2021年11月

 12月・1月の開室について、お知らせします。年末は29日まで、年始は4日から開室いたします。
 月・木・金の午後は、スクールカウンセリング等で外に出ているので午後がお取りしにくいですのですが、冬休みの期間中はお取りできます。お問い合わせください。
 土曜日はご希望が多いので、お早めにお申し込みください。
 以下の日はご注意ください。

  12/4(土) 12:00~ ✕
  12/29(火)まで 〇 
  12/30(木)~1/3(月) ✕
  1/4(火)  〇
  1/5(水)・1/6(木)  ✕
  1/10(月・祝日) 9:00~16:00 〇 (最終は15:00~)
  1/15(土) 12:00~ ✕
  1/22(土) 12:00~ ✕
  *土曜日は午前中の開室(最終12:00~)、日曜日は閉室です。

 今年もコロナに翻弄されました。2022年は少しは解放感を味わいたいものです。心も清々しさを取り戻せますように。
 慌ただしくもなりますので、みなさま、どうぞお体ご自愛なさってください。


                           心理面接室TAO 藤坂圭子
                           HP:http://tao-okayama

 ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある人と栖(すみか)と、またかくのごとし。
 有名な鴨長明「方丈記」の冒頭です。高校時代に暗記させられた方も多いのではないでしょうか。

 私はもともと国文学出身で、「無常観」の研究をしていました。卒業論文は「徒然草」、修士論文は中世和歌を扱ったのですが、今になって「方丈記」も実に味わい深く感じます。
 平安末期を生きた鴨長明の無常観は「消極的無常観」、鎌倉時代の吉田兼好のそれは「積極的無常観」と言われます。が、果たしてそうでしょうか?
(*「無常」とは「常」がないということ。何事も移り変わっていくという世界観です。「無情」ではありません)

 兼好の「徒然草」では、「世は定めなきこそいみじけれ(無常であるからこそ、この世は面白い)」(第七段)と言い、随所に「今を生きる」ことの大切さを説いていて、「積極的」に無常を乗り越えようとしています。
 それに比べて長明は、ただ流れていくはかなさを嘆いているようで、何だか弱っぽく見えます。でもよく読むと、淀に浮かんでいる水の泡だって、一方では消え、一方では結ぶと言っています。つまり、滅びるばかりでなく生まれてくるものもあるのです。「人」も「栖」も。
 ここに、突拍子もなく「栖」が出てくるところがまた面白い。「方丈記」は実は、「住居論」なのです。

 平安末期は天災人災が重なり、シッチャカメッチャカでした。大火事(京の3分の1が消失)、大辻風(竜巻が京の町を走り抜け、多数の家々が吹っ飛ぶ)、福原遷都(京は荒れ放題で犯罪も横行)、養和の飢饉(死者4万人以上)、元暦の大地震(阪神淡路大震災級、津波も伴う)。「五災厄」と言われます。
 長明は、こんな不確かな世に、家も金も名誉も不要!と一念発起して、リヤカーに建築資材を積み込んで気に入った土地を探し回ります。そして京の郊外の日野山に「方丈の庵」(約四畳半)を組み立て(日本最古のプレハブ住宅⁉)、悠々自適の生活に移るのです。全然「消極的」ではありません。
 経を唱え、琴を弾き、子どもたちと遊び、自然に親しみ、「心は濁りに染めり」と嘆きつつ、あとは西の空に紫雲(お迎え)を待つ。やっと自分の生き方を見つけた!という感慨があります。

 最近、偶然にも複数のクライエントさんと、「変化」や「放浪」や「川を見つめる」などの話を交わす機会があり、「方丈記」を思い起こしたのです。
 「無常」は平安にも令和にも平等です。科学技術が進んだからと言って世の中が安定するわけではなく、むしろ気候変動や世界情勢はますます不穏になっています。個人が生きづらく、さらに国家や国際協調のあり方も問われています。

 令和の私たちも、長明と同じく、何を大切に生きるべきかを問い直す必要があると思います。「心」や「人生」も本来は「無常」です。それに抗って、こうでなくてはいけないと何かに執着していると、知らないうちに落とし穴にはまるかもしれません。
 お金や学歴や持ち家は本当に必要か。人並みで普通に生きることに意味はあるのか。自分にとっての価値を探り、柔軟で融通が利く生き方を探りたいものです。 

 分からなくなったら、川に向かってボーっとするのもいいかもしれません。消える、結ぶ、流れる。この連環の中にうまく存在できるのが、真の「安定」なのでしょう。水には癒しのエネルギーもあります。 

                           心理面接室TAO 藤坂圭子
                           HP:http://tao-okayama.com

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