえて克服に取り組まれた方は、一回り力強くなられました。
誰しも何かしらの不安にとらわれたと思いますが、そもそも「一寸先は闇」です。生きていると何が起こるか分からないのが現実だし、何事も自分中心に回っているわけではない。だから、私たちには常に不安を抱えながら進むしかないという覚悟が必要だと思います。
けれど、自分の中に不安を抱える器がない人は、何としても安定を手に入れるために、自分を脅かす存在を攻撃するしかなかったのでしょう。それで、「自粛警察」なるものも現れました。
つくづく人間って弱いものだと思いますが、しんどい時に支え合えるネットワークや絆が希薄な社会に生きているんだとも思い知らされました。
しかし、コロナで失ってせいせいしたものもたくさんあったでしょう。無駄な会議、義理の飲み会、満員電車、化粧の時間…!
帰省すら、できなくなって喜んでいる人も少なくないと思います。皆にとって家族があったかいわけではありません。家族のしがらみに苦しんでいる人は、このコロナがもたらしてくれた解放感を存分に味わったらいいと思います。そして、自分の思いを正直に受け止めましょう。
コロナは、自分にとって本当に大切なものは何なのかを考える機会を与えてくれています。
私自身は 「こもる」ことは好きなので、出掛けられないことはそんなに苦ではありませんでした。が、人に会えないのが残念でした。普段会えない人たちとの定期的な飲み会や旅行を見送り、研修もオンラインなので休憩時間の雑談とかできず、一度オンライン飲み会を楽しみましたが、その後は忙しすぎて連絡もしないまま、気が付いたら身近な人たちとしかお話しなかった一年でした。
先日年賀状を書き終えましたが、「また会いたいですね」と添えた一言に、いつも以上の重みがありました。年賀状だけでつながっている何十年も会っていない人たちのこと、一緒に過ごしていたその頃の自分も思い出され、思いがけず自分自身の軌跡を振り返る作業になりました。
それぞれにいろんな思いを掻き立てさせたコロナの一年が終わります。この生活がいつまで続くのか分かりません。
けれども、「禍福は糾える縄の如し」-「禍」も「福」も表裏一体、両方に同等の意味があります。コロナ禍を嘆くばかりでなく、「福」に転じていきたいものです。
2021年がいい変革をもたらす一年でありますように。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
心理面接室TAO 藤坂圭子
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