先週の日曜日、「ユング心理学セミナーⅩ」を終え、一昨年秋から行ってきたこのシリーズは、10回で一応完結となりました。最後は、心の中の様々な対立物の統合がうかがえる、ユング自身の美しいマンダラをみんなで味わいました。

 ユングの世界はとても深遠で、簡単にお伝えできるものではありませんが、やはりユングの原著に触れていただきたく、代表的な著作を部分的にですが毎回一緒に読んでいきました。頭を抱えながら。
 ユングの著作を評して、こんな文章に出会いました。
 「読み進むうちに、説明不能なものを別の説明不能なもので説明され続けているような、目眩にも似た感覚を覚えるが、注目したいのは、その不可解さ、不可知性にこそ心の永遠で超越的ともいうべき癒しと救いの源を見るユングの肯定的な眼差しである」(「心理学対決!フロイトvsユング」)。
 言い得て妙!!

 複雑な現代社会を生き延びるため、私たちは知らず知らずのうちに、自分の大切な一部分を置き去りにしたり、封印したりしていて、どこか虚しさや不全感を拭えません。特に中年期以降、定年退職や老後のことがチラチラするようになると、無性に不安になったりします。
 そんな時、ユングの世界観は大きなヒントを与えてくれます。やむを得ず切り離してきてしまった、いろんな感情や願望や自然とのつながりを取り戻し、トータルな自分として心豊かに生きていこうという知恵です。それには苦しみも伴いますが、眠っていた本来の「自己」を取り戻したときの解放感や充足感は、きっと何物にも代えがたいものでしょう。
 
 以下に、ご感想の一部を紹介します。
●ユングの心理学と初めて出会ったのは大学に入ったときですが、その頃のことをたどり直しながら、マンダラまで来て感慨深いです(大学の頃はあまりマンダラに興味を持てなかったので)。対立する二つのものの統合ということが、実際の生活の中でどのように進むのかは分かりませんが、ずっと先になって振り返ったときに気づくのかもしれないなと思います。
●ユングの世界観が少しずつ観えてきて、それが人類共通のものであるという、私も宇宙のカケラの一部なんだという意識を持てるようになり、より生きやすくなってくる感覚に。身近な人たちに伝えたいと思った。
●ユングの学習と自分の心の変化が併行しているようで、「これでいいんだな」と少しずつ思えるようになってきました。しんどい時は知らない方がよかったかと思ったこともありましたが、最後まで学習して、やはり教えていただいてよかったと思いました。
●他の参加者のそれぞれの受け取り方も、理解を広げる、人を知るのに役立って、いい時間でした。
●集合的無意識や無意識と対話していくことができたらいいなと思いました。「うつになれない人は自分を見つめ直す機会を逃している。うつはマイナスではない。うつに入ることは、心の闇と対面することになり、変容へと向かえる」という言葉に救われたような気持ちになりました。


 セミナーの前数週間はいつも、どうしたら少しでも分かりやすくお伝えできるだろうと、まるで錬金術の窯の中で呻るような日々でした。でも、10名ほどの方が毎回楽しみに来てくださり、ともに学ぶうちに私の理解も深まったし、何より、みんなでユングの大船に乗ったような安心感を味わえたのがうれしかったです。
 本当にありがとうございました。

                         心理面接室TAO 藤坂圭子
                         HP:http://tao-okayama.com