「どうせ…」。やさぐれた子どもがよく言うセリフです。
 「どうせ自分にできるわけない」、「どうせ自分のことなんか誰も分かってくれない」、「どうせまた叱られるのがオチだ」、「どうせ私はバカですよ」。「どうせ」「どうせ」…
 そういう子どもたちの、もう一つの口癖は、「めんどくせー」です。「どうせ何をしても無駄。何もかもめんどくせー! やっとれるか!」と、ゲームをはじめとする依存症、迷惑行為や犯罪、不登校やひきこもりに陥ってしまいます。
 子どもだけでなく、大人にも実に多いです。「どうせ私は負け組」、「どうせ人なんか信じられない」。ますます世の中を僻みながら生きていかざるを得ません。
 
 あなたは「どうせ」に憑りつかれていませんか? こんなに自尊心をくじかれて、息苦しさを抱えて生きなければならないのは、誰のせいですか? あなたのせいではありません。あなたの資質や努力不足のせいではありません。
 あなたに「どうせ」を吹き込んだ大人や社会のせいです。あなたのありのままを受け入れず、それどころかけなし、あなたを無力化させました。
 テストの点が少々悪くても、「頑張ったね。大丈夫、生きていけるよ」と言ってくれればよかったのに。はしゃぎすぎて物を壊しても、「元気がいいね」と面白がってくれたらよかったのに。恥ずかしくて人前で発表ができなくても、「その奥ゆかしさが、あなたらしさだよ」と認めてくれたらよかったのに。 
 
 親だって、本当は子どもを「負け組」にはしたくなかったのでしょう。それで、世間の規格に合うようにあなたを躾けようとしたのかもしれません。あるいは逆に、「どうせお前も同じ穴のむじな。お前だけ自由になるのは許さない」と、あなたを引きずり降ろしたのかもしれません。
 悲しいことに、「どうせ」の世界に生きていると、自分が生き延びるのに精いっぱいで、他人を思いやる余裕がなくなってしまうようです。手足をもぎ取られたような人たちがいがみ合って暮らすのが世の中の真実だ、という信念が植え付けられてしまいます。
 多分、彼らもまた同じように育てられ、「どうせ」の連鎖が無意識的に綿々と続いているのでしょう。

 この地球上の同じ三次元の世界に生きながら、見えている世界は人によって様々です。そして人は見えているように生きていきます
 どうしても自己肯定感が持てずに悶々としている方、「どうせ世の中こんなもん」と捨て鉢になっている方、まず自分が「井の中の蛙」にさせられていることに気付いてください。
 世の中には別の次元の世界もあります。きれいすぎてウソくさいと思っていた世界にも目を向けてください。いがみ合いではない思いやりの世界、あなたがあなたのままでいられる世界もあります。多様性やマイノリティ(少数派)を尊重する社会の動きに敏感になって、新しい考え方も取り入れてください。こんな風に生きてもいいんだ、とお互いに認め合いたいものです。
 
 なんでこんなところに生まれたのか、ここに生まれたのは事故としか思えない、と言われた方がいます。事故の後遺症を拭うのは大変です。でも、もしかしたらそれがあなたが生まれてきた意味かもしれません。
 代々引き継がれた寂しさややりきれなさから逃れ、本来の優しい世界に身を置いて、自分らしさを取り戻せたとしたら、それは人生の大仕事。そして、負の連鎖は絶たれ、これからあなたとかかわる人を和ませることができます。そんな明るい連鎖の一端になれたら、何も大きな成果など残せなくても、幸せなことだと思いませんか?

                          心理面接室TAO 藤坂圭子
                          HP:http://tao-okayama.com