2022年、コロナ禍3年目が終わろうとしています。コロナとの付き合いにも慣れてきましたが、何となく鬱屈した気分が続きます。
 私は相変わらず出不精が続いてます。それほどストレスでもないのですが、自分の中で何かが滞っている感じがあります。これでは、運気が巡らないのではないか。坐ったまま悟れるような立派な人間ではないので、来年は重い腰を上げて、自分を活性化させねばと思っています。
 
 コロナよりも衝撃だったのは、2月24日のロシアによるウクライナ侵攻でした。
 人類は二つの世界大戦を経て、東西冷戦も一応終結させました。ようやく自由主義、民主主義、人権尊重の時代に入ってきたかと思いきや、いきなりの逆行です。その兆しは、ロシアのみならず世界のあちこちで見られていたとは言え、インパクトは大き過ぎます。
 多くの命が奪われただけでなく、尊厳が蹂躙され、世界規模の経済の混乱や食糧難などを引き起こし、分断をあおり、ポピュリズム・ナショナリズムへの回帰が懸念されます。第三次世界大戦が起こってしまうのでしょうか?

 アメリカの思想家・トランスパーソナル心理学者のケン・ウイルバー(1949~)は、「インテグラル理論」の中で、人類の精神性の発達過程を次のように説明しています。前の段階を含みながら超えていくとされます。およそ700万年前に人類が誕生して以来、その進化は非常にゆっくりとしたものでした。
 1.古代的段階 ー 野生本能優先。赤ちゃん的な精神状態。
 2.呪術的ないし部族的段階 ー 部族的集団を形成するも、アニミズム的、幼児的。
 3.呪術-神話的段階 ー 自己中心的、暴力主義、力が全て。就学以前くらい。 
 4.神話的段階ないし伝統的段階 ー 自分中心から、自分たち中心へ。集団主義・原理主義が横行。
 5.合理的段階ないし近代的段階 ー 理性と革命の時代。個人尊重の意識が生まれるが、成果偏重。
 6.多元的段階ないし後-近代的段階 ー 感受性豊かで多元的な価値を尊重。が、他の価値に対して非寛容。
 (ここから先は、まだ実現できていないとされます)
 7.統合的段階 ー 前のどの段階の意味も役割も受け入れ、全てが一体という感覚の中でおおらかに生きられる。
 8.超-統合的段階 ー 素晴らしい調和と霊性の中に。もはや、神の域?

 21世紀になって、人類はようやく段階6「多元的段階」にたどり着いたかという状況でした。民主主義が良しとされ、多様性尊重が謳われ、SDGsの取り組みも進んでいます。が、ここに来て、段階4の集団主義に留まらず、段階3の力の時代にまで退行しそうな勢いです。
 ウイルバーは、人口の10%がある発達段階に達すると、その段階の価値が文化全体に浸透するようになる、と言います。時代を逆行させないためには、一人でも多くの人が精神性を維持し、さらに高めていかねばなりません。 

 私が通っている太極拳の道場に、こんな色紙が掲げてあります。
  When I change,the whole world changes. ー 私が変われば、世界が変わるー
 確かに、一人の変化は大きいです。TAOにいらっしゃったお一人の方の変化が、家族全体に及ぶことがよくあります。長年のしこりが解消されて平穏がもたらされます。驚きです。
 一つの家族の変化はまた、その周囲にも波及していくでしょう。
 ウイルバーと同じく人類の可能性を信じ、そんな草の根的な平和活動を、TAOでも地道に続けていきたいと思っています。

 2023年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 みなさまにとって良い年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

                               心理面接室TAO 藤坂圭子
                            HP:http://tao-okayama.com