お正月気分も抜けて、今日はもう「鏡開き」です。
 ところで、みなさまは「お雑煮」は食べられましたか? 

 高校の国語の教員だったとき、年が明けて最初の授業でよく、「我が家のお雑煮、大公開!」をしました。
 黒板に表を作り、次の項目を記入していきます。
 ・丸餅か各餅か ・煮るか焼くか ・お餅はいくつか ・お澄ましかお味噌か ・具の種類 ・父方か母方か、その出身地。
 みな「うちのお雑煮はフツー」と言いながら書いていくのですが、一覧にしてみると面白いこと! 「フツー」って全然ないのです。

 岡山では、お澄まし汁に煮た丸餅というのはだいたい共通です。それから具材としては、鰤(ぶり)が多いのです。その他の野菜やお魚は本当にいろいろ。芹、水菜、ほうれん草、人参、大根、柚子、椎茸、蝦、蛤、鯛、穴子、蒲鉾、麩…etc. 一つとして同じ組み合わせはありません。だからこそ、「雑煮」(何でもありのごった煮)なのです。「若水」(その年最初に汲んだ水)と最初の火で調理するところに、めでたさがあります。
 鶏肉などは九州など他の地方に多く、スルメで出汁を取るというのは私には初耳で、試してみたら美味しかったです。焼餅も珍しい。香川の白味噌にあんころ餅のお雑煮、是非一度食べてみたいです。
 父方のお雑煮か母方のお雑煮かよって、そのお家の勢力図がちょっと見え隠れもします。

 私は両親の出が岡山の県北なので、実に田舎くさいお雑煮に親しんできました。澄まし汁に煮た丸餅、具はほうれん草とお豆腐と鰤のみ。そして、鷲掴みでぶっかける鰹節! これをお餅に絡めて食べるのが美味しいんです。でも全く品がない。
 小さいころは、ペッタンペッタン搗いたデカい餅を「年食い」していました。5つや6つはペロリでした。今でも3つは食べます。
 全然飽きず、松の内の15日まで続きました。最近はさすがに胃腸にこたえるので、三が日くらいで我慢です。
 家族親族みんなお雑煮が大好き。だから、「我が家のお雑煮、大公開!」で、お餅が嫌いとか、お雑煮は食べないとかいう子がいると、妙に淋しく思えたものです。

 日本人は昔から、「丸くて白い」ものを神聖と考えていたようです。望月しかり。けれど、関東では角餅です。お餅を「丸める」のではなくて「切る」なんて、何か失礼な気がする…。
 以前、生粋の江戸っ子とそんな話をしていたら、「丸い餅などおっかなくて食えねえ! あれは神様の食いもンだ」と言っていました。なるほど、そういうことか。

 「白」そのものが神聖な色でもあります。お正月の雪も縁起がいいとされました。
  新(あらた)しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)
                      大伴家持(おおとものやかもち)
 万葉集の編者が自ら、この歌集の最後を飾ります。
 天平宝字3年(759年)の元旦は、立春にも重なっていました。さらに、清らかな雪まで積もります。このように、ますます良いことが重なる豊作の年となりますように、という願いがこもった新年祝賀の歌です。

 良くないことばかりで騒がしい昨今ですが、「いや重け吉事」を願いつつ、丁寧に歩んでまいりましょう。
 令和5年・2023年を良い年にしましょう!

                               心理面接室TAO 藤坂圭子
                            HP:http://tao-okayama.com